アシモフの『ファウンデーション』シリーズを読んだ

ファウンデーション 銀河帝国興亡史ファウンデーション対帝国 銀河帝国興亡史第二ファウンデーション 銀河帝国興亡史

 銀河帝国興亡史1〕第一銀河帝国は崩壊しつつあった。だが、その事実を完全に理解している人間は、帝国の生んだ最後の天才科学者のハリ・セルダンただ一人であった! 彼は来たるべき暗黒時代にそなえ、第二帝国樹立のためのファウンデーションを設立したのだが……巨匠が壮大なスケールで描く宇宙叙事詩

銀河帝国興亡史2〕天才科学者セルダンによって辺境の惑星ターミナスにファウンデーションが設置されてから二百年が経過した。はじめは百科辞典編纂者の小さな共同社会として発足したファウンデーションも、やがて諸惑星を併合し、着々とその版図を拡大していった。だが、ついにかれらの前に怖るべき敵が……

銀河帝国興亡史3〕その超能力を駆使して第一ファウンデーションを撃破したミュールは、次に第二ファウンデーションの探索を開始した。自らの銀河帝国を樹立するためには、なんとしても謎に包まれた第二ファウンデーションを発見、撃破せねばならなかったからである! SF史上に燦然と輝く不朽の宇宙叙事詩

SF小説史に燦然とその名を残すSF小説の古典、アイザック・アシモフの大河長編『ファウンデーション』シリーズ3部作を読んだ。厳密に書くとアシモフの『ファウンデーション』シリーズは7部まで書かれ、アシモフの死後も別の作家で3作書かれてているが、1850年代に単行本化された第1部から第3部までを「3部作」と呼ぶのは特に問題ないらしい。

この3部作、大昔に創元推理文庫から出ていた『銀河帝国の興亡』の印象が強くて、SF好きだった10代の頃「有名作だし読んどかなきゃなー」と思いつつ全3巻というボリュームに腰が引けて結局読む事が無かった。そもそもアシモフ自体にあまり興味が無かったのもあるが。その後その3部作は早川書房から『銀河帝国興亡史』という形で再刊され、さらにそのKindle版がいつだかバーゲンになっていたのでついつい購入してしまい、それを最近やっと読み終わったというのが経緯である。

物語の舞台は人類が銀河系を遍く支配し銀河帝国を築き上げていた遠未来。しかし歴史心理学者のハリ・セルダンはその衰退と崩壊を予見し、数万年続くと言われる暗黒時代を短縮するため、人類の英知を収めた「ファウンデーション」を設立することを提案する。やがて予見通り銀河帝国は衰退へと向かい、銀河は混迷の時を迎える事になる。設立されたファウンデーションは様々な危機を迎えるが、それを巧みに乗り越えてゆく様が描かれてゆくことになる。この3部作はもともと連作中編として発表されていた作品をまとめたもので、3部作の時間内では数百年の時が経ち、登場人物もころころ入れ替わってゆく。

とまあそんなお話なのだが、正直なところ、つまらなかった。まず、単純に古臭く感じた。何も今これを読まなくてもいいんじゃないかとすら思った。それと、銀河帝国がなぜ衰退し数万年の暗黒期を迎えるのか理由が分からない。まあこれは3部作以降で説明されているのかもしれない。さらに、銀河人類の壮大な歴史を描くものであるにもかかわらず、妙にスケールが小さく感じた。ファウンデーションが迎える危機やそれからの回避の描写は、ほぼ会話とその結果のリアクションが中心で、状況は描かれるが情景が描かれないがために、まるで少数の登場人物だけで占められた密室劇を見せられているような気分になってしまうのだ。ファウンデーション・シリーズの特徴のひとつにアシモフお得意のミステリ要素が挙げられるが、どうもそのミステリ要素がスケールを狭めているのではないかと感じた。あと、申し訳ないのだが、訳がイマイチ過ぎる。

それにしてもこの『ファウンデーション』シリーズはなぜこれだけ支持を得たのだろう。アシモフはギボンの『ローマ帝国興亡史』から作品の発想を得たのらしく、悠久の時の中で移ろう帝国の運命を銀河規模で描こうとしたということなのだろう。とはいえ、あとがきでも触れられていたが、この作品はむしろ執筆当時の1940年から50年代のアメリカと世界の状況が重ね合わされているような気がする。それはまず当時第二次世界大戦が勃発していたということだ。ここで、例えば古くから存在し衰退の影が差す銀河帝国をヨーロッパ、歴史心理学という科学合理主義を打ち出すファウンデーション新興国アメリカと見るなら分かり易い。そして完璧だった筈のセルダン・プランを脅かすミュータント種族ミュールはナチス・ドイツヒトラーだったのではないか。長き歴史の中で疲弊してゆくヨーロッパと資本主義大国として世界を牽引してゆくことになるアメリカ、その対比が『ファウンデーション』の物語にこめられているような気がした。

 

売れない漫画家は死んだ筈の特殊工作員だった!?/映画『ヒットマン エージェント・ジュン』

ヒットマン エージェント・ジュン (監督:チェ・ウォンソプ 2020年韓国映画

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「売れない漫画家は死んだ筈の特殊工作員だった!?」という2020年公開の韓国コメディ・アクション『ヒットマン エージェント・ジュン』でございます。むさっ苦しい漫画家がいざ特殊部隊突入!?ともなると魔人の如く立ち振る舞っちゃう!という予告編が楽しそうで劇場に足を運んでみました。それにしてもなぜ特殊工作員が漫画家になっちゃうんでしょう?

主人公の名はジュン(クォン・サンウ)。幼くして両親を亡くした彼は韓国国家情報院に拾われ、秘密裏に暗殺専門の特殊部隊員として育てられました。しかしジョンには漫画家になりたいという望みがあったんです。とあるミッションで死亡に見せかけ逃亡した彼はまんまと漫画家になり家族までもうけていました。とはいえ描いた漫画は不評の嵐、困り果てた彼は特殊工作員時代の実話をつい漫画にしてしまいます。するとそれが空前の大ヒット、ジュンを穀潰し扱いしていた妻や娘にまで喜ばれます。ところがその漫画が国家情報院とジュンの宿敵である国際テロリストの目に留まり、彼は双方から追われる身に!?

「記憶喪失の男は実は最強特殊工作員!」とか「一般人だと思われていた男は実は退役した特殊工作員!」とかいうお話はハリウッド映画でもよく見かけられ、地味なおっさんやお兄ちゃんが恐るべきスキルで無双しまくり敵を完膚なきまで叩き潰す!という爽快感で人気を呼んでいます。今作ではそれが「漫画家さんが元特殊工作員!」というお話なんですが、この物語のキモとなるのは漫画家としては相当ヘボく家族からも相手にされていない、という残念極まりない部分における落差で笑いを生み出しているコメディということなんですね。同時に冴えない漫画家が戦いの場に出ると疾風怒濤に敵を倒す!という落差がまた見所なんですね。

この作品でまず目を惹くのは、主人公の描く漫画がアニメーションで再現されているという事でしょう。まず冒頭からアニメーションではじまりびっくりさせられるんですよ。その後の主人公がかつて行ったミッションの漫画化作品もやはりアニメーションで描かれ、まあ至極単純なものなのではあるんですが、斬新さは感じる事は出来ましたね。また、実際に描かれた漫画はWebコミックの体裁をとっており、これがオールカラーで、読者はみんなスマホで閲覧して即座に好き嫌いのリアクションをとれるんですね。これ、韓国だと割とポピュラーな漫画の流通の仕方なのでしょうか。

お話はその後、かつての味方であった国家情報院と宿敵である国際テロリスト集団の双方に追われ、さらに妻と娘を人質に取られた主人公が、命を懸けてそれと対峙する!という展開に持ち込まれます。こう書くと物凄く面白くなりそうに思えるんですが、いかんせんシリアスとコメディのバランスが悪く、どっちつかずのままお話が転がってしまってるんですよ。シナリオがグズグズな上に演出のもたつきが目立ち、おまけにギャグがベタ過ぎるんですよね。敵味方含め登場人物たちのキャラ設定もギャグに持って行きたいばかりにその時その時で揺らいでしまい、行動に一貫性を感じなかったりもします。この辺りで不完全燃焼気味の残念な完成度に至っています。

しかし、家族愛やかつての同僚同士の絆でまとめようとしたクライマックスはそれはそれで心地よく、また温かい笑いももたらしており、あまり嫌いになれない作品なのも確かなんですよね。『ヒットマン エージェント・ジュン』は決して完璧な作品ではありませんが、そこそこに楽しめる、観て損はしない映画ではないかと思います。 

2020年:那須どうぶつ王国へマヌルネコとカピバラに会いに行ってきた!

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9月になり暑かった夏もようやく終わり、秋が深まってきましたね。この間の4連休は一日ぐらいちょっと遠出をしようかと思い、21日の月曜日(敬老の日祝日)に相方さんと共に栃木にある那須どうぶつ王国へ行ってきました。

那須どうぶつ王国那須高原にある動物園なんですが、ここにはオレや相方さんが大好きなカピバラマヌルネコがいて、今まで何度か行った事があるのですよ。去年のGWにも行ったのですが、この時は雨は降るわ寒いわで大変で、びしょ濡れになりながらカピバラを見たり、雨を嫌って微動だにしないマヌルネコにがっかりしたりと、残念な一日でした(その代わり温泉入ったりもしたけどね)。 そんな訳で今回のどうぶつ王国参りはリベンジも兼ねたものだったんです・・・・・・が。

ところが、さて行く予定を立てようかとネットを調べると、案の定例の新型コロナであれこれと支障があることが分かったんです。いつもなら新幹線で那須塩原まで行き、駅前から動物園行きの無料シャトルバスに乗れた(駅前から動物園まで約70分)のですが、今回それが運休になっちゃってるんです。そこで相方さんに相談し、今回はレンタカーを借りて行くことになりました。実はオレは運転がダメなので相方さんに運転を任せちゃうことになるんですけどね(相方よスマン)。ルートを調べると那須塩原駅前から動物園まで約40分の計算。レンタカーだとどうしても割高になりますが、これしか行く方法がないなら仕方が無い。とりあえず予約し、新幹線の切符も購入して当日に臨みました。

当日は朝早くから出掛けたのですが、東京駅まで着いてちょっとバタバタしてしまいました。新幹線切符を予約購入した時、指定券だけ購入して乗車券を買い忘れていたんですね(あんまり慣れてなくて・・・・・・)。窓口で相方さんにあれこれやってもらい(相方よスマン)、無事に新幹線に乗車。東京から那須塩原駅までは約70分、電車の中でお弁当を食べながら小旅行気分を楽しみます。

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当日は雲は多めでしたがなんとか晴れて、前回のような憂き目には遭わなさそうでした。予報では気温は20度以下と若干肌寒いようでしたが、Tシャツに薄手のカーディガンを羽織って出掛けたけれどもそんなに寒いという印象ではなかったですね。

さて予約のレンタカーに乗り込み那須どうぶつ王国を目指します。駅前を抜けると結構な自然の景色が広がり、近くには畑、遠くには山々が見えます。道路の両脇に立つ木々の枝が道を挟んでアーチ状に茂り、これがとてもいい風情なんですね。しかし車を進めていくと動物園付近に近づくにつれナビに結構な渋滞情報が入ってきたんです。実は今回、新型コロナの影響でそんなにお客さんは来ないだろうなあ、と思ってたのですが、それが全くの逆で、新コロの自粛に飽きたのか相当のお客さんが来園しているようなのですよ。渋滞を避けるためルートを替えたのですが、今度はオレのナビがヘボくて何回も道を間違えることに(相方よスマン)。

というわけで予定より2,30分遅れて12時過ぎにようやく那須どうぶつ王国に到着。すると・・・・・・これがもう人人人の山!やはり新コロ自粛の反作用なんでしょう、あちらでもこちらでも家族連れやカップルでごったがえし行列だらけ、レストランともなると多分1時間待ち、今回もうひとつ楽しみにしていたスナネコ観覧の整理券は既に定員となり配布終了、今までこの動物園に来たなかで最も混雑していたといってもいいでしょう。うわあ、こりゃどうしたもんだ・・・・・・。オレ「いやーこりゃ参ったねーカピとマヌル観られるかねー」相方「ぬーん(動物園に来たので既に幸せモード)」。

観覧できませんでしたがこれがスナネコです。中東やアフリカに生息するヤマネコの一種なんですが、子供の頃の姿がとんでもなく可愛らしい。観られなくて残念!

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ZME Science

とはいえ、大行列はフード絡みの場所だけのようで、多少込んでいたとはいえ動物自体は割りと観ることができました。まずカピの存在を確認し、カピ舎がお昼の休憩に入る僅かな時間にカピを愛でます。

「ヌーンだヌーン」

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次は念願のマヌルネコです!いた!今回は動いている!ああああああマヌルネコ可愛い!やっぱり顔がふてぶてしい!そしてのっそりしていて結構でかい!小型犬ぐらいの大きさはあるんじゃないかな?そのあたりはやっぱりヤマネコって雰囲気ですねー。

マヌルネコですが何か?」

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「今日もニャーだニャー」

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しばらくマヌの姿に狂喜した後、他の動物もあれこれ眺め、次は「王国ファーム」に向かうことに。那須どうぶつ王国は小動物を展覧する「王国ランド」と羊や馬が飼われる「王国ファーム」の二つのエリアに分かれていて、この二つのエリアは割りと離れた場所にあるんですよ。行き来には「ワンニャンバス」と名付けられた動物園バス(無料)があるんですが、これがまた大行列、それで今回はリフト(有料)を使って行くことに。リフトって、意外と気持ちいいよね。

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とはいえ、「王国ファーム」に着いてみても、ここがまた人人人だらけ・・・・・・・バードショーもやっていましたが席すらありません。例によってフードショップも長蛇の列。以前来たときに楽しかったハンモックの森も新コロ対策で閉鎖中。とりあえず羊や馬やラクダやトナカイやアルパカなぞをざっと眺めて「王国ランド」にとんぼ返りです。でも帰りに乗ったトラクターバスが変なアトラクションみたいで楽しかったからいいや!

これが帰りに乗ったトラクターバス。(写真は那須どうぶつ王国HPより)

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ちなみにこれがワンニャンバス。(写真は那須どうぶつ王国HPより)

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そしてまた再びカピ!

「ご飯よこしなさいよ!」

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「ご飯食べ過ぎて眠いなあ……」

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「ご飯の匂いがする!」

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「気持ちのいい日だねえ」「寝るに限るね」

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「という訳でおやすみなさい……ムニャムニャ……」

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追い打ちをかけるようにマヌ!!

「今日ものんびりだニャー」

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「今日はお客さんが多いニャー」

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「たっぷり寝たけどまだ眠いニャー」

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動画も撮ったから観ていきなさいよ!! 

ハァハァ……。(堪能)

という訳でカピとマヌルを追い掛け回していたらあっと言う間に時間になってしまいました。ギフトショップでカピやマヌルのグッズを買って「ニヒヒ……」とかほくそ笑もうとも思っていたんですが、閉園も近いというのにレジがまた大渋滞で結局何も買えずじまい。いやーホンット、この日はマジで混みまくっていましたわ。

とはいえ、4月から5月にかけての新型コロナによる営業自粛により、収益が通年のマイナス60%に落ち込み、経営難に立たされていた、ということですから、この混雑はむしろ願ったり叶ったりなんです。動物園が経営難になったら、動物たちはどうなってしまうんでしょう?オレの大好きなカピやマヌルはどうなってしまうんでしょう?彼らが伸び伸びと楽しく生きていくために、管理費のみならずスタッフの方たちにもしっかりお給料が払われなければならないし、しっかりお給料を貰ってしっかり動物たちを守り育てて欲しいんです。

オレは動物園で世界のいろんな動物たちに触れて、世界の多様さと自然の不思議と生命の豊潤さをしみじみと知ることが出来ました。マヌルの可愛らしさを愛でる時、同時に彼らが本来の生育地で自然の恵みに囲まれて生きている姿を想像してしまうんです。彼らの仲間が、遠い異国の地で今日もまた生の営みを行っているのだな、カシカシしたりニャアニャア言ったりしながら生きているのだな、そんな世界があるのだな、と思ってしまうんです。そして、世界はそんな生き物たちで満たされているんだな、と思う事が出来るんです。オレは環境問題がどうとかしかつめらしい事は考えたりしませんが、生き物がその生きる場所で伸び伸びと生きていける、そんな世界であることが、なによりも正しく素晴らしい事だろうな、という事ぐらいはよく考えます。

今現在、「那須どうぶつ王国応援プロジェクト」というクラウドファンディングが行われているんですよ。誰もが動物に興味があるわけでもないし、特に支援なんてしなくとも構いませんが、「今動物園というのはこれだけ大変で、そしてこんなことをやってるんだあ」ということだけは知っておいてもらうと嬉しいです(それにしても開始20日で2700万円も集めているとか凄い。やっぱり動物を大事に思っている方が多いんだなあ)。

とまあ固い話はここまでということで。閉園時間も近くなってきたので、帰りの渋滞を見越してちょっと早めに動物園を後にしたオレと相方さん一行。「そういや結局ご飯食べられなかったなあ」「腹減った!」「そういやこんな田舎道って道端に忽然とラーメン屋が現れたりするんだよね」「……あ、あったよ?」「寄ってく?」「寄ってく寄ってく!」という会話の後に道路沿いのラーメン屋に吸い込まれて行きました。

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注文したのは味噌ラーメン。「手打ち麺」がウリでした。しかしお店を出てから見かけるラーメン屋がどれも「手打ち麺」をアピールしてて、『栃木のラーメン屋は手打ち麺をアイデンティティとしているのか!?」と思ってしまいました。

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古民家風のお店で良い風情でしたよ。

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お腹もくちくなり、後は新幹線駅を目指すだけです。ちょっと渋滞もありましたが、時間には十分間に合い、駅中のお店でお土産を買って那須塩原にお別れしました。

東京に着き地元に戻ると、今日の打ち上げ会ということになりました。当然ビール屋ですよ!例によってしこたまビール飲んで帰ってきました!これはロックバンド「モーターヘッド」にちなんで作られたビール、その名も「モーターヘッド・ロードクルー」!

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「また遊びにくればいいニャー」

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(おしまい)

映画『TENET テネット』は小難しいことは考えずにシンプルなSF諜報活劇として観るといいのだと思う

■TENET テネット (監督:クリストファー・ノーラン 2010年アメリカ映画)

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オレはクリストファー・ノーラン監督作が少々苦手である。殆どの作品で絶賛される監督ではあるが、オレ自身は好き嫌いが激しい。全部観ているわけではないが、一番好きなのは『ダークナイト』だな。ただし後半は駄目だ。『インセプション』は初見時嫌いだったが、二回目に観て好きになった。他の「バットマン」シリーズ、あと『ダンケルク』はまあまあ。『インターステラー』はおもんない映画だったな。総じて滅茶苦茶評価している監督というわけではない。

そんなオレなのでノーラン最新作『TENET テネット(以下:テネット)』はたいした期待もせず半ば惰性で観に行ったのではあるが、これがなんと、相当に楽しめた作品だったのだ。順位で言うなら『ダークナイト』の次くらい、『インセプション』や『ダンケルク』よりも面白かったと言っていい程だ。しかしこれは『テネット』が高い完成度を誇る映画だからという事ではない。むしろ、『インセプション』の残り滓のアイディアで作ったような作品だし、『インターステラー』の半分の構成力も無い作品でもあると思う。

ではなぜそんな作品が楽しめたのか?それは、この作品が、「思い付きと勢いだけで作ったような」「結構インチキな映画」だからである。しかしそれは逆に言えば、「こんなアイディア(スパイ映画+SF時間逆行)の映画を作りたい!ボクは作りたいんだああ!」という熱意のもと、理屈をほとんど無視し、しかし持てる技量はたっぷり振り絞り、その勢いでもって作り上げられた映画の様に感じたからだ。すなわち、小難しそうに見えて結構おバカな作品であり(意味ありげに見えてフィルム逆回ししただけの映像や後ろ向きに走る演者の姿とか実は可笑しいことこの上ない)、その適度なユルさが心地よかったのである。バカなことを生真面目にやっている部分が好印象だったのだ。

映画『テネット』はある秘密諜報部員が「時間逆行テクノロジー」を使って未来からやって来た侵略者と対峙する、というSFスパイ活劇である。説明するならそれだけのシンプルな話である。しかし観た人の多くは「難解であり一回観ただけでは訳が分からない」と言う。それはそもそも「時間逆行」というギミックの扱い方が複雑で分かり難く、説明に乏しいという部分にあると思う。しかし理解の仕方としては整合感など求めず、「時々時間が遡りますよー」程度のザツさでいいのではないかと思う。

この作品でも従来のノーラン作品の様に「ややこしい小理屈(設定)」はこねまわされているが、今作においてはそれが殆どザルであり、量子論がどうとか物理学がどうとか言う以前に設定が破綻しまくっている。そもそも台詞の中で「時間パラドクスは無視」みたいなことすら言っている(世界がもしあのクライマックスで消滅するなら未来からの侵略ってどういうことだ?それと逆行・巡行した同一人物が触れ合うと対消滅を起こすと説明していたのに「あの場面」はなんなんだ?)。

しかし、そんなことはどうでもいいのだ。要は「嘘八百並べてでもこのアイディア(スパイ映画+SF時間逆行)の映像化は面白いはず」という監督の直感と熱気が先行する作品であるという事だ。そして確かに、映像面で見るならこの作品はあちこちで変なことをやっていて面白いし、「時間逆行」のギミックにより生成されるパズル的な物語の在り方は十分に楽しむことが出来た。この作品においては「考えるな、感じろ!」という言葉が取り沙汰されるが、「よくわかんないけどなんだか面白い事やってんなあ」という部分でオレは楽しめたという事なのだ。

ノーラン監督は器用に見えて実は不器用だし、賢いように見えて頑固で偏屈だし、人間描写はベタで平凡だが、そういったバイアスを自ら認知したうえでそれを跳ね返す形でこれまで傑作とされる作品を作ってきたのだと思う。しかしそれらは小理屈で煙に巻いているだけのように思えて、オレには鼻についていた部分があった。ただ今作『テネット』は本質にある「映画大好き映画バカ」の顔を覗かせ、妙なプライド高さ(高尚ぶり)が後退したように思う。そこがよかった。もしもう一度観る機会があったら今度は「バカやってんなあ」と笑いながら観てみたいな。 

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最近聴いたエレクトリック・ミュージックその他

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Duval Timothy

■Help / Duval Timothy

Help [日本限定CD]

Help [日本限定CD]

  • アーティスト:Duval Timothy
  • 発売日: 2020/08/07
  • メディア: CD
 

Duval TimothyはUK/シエラレオネを拠点に活動するマルチアーティストだという。この『Help』は彼の4枚目のアルバムとなるが、一聴してその繊細なピアノワークと電子音楽との見事な融合振りに聴き入ってしまった。ジャンル的にはエレクトリック・コンテンポラリー・ポップということになるのだろうか。全体的にメランコリックであり、殆どにおいてナイーブなピアノ演奏がリードし、幾つかの曲でたおやかなヴォーカルが聴こえる。そして時折巧みなサウンドコラージュが顔を覗かせ、ごく稀に力強いエレキギターの音が響く。技巧的でありつつ心に訴え掛けようとするソウルを感じる。非常にユニークなアーチスト精神によって製作された好アルバムだということが出来るだろう。

■Wrong Way Up [Expanded Edition] / Eno/Cale

Wrong Way Up (Expanded Edition) (Deluxe)

Wrong Way Up (Expanded Edition) (Deluxe)

 

ブライアン・イーノジョン・ケールがコラボした1990年のアルバム『Wrong Way Up』に2曲のボーナス・トラックを加えてリイシュー。イーノといえばアンビエント作品を連想してしまうが、この作品では初期イーノを髣髴させる稚気溢れるヴォーカル・ポップ・サウンドを聴かせ、豊かで楽しいアルバムとなっている。イーノのヴォーカルって意外といいんだ(ジョン・ケールの歌う曲もあり)。国内盤は高品質UHQCD仕様になっており、これがオレの安物ステレオでも驚くほどにイイ音で響いてくれてびっくりした。

■Spinner [Expanded Edition] / Eno/Wobble

ブライアン・イーノとパブリック・イメージ・リミテッドのベーシストとして知られるジャー・ウォブルがコラボした1995年のアルバム『Spinner』に2曲のボーナス・トラックを加えてリイシュー。国内盤は高品質UHQCD仕様。もともとイーノ製作による故デレク・ジャーマンの映画作品『グリッターバグ/デレク・ジャーマン1970-1986』のサントラをウォブルが再構築したアルバムとなっている。さらにCANのヤキ・リーベツァイトがドラムで参加。イーノの静謐なアンビエントをウォブルの重いベースが歪ませリーベツァイトのドラムでドライブが掛けられる、ユニークな作品となっている。

 

■Soest Live / Kraftwerk

Soest Live

Soest Live

  • アーティスト:Kraftwerk
  • 発売日: 2020/08/21
  • メディア: CD
 

クラフトワーク、デビュー直後の1970年にTV収録されたライヴ音源をリマスターしたアルバム。アコースティック楽器と特殊なオルガンを使った演奏はシンセサイザー中心の現在のセットとはまるで異なり、いかにクラウト・ロックした音。マニア向け。

■Music For 18 Musicians (Steve Reich) / Erik Hall

Music For 18 Musicians (Steve Reich)

Music For 18 Musicians (Steve Reich)

  • アーティスト:Erik Hall
  • 発売日: 2020/06/05
  • メディア: LP Record
 

現代音楽家スティーブ・ライヒが1976年に作曲した『18人の音楽家のための音楽』をミシガンの音楽家Erik Hallが再構築した作品。「18人の音楽家のための音楽」をたった一人でオーバーダブ録音したところがミソ。54分間にわたってひたすらミニマルにループしながらじわじわと位相を変えてゆく音世界は法悦の極地。聴いていると、【永遠】が見えてきそうになる。

Air Texture Volume VI / Steffi/Martyn/VariousNYを拠点とするAir Textureレーベルのコンピレーション第6弾。 今作ではDisc1を女性テックハウス・プロデューサーSteffiが、Disc2をダブステップ/テクノ・プロデューサーMartynが担当。全体的にアンビエント風味の楽曲が並ぶが、Disc1:Steffi編では中盤から硬質なテクノ・チューンが顔を覗かせ、またDisc:2:Martyn編ではデトロイト・テクノ愛も伺える驚くべき選曲となっている。

■Seeing Through Sound: Pentimento Volume Two / Jon Hassell

現代音楽/ワールドミュージック的アプローチによるトランペット演奏でブライアン・イーノデヴィッド・バーンらに支持されるJon Hassell、2019年にリリースされた『Seeing Through Sound』の続編。今作でも油彩の如きサウンドコラージュにより構築された幽玄な音世界を創出している。

■Infinite Moment / The Field

INFINITE MOMENT

INFINITE MOMENT

  • アーティスト:THE FIELD
  • 発売日: 2018/09/21
  • メディア: CD
 

Kompaktレーベルの人気アーチストThe Fieldによる6枚目のアルバム。永遠にループしながら天の高みに上ってゆくような音はそのままに、今作では時折影が差すように暗さやメランコリイの風合いが持ち込まれる。それにしてもこのユニット、毎回アルバムジャケットが似ていてどれ買ったんだか分かんなくなる。

 

■Pop Ambient 2020 / Various Artists

Pop Ambient 2020

Pop Ambient 2020

  • アーティスト:Various Artists
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: CD
 

ケルンの人気テクノ・レーベルKompaktの定番コンピレーション「Pop Ambient」の20作目。 「Pop Ambient」といいつつ多大にドローンな音で占められてるな。

■The Weight / Weval

WEIGHT

WEIGHT

  • アーティスト:WEVAL
  • 発売日: 2019/03/19
  • メディア: CD
 

アムステルダムのデュオ、Wevalによる2年ぶりのセカンド・アルバム。気だるくセンチメンタルなエレクトロニック・ポップ。