きゃみ

「男性がキャミソールのことをキャミと云うのは抵抗がある」と言っていた方がいたが、そういえば今でもワンピースを「わんぴ」などと言ったりするのだろうか。オレの妹がよく言ってたんだがな。これも男が使うとナニな言葉ではあるよな。

例えば暗く狭い部屋の中で力士のような巨躯の男が二人脂汗を流しながら額を突き合わせ「キャミが…」「わんぴが…」などと会話していたら恐いものがあるよな。

しかしそのようなシチュエーションであればどんな会話も恐い会話になり得るとも言えるな。薄暗い裸電球の下、蒸し暑く黴臭い物置のような場所で、雑巾のような体臭を放つ体重200キロはあろうかという半裸の巨デブが二人、眉間に皺を寄せて「ズゴックの太股…」「ゲルググの二の腕…」「アッガイのうなじ…」「リックドムのくるぶし…」などとハァハァ言いながら汗だくになって会話しているのである。そりゃあ恐いって。

で、一人が「やっぱりさあ、グフにはキャミだよねえ…」とか法悦の表情を浮かべて言うんだよ。でさ、その一言がそれまでの空気を変えるんだね。もう一人の男が一瞬間をおいて言う。「はあ?ナニ?お宅ナニ言ってんの?グフっつったらワンピだろうがよ」。すると最初の男がふっ、と鼻から馬鹿にしたように息を吐き出して答える。「おいおい、マジかよおい。キャミしか有得ないだろうがよ、おい。だってグフだぜ?グフなんだぜ?」そしてここらでもう「第二次スーパーロボットきゃみ・わんぴ大戦」のバトルの火蓋は落とされているんだよ。第一次はあったのかよ、とか聞かないでね。

これを映画化してみるのはどうだ。何所とも知れぬ廃墟化した部屋。それまで気を失っていた二人の巨デブが目を覚ます。一人はキャミソールを着せられていた。もう一人はワンピース姿。二人はそれぞれ部屋の端と端に鎖で繫がれている。そして、部屋の真ん中には、血塗れの男がうつ伏せになって息絶えていた。手にはグフのガンプラを握って。自分達の身に何が起こっているのか全く判らず、怯え混乱した顔で辺りを見回す二人。そして、突然部屋に取り付けられていたスピーカーから割れた男の声が響く。「さあ、グフにはキャミかね?ワンピかね?」

…って「SAW」じゃねーかよ。だいたい何でガンプラなんだよおい。(オチなし)