小説のホントの作者は俺なんだ!?~映画『Bareilly Ki Barfi』

■Bareilly Ki Barfi (監督:アシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー 2017年インド映画)

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訳あって友人の名前と顔写真を借りて小説を出版した青年が、小説ファンの女の子に「作者に会いたい!」と迫られ大弱り!というインドで今年公開されたロマンチック・コメディです。今回は最後までネタバレして書きますので要注意。

主人公の名はビッティー(クリティ・サノーン)、最近読んだ小説『バレーリーのバルフィ』に感銘を受けた彼女は「作者に会いたい!」と熱望し印刷所にやってきます。印刷所の青年チラーグ(アーユシュマーン・クラーナー)は「俺知ってるよ!手紙出してみれば?」とビッティーに勧めます。しかし実はこのチラーグが本の作者でした。彼はややこしい事情から実名と写真を著書に載せられず、代わりに友人プリータム(ラージクマール・ラーオ)を替え玉にしていたのです。とはいえビッティーの作者への想いは膨らむ一方で、遂にチラーグはプリータムを呼び寄せ「作者を演じてくれ!」と無理強いするのですが……。

とまあこんな話なんですが、何しろ青年チラーグ、最初から窮地に陥るに決まってる嘘を付き過ぎです。「作者に会いたい」とやってきた女性があんな美人ちゃんなら惚れちゃうに決まってるじゃないですか!?案の定チラーグはビッティーにさっさと惚れちゃうんですが、作者目当てにやってきた女の子を相手に(実際の作者だったとはいえ)ちゃっかり取り入って仲良くなっちゃうとか虫が良すぎませんか。そんな彼女を相手にどれだけ「作者は別の人間だよ!」と嘘を付き通せると思ったんでしょうか。というか、さっさと言っちまったほうがことがスムーズに進むに決まってるじゃ無いですか。それをやらないってのは最初から騙し通せると思ってたからなんじゃないですかね。こいつ、惚れてるとかいいながら誠意無さ過ぎですよね

で、追いつめられたチラーグは替え玉だったプリータムを呼び寄せ「ファンの前で作者の振りしろやゴルァ!」と強要します。そう、お願いではなく強要です。プリータムは気弱な青年といった性格設定なんですが、彼が気弱なのをいいことに殆どイジメに近い無理強いをするんです。しかも、ビッティーが嫌うようにってプリータムにマッチョでいけ好かない男の演技をやらせるんですね。そうすれば彼女が自分に振り向くと思ったんでしょうね!いやーチラーグなんかヤナ奴だわーこいつ単なる自己中だわーイジメとかサイテーだわーさっさとホントのことバレてギタギタにされりゃあいいのに!と思いつつ映画のストーリーを追っていくオレです。

ところが!いけ好かない男を演じてる筈のプリータムに、ビッティーが次第に心を惹かれてゆくんですね!大慌てなのはチラーグです!ってか、チラーグ、ざまあ!!プリータムもプリータムで、いじめっ子なプリータムの鼻をあかすことができたばかりか、美人ちゃんのビッティーといつも仲良しルンルンで楽しい毎日を送ってます!いいぞがんばれ苛められっ子!オレがついてるぞ!おまけにプリータムとビッティーの結婚まで決まっちゃうもんですからチラーグは涙目!そんな悲惨なチラーグの姿を見てオレももはやメシウマ状態です!!

【ここからラストに触れますのでご注意】

 

 

 

ところがですよ!その結婚式のその日に、なんとビッティーがチラーグに「あなたが本当の作者だって知ってたからあなたの愛を受け入れます」とかなんとか言っちゃってるんですよ!?どうやらプリータムが本当の事をビッティーに教えちゃったみたいなんですね。いやあ、プリータムいい人過ぎ……なんでそこまで義理堅いの、ってか何の義理があるの?まあ彼もずっと作者のフリし続けるわけにもいかなかったけどさ。でも正直に話したプリータムのほうが誠意あるよね。そしてラストはチラーグとビッティーが結ばれてそれを横から微笑みながら見守るプリータムの姿でお終いですよ。おいおいおいおい、惚れてた女に嘘を付き通して友人には暴力的に替え玉強要してた男が最後にハッピーエンドとかこの話どうなってんの?

おおおおうい!責任者出てこーーーい!!!


‘Bareilly Ki Barfi’ Official Trailer | Kriti Sanon | Ayushmann Khurrana | Rajkummar Rao

 

最近聴いたエレクトロニック・ミュージック

■Bicep / Bicep

Bicep

Bicep

 

ブログで知り合ったというユニークな経歴を持つマット・マクブライアーとアンディ・ファーガソンによるDJデュオ、Bicepの1stアルバム。美しくメランコリックなメロディと同時にダンサンブルでタフなビートも併せ持ち、「よく分かってらっしゃる!」と言いたくなるような高精度のダンスミュ―ジックアルバムとして完成している。今回の強力お勧め盤。 《試聴》

■7 / FP Oner aka Fred P

7

7

 

USアンダーグラウンド・ディープハウスのプロデューサー、Fred PによるプロジェクトFP-Onerの3枚目となる作品。美しいメロディ、鉄板の4つ打ちリズム、環境音を使った映像的なSE、そして時折挟まれる日本語女性ヴォイス、これらが醸し出す眩惑的かつ瞑想的な音世界は聴くほどに法悦の高みへ導いてくれる。今回の強力お勧め盤その2! 《試聴》

■Love What Survives / Mount Kimbie

Love What Survives

Love What Survives

 

Mount Kimbieの4年振り、3枚目のフルアルバム。これまでのキャリアを集大成したようなバラエティ豊かな内容のベースミュージック。James Blakeのボーカル曲、Micachuのラップもフィーチャーされている。 《試聴》

■The Album / SW.

The Album

The Album

 

ジャーマン・アンダーグラウンドハウス・ユニット、SW.のリイシュー・アルバム。ブレイクビーツアンビエントアシッド・ジャズ、ジャズ・グルーヴなど、さまざまなジャンルを行き来する音はどこかつかみ所が無くミステリアスな印象。 《試聴》

■8R1CK C17Y / Tenderlonious, Dennis Ayler

8R1CK C17Y

8R1CK C17Y

 

 UKのビートメイカーTenderlonious, Dennis Aylerによるミニアルバム。ジャジーなサンプリングとスペイシーなキーボードワークでスタイリッシュにキメた1枚。 《試聴》

■All Good Things / Elwd

All Good Things

All Good Things

 

UKのビートメイカーELWDによる初アルバム。ローファイなサンプリング音&ボーカルがうねうねと揺らぎ、まるで水の中をゆったりとたゆたっているかのようなダウンテンポ/チルビーツ・アルバム。 《試聴》

■Fabriclive 93: Daphni / Daphni

Fabriclive 93

Fabriclive 93

 

Fabricliveの93番はカナダ出身のアーティスト、ダン・スナイスの別名義ユニットDaphni。殆どの曲が彼の新作エクスクルーシヴ・トラックを使用しており、より没入感の強いエレクトロニック・ミュージックMixとなっている。 《試聴》

■The Best Of Disco Spectrum / Joey Negro/Sean P

JOEY NEGRO AND SEAN P PRESENT THE BEST OF DISCO SPECTRUM [3LP] [12 inch Analog]

JOEY NEGRO AND SEAN P PRESENT THE BEST OF DISCO SPECTRUM [3LP] [12 inch Analog]

 

Joey Negroによるレア・ディスコ・コンピレーション・シリーズ「Disco Spectrum」 のベスト盤。ノンミックスで2枚組。 《試聴》

■Stil Vor Talent Berlin: Alexanderplatz / Various

Stil Vor Talent Berlin: Alexanderplatz

Stil Vor Talent Berlin: Alexanderplatz

 

 ドイツの人気レーベルStil Vor Talentの最新コンピレーション。ジャーマン・プログレッシヴ・ハウスってな内容。 《試聴》

■IV / Badbadnotgood

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 以前聴いた彼らの『Late Night Tales』があんまりにもよかったものだから、今度はオリジナルアルバムを聴いてみようと思い2016年リリースの最新アルバムを購入。するとこれがまた緩急取り混ぜた実に完成度の高いジャズ・ファンク・アルバムで、同時にポップでもありエレクトロニカの要素もありこれは相当な実力派だなと確認できました。これいいよ。 《試聴》

暴力と不安に満ち溢れた"悪魔祓い"ホラー・コミック『アウトキャスト』

アウトキャスト (1) (2) / ロバート・カークマン (著), ポール・アザセタ (イラスト)

アウトキャスト 1 (GRAFFICA NOVELS) アウトキャスト 2

幼少期から抱えているある“トラウマ"のため、故郷で人目を避けて暮らしている青年カイル・バーンズ。ある日、街で“悪霊に取り憑かれた少年"の噂を耳にしたカイルは、悪魔祓いとしても名高いアンダーソン牧師のもとを訪ね、自分の過去とも深い関わりのある悪霊の存在と対峙していくことになる。自身の運命のみならず、世界の命運をも左右する深遠なる存在の正体は!?カイルが導かれるその先にある、驚愕の真実とは!?

人気ドラマ『ウォーキング・デッド』の原作者、ロバート・カークマンによる最新コミックは"悪魔憑き"がテーマだという。

「悪魔憑きなあ。神と悪魔の戦いでエクソシストキリスト教ってことですか。まあ、なんか、古臭いよなあ。今更って感じだよなあ」……そんなことを思いつつ、なんとはなしに本書を手に取ってみた。

案の定、冒頭から"悪魔憑き"の少年を、神父がお祓いしている。熾烈な攻防を経て、悪魔祓いされた少年の口からは悪魔と思しきモニョモニョした黒い"何か"が溢れ出し暗闇へと消えてゆく。「はいはい、そのまんまですねえ」想定通りの展開に若干白けながら読み進めたのだが……この物語、何かが違う。単なる"悪魔祓い"だけの物語ではない、暗く、不安に満ちた"何か"が進行している。

「何かが違う」と感じさせたその"何か"は、冒頭から描かれる奇妙に複雑な人間関係と、社会不適合者として生きる主人公青年の、いつも物憂く悲しげな態度だ。主人公の名はカイル。彼は"悪魔祓い"の能力を持つが、何故そんな能力があるのかは本人も分からない。そして彼は家庭内暴力を巡る二重の暗い過去を持っており、ひとつは母親の植物状態という形で、もうひとつは裁判所命令により愛する妻と娘から引き離されるという形で、彼の現在を苛んでいた。

「何かが違う」と感じた二つ目は物語全編を覆う暴力の影だ。主人公をはじめどの登場人物も、過去又は現在に何がしかの暴力の洗礼を受け、あるいは行使し、それにより肉体のみならず心も深く傷ついていることが描かれる。暴力により人間関係を引き裂かれ暴力により孤独と不安の中にいる。これにより物語全体が常に暗く寒々とした雰囲気に包まれ続ける。ここからは単にホラー作品であることの枠を超え、暴力に満ちた社会で生きざるを得ない人間の業すら感じることが出来る。

「何かが違う」と感じた三つ目は、読み進むうちに、実はこれは単純な"悪魔祓い"のは物語ではないらしいと気付かされることだ。冒頭から登場する神父は、キリスト教的な、いわゆる神との対立項としての"悪魔祓い"であるとミスリードさせる目的の存在だったことが分かってくるのだ。では……主人公カイルと神父が"祓っているモノ"は何なのか?二人を付け狙い、徹底的な暴力で応酬する"憑りつかれた者たち"は何者で、その目的は何なのか?さらに、主人公カイルだけがなぜ特殊な能力を持ち、"憑りつかれた者たち"に付け狙われるのか?

こうして様々な謎が散りばめられ、それが少しづつ明らかにされ、最初は在りがちな"悪魔祓い"の物語だと思わせていたものが次第に町一つを飲み込む異様な暴力の物語へと発展してゆくのである。まあジャンルや似た設定の映画の名を出せば「ああ」と思われる方もいるだろうからネタバレは避けるが、それでも十分に新鮮かつ冷え冷えとした不安を味合わせてくれる優れたコミックの登場だと言うことができるだろう。なお、実はこの作品、同タイトルでドラマ化しておりネトフリあたりで観られるので「コミック読むのもかったるい」という方はドラマのほうもどうぞ(とか言いつつ、オレはまだドラマ観て無いんだよねー)。

アウトキャスト 1 (GRAFFICA NOVELS)

アウトキャスト 1 (GRAFFICA NOVELS)

 
アウトキャスト 2

アウトキャスト 2

 

 

 

カピバラに会いにソレイユの丘へ

この間の休みの日には相方さんと二人、横須賀にある総合公園、ソレイユの丘に行ってきました。

このソレイユの丘、どんなふうに総合かというとキャンプ場や露天風呂、アスレチックフィールドに体験教室、お花畑に野菜畑、ボート池や動物広場まであるという公園なんですね。

HP:三浦半島の農と海の体験パーク | 長井海の手公園・ソレイユの丘

 

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「ソレイユの丘」はオレの住処から電車で2時間余りの場所にあり、電車乗り継ぎ京浜急行三崎口駅からさらにバスに乗った場所にあります。 お昼前に着いたんですが、中は家族連れでいっぱいでした。まあ、そういう施設なんでしょう。入園は無料ですが各種施設を使うときには料金が掛かる場合があります。

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そしてこの日のお目当てはもちろんカピバラです。

「ぬーーーん」

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カンガルーといっしょに飼われています。お昼時だったせいかだいたい寝ていた……。

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都合4頭のカピがおりました。

「眠いなあ」

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大きな池もあってカピ同士楽しく遊んでします。

「あおむけにザブン!」

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「お水入ろうか……入るまいか......水だけ飲んどくか……」

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動物のおやつ売り場にはペリカンが鎮座しており、まるで『ホビット』のドラゴン、スマウグのように睨みを利かしていました。

「クワーーーーーッ!!」

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 マーラーのドアップ。他にも兎や犬、馬や羊や亀も飼われていましたよ。

「クンカクンカ」

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バードショーも催されていました。翼を広げて飛ぶ鳥はやはり格好いいですね。平日1回、休日2回開催されているようです。

「バッサーッ」

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お昼は公園内のレストランでとりましたが、セルフサービスの呼び出し音声が延々大音量で響いてとてもじゃないけど落ち着かなかった……。

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公園の外れにある鐘的ななにか。もちろん鳴らしてきました。

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それにしてもびっくりしたのは売店に並べらていた海軍カレー。横須賀という場所柄なんでしょうが、海軍が艦隊となって攻めまくっておりました。

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この日は11月だというのにポカポカ陽気で日差しも強く、とても暑くてTシャツ一枚でも全然OKなぐらいの気温でしたよ。ダウンとか着て歩いてた人もいたけど大丈夫だったのか?

というわけでカピバラも公園も満喫し、3時過ぎに帰ろうとしたんですが、帰りのバスが渋滞で30分ぐらい待たされた……。 

(おしまい)

『マイティ・ソー バトルロイヤル』は銀河のアホアホ兄弟が主役だったッ!?

マイティ・ソー バトルロイヤル (監督:タイカ・ワイティティ 2017年アメリカ映画)

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マーベル・ヒーロー『マイティ・ソー』のシリーズ3作目『マイティ・ソー バトルロイヤル』でございます。

改めて紹介するまでもないと思いますがこの「ソー」、北欧神話の神「トール」を題に採り、神々の国アスガルドの王子ソーが様々な異世界で"鈍器のようなもの"通称ニョニョルン(……こんな名前だったっけ?)をぶん回しながら宇宙の平和のために戦っちゃうよっ!?というスーパーヒーロー作品なんですな。あ、これも書くまでもないことでしょうが例の「マーベル・シネマティック・ユニバース」の一環となっているキャラクターでありストーリーであるというわけです。

で、この3作目なんですが、「神々の国アスガルドラグナロクがやってきちゃうよ!?」というお話になっています。ラグナロクってぇのは北欧神話における終末の日のことでありまして、食べログとかオンザロックとはそれほど深い関係はありません。

ここで「上手い」と思ったのは描かれるのが「アスガルドの危機」であって「地球の危機」じゃないってことですね。どう上手いかというと、地球の危機だったらアベンジャーズのそううそたる皆様が大挙してやってきて解決しちゃうじゃないですか。でもこれはマイティ・ソーが主演の映画、彼が中心になって活躍するにはこの設定が最高に適しているじゃありませんか。

さてお話が始まりわくわくしながら観ていますと、なんだか「アレ?」と思わされてきます。なんかこー、ギャグが多いんです。「お前はデッドプールか?」と思っちゃうほどボケまくるし、弟でありかつての宿敵だったロキが登場すると今度は二人で掛け合い漫才なんですよ。

いやあ、それにしてもロキ、キャラ変わったなあ。昔は歌舞伎町の客引きみたいなテラテラした頭をしたギンギラギンのルサンチマン野郎だったのが、今作ではゲゲゲの鬼太郎ねずみ男並みのセコイ小悪党ですよ。おまけにソーに減らず口叩きながら華麗なずっこけを演じており、もう画面にロキが出て来るたびに「今度はどんなボケをかましてくれるのか」とワクワク感が止まらなくなってきます。

その後の展開もギャグとドタバタ、ボケとツッコミのオンパレードです。とある辺境の惑星でハルクと出会っちゃうソーですが、脳筋ソーと脳筋ハルク、脳筋同士の限りなく頭の悪いやりとりに観ているこちらの頭が「神々の黄昏」状態になっちゃうぐらいです。二人の出会う惑星のボスをジェフ・ゴールドブラムが演じてますが、惑星の統治者のくせに呉服問屋の2代目ボンボン程度にしか見えないのがまた限りなく悲しい……。

おまけに舞台となる惑星は50~60年代パルプSFにしか出て来なそうなひたすらキッチュで悪趣味なコテコテのスペースオペラ風味。「え、今観てる映画、『フラッシュ・ゴードン』じゃないよね?」と思っちゃったぐらい。音楽までレトロな80年代エレクトロポップ/デジロックの音色を響かせ(DEVOのマーク・マザーズボーが担当らしい)、この確信犯的な時代錯誤感が逆に清々しいと思わせてしまうほど愉快痛快なんですな。

こんな「スーパーヒーロー大喜利な世界観の中でたった一人怪気炎を上げているのが今回の宿敵、死の女神ヘラ。しかし最強&最凶の敵の筈である彼女がそもそもソーとロキの姉、という段階で既に出オチ確定しているばかりか、常にいちゃいちゃしまくってるソー、ロキ、ハルクの前では「ハブられて逆ギレしているあんまり関わりたくない人」にしか見えず、果てしなく浮きまくっているのが哀れ。それにしてもヘラ、戦闘形態の時のあの頭の角、重たくねえのかなあ……。

そう、今作『バトルロイヤル』、「アスガルドの危機!」だの「史上最恐の敵!」とかデカイ花火をぶちあげながら、実際やってることはひたすら馬鹿馬鹿しいドタバタと脳筋まみれのスペースオペラ展開で、にも関わらずそれが一周回った楽しさを感じさせてるんですよ。

これ、『ソー』の1作目でやってたら間違いなく叩かれてたでしょうが、これまでのシリーズ、そしてアベンジャーズでの、ソーというキャラの蓄積や立ち位置が完成されていればこその大いなる脱線ぶりだったのでしょう。アベンジャーズ絡みはシリアスになり過ぎてなんだかつまらなく思えてきたのですが、今回の『バトルロイヤル』を見るにつけ、「むしろスーパーヒーロー映画なんてこのぐらいの馬鹿馬鹿しさでいいんじゃない?」とすら思わされました。

というわけで『マイティ・ソー バトルロイヤル』改め『宇宙のアホアホ兄弟・ソーとロキの凸凹銀河旅行』の一席でありました! 


「マイティ・ソー バトルロイヤル」日本版本予告