化石を集める話、その他の話

また子供の頃の話。
オレの住んでいた近辺では、化石がよく採れた。ちょっとその辺を穿り返すと、二枚貝の化石がよく出てきた。調べたら、二枚貝は化石でも時代が新しいものらしかった。いつか、三葉虫やオーム貝やフズリナやウミユリの化石が採れないかな、とよく思っていた。さらに調べたら、地質的にオレの近辺ではそんな物は採れ無いらしい事が分かってがっかりした。古生物学の好きな変なガキだった。フズリナやウミユリって、その頃憶えた言葉なんだよ。自分で採った化石のコレクションがお気に入りの小学生!
また別の話。
住んでいたボロ家は海岸の側だった。家から道路一つ隔てれば、すぐ海だったのだ。あるとても天気の荒れた日、風は吹きすさび、雨は横殴りで、海は時化(しけ)まくっていた日。海の波が家の壁まで当たった。
また別の話。
そんな時化た日のあくる日などは、海岸にいろんな物が打ち上げられる。そんな海岸を歩いていたら、なにか奇妙でグロテスクな、肉の芽の塊みたいなものが転がっていた。ガキのオレは未確認動物、今で言うUMAか!?宇宙生物か!と恐れ戦いた。調べたら、それは、ホヤでした。
また別の話。
でも、緑色で半透明の、スライムみたいなものもよく打ち上げられていた。あれはクラゲだったんだろうか?今でも時々、あれは諸星大二郎の漫画にあった「生命進化の系統樹から外れた、生命ではない生命体」だったのではないか、と思ってみたりする。…クラゲだよね?
また別の話。
夜寝ていると、いつもいつも、毎日毎日、どこか遠くから「ボンボンボン…」と低い機械の断続音が聞えていた。布団の中で暗闇に目を凝らしながら、こんな夜遅くに、いったい何がどこでこんな音を出しているんだろう、と不思議な思いに囚われていた。TVアニメばかり見ていたから、どこかの国の巨大なロボットが、海の向こうからやってくる音なんだろうか、思っていた。真相は、海岸沿いに住んでいたから、遠く離れた場所の港に泊まる漁船のエンジン音が、海を伝わって聞えてきていたんだね。
また別の話。
冬にもなると、流氷がシベリアのほうから流れてきて、海いっぱいに氷原が続いた。それはもう、本当に、水平線を覆わんばかりだった。歩いて行けば、ロシアのどこかの島に辿り着きそうな位だった。ある日、そんな流氷を眺めていたら、遠く流氷の切れ目の水面を、何か黒く大きなものが上下しているのが見えた。生き物だろうか、鯨や、海蛇や、ネッシーのような大きな生き物なんだろうか、と思った。近所のおじさんがいつの間にか側に来て、オレと同じ物を見ていた。「なあ、ボク、(地元では子供を呼ぶ時には「ボク」と言った)あれは、生き物なんだろうか?」とそのおじさんが言った。「いや、ただの海の波ですよ。」とオレは答えた。

そしてまた、別の話。