あずみ2 Death or Love

1作目はしみじみと荒唐無稽な映画で、原作もマンガだから映画自体も漫画的な展開だけれども、その割り切りのよさが幸いして、いい具合のテンポとキャラクターのデフォルメと有り得ない派手さが映画を傑作に仕上げていたと思う。オダギリジョー扮する『美女丸』なんて最強の剣士のはずなのに単に基地外だしバカで、何やっても観客の失笑を買う最高のキャラクターだったな。何よりあずみ役の上戸彩がハマリ役で、あの甘くない表情が、刺客の非情さと内面に秘めた語る事のできない人間的要素の葛藤を全部説明していたし、さらに子供のあどけなさも持ち合わせていて、良い俳優だと思った。
で、この「2」だが、監督を北村龍平から金子修介に代え、ストーリーも原作の漫画から離れたオリジナルストーリーで製作されたのだが、ええと、…凡作に仕上がってました。
そもそも「Death or Love」とか訳の分からない副題からしてもう駄目だよな。恋愛的要素を盛り込みたかったらしいんだが、原作の主題から浮きまくってるんだよな。あずみは子供で女だが最高の殺戮機械で、そのマシンでしかない人間がどのように人間的なものを自分の中で対象化してゆくのか、というのがこの物語のテーマじゃないのかと思うのだけれど、今回のあずみは思い出に弱気になったり、かつて淡い思慕を抱いた少年に似た男との出会いに迷いが出たりするのだよな。そもそもそういったことを超越した所=鋼鉄の非人間さを持っているはずのあずみに、この展開は有り得ねえ、と思ったけどな。
で、このあずみと絡む野盗の連中ってのが、なんであずみと一緒に戦うのか根拠が希薄なのよ。要するに「いい女=あずみに取り巻いてスケベ根性を満たしたいチンピラが格好付けてあずみを守ろうとして勝手に命を落としてゆく」としか見えないの。さらに、あずみはもともと強いから、こんなチンピラどもの助けなんてハナかいらないのよ。だから存在理由すらない連中なのよ。さらに、単に屁のつっかえ程度の野盗のこいつらが、なぜか訓練されたプロの武装集団と戦って勝っちゃう事自体、嘘だろう、と思うし、逆に、あっさり最初に全滅させたほうが物語の非情さを浮きだたせてよかったと思うし、その中に一人だけ「昔の仲間と似た少年」を生かしておいて絡ませるなら、まだ納得できたかも。
敵役も思ったより平凡で、化け物っぽいキャラは成功しているとは思うが、1作目の美女丸のような突き抜けた狂気を感じさせるキャラはいなかったのが残念。何より、あずみは剣の達人なのだから、やはりボスキャラには剣豪的なキャラを配するのがセオリーなんじゃないのか?それと高島礼子の女忍者、まるで強そうに見えないんだけど。キャラの設定がそもそも間違ってるような気がするしな。裏で糸を引く女忍者なんだから、鎧着て先頭で戦っちゃ駄目だろ。
あずみの今回の戦いも工夫なさ過ぎ。刺客のクセして大きい道のど真ん中をぞろぞろ歩いたりとかな。敵陣へは絶対正面突破。たしかに100人斬りとかいうけれど、これじゃあターミネーターだよ。暗殺者なんだから、もう少しひっそりと行動してくれよ。
全体として、クサイ台詞、クサイ演出のオンパレードで、死んだり死なれたりする度にいちいち絶叫してみたり、今時流行らない頭の悪い演出がいちいち映画を白けさせる。いらないカット、悠長なシーン、説明的な台詞、シチュエーション多すぎ。1作目のハチャメチャだが迷いの無い演出を全く踏襲していない。監督の金子修介はもう駄目野郎なのかも知れない。情緒的であることが感動を生む、と未だに思ってるんだろうか。
しかし監督も脚本も駄目なのに上戸彩はまたしてもここで健闘しており、彼女一人だけ駄目な脚本の台詞を読んでも臭くならないのである。多分この映画で、この物語を把握していたのは上戸彩ただ一人だったんじゃないかと思う。インタビューでも「脚本を読んだ時、1作目とあずみのキャラクターが変わっていて戸惑った」と言っていて、この子って俳優としてのセンスのある子なんじゃないかなあ、と思った。対して勿体無かったのが栗山千秋で、オレ的には嫌いじゃないんだが、顔立ちが綺麗過ぎてこの物語世界では浮いているような気がした。