ヱヴァ新作『破』はいろいろ破壊されてて楽しい展開だった!

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 (監督:庵野秀明(総監督)、摩砂雪鶴巻和哉 2009年日本映画)

■オレと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

ヱヴァンゲリヲン新劇場版の1作目、『序』が製作発表された時は「まだエヴァで金儲けする気なのかよ」と思い、実はそれほど食指が動かなかったのである。まあこちとらTV版も旧映画版も散々観尽して、DVDボックスセットまで買った身だから、それなりにエヴァンゲリオンというアニメ作品には愛着もあったのだが、とりあえず自分の中ではあれはあれで終わったことになっていたのだ。だからなにを今更、という気もしないではなかったものの、かつてファンだった身の悲しさ、とりあえず怖いもの観たさ半分猜疑心半分で観に行ったのである。

すると、これが結構良かった。頑張ったじゃん、ぐらいは思った。TV版公開当事よりはCG技術も発達し、あの時やりたかった事を今やっと出来たのだろう、いわゆる"デラックス版・エヴァ"と呼んでいいぐらいには出来がよかった。あと、商売はもちろんあるのだろうけれども、それだけには終わらない魂こもった造りにはなっていた。庵野という監督はこういう部分では日和ったり妥協したりはしないということも十分に伝わった。だけれども、登場人物たちが1995年のTV公開時と同じエモーションなりパッションで動いている様はやはり食傷したし白けたりもした。だいたい観ているこっちはすっかりいい歳のクソジジイである。少年少女のトラウマだのコンプレックスだのジレンマだのに付き合うにはトウが立ちすぎているのだ。

■オレと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

そう思いつつ、『序』のラストに現れた『破』の予告編。こ、これはなんなんだあ〜〜ッ!?見知ったはずのTV版とはかけ離れた映像の数々がそこに展開されているではないか。つまり『序』は結局エピローグに過ぎなかったのである。新劇場版の本質は、この『破』から語られることになるのだ。それがやっと分かり、実に楽しみに待っていた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』だったのである。しかも劇場公開され、各ブログでは絶賛の嵐、なんか盛り上がりがすごいじゃないですか(←正しくない言葉の使い方の例)

というわけで『破』の話になるのだが、ストーリーそのものについてはあれこれ言うのはよそう。やはり観てのお楽しみ、と言ったほうがいいだろう。確かに、重要なシーンで流される感傷的な歌には辟易したし、TV版から引き継いだ主要登場人物たちのトラウマだのコンプレックスだのジレンマだのには今更感がつきまとっていて、そこん所は観ていてっじれったくなってくるのだが、それが中盤あたりから少しづつお互いが心を繋ぎ合わそうと努力する空気になってくる部分は、これはやはり新劇場版ならではの展開なのではないか。特にあのバカシンジが、男を見せるのだ!もう旧劇場版の「こんにゃく野郎」なんかではないのだ!これは多分TV放送版製作時の監督・庵野の心情が、年代を経て大きく様変わりしたからではないのか。ってか、きっついスケジュールでヘロヘロになって作ってた当時と環境が変わったということなのかもしれないけど。

■オレと真希波・マリ・イラストリアス

そしてこの『破』で最も旧作の雰囲気をいい意味で壊してくれているのが、新キャラクター、真希波・マリ・イラストリアスの登場である。最初は「なんなんだこいつ?」ぐらいに思ってたのだが、物語に絡んでくるにつれ、ウダウダグズグズキリキリと精神衰弱しまくっている旧作からのキャラに比べ、格段に行動力実行力決断力の強力な、《迷いの無い》キャラとして描かれるのである。この少女の内面などは大して描かれないし、そもそも内面などと言うものが存在するのかどうかすらも分からないが、しかし、内面が内面が、過去が過去が、とブツブツ呻いていた他の登場人物なんかよりも、圧倒的に"今、この時"を生きることを謳歌しているキャラなのではないか。そして彼女の生きることとは"戦うこと"であり、その戦うことに何一つ理由を必要としていないのだ。即ち彼女は、生きることにぐだぐだ理屈なんかつけないのだ。これはエヴァ世界には存在しなかったキャラだ。

言ってしまえば実に漫画的であり分かりやすく単純なキャラ、アニメアニメしたキャラなんだということも出来るのかもしれないが、物語の中で既に性格の確立してしまった他のキャラは、だいたい落し所が予想できそうではあるのに、この真希波・マリ・イラストリアスだけはどこまでも未知数であり謎もまた多いのである。この彼女の登場こそが『破』の『破』たる所以ではないのか。この『破』においてシンジもレイもアスカもあんなことやこんなことになっているのだが、次回作『急』…ならぬ『Q*1』ではいったいどんな活躍をするのか、そして既存キャラとどう関わってゆくのかが一番楽しみなのが彼女なのだ。オレなんかこの真希波のフィギュアが欲しくてヤングエース買っちゃったぐらいである。他のキャラはもうどうでもいい。真希波・マリ・イラストリアスたんが大活躍する予定(?)である次回作が待ち遠しい。

■これが真希波・マリ・イラストリアスたんだ!赤いメガネがラブリー…ッ!


*1:ってかこの新劇場版、序・破・急の3部作だって最初聞いてたけどいつから4部作になったんだ?と思って調べたら次回作『Q』と最期のもう1作が同時上映っていう予定らしいのね。ふーん…。