リー・ペリー・アルバムの落ち穂拾いをやっていた

Dry Acid 1968

1年近くリー・ペリーの作品をしつこく収集してきたのだが、重要作というのはもう殆どコレクションしてしまい、あとは目に付いた作品を評価は気にせず行き当たりばったりに購入するようになってきた。まあ落ち穂拾いである。ただしリー・ペリー作品なのでつまらない事はないものの、これまで購入したコンピ等の曲と相当ダブるようになってきたことは否めない。しかしダブリを気にしていたらリー・ペリー作品は収集できないのだ!

併せて、これまではいわゆる”ブラックアーク期”を中心としてコレクションしてきたのだが、この間コンプリートした「Complete UK Upsetters Singles Collection」4Setで初期作品の面白さに気付き、そういったスカやロックステディの聴くことのできる初期作を集めるようになった。

とまあそんな訳で落ち穂拾い的に集めたリー・ペリー作品をここで紹介してみよう。

 

■Dry Acid 1968 / Lee Perry

Dry Acid 1968

Dry Acid 1968

 

 1968~1969年にリー・ペリーがプロデュースした初期曲を集めたアルバム。全26曲で65分!ペリーの初期作コンピとして悪くない。


■Eastwood Rides Again / Upsetters

Eastwood Rides Again

Eastwood Rides Again

 

1970年にジャマイカにおいて既発シングルとアルバムオリジナル曲をまとめてリリースした初期作。悪くない。


■Scratch the Upsetter Again / Upsetters

Scratch the Upsetter Again

Scratch the Upsetter Again

 

これまた1970年リリースの初期作、さらに例によってオルガンフィーチャー曲多し。この頃のアルバムはどれも良作。

 

■Upsetter Shop 1 / Lee 'Scratch' Perry

Upsetter Shop 1

Upsetter Shop 1

 

1997年にHeartbeat RecordsによってリリースされたのBlack ArkスタジオとRandy'sで録音された曲のダブをまとめたもの。


■Upsetter Shop 2: 1969-73 / Lee 'Scratch' Perry

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リー・ペリーのスカ/ロックステディ時代の古典的楽曲を集めたコンピ。ダブは無し。


■The Upsetter Collection / Upsetters

The Upsetter Collection

The Upsetter Collection

割とよく中古で見かけるコンピで内容は遜色無いんだが、なにしろ今購入したら殆どがダブリ音源だった!


■The Good, The Bad And The Upsetters: Jamaican Edition / The Upsetters

初期作。実は『The Good, The Bad And The Upsetters』 という作品は別にあり、しかもそれはUKで製作されたリー・ペリー不参加のアップセッターズ作品なのだが、こちらはリー・ペリーがプロデュースした内容は別のジャマイカン・エディションということになる。ややこしい。でも曲はいいよ!


■Give Me Power / Lee Perry

Give Me Power

Give Me Power

 

70~73年にリリースされたペリー音源をコンパイルし88年にリリースされたアルバム。特筆すべきはこれがレゲエ研究家のスティーブ・バロウによってコンパイルされたものであるということ。よって内容の濃い初期ペリー作を体験できるよ。

 

■Beat Down Babylon / Junior Byles

Beat Down Babylon

Beat Down Babylon

 

1972年にリリースされたリー・ペリー・プロデュースによるJunior Bylesの名盤の誉れ高いアルバム。 オリジナルアルバムはレア盤となり高値で取引されているが、こちらボーナス曲を多数収録したリイシューCDのほうが手に入りやすい。


■The Upsetter / Lee 'Scratch' Perry

The Upsetter / Scratch The Upsetter Again: 2 On 1 Original Albums Edition

The Upsetter / Scratch The Upsetter Again: 2 On 1 Original Albums Edition

 

緑溢れる森の木陰で二人の女性に挟まれるペリーさん、というムフフなアルバムジャケットのこの作品、実はなんとアップセッターズのファースト・オリジナル・アルバムとなる。こんなファーストから才気に満ちたカッコいいルードボーイサウンドを展開していたペリー&アップセッターズ、やはり別格であった。


■Chapter 2 of "Words" Words of My Mouth / Lee 'Scratch' Perry

Chapter 2 of

Chapter 2 of "Words"

 

リー・ペリーの人気曲「Words」の様々なバージョンを集めたアルバム第2弾。「Words」以外の曲も入ってるよ。 


■Chicken Scratch / Lee 'Scratch' Perry

Chicken Scratch (Dlx)

Chicken Scratch (Dlx)

 

まだ駆け出しだった頃の初期ペリー、スタジオワン時代の歌モノ・スカ作品でプロデュースはコクソン・ドット。おまけにバックのオケがスカタライツ、これがまたパワフルで素晴らしい。


■Return Of Django / Lee Perry

Return Of Django (Remastered)

Return Of Django (Remastered)

 

リー・ペリーの初期オリジナル・アルバムで、オルガンをフィーチャーした曲の多いなかなかのご機嫌作。注意して欲しいのは、まずここで紹介している『Return Of Django (Remastered)』はオリジナルアルバムにボーナストラック8曲を加えたものだが、全く同じジャケットで『Return Of Django』と『Eastwood Rides Again』2作のアルバムをカップリングしたものも出回っているので購入の際には気を付けよう。


■Rockstone: Native's Adventures with Lee Perry at the Black Ark / Native

PRESSURE SOUNDSからリリースされていたNativeというバンドのリー・ペリー・プロデュースによるレア・アルバム。時折聴こえるロック的なアプローチが面白い。

 

■Dubstrumentals /  Lee Perry

Dubstrumentals

Dubstrumentals

 

リー・ペリーのインスト3部作『Kung Fu Meets The Dragon』『Return Of The Wax』『Musical Bones』&ボーナストラックを2CDに収めたお得なアルバム。3枚とも持ってたけど買っちゃった!

 

■The Trojan Albums Collection: Lee Perry & the Upsetters

The Trojan Albums Collection:

The Trojan Albums Collection:

 

Torojanからリリースされていたリー・ペリーの4枚のアルバム『Africa's Blood』『Battle Axe』『Rhythm Shower』『Double Seven』をCD2枚にまとめたお徳版。 『Double Seven』のみアルバムで持ってた。

 

■Dub-Triptych / Lee 'Scratch' Perry

Dub-Triptych ( Blackboard Jungle Dub. Cloak & Dagger. Revolution Dub )

Dub-Triptych ( Blackboard Jungle Dub. Cloak & Dagger. Revolution Dub )

 

アルバム『Blackboard Jungle Dub』『Cloak & Dagger』『Revolution Dub』3枚を1CDにまとめたまたまたお得なアルバム。『Cloak & Dagger』だけ所有していなかったのでゲット。

 

■The Upsetter: Essential Madness from the Scratch Files / Lee Perry & the Upsetters

The Upsetter: Essential Madness from the Scratch Files

The Upsetter: Essential Madness from the Scratch Files

 

60年代後半から70年代に掛けてのアップセッターズの音源をコンピ。落ち穂拾い。 

 

■Disco Devil: The Jamaican Discomixes / Lee Perry & the Upsetters

Disco Devil: The Jamaican Discomixes

Disco Devil: The Jamaican Discomixes

 

ブラックアーク期の12インチマキシシングル作品を集めたコンピ。いわゆるロングバージョン尽くし!2枚CD18曲収録、これは面白いアルバムだったな。

つれづれゲーム日記:『ストリートファイターV アーケードエディション』の巻

ストリートファイターV アーケードエディション (PS4

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 その場末のバーには倦怠と疲労が染みついたかのような饐えた空気が漂っていた。外からは激しさを増した雨音がかすかに聞こえてくる。照明を落とした店の中で客はカウンターの男ただ一人。中年を過ぎ薄汚れた上着を着たみすぼらしい男。男は酒の入ったグラスを片手に握りしめ、項垂れたままカウンターを見つめている。彼はやおら酒を飲み干すと、虚ろな目で何もない中空を見据え、かすれた声でポツリと呟いた。「波動拳が……波動拳が出ねえんだよ……」

格闘ゲームストリートファイターV アーケードエディション』である。格ゲーの中でも最も有名なゲームシリーズの一つであるということができよう。オレはついこの間このゲームを購入し、ちまちまと遊んでいたのである。

実の所、格ゲーは苦手だ。下手の横好きであれこれ手を出したことがあるが、パズルゲーと並んでオレ向きじゃないゲームジャンルの一つだろう。なにしろコマンドが覚えられない。覚えても指が付いて行かない。ならば練習すればいいのではあるが、今度はこの練習というのが嫌いだ。

あれも嫌だ。これも嫌だ。それは出来ない。どれもやりたくない。オレの人生に対する投げ遣りで怠惰極まりない態度が如実に表れるのがこの格ゲーなのである。オレは格ゲーに触れることで、いかに自分が人生の様々な事から逃げ回り、うやむやにしながら生きているかを気付かされてしまうのである。

とはいえ、格ゲーの一つ、『バ―チャファイター』シリーズは好きだった。1作目は衝撃的だった。当時は画期的だったポリゴンを使用したそのゲーム画面にオレは驚愕した。ゲーセンなんかまったく行かないオレが、ゲーセンに足蹴く通った。でも対戦はせずにいつもCPUと対戦していた。対戦は嫌いだった。画面の向こうに生身の人間がいると思っただけで鬱陶しかった。対戦に限らずオレは他人様とプレイするオンラインゲームが苦手だ。なぜなら日常人間を相手にする事に疲れ果てているからこそ人の居ないゲーム世界でたったひとり遊びたいと思うような人間だからだ。

下手糞なりにCPU相手の『バ―チャファイター』は楽しかったが、こと『ストリートファイター』となると、これが全くダメだった。まともに遊んだのは『ストII』ぐらいだが、なにしろコマンドが覚えられない。多分『ストII』を遊んだことのある方なら、波動拳昇竜拳ぐらいのコマンドはすぐ出すことができるだろうが、なんとオレはそれすらも出せないのだ。おまけにガードもきちんと出来ない。これではもうゲームにならない。ましてや複雑なコマンドなど無理も無理、大無理である。

さてここまで格ゲーが不向きなことを書いておきながら、なんでまた今『ストV』なんかやっているのか。それはまず、シリーズの進化と共に、キャラクターが以前のドット表示からポリゴン表示に変わり、段違いのグラフィックの美しさを見せるようになってきたからだ。オレは「美しいグラフィック」に弱いのである。オレが下手糞なくせにいろんなゲームに手を出すのは、この「美しいグラフィック」を体感したい、というそのただ一点があるからである。

しかしそれだけでは『ストV』に手を出す決定打にはならない。ではなぜ買っちゃったかというと、まずオンラインで入手した体験版が悪くなかったこと、さらにダウンロード版がバーゲンで安かったからである。即ち、「ついやっちゃった」という訳である。

そんなこんなで始めた『ストV』なんであるが。これがなんと、格ゲーの苦手なオレにしては結構遊べてしまうのだ。以前とゲームシステムが変わったのかもしれないが、幼児並みのガチャプレイでも割と技を出すことができ、CPU戦で難易度普通でもガシガシ勝ち進め、勝ち進めるどころか連戦連勝なのでちょっと難易度を上げてプレイし始めた程である。そしてこうして楽しめるからこそ今度はきちんとコマンドを覚えようと練習し、まともにゲームシステムへの理解を深めようとし始めたのだ。このオレにしては相当真摯な事である。

とまあそんな訳で楽しく遊んでいるのだが、このゲーム、キャラクターを最初から全部使う事ができないことになっていて、もしキャラを増やしたかったらそれぞれ個別ないしパックで課金ダウンロードする必要があるんだよね。まあ別に全員分遊ぶことなんかないしその頃には飽きてるだろうな、と思ってたんだけど……気が付いたら課金してキャラパックをダウンロードしていたオレがいた……このォ、イケズめ!イケズなカプコンめええ!!
『ストリートファイターV アーケードエディション』Launch Trailer

最近聴いたレゲエやらダブやらロックステディやら

■Consider Yourself / The Inturns

Consider Yourself [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRPS086)

Consider Yourself [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRPS086)

 

Channel Oneのルーツレゲエ・コーラス・グループThe Inturnsの名盤をPressure Soundsがリイシュー。Phil Pratt プロデュース、オケはSly&Robbieという間違いのないサウンド

■Next Cut / Bunny Lee

‘Next Cut’?-?Dub plates, Rare Sides & Unreleased Cuts [輸入盤CD] (PSCD088)_127

‘Next Cut’?-?Dub plates, Rare Sides & Unreleased Cuts [輸入盤CD] (PSCD088)_127

 

ジャマイカの名プロデューサーBunny Lee、スタジオに埋もれていた未発表激レアトラックの数々をPressure Soundsが発掘!

■Full Up /  Bunny Lee

Full Up [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRPS085)

Full Up [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRPS085)

 

名プロデューサー、Bunny Leeの1968~72年のポスト・ロックステディ作品をメインにコンパイルしたアルバム。

■The Sannic Sounds / Tommy McCook

The Sannic Sounds [国内盤CD] (DSRCD004)

The Sannic Sounds [国内盤CD] (DSRCD004)

 

Skatalitesの創設メンバーであり名サックス奏者もあるTommy MccookがGlen Brownのプロデュースにより製作したホーン・インスト・ダブ・アルバム。相当にカッコイイよ!

■Meet The People / Lloyd Parks & We The People

Meet The People [輸入盤CD] (PSCD96)_527

Meet The People [輸入盤CD] (PSCD96)_527

 

ジャマイカ屈指のベーシストLloyd Parksが率いた凄腕バンド、We The Peopleのアルバムがリイシュー。

■Dubbing in the Front Yard & Conflict Dub / Bunny Lee

Dubbing in the Front Yard & Conflict Dub [解説対訳付 / ボーナストラック3曲収録 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (BRPS102)

Dubbing in the Front Yard & Conflict Dub [解説対訳付 / ボーナストラック3曲収録 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (BRPS102)

 

Bunny LeeとPrince Jammyによる幻の超レアダブアルバム2枚を復刻。演奏はThe Aggrovators、スタジオはKing Tubby'sという鉄壁の作品。

■Rocksteady, Soul And Early Reggae At Studio One / V.A.

Rocksteady, Soul And Early Reggae At Studio One

Rocksteady, Soul And Early Reggae At Studio One

 

Soul Jazzレーベルからリリースされたスタジオワン珠玉のロックステディ集。いやこれは良いアルバムだな。楽しいし和む。

Creation Rebel / Johnny Clarke

CREATION REBEL

CREATION REBEL

 

ラスタ・シンガーJOHNNY CLARKEのBUNNY ‘STRIKER’ LEE期のベスト盤CD2枚組。THE AGGROVATORSをバックに、KING TUBBYスタジオで制作。

■Rebel Rock / Third World All Stars

Rebel Rock [帯解説・国内仕様輸入盤] (BRPS78)

Rebel Rock [帯解説・国内仕様輸入盤] (BRPS78)

 

PRESSURE SOUNDSからリリースされたジャジーでメロウなレゲエ・インスト作。

■Sound System International Dub / King Tubby

Sound System International Dub

Sound System International Dub

 

キング・タビー、レア中のレアとも呼ばれる幻のDUBがPRESSURE SOUNDSからリリース。

■Mek It Run / Dennis Bovell

Mek It Run [帯解説 / 国内仕様輸入盤] (BRPS075)

Mek It Run [帯解説 / 国内仕様輸入盤] (BRPS075)

 

PRESSURE SOUNDSからリリースされたデニス・ボーヴェルのレア・トラックス集。しかも今作のために新たにDUBミックスし直したという凝ったアルバム。

■Studio One Disco Mix Various Artists

Studio One Disco Mix

Studio One Disco Mix

 

スタジオワンから70年代にリリースされた12インチロングヴァージョンレゲエ曲をミックス!

■Let’ s Go To The Dance - Prince Buster Rocksteady Selection  Prince Buster

Let’ s Go To The Dance - Prince Buster Rocksteady Selection [国内盤CD / デジパック仕様] (DBPBCD-001)

Let’ s Go To The Dance - Prince Buster Rocksteady Selection [国内盤CD / デジパック仕様] (DBPBCD-001)

 

ロックステディといえばこの人、プリンス・バスターの67~68年にリリースされたシングル曲のコンピレーション。

■The Treasure Isle Story

The Treasure Isle Story

The Treasure Isle Story

 

Treasure Isleレーベルのロックステディ集大成全86曲、CDだと3枚組。これをUSBに突っ込んで部屋でエンドレスで聴くのが最近のお好み。和むわー。

■ Trojan Box Set: Dub Various Artists

Trojan Box Set: Dub

Trojan Box Set: Dub

 

TrojanのDUB Box Set、CD3枚組全50曲。流し聴きに最適。

■ The Trojan Roots Box Set Various Artists

The Trojan Roots Box Set

The Trojan Roots Box Set

 

TrojanのルーツレゲエBox Set、CD3枚組全50曲。これも流し聴き用。

■ Trojan Beatles Box Set Beatles

Trojan Beatles Box Set

Trojan Beatles Box Set

 

さらにTrojanのレゲエ・ビートルズ・カヴァーBox Set、CD3枚組全50曲。これは思ったよりユルかったな。

京極夏彦の『今昔百鬼拾遺 鬼』を読んだ

■今昔百鬼拾遺 鬼/京極夏彦

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

「先祖代代、片倉家の女は殺される定めだとか。しかも、斬り殺されるんだと云う話でした」昭和29年3月、駒澤野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪異と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。百鬼夜行シリーズ最新作。

京極夏彦の【百鬼夜行シリーズ】が遂に再開!」と聞いてオレは色めき立ったのである。「おおう!京極夏彦!今でも思い出した頃に新作ぽちぽち読んでたけど、【百鬼夜行シリーズ】は久しぶりだああ!また理屈っぽい中禅寺ややる気の無い関口や素っ頓狂な榎木津やその他諸々の皆さんに会えるうう!」とかなんとか喚きながらオレは小躍りした。

しかし【百鬼夜行シリーズ】って最後いつだったっけ?と思い調べたら長編『邪魅の雫』が2006年刊行、連作短編集『百鬼夜行――陽』が2012年刊行と、やっぱり随分と前なのだ。京極自身は今でもコンスタントに作品をリリースしているので、【百鬼夜行シリーズ】がリリースされないのは単に飽きたのかなあ?と思っていた。同時に、最後の長編『邪魅の雫』がなんだかパッとしない作品で(読んではいたけど調べるまで存在すら忘れていた)、こういった世界観に行き詰ったからかもなあ、とも思っていた。

とまあ長編としては実に13年振り(!)ともなる新たな【百鬼夜行シリーズ】のタイトルは『今昔百鬼拾遺 鬼』。最初「んん?」と思った。これまでの『(妖怪の名前)の(漢字一文字)』みたいなタイトルじゃないんだね。なんかどうやらこれまでと趣向を変えているようなんだね。まあ煎じ詰めるならスピンオフってことなんだが。

で、どう変わっているかというとまず、主人公は「京極堂」こと中禅寺秋彦じゃない。代わりに京極堂の妹で科学雑誌記者の中禅寺敦子が主人公となる。それだけではない。なんと今回の『今昔百鬼拾遺 鬼』、文庫本では274ページと、百鬼夜行シリーズ】にしては驚異的な薄さだ。だってアナタ、文庫版『陰摩羅鬼の瑕』なんて1226ページもあったんですよ!?鬼畜の所業ですよこんな厚さ!?とか言いつつ京極の本はこの厚さがいい、というマゾ設定なんですがね!ああ、シリーズ全作読んでるんだよオレッ!泣きながら読破したよッ!

しかしまあ、「中禅寺敦子が主人公」という段階でこの薄さは頷けるのだ。なぜって、百鬼夜行シリーズ】のページが分厚いのはですね、どの作品においても、主人公京極堂が延々数100ページに渡って屁理屈と能書きを垂れまくっている、という構成だからですよ。さっき触れた陰摩羅鬼の瑕なんて、1226ページのうち600ページは京極堂の能書きでした(当社比)。

この新たな構成がきっと新たな百鬼夜行シリーズ】 の目標としたものなのかもしれない。それと併せ、今回講談社から刊行された『今昔百鬼拾遺 鬼』の後に、KADOKAWAから『今昔百鬼拾遺 河童』、新潮社から『今昔百鬼拾遺 天狗』といったタイトルが矢継ぎ早にリリースされる予定なのだ。それぞれ出版社が違うのも面白いが、この3冊を合わせたらやっぱりページ数が1000ぺージ超えとなっており、薄い薄いといいながら1冊の連作短編集と考えたらやっぱり分厚いんだよな。蛇の道は蛇ですよねえ京極さん。

あ、物語のほうはですね、中禅寺敦子が『絡新婦の理』に出てきた女学生、呉美由紀の依頼により連続通り魔事件の謎を追うというもの。この通り魔、日本刀による凶行を繰り返していたのだが、呉美由紀の同級生を斬り殺した際に捕えられてしまう。しかし、何かがおかしい……という所から物語が始まる。そして今回表題となっているのは【鬼】。鬼ってなんじゃ、どういうものが、どういうことが、鬼なんじゃ、という部分で物語は錯綜してゆく。

なにしろうら若き女性二人による殺人事件捜査、という部分でこれまでの【百鬼夜行シリーズ】と相当趣が違っている。重々しさは軽快さに、晦渋さは若々しさに置き換えられ、こう言っちゃなんだがライトノベル的な雰囲気さえある。ただし事件の真相に潜む”妖怪化”してしまうほどの人間心理の暗部、決して割り切ることの出来ない心の綾を論理でもって解明しようとする探偵、といった点では【百鬼夜行シリーズ】らしい出来になっている。これからの続巻も楽しみだ。……とはいえ、予告されている本編『鵺の碑』にはそのうち繋がるのかなあ?

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

 
今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

今昔百鬼拾遺 鬼 (講談社タイガ)

 

 

 

ペット・ショップ・ボーイズのライブ2CD+Blu-ray+DVDアルバム『Inner Sanctum』

■Inner Sanctum / Pet Shop Boys

Inner Sanctum (Blu-Ray + DVD + 2 CDs)

こないだの4月1日に観に行ったペット・ショップ・ボーイズ日本武道館公演『PET SHOP BOYS The Super Tour』がとってもよかったので、最近発売された彼らのライブ作品『Inner Sanctum』を早速購入しちゃったオレである。

この『Inner Sanctum』、2018年7月にロンドンのロイヤルオペラハウスで行われたライヴの模様を収録したものなんだが、なんとDISC4枚組輸入盤となる。まずCD音源が2枚、Blu-rayが1枚、DVDが1枚という構成。Blu-rayとDVDは内容が同じで、まあ「どっちか片方しか再生機器を持ってない人用」ということだ。Blu-rayはリージョンフリー、DVDはNTSC仕様なのでどちらも日本国内の再生機器で視聴できる。

CDと映像DISCもやはり同じ内容で、全18曲1時間44分。ただし映像ディスクにはボーナス収録として2017年のリオ公演"Rock In Rio"が約1時間ほど収められており、なかなかにお得。

このDISC4枚組『Inner Sanctum』、国内仕様のものは販売はされておらず、代わりにCD音源のみ2枚組ライブアルバム『インナー・サンクタム』が発売されている。しかし2CD+映像DISC付きの輸入盤が2500円前後で、2CDのみの国内販売アルバムが3000円前後するんだから、普通輸入盤のほうを買うよねー。

収録曲については同じツアーである武道館公演の内容と殆ど同一だが、だからこそあの時の感慨をもう一度噛み締める事が出来る。しかし映像で観るとライブの演出が違うことに気が付かされる。

まず、ロンドンのロイヤルオペラハウスという箱が違う。オペラハウスという事もあってか武道館にしつらえられたステージよりも小振りではある。しかし、今回のツアーのミニマルなシンプルを持つ演出には適している。そして、由緒正しきオペラハウスの壮麗な美しさがある。オペラハウスでシンセポップ・ライブ、というのもPSBらしい美意識だ。

演出で違っていたのは曲によって大勢のダンサーが舞台に出て踊る場面があることだ。これは地元イギリスということで調達が楽だったからだろう。この人数を世界ツアーに随行させたらコスト的に苦しいだろう。まあしかしこのダンサーたちというのが風船の着ぐるみみたいな変なコスチュームを着せられており、もともとPSBというは変なセンスをしているけれども、実際に見てみてみたかった、とあまり思えない所がアレなのではあるが。

それと、ステージ背景に映し出されるビデオ映像が日本公演時と半分ぐらい違っていた。これには驚いた。日本公演時のステージ背景映像はちょっとダークな非常に幻想的で妖しい雰囲気のものが多かったのだが、こちらのロイヤルオペラハウス版では徹底的に明るくてポップ&カラフル、さらにシンプルで攻めているのだ。これはどちらの演出も甲乙つけがたい。武道館ライブを観た方でも新鮮な気持ちでもう一度観られること請け合いだ。

また、当然アップの映像も入っているので、武道館の時は遠くからしか観られなかったPSBの連中の表情や仕草がはっきりと観ることができる。あとコスチュームの様子とかね。もともとクールをキメた連中だから生で遠くから観ていた時は本人たちがノッてるのかどうかよく分からなかったが、この映像だとそれなりに楽しそうにしているのが伝わってくる。

さらに面白いのはボーナス収録の"Rock In Rio"。The Super Tourの映像だから内容は同じといえば同じなんだが、こちらは野外ステージで、観客も10万人ぐらいいるんじゃないか?と思わせる様な広大さ、ステージ両脇に巨大スクリーンが設けられPSBのパフォーマンス映像がアップで映し出されているのが確認できる。さらにこちらは”引き”の映像が多く、盛り上がる大観衆とステージの巨大さに圧倒させられる。ある意味”ライブの興奮”はこっちのほうが伝わってくるんじゃないかな。


Pet Shop Boys - Inner Sanctum DVD/Blu-ray/2CD (Trailer)