つれづれゲーム日記:『ストリートファイターV アーケードエディション』の巻

ストリートファイターV アーケードエディション (PS4

f:id:globalhead:20190504141433j:plain

 その場末のバーには倦怠と疲労が染みついたかのような饐えた空気が漂っていた。外からは激しさを増した雨音がかすかに聞こえてくる。照明を落とした店の中で客はカウンターの男ただ一人。中年を過ぎ薄汚れた上着を着たみすぼらしい男。男は酒の入ったグラスを片手に握りしめ、項垂れたままカウンターを見つめている。彼はやおら酒を飲み干すと、虚ろな目で何もない中空を見据え、かすれた声でポツリと呟いた。「波動拳が……波動拳が出ねえんだよ……」

格闘ゲームストリートファイターV アーケードエディション』である。格ゲーの中でも最も有名なゲームシリーズの一つであるということができよう。オレはついこの間このゲームを購入し、ちまちまと遊んでいたのである。

実の所、格ゲーは苦手だ。下手の横好きであれこれ手を出したことがあるが、パズルゲーと並んでオレ向きじゃないゲームジャンルの一つだろう。なにしろコマンドが覚えられない。覚えても指が付いて行かない。ならば練習すればいいのではあるが、今度はこの練習というのが嫌いだ。

あれも嫌だ。これも嫌だ。それは出来ない。どれもやりたくない。オレの人生に対する投げ遣りで怠惰極まりない態度が如実に表れるのがこの格ゲーなのである。オレは格ゲーに触れることで、いかに自分が人生の様々な事から逃げ回り、うやむやにしながら生きているかを気付かされてしまうのである。

とはいえ、格ゲーの一つ、『バ―チャファイター』シリーズは好きだった。1作目は衝撃的だった。当時は画期的だったポリゴンを使用したそのゲーム画面にオレは驚愕した。ゲーセンなんかまったく行かないオレが、ゲーセンに足蹴く通った。でも対戦はせずにいつもCPUと対戦していた。対戦は嫌いだった。画面の向こうに生身の人間がいると思っただけで鬱陶しかった。対戦に限らずオレは他人様とプレイするオンラインゲームが苦手だ。なぜなら日常人間を相手にする事に疲れ果てているからこそ人の居ないゲーム世界でたったひとり遊びたいと思うような人間だからだ。

下手糞なりにCPU相手の『バ―チャファイター』は楽しかったが、こと『ストリートファイター』となると、これが全くダメだった。まともに遊んだのは『ストII』ぐらいだが、なにしろコマンドが覚えられない。多分『ストII』を遊んだことのある方なら、波動拳昇竜拳ぐらいのコマンドはすぐ出すことができるだろうが、なんとオレはそれすらも出せないのだ。おまけにガードもきちんと出来ない。これではもうゲームにならない。ましてや複雑なコマンドなど無理も無理、大無理である。

さてここまで格ゲーが不向きなことを書いておきながら、なんでまた今『ストV』なんかやっているのか。それはまず、シリーズの進化と共に、キャラクターが以前のドット表示からポリゴン表示に変わり、段違いのグラフィックの美しさを見せるようになってきたからだ。オレは「美しいグラフィック」に弱いのである。オレが下手糞なくせにいろんなゲームに手を出すのは、この「美しいグラフィック」を体感したい、というそのただ一点があるからである。

しかしそれだけでは『ストV』に手を出す決定打にはならない。ではなぜ買っちゃったかというと、まずオンラインで入手した体験版が悪くなかったこと、さらにダウンロード版がバーゲンで安かったからである。即ち、「ついやっちゃった」という訳である。

そんなこんなで始めた『ストV』なんであるが。これがなんと、格ゲーの苦手なオレにしては結構遊べてしまうのだ。以前とゲームシステムが変わったのかもしれないが、幼児並みのガチャプレイでも割と技を出すことができ、CPU戦で難易度普通でもガシガシ勝ち進め、勝ち進めるどころか連戦連勝なのでちょっと難易度を上げてプレイし始めた程である。そしてこうして楽しめるからこそ今度はきちんとコマンドを覚えようと練習し、まともにゲームシステムへの理解を深めようとし始めたのだ。このオレにしては相当真摯な事である。

とまあそんな訳で楽しく遊んでいるのだが、このゲーム、キャラクターを最初から全部使う事ができないことになっていて、もしキャラを増やしたかったらそれぞれ個別ないしパックで課金ダウンロードする必要があるんだよね。まあ別に全員分遊ぶことなんかないしその頃には飽きてるだろうな、と思ってたんだけど……気が付いたら課金してキャラパックをダウンロードしていたオレがいた……このォ、イケズめ!イケズなカプコンめええ!!
『ストリートファイターV アーケードエディション』Launch Trailer