あの喋くりお騒がせヒーローがまたもやお下劣の限りを尽くして帰ってきたッ!?/映画『デッドプール2』

デッドプール2 (監督:デヴィッド・リーチ 2018年アメリカ映画)

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あのお騒がせヒーロー、デッドプールが例によって喋くり散らかしながら帰ってきたッ!?という映画『デッドプール2』であります。前作がメッチャ楽しくて大好きだったのでとても楽しみにして観に行きました。

しかーし!この作品、何をどう語ってもネタバレになってしまう!予告編にある情報だけで観に行ったのですが、正直予告編から推測できるような内容をことごとく裏切ってくれた上、予告編以上のアクションと馬鹿馬鹿しさを撒き散らしてくれた、ぐらいしか書けないんですよ。もう冒頭の展開すら書けません。

とはいえ無難な部分で大雑把な感想を書かせていただきますと、今回は相当マニアックなネタで攻めてきてるよなー、ってことでしょうか。アメコミヒーローネタやそれらの映画化作品ネタ、まあ他にもいろんな映画ネタも出てきてるんでしょうが、正直割とアメコミヒーロー映画観ているつもりのオレでも全てを理解できたわけではありません。

この辺、ネタの判らない人にはつまらなかったりするのかなあ?と思い、一緒に観に行った相方に終映後尋ねてみたら「元ネタは判らなかったけど何か元ネタがあるんだろな、という観方をしてた」と言ってたので、決してチンプンカンプンでついて行けないってワケでもなさそう。大筋のストーリーに直接関わっているということもないしアクションやお下劣な笑いは前作同様てんこ盛りなので充分楽しめるんじゃないかな。

それと、ネットを彷徨ってみたら既にあちこちでネタバレを謳ったサイトが結構あったので、あくまでも鑑賞後ということでそれらを読んで答え合わせをするという楽しみもあるかも。実際オレも「あーあれはそういうことだったのか!」とやっと納得出来た部分が沢山ありました(ネタバレの良し悪しというより、「ネタバレしないと語れない映画だよなー」という実感は各ライターさんなりブロガーさんにもあったのは理解できます)。

あと当たり障りのない部分で言うと、今回の敵役であるケーブルは単に極悪非道冷血残虐な男なのではなく、彼なりの背景を持っている、という部分でキャラクターに膨らみがありましたね。この辺『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』のサノスと通じるものがありましたが、このケーブルとサノス、同じ俳優さんが演じていると知ってまたびっくり(しかもネタにされています)。

それと急ごしらえのデッドプール部隊「Xフォース」がいろいろ笑わせてくれるんですが、その中の紅一点であるドミノという女性が想像以上に大活躍してくれて物語を盛り上げてくれたし十分魅力的なキャラクターでしたね。アクションは前作以上にスピード感があったように感じたけど、それはド派手なカーチェイスシーン&アクションがあったからかもしれないな!

それと、前作のテーマとなったものが、お下劣ヒーロー映画のくせして【愛】だった!?という部分でその落差が奇妙に感動を呼んだ(お下劣ヒーロー映画なのに!)ように、この2作目ではアホアホヒーロー映画のくせして【家族】がテーマになっている!?という部分で笑わせてくれる、もとい、イイ話になっている、というのが特色でしょうか。

ただまあ正直なところ、オレは前作のほうが好きだったかなー。前作はその破天荒さに度肝を抜かれたけど、今作ではその焼き直しというかそれが当為になってしまっている分普通になっちゃったように感じたなー。あとサービスもあったんだろうけどストーリーがちょっとゴチャゴチャさせすぎてたかな。前作では「復讐!」「愛する人との再会!」というストレートさがあったけど、今作ではデッドプールに戦いの「動機」を持たせるのに苦労してたような気がしたもの。とはいえこれはこれで充分楽しめる作品だったんですけどね。

globalhead.hatenadiary.com


『デッドプール2』予告編(最強鬼やばVer.)/シネマトクラス

ケーブル&デッドプール:青の洗礼 【限定生産・普及版】 (MARVEL)

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犬ヶ島:怒りのデス・ロード/映画『犬ヶ島』

犬ヶ島 (監督:ウェス・アンダーソン 2018年アメリカ映画)

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ウェス・アンダーソン監督による傑作ストップモーション・アニメ

実はウェス・アンダーソン監督作品は苦手だったのだが、『グランド・ブダペスト・ホテル』を観てその素晴らしさに舌を巻き(レロレロ)、それまできちんと観ていなかった過去作を遡って鑑賞してさらに作風に魅せられ、己の観る目の無さをしみじみと恥じた過去を持つオレである。

だからこの『犬ヶ島』も楽しみにして劇場に観に行った。そしてこれがまたもや素晴らしかった。もはや数多あるストップモーション・アニメの歴代傑作作品の一つに数えてもいいのではないかとすら思った。今後「アニメ映画ベストテン」といった企画が再びあれば必ずこの作品を入れるだろう。それぐらい素晴らしかった。

物語は犬を蛇蝎の如く忌み嫌う権力者の陰謀によりゴミ処理場の島「犬ヶ島」にゴミ同然に捨て置かれた犬たちと、愛犬を取り戻す為その島にたった一人でやってきた少年との冒険の物語である。そしてその物語がストップモーション・アニメで描かれてゆくのである。さらになんとこの作品は、その物語を20年後の日本の「ウニ県メガ崎市」という架空の都市を舞台に展開するのである。

まとめよう。この作品の魅力は:

  1. 動物(犬)と少年との友情と冒険とを描くアニマル・ムービーである
  2. それがストップモーション・アニメで描かれる
  3. 舞台が近未来の日本の架空の都市である
  4. つまりなんとこの物語はSFだった!

 ……という部分にあるのだ。

犬ヶ島」という名のディストピア

この作品には『パディントン』や『ピーターラビット』、ウェス監督が過去に製作したストップモーション・アニメファンタスティック Mr.FOX』のように"喋る動物"が登場することになるが、とはいえこれらの作品とは少々趣が異なる。童話であったりファンタジーであったりカートゥーンであったりする作品ではないのだ。むしろジョージ・オーウェル動物農場』の如き寓意の込められた物語なのではないか。いや、寓意ありきで製作された物語では決して無いのだが、物語の持つ微妙な陰鬱さがそう感じさせるのだ。

それはこの物語世界が”未来の日本”というSF的世界設定である部分に負うところが大きい。SFとは寓意を容易にする作品ジャンルだ。またはオレがSF好きなのでなんでもかんでも「これはSFだ!」と言ってしまう癖のせいであることも大いに考えられる。

自由への脱出

とはいえ疫病感染を理由に犬たちが隔離され遺棄される場所「犬ヶ島」とは、そのまま【絶滅収容所】である。『ニューヨーク1997』のマンハッタン島であり『エスケープ・フロム・L.A.』のロサンゼルスであり『バイオレンスジャック』における関東地獄地震により本州から分断された関東平野である。犬たちにとってそこは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の如きディストピアであり、砂漠の砂の代わりに夥しい量のゴミが広がる荒野であり、その中で彼らは明日をも知れぬ運命にあるのだ。

そう、ディストピアにおけるサバイバル、これが『犬ヶ島』の物語だったのである。しかしただかそけき生を生き延びるだけがこの物語ではない。それは死と絶望に満ちた世界から逃走し、もう一度自らの尊厳を取り戻し、もう一度幸福だった時代を取り返すこと、即ち【自由への脱出】がこの物語の目的となるのである。それは、【生の根源】に関わる物語と言えはしないか。

そんなディストピア犬ヶ島』に現れた主人公"小林アタリ"とはなんなのか。犬たちの【自由への脱出】の切っ掛けとなったこの少年とか何者なのか。それはスネーク・プリスキンでありマックスであるはずではないのか。まあこれらと比すなら相当頼りないけれども、ひとつの【英雄譚】と見る事はできないか。

新たなる神話世界

この作品では【文化風俗を重合的に濃縮した日本】をその美術とすることにより一種独特の映像世界を生みだし、特に我々日本人にとってはそこが最も注目する所となる。そしてこれらポップな・あるいはキッチュな日本の光景は、見方を変えるならどこか歪んだ・あるいはそれ自体がカリカチュアライズされた日本の光景ということもできるのではないか。

それは遊園地のミラーハウスの歪んだ鏡の中に映し出される姿のような、グネグネと形の変形したグロテスクな日本の姿である。それは日本が歪んでいる、ということではなく、西洋人には馴染の薄い文化を持つ遠い極東のある国、という異世界感を醸し出す為の仮称として必要だったのだ。つまり、この物語の舞台は日本に名を借りた【異世界】なのだ。

そして手法としてのストップモーション・アニメはそこに登場する者を【抽象化】する。さらに"犬"とは【象徴的存在】である。彼ら象徴としての犬たちと【冒険】するのは一人の【英雄】である。

異世界】における【抽象化された象徴的存在】が【生の根源】に関わる問題を【英雄】との【冒険】を通して解決する。このような物語をなんというか。それは【神話】である。そう、映画『犬ヶ島』はひとつの【神話世界の冒険を描く物語】だったのだ。

それは【現代の神話】である映画『スターウォーズ』のように、あるいは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のように、雄々しくもまた神々しく、観る者の魂の底に鮮烈に【物語】を刻み付ける。そしてその【物語】は、「人はどう勇気をもって生きるべきか」を伝えるのである。こうして映画『犬ヶ島』はもうひとつの【現代の神話】として我々の記憶に強烈に刻み付けられる作品となったのである。


『犬ヶ島』予告編 (2018年)

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エスケープ・フロム・L.A. [DVD]

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マイク・ミニョーラの描くドクター・ストレンジ作品『ドクター・ストレンジ & ドクター・ドゥーム』

■ドクターストレンジ & ドクタードゥーム/ロジャー・スターン (著)、マイク・ミニョーラ (イラスト)

ドクターストレンジ & ドクタードゥーム (ShoPro Books)

ファンタスティック・フォーの宿敵でもある天才科学者、ドクター・ドゥーム。彼は母親の魂を地獄から解放するための孤独な戦いに、何度も敗れていた。その戦いに手を貸したのが、天才脳外科医の魔術師、ドクター・ストレンジだった! まったく逆の力を武器にする二人は、魔王メフィストを倒し、母シンシアの魂を救うことができるのか。そしてそのために彼らが払わなければならない犠牲とは、いったいどれほどのものなのか……? 天才ヴィランと天才ヒーローによる、予想外のチームアップ。

マーベルヒーローが活躍する映画作品、いわゆる”MCU”の中でどのヒーロー映画が一番好きかと訊かれたら、オレは案外『ドクター・ストレンジ』と答えるかもしれない。主演のベネディクト・カンバーバッチは好きな俳優だし、超越的な秘術から生み出される魔術合戦には目を奪われたし、万華鏡のように刻々と姿を変えるビル群を描いたVFXには感嘆させられた。

その『ドクター・ストレンジ』を『ヘルボーイ』原作者のマイク・ミニョーラが描いたグラフィックノベルがあると聞いたらそれは読まざるを得ない。それがこの『ドクター・ストレンジ&ドクター・ドゥーム』だ。

タイトルから分かるようにこの作品にはドクター・ストレンジと共にドクター・ドゥームが登場する。ドクター・ドゥーム、『ファンタスティック・フォー』あたりで知られる強力なヴィランの名前だ。物語はドクター・ドゥームが地獄に堕ちた母の魂を救うため、世界最強の魔術師であるドクター・ストレンジの力を借り地獄へ降りてゆく、というものだ。

本作は1989年に書かれたが、ミニョーラにとって地獄に降りて悪鬼や魔王と戦うというモチーフは、その後1993年に生み出されることになる代表作『ヘルボーイ』の雛形となったとも言えるかもしれない。『ヘルボーイ』以前のミニョーラの手になるこの作品は、グラフィックこそまだ手探りの状態で、『ヘルボーイ』独特のソリッドなコントラストで描かされる作品世界はまだ見ることは出来ないが、それでも画面構成やコマ割り、アングルの付け方には既に非凡なものが見られる(まあ実際の所アメコミは分業制なのでグラフィック以外でミニョーラがどこまで関わったのかははっきりわからないのだが)。

とはいえ地獄における強力な魔術対決の描写は十分に楽しめ、ドクター・ストレンジらしさとミニョーラらしさの両方を味わえる作品として完成している。同時に、ヴィランとして登場するドクター・ドゥームの生い立ちや彼の抱える苦悩をこの物語で初めて知る事が出来、この辺りも興味深く読むことができた。

なお併載として、これはミニョーラの手によるものではないがドクター・ドゥーム、ドクター・ストレンジのエピソードが1作づつ、ミニョーラ最初期の作品でネイモア・ザ・サブマリナーという水棲ヒーローが活躍する作品が2作収録されている。

ドクターストレンジ & ドクタードゥーム (ShoPro Books)

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最近読んだ本あれこれ/『アレフ』『東方綺譚』『ホーニヒベルガー博士の秘密』

アレフ/J・L・ボルヘス

アレフ (岩波文庫)

アレフ (岩波文庫)

 

 途方もない博識と巧緻をきわめたプロット、極度に凝縮された文体ゆえに、〈知の工匠〉〈迷宮の作家〉と呼ばれるJ.L.ボルヘス(1899―1986)による、『伝奇集』とならぶ代表的短篇集。表題作のほか、「不死の人」「神の書跡」「アヴェロエスの探求」「二人の王と二つの迷宮」「戦士と囚われの女の物語」などを収録。

ボルヘスの『伝奇集』は観念性と超現実性が恐るべき密度で濃縮された必読ともいえる奇譚集だったが、 とはいえ自分はボルヘスというとこれしか読んでおらずそろそろもう1冊……と手にしたのが同じ短編奇譚集であるこの『アレフ』である。『伝奇集』が精緻に構築された奇怪でメタフィジカルな物語群だとすると、この『アレフ』は現実と超常とが交錯する仄暗い空間に堕とされたかのような異様な読後感を残す作品が多い。特に表題作「アレフ」の現実世界に問答無用に鋭利な穿孔を開けてしまう手腕には息を呑まされた。また他の作品にはラテンアメリカ独特の暗く熱い血の臭いを漂わせる物語が多いのも特徴的だろう。ただしこの単行本『アレフ』、白水社から出ていた『不死の人』と同一内容じゃないか……。実は『不死の人』を積読したまま所有していたので、ある意味同じ本がダブることになってしまった。これもまたボルへスの織り成す怪異の一端なのか(違う)。

東方綺譚/マルグリット・ユルスナール

東方綺譚 (白水Uブックス (69))

東方綺譚 (白水Uブックス (69))

 

古典的な雅致のある文体で知られるユルスナールの一風変ったオリエント素材の短篇集。古代中国の或る道教の寓話、中世バルカン半島のバラード、ヒンドゥ教の神話、かつてのギリシアの迷信・風俗・事件、さては源氏物語など、「東方」の物語を素材として、自由自在に、想像力を駆使した珠玉の9篇。

フランスの女性作家マルグリット・ユルスナールによる短編集。実は作家のことは何一つ知らなかったのだが、書籍タイトルに惹かれて読んでみることにした。内容はタイトル通り日本、中国、インド、中東、ギリシャといった「東方」の国々に伝わる奇譚・物語を作者流に翻案したもので、それらオリエンタルな物語は西洋の理では推し量れない不可思議と不条理に満ち溢れたものとなっている。むしろこれら合理で割り切れない物語の数々は、西洋的な知性が届かない場所で昏く輝くもうひとつの世界の仕組みを模索しようとして描かれたものなのかもしれない。ちなみに「源氏の君の最後の恋」はあの「源氏物語」から自由な着想を得て描かれている。

ホーニヒベルガー博士の秘密/ミルチャ・エリアーデ 

ホーニヒベルガー博士の秘密 (福武文庫)

ホーニヒベルガー博士の秘密 (福武文庫)

 

東洋文化を研究している〈私〉のもとに、ある日一人の使いがやってくる。ヨーガの秘法に習熟したホーニヒベルガー博士の伝記を執筆中に亡くなった夫の代わりに、その仕事を完成してほしいというゼルレンディ夫人の申し出に興味をもった〈私〉は、遺された日記から驚くべき事実を発見する。「セランポーレの夜」併録。

「インドを舞台にしたSF・ファンタジー」をツイッターで募ったところ、知り合いの一人が勧めてくれたのがこの本。作者(故人)はルーマニア出身の作家・学者であり、Wikipediaで調べるとかの岡本太郎が著作に影響を受けていたとか、『コッポラの胡蝶の夢』がこのエリアーデの原作だったなんてことが書かれていて少々勉強になった。さてこの単行本では「ホーニヒベルガー博士の秘密」と「セランポーレの夜」の二つの短編が収録されている。「ホーニヒベルガー~」はインド秘教のタントリズムに憑りつかれた男の怪異譚を、「セランポーレ~」ではインドの都市カルカッタ(現コルカタ)を舞台にした異様な出来事を描くこととなる。どちらもインドを題材にしているのはたまたまなのだと思ったが、作者自身がもともとシャーマニズム、ヨーガ、宇宙論的神話に関する著作を出しているらしく、そもそもがインド的なものにロマンを感じていた人なのらしい。そしてどちらの作品も精緻に書かれた文章を積み上げながら最後に暗黒の虚空に読む者を放り投げるといったもので、非常にカタルシスを感じた。

 

『ツインピークス:リミテッド・イベント・シリーズ』がモノスゲエ面白かった

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あのツインピークスが帰ってきたッ!?

そう、製作総指揮デヴィッド・リンチ(とマーク・フロスト)により1990年よりアメリカで放送され、日本でもカルト的な大人気を呼んだあの、あの、あのシリーズが、2017年に新シリーズとして再び帰ってきたのです!

この『ツインピークス:リミテッド・イベント・シリーズ』(以下「新シリーズ」)、日本ではWOWWOWでの限定放送で、加入していないオレは観る事が出来なかったんですが、最近ようやくソフト化販売されたので、エイヤ!とばかりにBlu-rayのボックスセットを購入し、ついこの間やっと全話観終る事が出来ました。

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ソフト購入するならヨーロッパ盤がお得

さてその感想を書く前に、発売ソフトについて触れておきましょう。

この新シリーズのソフトは日本版発売が7月4日、価格はBlu-ray BOXが定価¥21384(アマゾンで現在¥17484)、本編8DISC+特典映像1DISCの計9DISC収録、DVD BOXで定価¥13024(同¥10548)で本編のみ9DISCによる体裁の発売となります(アマゾン限定盤についは割愛)。

いやこれ高いですよね?

しかしこれが既に現在発売中のヨーロッパ盤だとほぼ3分の1の価格で買えるんですよ。しかもリージョンフリーで日本語吹き替え・字幕付き。当然特典DISCにも字幕ついてます(※注:この仕様はヨーロッパ盤のみでUS盤には吹き替え・字幕が無い模様。UK盤は確認してません)オレはドイツ盤BDをドイツのアマゾンから購入しましたが、日本円で¥6000位だった。ヨーロッパ盤はフランス・イタリア・ドイツ・スペイン盤とありますが、各国のリンクと価格はここでまとめられているので参考にして下さい。

日本語収録「ツイン・ピークス The Return」イタリア盤ブルーレイBOX:MOVIE&DRAMAメモ:So-net blog

また、ソフトは紙ケース入りとプラケース入りの2バージョンあるという話もあるんですが、これも確認していないので購入を考えている方はご注意を。紙ケース入りはこんな仕様です。

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ちなみにBlu-ray BOXの特典映像DISCには5時間余りにのぼるメイキングが収められていますが、他のDISCに収録された分も含めると全ての特典映像は8時間弱ほどもあり、結構見応えがありますよ。

脳ミソも吹っ飛ぶ超展開!?

というわけでこの新シリーズですが……ぶっちゃけて言いますと1話目からして既に訳が分かりません!しかし監督はリンチなので、これでいいんです。ネタバレ無しにしたいので詳しくは書きませんが、リンチの怪奇幻想趣味が大爆発した映像をどんよりと楽しめます。

けれどもこの1話目なんかまだ序の口、あるエピソードでは2001年宇宙の旅』のクライマックス、スターゲート・シーンをホラー風味にしてさらに1時間の長尺に伸ばしたようなとんでもない映像が延々続くというTVドラマ史上前代未聞の回があります!正直脳ミソ吹っ飛びそうになります。

しかし全18章全てが訳分かんないというお話では決してありません。そもそもこの新シリーズは前作からの25年後を描くものですが、前作ラストをきちんと引き継いだものになっているんですよ。そう、ダークサイドに堕ちたクーパーはその後どうなったのか?がこのシリーズの中心となる物語なんです。

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かつてのキャラクターと豪華な新キャラキターが総出演!

そして再び姿を現したクーパーを巡り、ツインピークス・シリーズのかつてのキャラクターたちが少しづつ画面に登場し事件に関わってくる、という展開なんですね。いやー、そりゃもう懐かしいったらありゃしませんよ!25年経って相当変わっちゃった人(誰だったっけ?と思った人もいた)、全然変わってない人、様々なんですが、まずそういった「昔のキャラと再び会える!」というお楽しみがこの新シリーズにはあります。

と同時に新キャラクターも登場します。そしてこれが、相当スゴイ映画俳優を揃えて演じられているんですよ。全部は紹介しきれませんが、ローラ・ダーンアマンダ・サイフリッドはほぼメインキャラクターだし、映画版に出演したハリー・ディーン・スタントンも出てるし、調べてみるとマイケル・セラリチャード・チェンバレンパイパー・ローリー、キャンディ・クラーク、ティム・ロスケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、さらにモニカ・ベルッチ裕木奈江まで出演してるんですよ。もちろん監督リンチも相当出張ってます!

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二つの側面を持つ物語

物語は二つの面を持ちながら進行します。暴力と超常現象に満ちたダークな側面と、素っ頓狂なユーモアとシュールな笑いに満ちたコメディタッチの側面です。そしてこの二面性は、もともとツインピークスのドラマにあった特色であり、さらにはリンチの持つセンスでもあると言えるでしょう。

この新シリーズは、前作の25年後であると同時に、その25年が空白だったかのような直に地続きな物語展開がユニークでしたね。さらに、映画版『ローラ・パーマー最後の七日間』の意味不明だった展開に、なんときちんとした説明が用意されてさえいたのでびっくりしました。

とはいえこうして全話を観終っても、お話を全部理解したとはとうてい言えません。最初に「リンチ作品は訳が分からなくて当然」みたいな書き方をしましたが、実はリンチ作品というのは一見訳の分からない構成を再構築してみると、きちんと筋道だった物語であることが分かる仕組みになっていて、難解ではあるにせよ決してメチャクチャなことをしているわけではないんです。リンチのこの謎めいた構成がまたリンチ作品を読み解く楽しみでもあるんですね。

そういった部分で、一回観て終わりでは無くて何度も観て新たな発見を楽しむことができるのがこの新シリーズということができますね。同時にリンチのダークなアート趣味に彩られた映像は何度でも観てその妖しさを堪能したくなるものですから、まさにリピートに最適な作品だと言えるでしょう。

さらにこの新シリーズでは、映画では出来ない事とこれまでTVドラマでは出来なかったことの両方を成し遂げているという点で、非常に斬新かつ優れた作品として完成しているんじゃないでしょうか。

それにしてもこの新シリーズ、無意味にエロくて艶めかしい美女が次から次に出てくるんですよ!まあリンチの趣味なんでしょうが、こういった部分でも十分楽しめたドラマでしたね!

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TWIN PEAKS: LIMITED EVENT SERIES (2017 SOUNDTRACK/SCORE)

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TWIN PEAKS: MUSIC FROM THE LIMITED EVENT SERIES (2017 SOUNDTRACK) [CD]

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