2017年を振り返るならまず引越しのことを書かねばならない

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今年2月に引っ越しをしたのだ

毎年年末には1年の総括をブログに書き出していたが(そしてそれらはたいていたいしたことのないことばかりだったが)、今年2017年に関しては、なによりも2月に決行した引越しのことを書かねばならないだろう(しかし引越しとは”決行”なのか?)。これを書かなければ今年を語ったことにならないからだ。

いや、引越しだなんて、たいていの方なら一つや二つ、あるいは三つも四つも経験されているだろうし、確かに大変だとはいえ、そんな大仰に騒ぐことじゃないんではないかと思われるかもしれない。だが、オレの場合はちょっと事情が違う。オレの今回の引越しというのは、以前のアパートに住み始めて以来実に37年振りの事だったからである。そしてその理由は「立ち退き」というものだったのだ。

大東京大四畳半生活

オレが上京したのは高校卒業後の18のときで、その時は新聞奨学制度で美術の専門学校に通いながら住み込みの新聞配達生活をしていた。最初は東京都江東区門前仲町。しかしここで店主と意見が対立して東京都葛飾区の新小岩に異動になる。オレはこの新小岩で精神的に病んでしまい、新聞配達も学校も辞めることになる。この間たった7ヶ月。その後渋谷区恵比寿に住む伯父のアパートに居候になり、その伯父の紹介で品川区のとある町のアパートに住むこととなった。つまりオレは上京して1年にも満たないうちに4回住処を変えていたのだ。

こうしてオレが一人住まいを始めたアパートは風呂なしトイレ共同の四畳半だった。今では骨董品めいているが当時(つまり40年近く前)には割りと当たり前によくあった。そして、恥ずかしながらここで白状するが、オレはこの風呂なしトイレ共同の四畳半に37年間、55歳のいい年したおっさんになるまで住んでいたのである。

何故か、というとこれはもう面倒だったから、というしかない。それと最初は、上京の理由だった就学が破綻した以上、とりあえず仮の宿としてここに住んでいるだけなのだ、という意識があった。東京に住む理由など何一つない以上、いつか実家に帰ろうと思っていたのだ。ところが性格の物ぐささと横着さが祟り(まあ両方同じ意味だが)、ずるずると驚異的な年月をここで過ごすことになったというわけだ。

その間中小企業に就職もし(29歳のときだ。それまでバイト生活だった。30になってまだバイトだとさすがに拙いだろうと就職した)、薄給ながらきちんとした固定給も貰い、微々たる額とはいえ貯蓄も試みたが、そうして生活がなんとなく安定してすら風呂なしトイレ共同の四畳半を引っ越すことをしなかった。さっき面倒だった、とは書いたが、その核心にあったのはいくら惨め臭かろうと生活を変えるのが怖かった、ということがあった。変えないことにより、望んでいなかった人生を歩んでしまうことになった自分の現実を直視するのを避け続けていたのだ。そしてその精神的逃避は、ひょっとしたらまだまだ数十年続いていたかもしれない。大家からアパートの立ち退きを要請されるまでは。

それは去年の暮れの事であった

立ち退きの理由、それはごく単純に、アパートの老朽化である。誰もが知るあの忌まわしい東北大震災の際、関東もまた甚大な震度の地震に見舞われたが、この時木造モルタル築56年の古アパートは歪んでしまい、あちこちで漏水やガス漏れ、床の陥没などが発見されたのだという。とはいえこれは立ち退き要請時に大家から聞いた話で、2階にあるオレの部屋には特にそれらしい影響は無かった。大家は1階の部屋に鉄骨の梁を張るなどして凌ごうとしたが、やはりガス水道の配管はいかんともしがたく、そもそも建物自体老朽化していたこともあって取り壊しを決め、それによりオレに立ち退きが要請されたのだ。

そのことが告げられたのが去年の暮れ。3月までに立ち退いて欲しいという。当然吃驚はしたが、それよりも、やっとここから引っ越す理由ができたな、とオレは思った。事情も事情であり、大家も大変恐縮していて、その時住んでいた部屋と同程度の部屋を見つけて斡旋もしてくれていた。ただまあ、なにしろ同程度(いや、大家も気を使ってくれたのだ)、その物件も多少広くはあったとはいえ風呂無し木造アパートであり、折角やっと引っ越すのだからと自分で人並みのアパートを探すことにして、大家の探してきた物件はお断りさせてもらった(ちなみに引越し時、大家は慰謝として10万円ほどの現金をよこしてくれて、これはなにかと入用だったので助かった)。

年の瀬に部屋探しなどしたくもなかったので、実際に行動を起こしたのは年が明け今年に入ってからだった。オレは引越し決行を2月に決めた。とはいえ、自分に住みたい町だの場所などはない。だからその時住んでいた近所で探してみた。実は旧アパートは通勤の便がよく、引っ越すことでその利便性を失いたくないというのがあった。数日間さらっと探し、これだと思えた2DKの物件があったので不動産屋に連絡を取り、部屋を見せてもらって2,3日後にそこに決定することを不動産屋に告げた。決めるのは早かったのである。家賃も一般的に言われている自分の月給の3割前後。最適の物件とはいえないにしても自分の給料ではこんなものだろうと妥協した。

段ボール箱40個だった

その後の引越し準備のどたばたは、まあ誰でも経験のあることだろうから、特に書かない。ただ、四畳半に住んでいたくせに、本とCDとDVDの数が半端ではなかった。相当捨てたにもかかわらず、それでも段ボール箱40個となり、さらにまだまだ増え続けた。それまで使っていた古びた家電製品や家財道具も殆ど捨てて(たいした量ではなかったが)、転居後にその殆どを買い直した。全部新しくして一からスタートしたかったのだ。引越しの準備から終了まではネットで調べるとたいていのことが載っていたのでそれほど苦労はなかった。

ただ、たったひとつだけ納得が出来なかったのはネットの移転・開通の遅さである。電気ガス水道転居届けなどは案外手続きが簡単だったが、それらを簡単にしてくれた(または簡単に情報を引き出せた)ネットだけが、申込みから開通までなんと50日掛かったのだ。先端である筈の業種が一番鈍重だったというのが皮肉に思えたが、ネット漬けの日々を送っていた者にとってスマホでしかネットを覗けない50日間はさすがにうんざりさせられた(後半慣れたが)。

そして新居だった

引越しをしたのが2月11日土曜日。そしてそれから数ヶ月間、週末になる毎に生活で使う細かな雑貨を買い揃え続け、ネットで(スマホで)家具を注文し、それらを組み立て続けた。慣れない大工仕事に肩を痛め夏になるまで肩が上がらなかった。そんな毎日が終わってやっと新居に馴染んでみると、これがもう、ひたすら居心地がいい。こんなに居心地がいいのならなぜ早く引っ越さなかったのかと思ったほどだ。なにか人生を無駄にしてしまったとすら思えた。まあ、オレの人生というのは、大概こんな具合に、無駄だらけではあるのだが。

これら引越しにまつわるあらゆる事は確かに大変ではあったが、最初に書いたように、社会で暮らす多くの方にとって、それらは粛々と行われるだけのことであって、大騒ぎすることでもないのだろう。ただ、50を過ぎてなお自分の現実を御座なりにしモラトリアムめいた生活を続けていたダメ人間のオレには一大事ではあったのだ。だが、オレはダメ人間ではあるが、それでも、やることはやったと思う。そういや引っ越して2ヶ月を過ぎた頃に大阪に住む長年付き合いのあるネット友達が東京に出張で来た際、家に泊めるなどしてもてなしたことがある。オレなりに頑張って整えた部屋に人を招くのはちょっと誇らしかった。その時オレは、そんなに自分はダメでもないな、となんとなく思えたのだ。

これらがオレの、今年の2月を前後して行われた引越しのあらましである。長々と書いたが、なにしろ今年は、この引越しが最大の出来事だった。そしてやっと引っ越したこの部屋で、来年一年目を迎えるというわけだ。来年も、そしてその後の年も、いい年にしてゆきたい。

というわけで皆さん今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

2017年オレ的映画ベストテン!!!

2017年も押し迫り、今年も「オレ的映画ベストテン」の時期がやってまいりました。

とはいえ、……いやー、今年もあんまり映画観てません。去年のベストテンでも似たようなことほざいてましたが、今年前半はなにしろ引越しとその後の整理で映画館どころではなかったんです。さらに今年暮れからは仕事やらなにやらが忙しくなり話題作がまるで観られませんでした。

そんな訳ですので「2017年公開映画の厳選された10作」とかいうものではまるでなく「オレがぽつぽつ観た数少ない映画の中から適当に選んだ10作」程度のものだと思われてください。という訳でいつもながらの言い訳塗れの前フリはここまでにして行ってみよう!! 

第1位:ブレードランナー 2049 (監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 2017年アメリカ映画)

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"「生の虚しさと儚さ」「生きる事の孤独」「自分が何者であるのかという不安」。これら『ブレードランナー』の孕むテーマは、人が生きる上で直面する普遍的な問い掛けであり、不安ではないか。そしてだからこそ、『ブレードランナー』の物語は我々の心を捉え、歴史を超えて語り継がれてきたのではないか。そして、監督を変え、35年の月日の末に完成した『2049』も、この根底となるテーマは全く変わっていない。それを活かせていたからこそ『2049』は1作目の世界観ときっちりリンクした正統な続編として完成したのだ。"(ブログ記事より)

第2位:T2 トレインスポッティング (監督:ダニー・ボイル 2017年イギリス映画)

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"無様なだけでしかなかった自分の人生に、年老いることにより、落とし所を見つけられるか見つけられないか、それがこの『T2』という物語だったのだ。物語では、クライマックスにおいて、その「落とし所」を、見つけられる者も、見つけられない者もいる。だが、人生が遣る瀬無く、そして、その遣る瀬無い人生を生きてきてしまったことに、誰もが変わりない。その遣る瀬無さが、映画を観ていたオレの胸に、まるでブーメランのように、深々と突き刺さってきたんだよ。人生を選べたか、選べなかったか、実はそんなことは重要じゃないんだ。ただ、何をしたとしても、何をしなかったとしても、それでもどうしても心に湧き起らざるを得ない遣る瀬無さが、オレには、堪らなく痛かったんだよ。"(ブログ記事より)

第3位:スター・ウォーズ/最後のジェダイ (監督:ライアン・ジョンソン 2017年アメリカ映画)

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"『最後のジェダイ』はその中で、ジェダイという名の【救世主】の喪われた世界と、そのジェダイを新たに継ぐべき者が生まれようとする過渡的な状況を描く作品だ。それは【救済】と【希望】がまだ手探りでしかない状況なのだ。だからこそ否応なく物語は熾烈であり過酷なのだ。それは、夜明け前の漆黒の暗闇を描く作品だからなのだ。そしてこの状況は、『最後のジェダイ』を新3部作の中盤の在り方として最も正しく、最も正統的なドラマとして成立させているのだ。善が悪の中に今まさに飲み込まれようという混沌と混乱の渦中にありながらも、【新たなる希望】を模索して止まない物語、これこそがスター・ウォーズではないか。こうして『最後のジェダイ』は、新3部作の中盤にありながらスター・ウォーズ・サーガの新たなる傑作として堂々と完成したのである。"(ブログ記事より)

第4位:トリプルX 再起動 (監督:D・J・カルーソ 2017年アメリカ映画)

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今回のベストテンも結構しょーもない映画を沢山挙げているんですが、この『トリプルX 再起動』はその中でも群を抜いてしょーもない映画でしたね。もうホント支離滅裂で荒唐無稽で馬鹿馬鹿しいアクション映画なんですが、でもねー、なんか好きなんっすよーこれー。映画の出来なんか全然たいしたことないんですが、ドニーさんとトニー・ジャーコレステロールハゲと並んで立ってるだけで嬉しくなっちゃうじゃないですか。ルビー・ローズさんも素敵でしたよねー。でもね、なにより、インドの宝石・ディーピカー・パドゥコーン様が出演なさっている、ただこれだけで30点ぐらいの映画が1億点ぐらいまで跳ね上がるわけですよ。ディーピカー様の御姿を日本の劇場で観られる。これだけでも僥倖と言わねばならないし、インド方向に五体投地したくなってしまうわけですよ。

第5位:オン・ザ・ミルキー・ロード (監督:エミール・クストリッツァ 2016年セルビア・イギリス・アメリカ映画)

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"『オン・ザ・ミルキー・ロード』はそれら戦争が終わり生き延びた人々が、その未来に何を負って生きるのか、を描こうとしたのではないか。戦争が終わり平和が訪れても、生き延びた人々が喪ってしまったものは決して還ることはない。その平和は、安寧なのではなく、喪われたものの記憶と過ごさざるを得ない、終わることの無い喪の時間であると言うこともできるのだ。しかし、人は過去にのみ生きることはできない。何がしかの未来へと自らを繋げなければならない。そしてそれは、生命の溢れる"ミルキー・ロード"へと至る道でなければならないのだ。あのラストには、そういった意味が込められていたのではないかとオレなどは思うのだ。"(ブログ記事より)第6位:エンドレス・ポエトリー (監督:アレハンドロ・ホドロフスキー 2016年フランス、チリ、日本映画)

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"『リアリティのダンス』がホドロフスキーの「胎動篇」だとすると、この『エンドレス・ポエトリー』は「躍動篇」だということができる。前作において中心的に描かれた父親との軋轢の物語は完結し、ここでは個人としてのアレハンドロがどのように人生と芸術に目覚めてゆくかが描かれるという訳だ。しかし、「父と子の軋轢」というある種普遍性を帯びた前作に比べ、この作品はより個人的であり、同時に「芸術とは何か」という抽象的な物語になっており、実の所”芸術”に興味が無ければ放埓の限りを尽くしたボヘミアンな群像描写に「この人たちナニやってるの?」という感想で終わってしまうきらいもある。とはいえ、それを抜きにすれば次々と表出するマジカルな映像の妙にとことん堪能できる作品だろう。"(ブログ記事より)

第7位:キングコング:髑髏島の巨神 (監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ 2017年アメリカ映画

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"確かに見た目はドデカイ猿なんだけれども、なんかこう荒ぶる神みたいに獰猛かつ神々しいのよ!ストーリーでも実際そういう扱いだったが、「単にデカイ猿」以上の超自然的なものを醸し出してるのよ。だからこそ堂々と「モンスター」なわけなのよ。で、このコングが、映画始まってそうそうガンガン出てきやがるのさ!『ジョーズ』やギャレゴジみたいに気を持たせつつ徐々に姿を現したりなんかしないんだよ!「自分らコング映画観に来よったんやろ!思いっきり観しちゃるわ!とことん観るとええねん!(適当な関西弁)」てな感じで出し惜しみしないんである。まずここがいい!いやしかしコングだけなら飽きてしまうかもしれない。そこを「コングだけちゃいまっせ!おぜぜ貰った分ぎょうさんサービスしたるわ!(適当な関西弁)」とばかりに奇っ怪な巨大怪獣が総出演なのですよ!"(ブログ記事より)

第8位:ベイビー・ドライバー (監督:エドガー・ライト 2017年イギリス・アメリカ映画)

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"音楽が主人公のひとつのアイデンティティとなり、音楽が物語に豊かさを与え、そしてその音楽が物語をドライブさせてゆくといった展開はもともと監督エドガー・ライトの真骨頂だった。エドガー・ライトは自身のそういった資質と趣向を120%活かした映画を撮りたいとかねてから願っていたに違いない。この『ベイビー・ドライバー』は銀行強盗を中心に据えたクライム・サスペンスの形を取っているが、むしろ「最高のBGMに相応しい最高の映像と物語」を追及した時、それがクライム・サスペンスに行きついたという事ではないのだろうか。"(ブログ記事より)第9位:ワンダーウーマン (監督:パティ・ジェンキンス 2017年アメリカ映画)

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もうね。なんと言ってもガル・ガドット様ですよ。例え映画自体に賛否両論あったとしても、ガル・ガドット様がたまらなく美しい」という事実だけは、これはもう決して覆すことは出来ない事なんですよ。そのたまらなく美しいガル・ガドット様がですね。露出度の多いコスチュームを着てですよ。飛んだり跳ねたり、とてもとても激しい動きをしてみせるんですよ。殴ったり蹴ったり、それはもう、とてもとても激しい動きですよ。この、「たまらなく美しいガル・ガドット様」の「とてもとても激しい動き」を観ることができる、それ以上の、いったい何が必要だというのでしょう?

第10位:ドクター・ストレンジ (監督:スコット・デリクソン 2017年アメリカ映画)

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実はこの『ドクター・ストレンジ』、劇場で観て無いんですよ。物凄く観たかったんですが、公開時丁度引っ越し真っ盛りで、映画どころじゃなかったんですね。で、やっと落ち着いた頃ソフトが出たんで購入して観たんですが、いやー、楽しかったー。限りなくカルトめいた物語にもニヤニヤしてしまいましたが、巨大な万華鏡のようにクルクルと姿を変えてゆくビル群とかキラキラと宙に浮かぶ黄金の曼陀羅とか「なにがどうなってんだ」と驚嘆してしまうVFXが綺麗で綺麗で見とれてしまいましたね。これ3Dで観たかったなあ。それにしてもカンバーバッチさんがアメコミ・ヒーロー演じるなんて想像もできませんでしたが、これが意外とハマッていたのにもビックリさせられました。

カンフーでヨガでインディー・ジョーンズ!?~映画『カンフー・ヨガ』

■カンフー・ヨガ (監督:スタンリー・トン 2017年中国・インド映画)

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中国4000年の歴史・カンフーとインド6000年の歴史・ヨガが合体したッ!?両方合わせて1万年ッ!?というアクション映画『カンフー・ヨガ』でございます。

主演は誰もが知るカンフースター、ジャッキー・チェン。しかし映画を観始めてふと気付きましたが、オレ、ジャッキー・チェンの映画を劇場で観るの、初めてかもしれない!?そもそもこれまでの人生でジャッキー映画を殆ど観ていない!?むしろ、今回悪役で出演しているインド俳優ソーヌー・スードが出てるインド映画のほうが沢山観てる!?

世の中には「『天井桟敷』と『ポチョムキン』も観ていないのに映画語るなよ?」みたいなシネフィルな方もいらっしゃるようですが、オレの場合「ジャッキー映画も観て無いのにカンフー映画やアクション映画のことは語れないよね?」と言われても返す言葉もございません(まあ語るつもりもないけど)。

そんなわけでジャッキー映画を殆ど観ていないオレがなんで今回この『カンフー・ヨガ』を観たかと申しますと、そりゃもうアナタ、予告編のインドテイストに「うおおおインドだインドだ!インドが出て来る映画は観なきゃダメなんだッ!?」と激しく舞い上がったからなのでございます。世に言う【インド脳】というヤツでございます。

お話は中国に住む考古学者ジャック(ジャッキー・チェン)がインドの考古学者アミスタ(ディシャ・パタニ)から太古に失われたインドの財宝探しを持ちかけられ、中国・ドバイ・インドと大冒険を繰り広げるというもの。しかしそんなジャック一行にインドの大富豪ランドル(ソーヌー・スード)が財宝を奪おうと迫りくるのです!

いやそれにしても冒頭、財宝の来歴を描く古代インドの戦争の描写が既にして『バーフバリ』していて驚きましたね!太古に繰り広げられた架空のインド大戦を描くインド映画『バーフバリ』は2部作になっており、第1部『バーフバリ 伝説誕生』に続く第2部『バーフバリ 王の凱旋』は12月29日から日本公開されますのでもんの凄く面白いからみんな是非観てくれよ!!

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あ、『カンフー・ヨガ』でしたね。財宝探しに出向くジャック一行でありますが、これがもう既にして『インディ・ジョーンズ』なんですな。中盤からの展開もあんまり『インディ』してるもんですからわざわざ映画の中で「『インディ・ジョーンズ』みたい」なんて言ってるぐらいです。しかしむしろ「『インディ』によく似た『ロマンシング・ストーン』」ぐらいのつもりでこの映画を観ればいいのだと思います。

とはいえ、「『インディ』ぽい」とは言いつつ、謎解きやら財宝発見やらは「こんなに簡単でイイの?」と思っちゃうほどポンポン進んでしまいます。実はその辺は主眼じゃなくて、その後の財宝を巡る大奪還劇とそれに伴うアクションの面白さがこの作品の見所です。そして遂に明らかになる歴史の陰に隠されたあるものの全貌へと物語は大いに盛り上がってゆく訳ですな。

正直シナリオはご都合主義だし矛盾も多いのですが、そんなことよりも世界を股に掛けた大冒険のロケーションの楽しさと、敵味方分かれてのカンフーアクションの痛快さにとことん特化して作られた作品だと感じました。そしてもちろんジャッキー・チェンのスター性、そしてそのコミカルな味わいを徹底的に楽しむ作品だと言うことが出来るでしょう。ヤヤコシイお話などまるでなく、老若男女誰もがとことん安心して観られる娯楽作という事です。

インド俳優が多数出演してインドも一部舞台となる作品ではありますが、当たり前っちゃあ当たり前なんですが基本的にはやはり中国/香港映画の味わいが勝る作品ではありましたね。そんな中、日本じゃ『ダバング 大胆不敵』の公開作があるソーヌー・スード兄いは黒光りしたインドテイストをギンギンにばら撒いてたし、女優のディシャ・パタニもいい具合にインド美女ぶりをアピールしてましたね。このディシャ・パタニ、実は大ヒットしたインド映画『M.S.ドーニー ~語られざる物語~』にも出演されてまして、おまけに次回作はあのタイガー・シュロフ主演の『Baaghi 2』だっていうじゃありませんか!?映画には歌と踊りのシーンもありますし、そんな部分でインド映画ファンにも嬉しい『カンフー・ヨガ』でありましたよ。

↓お美しいディシャ・パタニ様

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映画『カンフー・ヨガ』 本予告

 

今年面白かったエレクトロニック・ミュージックやらなにやら

※注:レビューはブログに書いた当時のままで掲載していますので若干現在と異なる記述があります

■Migration / BONOBO

MIGRATION
この[MUSIC]ジャンルの記事(というか単なるメモなんだが)を日記に更新するのは2ヶ月ぶりとなるが、それはひとえに2月を前後して引っ越しをしていたからだった。引っ越し前に申し込んでいたネットが開通したのが結局それから50日後で、音楽情報を全くチェックできなかったのである。そもそも試聴ができないしDL購入もできない。だからほぼ1か月余り、手持ちの音源ばかり聴いていた。そしてその中で、引っ越し間際に購入したBONOBOのこのアルバムを最も聴いていた。BONOBOことサイモン・グリーンは1999年から活躍するエレクトロニック・ミュージック・アーチストで、『Migration』は今年1月にリリースされたニューアルバムだ。実のところBONOBOは以前アルバムを1枚聴いたくらいでそれほど印象に残っていなかったが、この『Migration』は強く心に残る作品だった。「エレクトロニック・ミュージック」という言葉で一括りにできない芳醇な音楽性を兼ね備えているのだ。非常に繊細であり同時に洗練されており、時にメランコリックでありセンチメンタルであるその音は、強烈なアレンジメントとコンポジションの才能が生み出したものであるであることは確かだ。そしてあの2月、あるいは3月、このBONOBOのアルバムを多く聴いていたのは、引っ越しも含めあれこれと疲弊していた自分の心に、これらの音がひんやりとよく沁みたからなのだろう。特にヴォーカル曲『Surface』の美しさと切なさはひとしおだった。とりあえずこれまで今年聴いたアルバムの中では十指に入る名作であることは確実である。 《試聴》

MIGRATION

MIGRATION

 

■Drunk / Thundercat

Drunk
このThundercat、ジャズに暗いオレは全く知らなかったのだが、「新世代ジャズシーンを牽引するロサンゼルスの天才ベーシスト」という人なのらしい。とはいえ、そんな肩書など知らなくても、そしてジャズを殆ど聴かないオレにとっても、このアルバムはとても面白い。一聴して非常に引き締まったジャズ・ファンクのテイストではあるが、なんだかこう、茶目っ気があるサウンドで、そして美しく、さらに楽しい。ジャズ門外漢のオレですら、「これはなんなんだ?」と聴き入ってしまう。傑作。 《試聴》

Drunk

Drunk

 

■The Distance / Gaussian Curve

The Distance
Gaussian Curveはアムステルダムを拠点として活躍するGigi Masin、Jonny Nash、Marco Sterkの3人によるユニットだ。このアルバムは彼らの3年振りとなる2ndアルバムだというが、今までこのユニットのことは知らなかった。分類としてはニューエイジ・サウンドということになるのだそうだが、このアルバムに関してはIDMなテクノとどう違うのか分からない。とはいえ、多分レトロ機材も使用しながら構成したと思われるその音は非常に澄み渡ったアンビエント/チルアウト作品であり、リズムボックスや時折聴こえるギターの旋律の使い方からはかつてのファクトリー・レーベルの鬼才、ドルッティ・コラムを思わせるものすらある。このあたりのしっかりした美しいメロディの存在と楽器音の絶妙な使い方が凡百のアンビエントと違う部分だろう。これはいつまでも聴き続けたい名盤の一つと言ってもいい。 《試聴》

The Distance

The Distance

 

■Silent Stars / Jimpster

SILENT STARS
最近最も繰り返し聴いているのがJimpsterによるこのアルバム、『Silent Stars』。Jimpsterはこのアルバムで初めて知ったアーチストだが、UKのテックハウス・プロデューサーとして20年以上ものキャリアを持っているのらしい。一言でテックハウスと言っても様々ではあるが、個人的には打ち込み主体で機械的に漂白を掛け過ぎたハウスといったイメージもあり、作業用で聴くならまだしもアルバムとして感銘を受け愛聴する程のアーチストはそれほど思い浮かばない。しかし、このアルバムは違った。十分にメロディアスであり、さらにドラマチックでロマンチックでもあるのだ。サンプリングされた個々の音に対する配慮が実に行き届いており、それがシンフォニックに響き渡る様は非常に有機的な音の結合を感じる。R&Bの熱情とジャズのメランコリーも加味されながら、かといって情感の高さのみに振り切れることなく、マシーンミュージックのクールな美しさも兼ね備えている。これはもう非常に知的な音楽構成を練っているからということなのだろう。特に『The Sun Comes Up』では、バレアリックな落ち着きと長閑さから始まりながら、中盤からうねるようなコーラスがインサートされ荘厳に盛り上がってゆく。こういった技巧の数々が堪能できる非常に優れたアルバムなのだ。これは今回の強力プッシュ盤だ。 《試聴》 

SILENT STARS

SILENT STARS

 

 ■Loop-Finding-Jazz-Records / Jan Jelinek

Loop-Finding-Jazz-Records
Jan Jelinekが2001年にリリースした1stアルバムのリイシュー。このアルバムは古いジャズのアナログ・レコードをサンプリングして構築されたものだというが、これが実に素晴らしい。いわゆるジャズ・サンプリングというとヒップホップあたりでは割とお馴染みの手法なのだろうが、このアルバムでは相当なトリートメントを施しているのか、音源がジャズなのにもかかわらず聴こえてくるのはダウンテンポミニマル・テクノであり、さらに言うならこれはダブ・ミュージック化されたジャズという表現もできる。また十分にアンビエント的な味わいもあり、クールダウンにも最適だ。15年以上たっても全く古びていないばかりか今でも十二分に新しい。それにしてもこんなアルバムの存在を今まで知らなかったとは。名作であり名盤なので是非聴いてください。 《試聴》

Loop-Finding-Jazz-Records

Loop-Finding-Jazz-Records

 

■Mulatu Of Ethiopia / Mulatu Astatke

Mulatu of Ethiopia
いつもは殆どエレクトロニック・ミュージックばかり聴いているオレだが、実は最近、部屋でジャズを聴くことも多くなってきた。聴くというよりも、単にBGMとして優れているから鳴らしているだけで、全く造詣はないし、思い入れもないのだが。そんなオレが最近部屋でよく流しているジャズ・ミュージックの一つがMulatu Astatkeによるアルバム『Mulatu Of Ethiopia』、いわゆる「レア・グルーヴ」モノである。Mulatu Astatkeは1943年エチオピア生まれのミュージシャンで、ヴィブラフォン、パーカッションを操る打楽器奏者だ。「エチオ・ジャズ」の生みの親と呼ばれ、現在も現役で活躍中のジャズ親父である。詳しいバイオなどはネットで調べてもらうとして、なぜジャズに疎いオレがよりによってエチオ・ジャズなんかを聴いているのかというと、その独特な音が面白かったというのがある。まず全体的に妙にこってりしている。そしてホーンの音がやはりねちっこく、さらにセクシーだ。音も十分に黒々している。詳しくはないがいわゆるアフロ的な音だということなのかもしれない。オレの知るようなジャズの音がキリッと冷やしてライムを加えたジンのような無駄のない味わいだとすると、このMulatu Astatkeの音はカルーアリキュールにホットコーヒーとホイップクリームを加えたティファナ・コーヒーのような味わいだ。燻されたような甘い匂いが漂っている。しかし全体を見渡すとこれはこれでジャズの音に間違いない。そういった"臭み"の面白さがオレがこのアルバムを気に入った理由である。このアルバムは7曲のステレオ・バージョンに同じ7曲のモノラル・バージョンが同時に収められているが、やはり若干響きが違う。さらに日本版には9曲分のセッションのダウンロードコードが付いていてちょっとお得だ。 《試聴》

Mulatu of Ethiopia

Mulatu of Ethiopia

 

 ■Fabric 94 / Steffi/Various

STEFFI

DJMIXの老舗シリーズ「Fabric」は常にその時々の最新の人気DJを起用し、オレもちょくちょく購入して聴いているが、今回のDJ、Stiffiによる『Fabric94』はこれまでのシリーズの最高傑作なのではないかと思っちゃうほど素晴らしい。基本はテクノ・エレクトロニカなのだが、アルバム全体の統一感が段違いなのだ。アゲ過ぎずサゲ過ぎず、一定のテンションとムードをラストまで淀みなくキープし続け、全15曲のMIXながらあたかもトータル1曲の組曲のように完成している。DJMIXの醍醐味はまさにそこにあるのだが、ここまで高いクオリティを維持しつつMIXしている作品も珍しい。今作は全作新作のエクスクルーシブトラックで構成されているが、調べたところStiffiがあらかじめアルバム全体のイメージを各プロデューサーに伝え、それによりこのトータル感が生まれたのらしい。そしてその「全体のイメージ」となるものがWarpのクラシックCDシリーズ『Artificial Intelligence』だったのだという。おお、『Artificial Intelligence』!フロア向けハードコアテクノのカウンターとして生み出されたIDMの草分けとなったシリーズであり、美しく繊細で静謐で、強力に内省的な作品が数多く並ぶ画期的なシリーズだった。特にオレはカーク・ディジョージオの各名義の作品の多くに心奪われていた忘れられないシリーズである。この『Fabric94』はその正統な血筋を持ったアルバムであり、『Artificial Intelligence』のハート&ソウルを現代に蘇らそうとした傑作なのだ。個人的には今年リリースされたエレクトロニック・ミュージック・アルバムの中でもベスト中のベストと言っても過言ではない名盤の誕生だと思う。 《試聴》

STEFFI

STEFFI

 

■ De-Lite Dance Delights / DJ Spinna/Various

DE-LITE DANCE DELIGHTS (日本独自企画)

クール&ギャングを見出したことでも知られる70~80年代の名門ファンク/ディスコ・レーベルDe-Liteの珠玉作をNYで活躍するDJ SpinnaがMix!いやなにしろディスコなんだけれども、これがもう一周回って素晴らしい!伸びやかなヴォーカル、カリッとクリスプなギター、エモーショナルなストリングス&ホーン、キャッチ―なメロディ、ファンキーなリズムはひたすら歯切れよく、そしてどことなくお茶目。どれもこれも音のクオリティが非常に高い。この心地よさはまさに極上。いやあ、ディスコ、侮りがたし!今回の強力お勧め盤。《試聴》

DE-LITE DANCE DELIGHTS (日本独自企画)

DE-LITE DANCE DELIGHTS (日本独自企画)

 

■Late Night Tales / Badbadnotgood/Various

Late Night Tales - BADBADNOTGOOD - [輸入盤CD / アンミックス音源DLコード] (ALNCD46)_475

様々なアーティストがダウンテンポ曲中心のMIXをアルバムにまとめた人気シリーズ「Late Night Tales」の最新作キュレーターはヒップホップ・ジャズ・ファンク・カルテットBadbadnotgood。というかこの「Late Night Tales」ってシリーズもBadbadnotgood自体も全く知らなかったんだけど、いいわ、これ。サイコーに和むわ。よくもまあここまで和みまくる曲ばかり集めたものだなあ。これも今回の大プッシュお勧め盤。 《試聴》

Late Night Tales - BADBADNOTGOOD - [帯解説 / アンミックス音源DLコード / 国内仕様輸入盤CD] (BRALN46)

Late Night Tales - BADBADNOTGOOD - [帯解説 / アンミックス音源DLコード / 国内仕様輸入盤CD] (BRALN46)

  • アーティスト: BADBADNOTGOOD,バッドバッドノットグッド
  • 出版社/メーカー: Beat Records / Late Night Tales
  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: CD
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■New Energy / Four Tet

New Energy

エレクトロニカ・ファンなら人気実力共に誰もが認めるFour Tetだが、オレも嫌いではないにもかかわらずどうも「Four Tetの音」というものをすぐイメージできないでいる。いやそりゃあ変幻自在だからといえばそれまでだが、というよりも所謂"エレクトロニカ"な音からこの人の音というのはスルッとすり抜けているからなのかなあ、という気がしないでもない。そのデビューがポスト・ロック・バンドであったり、ジャズや第3世界の音に接近したりフォークトロニカの第一人者と目されたり、こうして並べてみても確かにエレクトロニカの中心にいるわけではない人なのだが、中心にいないからこそ見えるエレクトロニカの音をこの人は作り続けているのかなあ、などとなんとなく思いつきで言ってみたりする。Four Tetのニューアルバム『New Energy』ではアンビエントダウンテンポな曲とミディアムテンポの曲とが半々で、最初に聴いた時はやはりどうもトータルなアルバムイメージがすぐ湧かなかったのだが、聴き続けてみると、ああこれはそれぞれが違うスケッチやリリックのようなもので、DJMix聴いてるみたいに「トータルイメージがー」とか言って聴くべきじゃなかったんだな、と気づかされた。そして1曲1曲に注視しながら聴き、その差異と共通項を見出すことで、Four Tetの全体像がふわっと浮かんでくるのがこのアルバムなのかな、とも思った。こうしてそれぞれの曲の輪郭を把握してみると、いややはり単純に、よく出来たいいアルバムですねこれは。非常に内省的な作品集であり、一つ一つの音をきわめて注意深く扱うことによってとても繊細な構造の音として完成している。それは効果的に使用されたアコースティック音に顕著だろう。抑制されつつもやはりエモーショナルなのだ。そしてこの人の音は、なんだか優しいな、という気がする。  《試聴》

New Energy

New Energy

 

■Glass / Aparde 

Glass

”最近聴いたエレクトロニック・ミュージック”の覚書をブログにぽつぽつ更新しているが、全体的に見渡してみるとオレがよく聴くのは静かで綺麗目、あるいはメランコリックで、ダウンテンポ気味の音が多いなあという気がする。いわゆるリスニング向けというのになるのか。フロア向けの音も聴くけれども、割合としては多くない。多分エレクトロニック・ミュージックに興奮ではなくリラックスやリフレッシュを求めているんだろう。まあオレも結構なジジイなので、和みたい・寛ぎたいってことなんですな。いや、いろいろ疲れてるんですよ……。そんな癒されたいジジイであるオレが最近外で・あるいは部屋でよく聴いているのがドイツのApradeによるこの1stアルバム『Glass』。緩やかなダウンビートに浮遊感たっぷりのシンセと抒情的なピアノが被さり、とても元気の無い切なげな歌声で全体を〆る、という実にオレ仕様のリスニング向けアルバムとなっている。ホラー映画の1場面みたいなジャケットも鬱っぽくていい。というか、オレはこのぐらいの静かでささやかな音が最も好きなんだろうと思う。あんまりささやか過ぎて聴きはじめたと思ったらいつの間にか終わっている。強い主張が無い音とも言えるが、だからこそふわふわと空気中に漂わせておける。そんな部分が心安らぐ。いや、いろいろ疲れてるんですよ……。 《試聴》

Glass

Glass

 

■Ambient Black Magic / Rainforest Spiritual Enslavement

Ambient Black Magic

ああ、雨だ。雨が降っている。Rainforest Spiritual Enslavementのアルバム『Ambient Black Magic』は、どこまでも、ひたすら、雨が降りしきっている。CD2枚組のこのアルバムのCD1は34分に渡るアンビエント・ダブ・テクノ『Jungle Is A Shapeshifter』1曲のみが収録されているが、幽玄なドローン/ダブ音響の背後で、しとど降る雨の音が34分のほぼ全編に渡り延々と鳴り止むことなく響き続けているのだ。「熱帯雨林の精神的な奴隷化」といユニット名、そして黒々とした木の枝の陰に身を潜める大蛇が描かれたアルバム・ジャケット、これらからも、人気のない鬱蒼としたジャングルにどこまでも降りしきる雨、といったイメージが補強され、さらにその音は低音がドロドロと響き渡り続けるドローン/ダブであり、それらから、得体の知れない秘境に入り込んでしまったかのような錯覚すら憶えさせる音となっているのだ。そしてその音を聴くにつれ、自分がたった一人緑の魔境に取り残されたかのような不安感を感じるのと同時に、数多の生命が息吹く大自然に包まれそれと一体化したような安心感、といったアンビバレントな感覚に捕らわれる。こういった感情を呼び覚ます音の没入感が非常に優れた作品なのだ。そしてCD2の1曲目『Beyond The Yellow-Spotted Bamboo』ではさらに17分間に渡り激しい雨に包まれることとなるのだ。《試聴》

Ambient Black Magic

Ambient Black Magic

  • アーティスト: Rainforest Spiritual Enslavement
  • 出版社/メーカー: Hospital Productions
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: MP3 ダウンロード
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最近聴いたエレクトロニック・ミュージック

■Glass / Aparde 

Glass

”最近聴いたエレクトロニック・ミュージック”の覚書をブログにぽつぽつ更新しているが、全体的に見渡してみるとオレがよく聴くのは静かで綺麗目、あるいはメランコリックで、ダウンテンポ気味の音が多いなあという気がする。いわゆるリスニング向けというのになるのか。フロア向けの音も聴くけれども、割合としては多くない。多分エレクトロニック・ミュージックに興奮ではなくリラックスやリフレッシュを求めているんだろう。まあオレも結構なジジイなので、和みたい・寛ぎたいってことなんですな。いや、いろいろ疲れてるんですよ……。

そんな癒されたいジジイであるオレが最近外で・あるいは部屋でよく聴いているのがドイツのApradeによるこの1stアルバム『Glass』。緩やかなダウンビートに浮遊感たっぷりのシンセと抒情的なピアノが被さり、とても元気の無い切なげな歌声で全体を〆る、という実にオレ仕様のリスニング向けアルバムとなっている。ホラー映画の1場面みたいなジャケットも鬱っぽくていい。というか、オレはこのぐらいの静かでささやかな音が最も好きなんだろうと思う。あんまりささやか過ぎて聴きはじめたと思ったらいつの間にか終わっている。強い主張が無い音とも言えるが、だからこそふわふわと空気中に漂わせておける。そんな部分が心安らぐ。いや、いろいろ疲れてるんですよ……。 《試聴》

Glass

Glass

 

■Ambient Black Magic / Rainforest Spiritual Enslavement

Ambient Black Magic

ああ、雨だ。雨が降っている。Rainforest Spiritual Enslavementのアルバム『Ambient Black Magic』は、どこまでも、ひたすら、雨が降りしきっている。CD2枚組のこのアルバムのCD1は34分に渡るアンビエント・ダブ・テクノ『Jungle Is A Shapeshifter』1曲のみ。この曲の中心となる幽玄なドローン/ダブ音響の背後で、しとど降る雨の音が34分のほぼ全編に渡り延々と鳴り止むことなく響き続けているのだ。「熱帯雨林の精神的な奴隷化」というユニット名、黒々とした木の枝の陰に身を潜める大蛇が描かれたアルバム・ジャケット、これらからも、人気のない鬱蒼としたジャングルにどこまでも降りしきる雨、といったイメージが補強され、さらにその音は低音がドロドロと響き渡り続けるドローン/ダブであり、それらから、得体の知れない秘境に入り込んでしまったかのような錯覚すら憶えさせる音となっているのだ。そしてその音を聴くにつれ、自分がたった一人緑の魔境に取り残されたかのような不安感を感じるのと同時に、数多の生命が息吹く大自然に包まれそれと一体化したような安心感、といったアンビバレントな感覚に捕らわれる。こういった感情を呼び覚ます音の没入感が非常に優れた作品なのだ。そしてCD2の1曲目『Beyond The Yellow-Spotted Bamboo』ではさらに17分間に渡り激しい雨に包まれることとなるのだ。《試聴》

Ambient Black Magic

Ambient Black Magic

  • アーティスト: Rainforest Spiritual Enslavement
  • 出版社/メーカー: Hospital Productions
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: MP3 ダウンロード
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■A so We Gwarn / Dego & Kaidi

ソー・ウィー・グワン (SO WE GWARN)

ソー・ウィー・グワン (SO WE GWARN)

  • アーティスト: ディーゴ・アンド・カイディ,DEGO & KAIDI
  • 出版社/メーカー: MUSIC 4 YOUR LEGS IMPORT / SOUND SIGNATURE
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: CD
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Theo Parrishのレーベルからリリースされた4HEROのDEGOと相棒KAIDIによるアルバム。ジャズ、ソウル、ハウス、ヒップホップ、アフロミュージックといったジャンルを横断しながらグルーヴ感たっぷりのクラブ・ミュージックを展開する。どの曲もクオリティが高くブラック・ミュージック・ファンにもお勧めできる。 《試聴》 

■SKRS Prince Blimey Dub Reconstruction / Red Snapper

SKRS Prince Blimey Dub Reconstruction

SKRS Prince Blimey Dub Reconstruction

 

変態エクスペリエンス・ダブ・ミキサーSeekers Internationalが人力アブストラクト・バンド Red Snapperの『Prince Blimey』をひたすらバイオレントにミックス。全2曲のミニ・アルバムだがどちらの曲も18分前後、トータル36分間に渡りカオティックでエクスペリメンタルなジャズ・ファンクが鳴り響きまくる! 《試聴》 

■Bafana Bafana / Professor Rhythm

Bafana Bafana

Bafana Bafana

 

南アフリカのミュージシャンProfessor Rhythmが95年にカセットでリリースしたレア音源のリイシュー。アフリカーンな陽気さで演奏されるチープながらどこか味わいの深いシンセ・ポップだが、そこここにユーロ・ニューウェーヴの匂いがするのが面白い。 《試聴》

■All About / Bert H

All About

All About

 

 ドラムンベースには一時物凄くはまった時期があって、あれはLTJ Bukemがブレイクした頃だったと思うが、当時はもう、他のエレクトロニック・ミュージックなんかまるで聴かずにD&Bばかりひたすら聴いていたのだ。それもいつしか熱が冷め、今度はまるで聴かないばかりか、あの性急なリズムがうとましくすら思うようになってしまったのだから人間勝手なものである。このアルバム『All About』はモスクワ在住の新人D&Bプロデューサー、Bert Hによる1stアルバムだが、これは久々に気に入った。なによりロマンチックなメロディがいい。そもそもD&Bはその独特のリズムと併せメロディのロマンチックさ、そしてスペイシーな音の広がりが気に入っていたのだが、Bert HはUKで始まったこのジャンルを遠く離れた東欧から強烈な愛情でもって自らのものにしたのだろう。数多あるD&Bサウンドと何がどう違うのかは上手く説明できないが、D&Bの現場から離れている者だからこそこだわることのできるD&Bらしさがここにある。 《試聴》

■Reworked By Detroiters / Funkadelic

Reworked By Detroiters

Reworked By Detroiters

 

伝説のファンク・バンド、ファンカデリックの名曲の数々をMoodymannUnderground ResistanceClaude Youngデトロイト・テクノ/ハウスの精鋭DJがこぞってリミックスした2枚組。オレはファンカデリック自体はさらっと聞き流した程度なのでどの位音が変わったのか判断できないが、 テクノ/ハウス寄りのミックスというよりはファンカデリックに敬意を表したファンクの持ち味を崩さないミックスになってるんではないかと思う。 《試聴》 

■Fabric 95: Roman Flugel / Roman Flugel/V.A.

Fabric 95: Roman Flugel

Fabric 95: Roman Flugel

 

 DJMixシリーズの老舗Fabricの95番はドイツ出身のベテランアーティストRoman Flugelが手掛ける全22曲のミニマル/ディープ・ハウス・ミックス。 《試聴》

■NOMC15 / New Order

NOMC15 [帯解説・歌詞対訳 / 国内盤 / 2CD] (TRCP224/225)

NOMC15 [帯解説・歌詞対訳 / 国内盤 / 2CD] (TRCP224/225)

 

ニューオーダーが2015年11月にイギリス・ブリクストン・アカデミーで行ったコンサートの模様を収録したライブ・アルバム2枚組全18曲。最新アルバム『ミュージック・コンプリート』からの曲を中心に数々の名曲・代表曲を披露、もちろんジョイ・ディビジョンのあの曲も炸裂します。全体的に淡々とした印象。 

Blade Runner 2049 (Original Motion Picture Soundtrack) / Hans Zimmer & Benjamin Wallfisch

Blade Runner 2049 (Original Motion Picture Soundtrack)

Blade Runner 2049 (Original Motion Picture Soundtrack)

 

映画『ブレードランナー2049』のサントラ2枚組。ドロドロと響き渡るハンス・ジマーのインダストリアル・ドローン・ミュージックが圧巻だが、同時に映画で使用されたフランク・シナトラエルビス・プレスリーの曲も収録されていて、未来と過去が同居した奇妙なアンバランス感が面白い。