- 作者: 岡本太郎,岡本敏子
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2000/07
- メディア: 大型本
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それにしても写真には驚くほど老婆のポートレイトが多い。それも自然の風雨に年輪を刻まれたような皺だらけで化石みたいなお婆ちゃんばかりである。それは美しい、というよりも何か生そのものの残酷さとか凄みのようなものを感じる。そしてひどく貧しさを感じさせるバラックが続く町並み。これにもひなびた叙情や雑草のような逞しい生活観を滲ませる訳でもなく、ただそうである、といった情景を切り取ったもののように見えた。このように岡本は写真に情緒を織り交ぜない。彫刻家がこれから自らが刻む石を見つめるように、そこにはあるがままの姿があるだけであり、そこから何を生み出すかというイマジネーションはまだ作家自身の体内に宿っているのだ。そういった意味で先に書いたようにこれは岡本のイマジネーションの素材そのものであり、あくまで個人的な写真であり、むしろ芸術家・岡本太郎を読み解くテキストとして機能しているのではないか。
それと同時にここにある風景はオレにはひどく懐かしいもののように感じた。オレは沖縄には何も縁はない北海道出身の人間だが、ここに暮らす人たちのように特に求心的な文化の存在しない(要するに田舎ということだ)漁業を生業とする貧しい町で育った。風土の違いこそあるにせよ、町の空気や人々の生活感にはどこか似通ったものを感じてしまった。それはどこか既視感さえ憶えるほどだ。勿論それも遠い過去の話ではあるが。
(タマさんの紹介で興味を持ち手にしてみました。調べたらSIMさん も以前日記で取り上げていたようです。)
- 作者: 岡本太郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/06/18
- メディア: 文庫
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