稀代の武術家の生涯を描く『イップ・マン』シリーズ、堂々の完結編/映画『イップ・マン 完結』

■イップ・マン 完結 (監督:ウィルソン・イップ 中国・香港映画)

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■『イップ・マン』シリーズ完結編

あの『イップ・マン』が遂に完結である。最強の中国拳法・詠春拳の使い手であり、ブルース・リーの師匠としても知られ、19世紀末に生まれ激動の時代を生き、1972年に惜しまれながら没した実在の人物、それが葉問/イップ・マンである。これまで様々な映画でイップ・マンが描かれたが、やはり真打はドニー・イェン主演による『イップ・マン』シリーズだろう。日本においては『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』『イップ・マン 継承』のタイトルで3作が公開され、4作目となるこの『イップ・マン 完結』で遂にシリーズは終章を迎えるのだ。

シリーズは1930年代、日中事変の混乱の最中から始まり、家族と共に香港へ移り住み詠春拳の師範として生計を立てつつ、彼の前に立ちはだかる様々な敵を倒してゆくイップ・マンの鋼の肉体と精神をこれまで描いてきた。しかし『継承』において愛する妻を亡くし、男手一つで息子を育てながら、いつしか自らの死を予感することになるのがこの『完結』の物語となる。

■憂愁の中に佇む賢人イップ・マン

この『完結』において主に舞台となるのは1964年のアメリカ合衆国である。なにもイップ・マンが「俺より強い奴に会いに行く」為にアメリカに渡ったのではない。それは反抗期の息子の留学先を探す、といういじましい理由によるものであった。アメリカではイップ・マンの弟子ブルース・リーが華々しく活躍しており、顔をほころばす彼だったが、武術家で構成された中華総会の役員たちはブルースの派手な露出を快く思わず、イップ・マンの息子への紹介状も反古となってしまう。そんな折、在米中国人への差別意識が吹きあがり、空手使いである海兵隊軍曹バートンはその先鋒となって中華総会の武術家を狩り始める。その理不尽な差別と暴力に、遂にイップ・マンの詠春拳が炸裂する時が来たのだ。

この作品で描かれるのは、既に妻を失い、癌のために余命幾ばくもなく、口も訊かない息子に頭を悩ます晩年のイップ・マンの姿である。自らの運命の末を憂うその表情はいつもどこか悲しげで、これまでのシリーズ作で見られた溌溂とした力強さや清明な穏やかさには翳りが差し、どこか心を搔き乱すような寂寥感の横溢する作品となっている。シリーズの例に漏れずイップ・マンは理不尽を正す為の望まぬ戦いに駆り出され、電光石火の詠春拳でもって愚か者どもを完膚なきまでに叩きのめすのだけれども、どんな戦いに勝とうと彼の表情は沈んでいるように見え、その後ろ姿には憂愁が漂うのだ。この「憂愁」こそが今作の基調となり物語全てを覆うのだ。

■物語を盛り上げる武術家たち

とはいえ、実は決して暗いばかりの物語ではない。まずなによりブルース・リーの登場だろう。これまでのシリーズ作でもチラチラ顔を覗かせてはいたが、ここまで大幅にフィーチャーされるのが今作が初めてだろう。ブルース役チャン・クォックワンはブルースの形態模写を完璧に近い形で演じており、その精気漲る豪胆さと切れ味の鋭いアクションをこれでもかと画面に迸らせていた。そしてこのブルースの登場は、詠春拳の新たな継承者として、その世代交代を描いたものであり、終わることのないイップ・マン伝説を知らしめることとなるのだ。

さらに今作においては、イップ・マンと対立することになってしまう中華総会の会長ワン・ゾンホアの、度肝を抜くほどに強力な太極拳の技の応酬が見所の一つとなるだろう。不勉強なうつけ者でしかないオレは太極拳といえば中華人民の朝の体操程度に思っていたのだが、これほどまでに俊敏かつ流麗に技を繰り出してゆく武術であったとは。調べると演じるウー・イエ自身がそもそも武術の達人であり、その至宝の技をこの作品で見る事ができたという訳なのだ。

もちろん敵役である海兵隊軍曹バートン、並びに空手師範コリンの重量級で破壊的な強靭さも物語を大いに盛り上げる。最強の敵無くして最高の戦いは無いからだ。成す術もなく彼らに次々と叩き潰されてゆく中国人武術家たち、そして血に飢えた彼らの前に悠然と立つイップ・マンの悲壮に溢れた戦いの気概、憂愁を身にまとうドニー・イェンの凛とした立ち姿、イップ・マン映画の興奮が最高潮となる瞬間だ!空手V.S.詠春拳の戦いはコリン、バートンの二段構えで行われるが、その熾烈さは完結編に相応しいものであったと言えるだろう。

■差別への徹底的な抵抗

そして「中国人差別との闘い」というテーマである。イップ・マン映画は大なり小なり、中国人差別と闘ってきた作品でもあった。それは人としてのプライドであると同時に、同胞を守るための闘いでもあった。それまで舞台となっていた中国で様々な形で差別と闘ってきたイップ・マンは、この最終章でもっていよいよ差別の牙城としてのアメリカと対峙するのである。実は物語の時代設定である1964年とはアメリカで公民権法が制定された年であり、作品をよく見るならば画面のそこここにアフリカ系アメリカ人が伸び伸びと立ち動く姿を発見できる。

もちろん公民権法によって一切の差別が無くなったわけではないが、その新たな一歩となった年に、中国人差別との闘いをテーマとした物語を描くのは偶然だったろうか。物語ではアフリカ系アメリカ人が差別に憮然となるシーンも挟まれ、それはつまり中国人、アフリカ系アメリカ人、そして多くの非白人移民を含めた差別への拒否でもあるのだ。そしてその差別へ鉄槌を下すのがイップ・マンであったのだ。映画『イップ・マン 完結』は稀代の武術家の煌めく彗星の如き生を描くだけではなく、その背後に差別への抵抗といったテーマが秘められていることを思い知らされた作品でもあった。  


ドニー・イェン主演!映画『イップ・マン 完結』本予告

 

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地球侵略SF『三体』シリーズ第2弾『三体Ⅱ 黒暗森林』がモノスゲエ面白かったぞお!

■三体Ⅱ 黒暗森林 (上)(下) / 劉 慈欣

三体Ⅱ 黒暗森林(上) 三体Ⅱ 黒暗森林(下)

人類に絶望した天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)が宇宙に向けて発信したメッセージは、三つの太陽を持つ異星文明・三体世界に届いた。新天地を求める三体文明は、千隻を超える侵略艦隊を組織し、地球へと送り出す。太陽系到達は四百数十年後。人類よりはるかに進んだ技術力を持つ三体艦隊との対決という未曾有の危機に直面した人類は、国連惑星防衛理事会(PDC)を設立し、防衛計画の柱となる宇宙軍を創設する。だが、人類のあらゆる活動は三体文明から送り込まれた極微スーパーコンピュータ・智子(ソフォン)に監視されていた! このままでは三体艦隊との“終末決戦”に敗北することは必定。絶望的な状況を打開するため、前代未聞の「面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)」が発動。人類の命運は、四人の面壁者に託される。そして、葉文潔から“宇宙社会学の公理”を託された羅輯(ルオ・ジー)の決断とは? 

今日本のSF界隈で話題沸騰中なのが中国人作家・劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)による長編SF小説『三体Ⅱ 黒暗森林』だろう。『三体』は異星人とのファースト・コンタクト・テーマのSF作品であり、同時に侵略SF作品である。3部作として刊行され、この『黒暗森林』はその第2部となり、続く『死神永生』で完結となる。

『三体』の何がそんなに話題なのか?といえばまず中国で3部作合計2100万部、世界でも800万部を売り上げたという作品であり、中国人初のヒューゴー賞受賞作であり、オバマ前大統領、マーク・ザッカーバーグジェイムズ・キャメロンが絶賛したといういわく付きの作品なのだ。そしてその内容はスケールの大きなハードSF作品であり、地球に迫りくる恐るべき侵略異星人による危機を描くエンターティメント作品であるのだ。

とはいえ、実を言うとオレは前作『三体』にあまりノレず、結構批判的な感想を書いた。確かにそのSFアイディアには途方も無いものを感じたが、逆に大風呂敷が過ぎてやたらハッタリがましく、ドラマ展開や人間描写にも大味さを感じてしまったのだ。

そんな『三体』の第2部『黒暗森林』、あまり期待せずに読み始めたのだが、確かに上巻の辺りまでは第1部同様「なんだかなあ」と思いつつ読み進めていたものが、下巻に代わり次第に物語が佳境に入り始めてきた辺りで……

うわああ!うわああ!なんだこれ!?なんだこのとんでもないカタストロフ展開はぁ~~~ッ!?と驚愕の連続、そのあまりの凄まじさに呆然としてしまった。あまり内容には触れない事にはするが、『黒暗森林』は宇宙ミリタリーSFの側面も大きく、その辺りの、壮絶なナニかである、とだけ書いておこう。いやあれは度肝抜かれたわ……。もうオレは否定的意見を撤回し、速やかに作者・劉慈欣にひれ伏すこととなったのである。

別に小説としての『三体』がこの第2部で様変わりしたのではなく、作者の筆致にも変わりはない。違うとすれば第1部よりも格段にスケールアップし、時間的空間的にも広がりを見せたことで、そのアイディアの奔放さがより馴染む形になったということなのだ。結局、最初オレが『三体』に苦手意識を持ったのは、良くも悪くも黄金期SFの古臭い匂いがしたからなんだが、こうして『2』を読んでみるとその圧倒的な分かり易さが逆に心地いいのだ。

それは例えば「地球侵略に向かう1000隻の異星人宇宙艦隊!」とか「地球への到達は400年後!」とか「対するは地球連合艦隊2000隻!」とか、「地球の武器は350メガトンの恒星型水爆!」とか「地球防衛計画を打ち立てるため全人類から選ばれた4人vs彼らを打ち倒すため三体人から派遣された刺客!」とか、なにしろとりあえずスケールが大きくハッタリが効いている。まるで往年のスミスやヴォークトSF小説みたいじゃないか。こんな煽りの応酬がコミックぽくて至極分かり易い。しかし分かり易いだけではなく現代的で科学的なハードSF描写が詳細かつきっちり盛り込まれ、格段の説得力をもたらしている。ここが作者の面目躍如といった部分だ。

例えば最新SFがメスで削り上げたような緻密なSFアイディアを売りにしているのだとすれば、この『三体』はノミで巨木を彫り上げたような、荒っぽいが豪快なSFアイディアの面白さにあるといえるだろう。『1』『2』ともに通じる擬似理論による大風呂敷の広げ方も、相当に嘘っぽいながらこうして見ると確信犯的に見事であると言わざるを得ない。なによりタイトルにもなっている宇宙社会学理論「黒暗森林」の内容が相当にぶっ飛んでいる。世界観設定や人間描写のベタさもある意味分かり易さに通じる。要するに、ノレるととことんノレちゃう作品なんだな『三体』は。こういった部分にベストセラーとなった貫録があると感じた。

それにしてもここまで徹底的に絶望へ絶望へと追い込みながらラストをここに持ってくるとは……これでさらに第3部へと続かせるのか!?この破滅的状況の描写にはグレッグ・ベアの侵略SF長編『天空の劫火』を思い出させたが、『黒暗森林』はあの作品よりもさらに饒舌にアイディアを盛り込んでいたと思う。これはもう第3部が楽しみでたまらない。刊行は来年春!?それまで待てない!!

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

 
三体Ⅱ 黒暗森林(下)

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

 
三体

三体

 

最近ダラ観した韓国映画などなど

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■パラサイト 半地下の家族 (監督:ポン・ジュノ 2019年韓国映画

パラサイト 半地下の家族 [Blu-ray]

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う〜ん『パラサイト半地下の家族』、前評判が高くて気にはしてたんだけど実際観てみたら期待外れだったなあ。貧乏一家が徐々に金持ち一家に潜りこんでゆく、というお話だけど、あれほど欺術が上手いんだったらなんで今まで貧乏人としてくすぶっていたんだ?と思っちゃうんだよな。おまけに金持ち一家はステレオタイプな薄っぺらいお馬鹿さんに描かれすぎでリアリティが感じない。実際の金持ちはもっと抜け目ないと思うんだがな。実は本当の見所はその後に発覚したある事実とそれが生み出す大波乱となるんだが、今度はここが偶然や迂闊さに頼りすぎのシナリオでうんざりさせられた。ここまで巧妙にやってきた貧乏一家がなぜかここからドタバタしてしまうんだ。結局シチュエーションありきで作られた作品で、登場人物が駒みたいに動かされているのが白々しく感じた。オレはポン・ジュノ監督作品とは昔っからどうも相性が悪く、 監督自身は韓国映画プロパーにこだわらない世界的な視野を持った作品を生み出す力のある監督だとは感じるのだが、オレの観たい映画を撮る人ではないんだよなあ。

■王になった男 (監督:チュ・チャンミン 2012年韓国映画

王になった男 DVD

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「王の替え玉になった男の物語」といえばイギリス小説『ゼンダ城の虜』(1894年刊行)の昔から数々あるが、この『王になった男』もその一つだ。こういったモチーフがなぜこうも好かれるかといえば、特権階級への憧れや平民の視点から政局を動かす、といった点があるのだろう。そういった点で言えばこの作品も同工の流れで物語が進んでゆくが、モチーフの特徴を生かした安心して観られる作品となっている。そもそも韓国映画はシナリオが優れているので、この作品でも様々なエピソードを用意し興味を尽きさせることなく描いてゆくのだ。とはいえやはり韓国映画だなと思ったのは替え玉になった男を取り巻く者たちの過酷な運命であったり、病床にあった本当の王が目覚めた時の替え玉男への処遇であったりする。そういったピリッとした辛さもこの物語にはある。

■コンフィデンシャル 共助 (監督:キム・ソンフン 2017年韓国映画

コンフィデンシャル/共助 [Blu-ray]

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北朝鮮の刑事と韓国の刑事がタッグを組んで偽札原板の行方を追う!というバディムービー『コンフィデンシャル 共助』を観た!イケメンでタフな北朝鮮刑事、一方韓国刑事はイケてないオッサン?!水と油の二人がドタバタしながら次第に友情で結び合い、事件に迫る様は朝鮮半島版『レッドブル』だ! 

■ベテラン (監督 リュ・スンワン 2015年韓国映画

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  • 発売日: 2020/04/29
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金と権力にモノを言わせ弱い者を踏みにじり続ける財閥御曹司に正義の鉄槌を下さんと暴走気味な熱血刑事が立ち上がった!韓国映画『ベテラン』は小気味いテンポとクスリと笑わせるユーモアで徹底的に勧善懲悪を描く胸のすくアクション映画だ!定番な物語展開だから安心して観られる良作!面白いぞお!

■グッド・バッド・ウィアード (監督:キム・ジウン 2008年韓国映画

大日本帝国統治時代を舞台にした韓流ウェスタン作品で、当時破格の製作費が掛けられたといういわく付きの大作なんだが、展開が単調な上に物語も大味過ぎて楽しめなかったなあ。もっとハッタリやギミックがあってもよかったと思うし、魅力的な女優にもいて欲しかった。これが中国製作だったら一味違っただろうなあと思ったが、あ、そうか、銃撃戦だけじゃなくカンフーが欲しかったんだ! 

■ベルリンファイル (監督:リュ・スンワン 2013年韓国映画

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  • 発売日: 2013/12/25
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ベルリンを舞台に、韓国と北朝鮮のスパイが熾烈な諜報戦と銃撃戦を繰り広げるという物語なんだが、確かに他国の諜報組織も絡んだりはするが、基本的にベルリンである必要がないというか韓国が舞台でも話がなんとかなっちゃうんじゃないか、と思っちゃった作品だなあ。結局韓国VS北朝鮮でこじんまりまとまっちゃったからそう感じたのかな。ただし銃撃戦シーンは韓国映画の高いレベルをキープしていてとことんいい。

■群盗 (監督:ユン・ジョンビン 2014年韓国映画

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  • 発売日: 2015/09/02
  • メディア: Blu-ray
 

韓国王朝末期を舞台にした義賊たちが主人公の時代劇作品だがこれは面白かった。義賊の面々のキャラ立ちがいい具合だったのと、カン・ドンウォン扮する敵役が腕が立つ上に徹底的に憎たらしく、おまけに色気まであって物語を大いに引き立てていた。時代劇としても衣装やセット、さらにロケーションが美しく、目を楽しませてくれたな。義賊の隠れ里とかまるで忍者みたいで面白いじゃないか。

操作された都市 (監督:パク・クァンヒョン 2017年韓国映画

操作された都市 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: Blu-ray
 

オンラインゲーマーの主人公が殺人事件の冤罪で投獄された。からくも脱獄を果たした彼はオンラインゲームのチームを集め殺人事件の真相に迫る!という物語。映画『逃亡者』にサイバースリラーのテイストを加え、そこにゲーマーたちの友情と結束を加味してアクションで〆る!という内容かな。スーパーコンピューターを駆使し冤罪を仕組む謎の組織の遣り口が実に巧妙で恐怖を感じさせる。スピーディーかつ二転三転するストーリーと主演チ・チャンウクのフレッシュさが牽引するなかなかの佳作だった。

最近聴いたエレクトリック・ミュージック

Berghain Funfzehn / Luke Slater 

Berghain Funfzehn [Analog]

Berghain Funfzehn [Analog]

  • アーティスト:Luke Slater
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: LP Record
 

ベルリンの人気レーベルOstgut TonからリリースされたUKテクノ・シーンの重鎮Luke Slaterのニュー・アルバム。いつものぶっとくゴリゴリなハードコア・テクノ作品だが、これは時代関係なく楽しいな。


Luke Slater - O Ton Reassembled 3

 ■Sixteen Oceans / Four Tet

Sixteen Oceans

Sixteen Oceans

  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

UKの鬼才アーチストFour Tetのニューアルバム。フロアからアンビエントまで、ロマンチックでカラフルな音世界が展開してる。


Four Tet - Baby (Official Music Video)

■Blizzards / Nathan Fake 

BLIZZARDS

BLIZZARDS

  • アーティスト:NATHAN FAKE
  • 発売日: 2020/04/17
  • メディア: CD
 

UK出身の人気プロデユーサーNathan Fakeのニューアルバムは変幻自在な電子音の唸るネオトランス・サウンド


Nathan Fake - Tbilisi

■Oderbruch / Shed

Oderbruch

Oderbruch

  • アーティスト:Shed
  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: CD
 

これまたOstgut Tonからリリースされたベルリンのテクノ・プロデユーサーShedのニューアルバムは曲ごとに個性豊かで幽玄なエレクトロ・サウンドを聴かせる。


Shed - Menschen und Mauern

■Dance Without Me / Drama

Dance Without Me

Dance Without Me

  • アーティスト:Drama
  • 発売日: 2020/02/14
  • メディア: CD
 

シカゴのエレクトロ・ポップ・デュオDramaのニューアルバム。R&Bとエレポップを融合させた抒情的なサウンドがGood。


DRAMA - Years (Official Video)

■Fabric Presents Maribou State / Maribou State

fabric presents Maribou State

fabric presents Maribou State

  • 発売日: 2020/03/27
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

UKの老舗レーベルFabrickからの新しいDJMix作品は抒情派チル・ミュージック・ユニット、Maribou Stateが担当。ソウル、ディスコ、ジャズ、ファンク、ハウス、ジャングル、エレクトロニカと多彩な選曲が映える。和むよー。


fabric presents Maribou State

■Shadows in Blue / Hodge 

Shadows In Blue

Shadows In Blue

  • アーティスト:Hodge
  • 発売日: 2020/04/17
  • メディア: LP Record
 

UKブリストル出身のプロデユーサーHodgeのデビューアルバム。 美しくドラマチックな音世界がいいよ。


Hodge - Ghost of Akina (Rainbow Edition)

■Calypso / Gigi Masin 

Calypso

Calypso

  • アーティスト:GIGI MASIN
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: CD
 

ヴェネツィア出身の音楽アーチストGigi Masinによる豊かなアンビエントサウンド


Gigi Masin - Calypso

■Vibrant Culture / Aura Minimum

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ロシアのダブ・テクノ・プロデューサー、Aura Minimumのニューアルバム。浮遊感たっぷりにズブズブのダブテクノ。AURA MINIMUM Vibrant Culture vinyl at Juno Records.

spaceofvariants.bandcamp.com

■Cycles / Aura Minimum & Flying Cobra

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これまたAura MinimumがFlying Cobraとコラボしたダブテクノ・アルバム。やはりズブズブ。Juno RecordsのCycles


Aura Minimum & Flying Cobra - Observer

 

 

殺って殺って殺りまくれッ!?/映画『ランボー ラスト・ブラッド』

ランボー ラスト・ブラッド (監督:エイドリアン・グランバーグ 2019年アメリカ映画)

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シルベスター・スタローンの『ランボー』シリーズには特に思い入れが無く、全作観ているのかどうかもよく分からない(2作目と3作目が頭の中でごっちゃになってる)。しかし4作目に当たる『ランボー 最後の戦場』はお気に入りだった。なにしろその虐殺シーンが凄まじかった。「ランボーってこんな映画だったっけ!?」と思いつつ、トゥーマッチとしか言いようのないその虐殺シーンにはたっぷりと堪能させられた(オレってどんな鬼畜やねん)。

そんな『ランボー』シリーズの第5弾が、性懲りもなく製作されたのらしい。故郷に帰って安息の日々だったんじゃないのか!?とは思ったが、世にはまだまだランボーが成敗しなきゃいけない輩がゴマンと存在しているという訳だ。しかもこの『ランボー ラスト・ブラッド』、『最後の戦場』に引き続き大虐殺大会だというではないか。これは観る前から傑作決定ではないか。ううむ楽しみだ。これはやはり劇場に出向く前にこれまでの『ランボー』シリーズをおさらいしておかねばな……と思いつつなぜか鑑賞前日にシュワルツェネッガーの『コマンドー』を観ていたオレだ!なぜだ!?なぜなんだ!?

さて『ラスト・ブラッド』である。数々の戦闘を経験してきたランボーさんも今は故郷であるアリゾナの牧場に帰り、平穏な日々を過ごしていた。しかしランボーさんが養女として慈しんでいた娘ガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致されたことを知り、ランボーさんの休火山は大噴火を起こす。ランボーさんはメキシコのカルテルに殴り込みを掛け、さらにトラップ満載の自宅牧場におびき寄せ、憎っくきカルテルの連中をこれでもかこれでもかとなぶり殺しにしまくるのだった!?

まあなにしろ後半の愉快痛快血みどろ血塗れな殺戮劇がメインの今作、「どうしてここまで徹底的に殺戮しまくるべきなのか」を説明するために前半ドラマがあるようなものなんだが、しかしアリゾナの牧場で養女とその母との穏やかな生活ぶりはこれはこれで静かな人間ドラマとして楽しめる。ことの発端はガブリエラが「幼い頃自分を捨てた父親がメキシコで見つかった、会いに行きたい」という所から始まるのだが、「あんなクソ男に会うな!」とイキるランボーさんとの葛藤は、このままランボーやら殺戮アクションを抜きにして人間ドラマとしても成立させ得るぐらいにしっとりと描かれていたと思う。

そんな人間ドラマも束の間、ガブリエラが人身売買カルテルに拉致されてからの展開がもう地獄への道行きとしか言いようのない程暗く血生臭く絶望的なのだ。まあなにしろクライマックスに大殺戮大会の巨大連発花火を打ち上げなきゃならないので、そこまでランボーさんを苛めて苛めて苛め抜かねばならないのだ。溜めて溜めて溜めて最後にドッカーン!と爆発させなきゃならないのだ。だからその溜め方が肝心なのである。いやーしかしそれにしてもそこまでがあまりにも陰惨で血塗れで、「これは韓国ノワール映画か?」と思ってしまったぐらいである。

という訳でクライマックスはお待ちかね、「春の大殺戮感謝祭」の発動である。かつてグリーンベレーだったランボーさんがそのスキルを徹底的に生かし、自らの牧場にトラップを仕掛けまくってそこにカルテルの連中をおびき寄せるのである。実はランボーさんの自宅牧場の地下にはベトコンのネズミ穴みたいな坑道が縦横に張り巡らされており、そのダンジョン化した地下道にさらにイヤラシイ罠を仕掛けまくるのである。ってかそもそも最初っから自宅の地下に坑道を張り巡らせていた時点でランボーさんのパラノイアの重症さが伺えるというもので、平たく言えばランボーさんはしみじみ病気だったんだろうなあと哀れを感じもする。

さてそんな「ランボーさん提供:悪夢の遊園地」と化した地下トラップで巻き起こる虐殺劇の数々、創意工夫されたギミックの妙味、執拗な肉体破壊の描写は既にしてホラー映画並みという事が出来るだろう。というかこれ、ホラー映画でもいいのかもしれない。しかしホラー映画の多くは殺される事の恐怖を描くがこの作品では一方的に殺すことの快感を描き続ける。ある意味「無双アクション」と同等のものがあるかもしれないが、『ラスト・ブラッド』はそういった作品と比べるならスマートさ皆無でありより泥臭く激情的で破滅の匂いがする。

ランボーさんはトラップを駆使ながら敵を殺って殺って殺りまくるが、実はこれ自体がランボーさんの破滅願望の顕れだったようにも思う。この『ラスト・ブラッド』は平穏な生活を望みながら最後に破滅に向かわざるを得なかった一人の男の、虚無の物語だったのかもしれない。

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