2019年:オレ的映画ベストテン!! 

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2019年も押し迫りまくって来ましたね旦那!泣いても笑ってもあと2日ですよ奥さん!別に泣いたり笑ったりしなくていいんだけどねオチビちゃん!……という訳で誰に語り掛けているのか自分でもさっぱり分かりませんが、毎年年末恒例!「オレ的映画ベストテン」、2019年版をお送りしたいと思います!いやー今年は3万本ほど映画観ましたが(観てないって)、その中でも選りすぐりの10作を並べてみようかと思います!「おいおい選りすぐってこれかよ!?」と腰抜かす事請け合いのベストテン!選ぶのはオレ、読むのはアナタ!全ての作品は「怒涛の」でくくってみました!さあそれでは行ってみましょう!!  

第1位:アベンジャーズ/エンドゲーム (監督:アンソニージョー・ルッソ 2019年アメリカ映画)

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怒涛のラストバトル!!MCUヒーロー映画の集大成にして全ヒーロー大集結のお祭り映画!全宇宙の命運を賭けちゃう気宇壮大な大風呂敷!これまでのMCU作品をここまで煮詰めて煮〆て美味しく仕上げた製作者の皆さんの手腕には大いに唸らせられました! (こんな感じの唸り:「うぅうぅうぅうぅ~~~~ん!!!どべはちゃぐむむぬるぬーん!!!」)あのヒーローもこのヒーローも大活躍というお得感満載の構成は既にして映画の満漢全席、ヒーローのフルコース!観てよし食ってよし飲んでよし!これだけ楽しませてもらって払うのは映画料金だけという幹事の方にも嬉しい価格!ってか幹事って誰だよ!?

 

第2位:マイル22 (監督:ピーター・バーグ 2018年アメリカ映画)

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怒涛の銃撃戦!!「2位がこれかよ!?」と驚愕するブログ読者の皆さんを銀河の彼方にまで置いてきぼりにして選んだのはこの作品!!いやー熾烈爆裂壮烈な銃撃戦だったなあ!!肉を切り裂き骨をぶち折る格闘戦もサイコーだったなあ!!オレは銃撃戦と格闘戦が三度のメシよりも好きなんだ!いやメシは食うけどね!ピーター・バーグ監督のキナ臭く辛気臭い演出もグッド!マーク・ウォールバーグのビンボ臭い顔とイコ・ウアイスの怪しい存在感もグッド!やっぱり映画は銃撃戦!撃ち合ってナンボ!! ダダダダン!ダダダダン!(←バカ)

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第3位:ハンターキラー 潜航せよ (監督:ドノバン・マーシュ 2018年アメリカ映画)

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怒涛の潜水艦戦!!「ピコーン……ピコーン……ピコーン……」ソナーの音に耳澄まし声を殺して敵との遭遇を見守る前半の緊張感!そして後半!近代兵器が山のように登場し「こりゃもう戦争だろ……」と度肝を抜かされる大交戦状態!すわ第3次世界大戦の勃発なのかッ!?そしてその中心にいるのが我らがジェラルド・バトラーとなるとこれは盛り上がりに盛り上がりまくるに決まってる!特殊部隊のステルス作戦も息を呑ませられる(ごくん)!ステルスとアクションの絶妙なバランスがこの映画を最高に面白い作品に仕上げていた!こりゃもう堂々たる今年の第3位!

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第4位:ファイナル・スコア (監督:スコット・マン 2018年イギリス映画)

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怒涛のダイハード状態!!いやね、映画の筋はすっかりダイハードなんですよ、実は戦闘に長けているもっさりしたおっさんが、たまの休みに寛ごうと人出の多い所に出掛けたら、テロリストの悪巧みに巻き込まれ、孤立無援で戦闘状態!という、まんまダイハードなお話&アクションなもんですから、「じゃあダイハード観てろよ」と憎まれ口の一つも叩かれそうですが、しかーし!主演のデイヴ・バウティスタがいーんだまたこれが!クマみたいなんですよクマ!いーっすよねえクマ!プーさん、パディントン、そしてデイヴ・バウティスタと、世界の3大クマと呼ぶにふさわしい程にクマなんですよ!もうクマ好きのオレのハートはメロメロですよ!

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第5位:バジュランギおじさんと、小さな迷子 (監督:カビール・カーン 2015年インド映画)

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怒涛の感涙作!!今年もインド映画はあれこれ公開され、もはやインド映画ラッシュなのか!?日本をインドにしてしまうのか!?高円寺でターバンの男を見てしまったのか!?と思ってしまうほどに大インド映画状態の日本なんですが、そんな中「とりあえずこれ観とけ!体内の水分全部搾り取られるほど泣かされるからハンカチじゃ足りんのでバスタオル用意しとけ!」という映画がコレ!バジュランギおじさんです!ただ泣かせるだけじゃなく、バジュおじさんのドン臭いおとぼけ振りにも相当に笑わされる事必至!笑って泣いて歌って踊って、まさにエンターテインメントの神髄とも言える作品でありましょうや!観なよ!約束だぜ!

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第6位:ファイティング・ファミリー (監督:スティーブン・マーチャント 2019年アメリカ映画)

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怒涛の家族愛!!実は今年後半に観た映画がどれもこれも壮絶に冴えなくていやもうオレ映画観るの止めちゃおうかなとまで思い詰めるほどに絶望していたんですが、そんなオレを救ってくれたのがこの作品なのです!お話はイギリス底辺社会で逞しく生きるプロレス・ファミリーを描く実話なんですけどね、ファミリーのどのメンバーも破天荒でギザギザしていて愛おしいことこの上ないんです!まあオレも破天荒な才人って呼ばれるから親近感が湧くんだろうな(すいません大嘘です)!夢を叶えるために生じてしまう光の影のコントラストが絶妙で、単なるコメディ、サクセスストーリーに終わっていない部分に胸がグッっときました!ハッとしてグッ!

 

第7位:クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅 (監督:ケン・スコット 2018年フランス・アメリカ・ベルギー・シンガポール・インド映画)

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怒涛のミラクルファンタジー!!インド俳優ダヌシュを主演にフランス・アメリカ・ベルギー・シンガポール・インドという多国籍にまたがる合作なのですが、物語それ自体もひょんな間違いから主人公が世界を経巡りそれぞれの国で様々な出会いと別れを体験してゆくという21世紀版マジカル・ミステリー・ツアー、ワールドワイドなサイコロの旅が本作となるのですよ。その旅はどれもファンタジックでカラフルで奇妙な可笑しさに包まれていながら、背後にはグローバル化した世界の問題もうっすらと語られるのです。インターネットが世界を覆いそれが日常と化したこの今だからこそ物語られるべきファンタジーがこの作品なんですよ。

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第8位:グリーンブック (監督:ピーター・ファレリー 2018年アメリカ映画)

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怒涛の凸凹コンビ!!粗野で下品で食いしんぼなイタリア系のおっさんと、高等音楽教育を受け世界的な音楽家として活躍しながら孤独の中に引き籠っているアフロ・アメリカンの青年とが、演奏ツアーの運転手と乗客となって凸凹な旅を続けてゆくというヒューマン・コメディです。語り口調は実にスムース、黒人/白人、上流/中流生活の対比をどぎつくない笑いで描きながら、テーマの本質にあるのは黒人差別問題であり黒人と白人の対話と融和であるのです。黒人であると同時にゲイでもあるという究極のマイノリティである青年がしょーもない白人限界中年に心を開いて行き、同時に白人中年男も黒人への偏見を払拭し時に暴力にさらされる彼のために尽力し、そうして二人の間に友情が芽生えてゆく、という実に美しいドラマが物語られてゆきます。この美しさが、オレはとても好きなんです。

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第9位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド (監督:クエンティン・タランティーノ 2019年アメリカ映画)

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怒涛のハリウッド愛!!いや最初に劇場で観た時は酷評でしたよオレは。あのラストは監督タラの自らの作品の焼き直しに過ぎないじゃないですか。とはいえね。観終った後にどんどんとじわじわ来る。映画で描かれた様々な情景がどれも忘れ難い。あーあそこよかったなあ、笑ったなあ、緊張したなあ、痛快だったなあ、と次から次に楽しかった映像が思い返される。なんだろうこれは、と思ったけど、要するにそれが世界に名をし負う監督タラの円熟の技でありこの作品に掛けた熱量だったんですね。だからあのラストも今では十分アリだし十分どころかあのラストしかなかったとも思うしさらに言えばあのラストだけで評価を決定できてしまう作品では無いんですね。そういった部分で今一番観返したい映画で、近々発売されるブルーレイが待ち遠しくてしかたなかったりします。

 

第10位:恐怖の報酬【オリジナル完全版】 (監督:ウィリアム・フリードキン 1977年アメリカ映画)

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怒涛の緊張感!!難攻不落の悪路が続く南米のジャングルを、微細な衝撃で大爆発を起こすニトログリセリンの積まれたトラックに乗り、命を懸けた大走破を貫徹しようとする食い詰め者の男たち!という熱く暗くどこまでも汗臭く、全編に渡り例の部分がキューッと縮み上がるような緊張感に包まれたとてつもない作品です。元は1953年のモノクロフランス映画でしたがこれをウィリアム・フリードキンが1997年にリメイク、しかし30分以上カットされた形で上映され、そのオリジナル121分版が今世紀に入ってやっとリバイバル上映された、という曰く付きの作品なんですね。そしてこの【完全版】の完成度と来たら凄まじいもので、今回「ベストテン」として紹介した作品の中でも別格と言ってもいいでしょう。とはいえリバイバル作品という事であえて10位ということにしておきました。

恐怖の報酬【オリジナル完全版】 [Blu-ray]

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以下に最後までベストテンに入れるかどうか悩んだ「次点作」を入れておきます。

次点1:ワイルド・ストーム(監督:ロブ・コーエン 2018年アメリカ映画)

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怒涛の大暴風!!巨大ハリケーン上陸の中、その混乱に乗じて連邦銀行施設を襲おうと企む武装強盗集団と、銀行のセキュリティ担当女子&それに巻き込まれちまった気象学者との白熱の攻防!『ワイルド・スピード』『トリプルX』のロブ・コーエン監督作品なんですが、プロットは大雑把で穴だらけなのにも関わらず、有無を言わせぬ力技とド派手な暴風雨描写でなんだか知らんうちに大興奮させられちゃう!という愉快痛快大アクション作品でした。ある意味今年公開された『ワイルド・スピードスーパーコンボ』なんかよりも、とことんストレートに展開してゆく豪快さと言った点で優れたアクション作だったんじゃないかと思うんだがなあ。

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次点2:ブラック・クランズマン (監督:スパイク・リー 2018年アメリカ映画)f:id:globalhead:20191229141541j:plain

怒涛の潜入捜査!!白人至上主義の差別団体KKKに黒人警官が潜入捜査!?というプロットだけでも「ええ!?」と身を乗り出すのに、その代役としてユダヤ人警官を使っちゃう!?という部分でさらに「おいおい!?」とツッコミを入れたくなっちゃう痛快作です。重苦しくならざるを得ないテーマをあえて軽快軽妙に描き、アクションとサスペンスで十分楽しませた後最後の最後で「とはいえ俺はとことん怒ってるんだよッ!!」と啖呵を切るスパイク・リー監督のメッセージがずしりと重たい、快作なのに重厚という微妙なバランスがまた独特の作品でした。

 

……というわけで【2019年:オレ的映画ベストテン】の終了でございます!2020年も楽しい映画と出会えるといいですね。それでは皆さん来年もよろしく!(明日も一回更新するかもしんない)

 

今年面白かった本とかコミックとか音楽とか

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unsplash-logo Loverna Journey

今年も順調に押し迫ってきやがりました!と言う訳で今日は「今年面白かった本とか音楽とかコミックとか」と題し、今年オレのブログで取りあげたそれぞれのモノについてつらつらと羅列していこうかと思います。

目次

■今年面白かった音楽

◎今年前半はレゲエとリー・ペリーだった

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今年の前半は去年から引き続きリー・ペリーとレゲエ関連をよく聴いていましたね。その最終段階となったのがこの「Complete UK Upsetters Singles Collection」Vol.1~4のコンプリートでした。なにしろ全部高額中古価格になっていてお財布に痛かった……。

◎コンサートってェ奴に久々に行ってきた

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この年になるとライブだのコンサートだのがまるで億劫になってしまい、殆ど行かなくなってしまったのですが、このペット・ショップ・ボーイズのコンサートだけは外せませんでした。

◎今年後半はプリンス一筋だった

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今年後半は、それまでのレゲエ三昧から突然の転向、いきなりプリンスにハマってしまい、アルバム全作をコンプリートしてしまいました。なんかオレ、コンプリートって好きなんだよねえ。コレクター体質なんだろうなあ。

……で、今は何を聴いているかというと、数年ぶりにEDMの世界に戻ってきており、数年間のブランクを埋めるべくまたしてもあれこれ聴き漁ってます。

■今年面白かった本

橋本治さんが亡くなった

「今年面白かった本」について書く前に、なにより今年は、橋本治さんが亡くなったのが非常に辛かったです。橋本さんの本はいまでもポツポツ購入していて、これからも読み継いでいきたいと思っています。

ラテンアメリカ文学をよく読んでいた

ラテンアメリカ文学は今までもたまに読んでいたんですが、今年は結構集中的に作品に触れていました。ラテンアメリカ文学はこれからも少しずつ読んでいきたいですね。

◎オレの45冊・SF小説

何年も塩漬けにしていたエントリなんですが、ブログアップしてみたら意外と好評だったのでびっくりしました。

◎その他、今年面白かった本

オレは本を読むスピードが遅くて、週に1冊読むのがやっと、下手すると2週間ぐらいかかってしまい、だからそれほど多く本は読んでないんですが、以下の数冊が今年面白かった本のあれこれとなりますかね。やっぱりSFが多いですね。

■今年面白かったコミック

今年読んだコミックでなによりハマったのは『ゴールデンカムイ』ですね!いやこれメチャ面白いわ!

奥浩哉『GIGANT』の下品さバカさ加減には大いに楽しませてもらいました!

アメコミもポツポツ読んでいました。

バンドデシネではヴァスティアン・ヴィヴェスを集中して読んでいました。格闘x魔法コミック『ラストンマン』面白いよ!

バンドデシネ・アーチスト、バスティアン・ヴィヴェス特集:その1『年上のひと』 - メモリの藻屑 記憶領域のゴミ

バンドデシネ・アーチスト、バスティアン・ヴィヴェス特集:その2『ポリーナ』 - メモリの藻屑 記憶領域のゴミ

バンドデシネ・アーチスト、バスティアン・ヴィヴェス特集:その3『塩素の味』 - メモリの藻屑 記憶領域のゴミ

他にバンドデシネではフランソワ・スクイテン+ブノワ・ペータースの新作が出たのがとても嬉しかったですね。

……というわけでした。来年も楽しい本やコミックや音楽と出会いたいですね。明日は問題なければ「映画ベストテン」記事を上げようかと思っています。お楽しみに。

殺戮と詩情に満ち溢れた傑作SFアジアン・ノワール小説『翡翠城市』

翡翠城市/フォンダ・リー

翡翠城市(ひすいじょうし) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5045)

ケコン島――それは選ばれし者〈グリーンボーン〉たちの島。彼らは、島の貴重な天然資源である翡翠からエネルギーを引き出すことによって、怪力、敏捷、医療、感知など、人知を超えた能力を手に入れることができた。島の中心地であるジャンルーンを仕切るコール家を中心とした〈無峰会〉は、若き〈柱〉である長男のラン、ランを支える〈角〉の次男ヒロを中心に強く結束し、宿敵〈山岳会〉を相手取って、縄張り争いに日々明け暮れていた。だが、僅かなほころびをきっかけに事態は混沌の様相を呈するように――。"翡翠の街"を舞台に展開するSFアジアン・ノワール。ケン・リュウも激賞した、世界幻想文学大賞受賞作。

今、アジアンなSFが熱い。『紙の動物園』のケン・リュウ、『三体』の劉慈欣、他にも郝景芳やチョン・ソヨンによるSF/ファンタジー短編集、さらにはアジアSFアンソロジーなどが続々と出版され始めている。アジアンSFの面白さは欧米のSF作品とはまた別種の世界観・SF観・そして人間の情感を描いているという部分だろう。それは「非西欧的」であることの、オルタナティブな物語性にあるのだ。

今回紹介する『翡翠城市』の作者フォンダ・リーはカナダ出身であり、「アジアンな」とひとくくりにするには強引なのだけれども、『翡翠城市』がアジア的な異世界を舞台にしているという部分でこの範疇に収めさせてもらって構わないのではないか。なによりその物語というのが、「香港を思わせる架空の都市を舞台にした、魔術的な力を操るマフィア同士の血で血を洗う抗争を描くSFノワール作品」というものなのだ。

物語の舞台はケコン島と呼ばれる台湾を思わせる島、ここは人間に超常的なパワーを与える天然資源”翡翠”が産出される地上唯一の場所だった。ケコン島を牛耳る二つのマフィア組織、「無峰会」と「山岳会」は、この”翡翠”の利権を巡り常に睨み合っていた。そしてその均衡が破られたとき、マフィア組織同士の恐るべき抗争が始まる。それは、多数の”翡翠”を身に付け人智を超えた力を操る、超能力マフィア同士の凄惨な戦いの始まりでもあった。

舞台となる世界は現実の現代社会とさして変わりない。現代、というよりはもう3、40年ほど昔の時代に似ているかもしれない。スマホやPCなどのテクノロジーは描かれないからだ。マフィアの抗争、とは書いたがどちらかというとヤクザ同士の出入(でいり)に近い。銃やマシンガンの撃ち合いもあるが、やはり戦いの基本になるのはナイフや刀剣であり、そして”翡翠”の持つ超絶パワーによる潰し合いなのだ。

とはいえ、この物語の真の魅力となるのは超能力合戦による戦闘描写ではない。この物語の真の魅力、それは「無峰会」を牛耳るコール家、今作の主人公となるその面々の、強烈なファミリーの結束、血肉を分け合ったもの同士の愛と憎しみ、葛藤と裏切り、生と死の物語なのである。そう、この物語が「21世紀版ゴッドファーザーx魔術」と呼ばれるのはそういった側面にあるのだ。どうですか、メチャクチャ面白そうじゃないっすか!?

コール家とその側近らのキャラクターの描き分けも実に巧みだ。無峰会首領であるランは落ち着いた青年だがその弟ヒロは熱くなりやすい。妹シェイは自らのマフィア一家を嫌い距離を置こうと腐心する。かつて首領だった祖父は過去の栄光の中に浸り現実を見ない。相談役の老人は保守的な上にどこか信用できない。一方コール兄弟の従弟アンデンはまだ学生だが組織の為に尽くすか否か心が揺れている。そしてコール家と敵対する山岳会の首領アイトは冷徹であると同時に狡知に長けどこまでも現実的な女だ。

これら様々な登場人物の思惑が複雑に絡み合い、それが大きなうねりとなって、あたかも交響曲の如き重厚なドラマを形作ってゆくのである。600ページと大部の小説だが、それはこれら登場人物たちの事細かな人物描写を成しているせいでもある。とはいえ一見複雑そうな人間関係が何故か馴染み深く感じるのは、作者がこの作品を書き上げる為にシチリアン・マフィアや日本のヤクザのドキュメンタリー、さらに香港アクション映画などからリサーチしたという部分にもあるのだろう。マフィアである家族を嫌いながらいつしか戦いの中に身を投じてしまうシェイからは、映画『ゴッドファーザー』でアル・パチーノが演じたマイケルを思い出してしまった。

こうした深い人間ドラマと、任侠で彩られたマフィアという特殊な社会、そして”翡翠”の力によって生み出される超常の戦いが巧みにミックスされ、さらにそこにアジアン・テイストの背景が加わって、今までありそうでなかった独特な世界観を生み出しているのが本作なのだ。緑に輝く翡翠を巡る愛と闘争の物語、『翡翠城市』は今年出版されたSF本の中でも群を抜いて優れた小説であり、注目すべき作品のひとつであろう。 

翡翠城市(ひすいじょうし) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5045)

翡翠城市(ひすいじょうし) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5045)

 
翡翠城市 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

翡翠城市 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

 

 

最近読んだコミックあれこれ

ゴールデンカムイ(20)/野田サトル

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックス)

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックス)

 

出ました、待望の『ゴールデンカムイ』第20巻。樺太での大波乱の後に杉元ら一行が目指す場所は!?という展開なんだが、今巻では舞台がセパレートしている上に後半、「鹿児島生まれの眉毛が変な形のあんちゃん」鯉登さんの若かりし頃のエピソードが延々と語られて物語はそれほど進展していない。いわゆるサブストーリーの充実、というか寄り道なのではあるが、人気作による水増しとも言えるかもしれないけれども、これはこれでゴールデンカムイ世界が深まっていて面白かったな。 

波よ聞いてくれ(7)/沙村広明

波よ聞いてくれ(7) (アフタヌーンKC)

波よ聞いてくれ(7) (アフタヌーンKC)

 

『波よ』7巻、今回は引き籠り青年の居る家庭の取材である。普通に描けば深刻な話からイイ話への予定調和的展開になるところを、主人公ミナレの暴力的で破壊的な性格が事態をあらぬ方向へと導いてしまうのである。沙村広明という漫画家はその本質に相当なエゲツナサを兼ね備えていて、だからどんなにギャグに持っていき笑わせてくれても、その背後にべったりとした血生臭さを感じてしまうのだが、逆にこの紙一重のバランスが物語を面白くさせている。そして後半、実際に北海道で起こったある事件が描かれ出し、一気に佳境に入るのだ。

■レベレーション(啓示)(5)/山岸涼子

レベレーション(啓示)(5) (モーニング KC)

レベレーション(啓示)(5) (モーニング KC)

 

山岸涼子独特の視点からジャンヌ・ダルクを描くそら恐ろしいコミック第6巻。コンピエーニュ包囲戦において遂にジャンヌは捕縛される。拘束されたジャンヌを巡る政治的思惑と駆け引きがドロドロしていてなかなかに香ばしい。”神の声”を聞くジャンヌを山岸は単なる狂信の成せるものなのか超常のものなのかあからさまに描くことをしないが、しかし信仰から導き出される強烈な自己暗示により運命を味方につけそしてその運命に裏切られてゆくジャンヌの姿からは、人の精神が生み出すものの不可思議さと恐ろしさを感じてしまうのだ。 

クトゥルフの呼び声/田辺剛

クトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)

クトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)

  • 作者:田辺 剛
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: コミック
 

「今さらクトゥルフかあ」 と思いつつ表紙の禍々しさに負けてついつい購入してしまった1冊だが、あにはからんや、これが非常にクオリティの高い作品だった。まずなにより絵がいい。巧い。さらにあたかも海外コミックの様に一コマ一コマ精緻な描き込みをしており、無駄ゴマが全くない。語り口調は濃厚で陰鬱、ラブクラフト作品漫画化としてはかなり優れた部類に入る作品なのではないか(他知らんけど)。作者である田辺剛氏のラブクラフト・コミカライズ作品は多数出ているようで、これらも気になる。

アオイホノオ(22)/島本雅彦

アオイホノオ (22) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

アオイホノオ (22) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

 

 冬休みを利用して北海道に帰省したホノオ君だが北海道でも熱く燃えてるんだッ!?という22巻。しかも美人なアシスタントまで登場し物語はそっちの方向へと一気に佳境を迎えるのかッ!?と思わせつつやっぱりオクテなホノオ君になぜか若干安心したんだッ!? 

プリニウス(9)/ヤマザキマリとり・みき

プリニウス9 (バンチコミックス45プレミアム)

プリニウス9 (バンチコミックス45プレミアム)

 

いよいよというかやっとというかプリニウスと皇帝ネロとが顔を合わすことになるんだが、ネロの脳みそお花畑状態がなかなかにマイルドで楽しい。物語を通じあれこれ脇道にそれる事が多く本題はなんなの?と思うことの多い作品ではあるが、実際の所プリニウス狂言回しにしながら当時のローマ帝国とその周辺の、その一部でもより多く描こうとしているんだろうなあ。その分分かり難いっちゃあ分かり難いのだが、まあ楽しいことは楽しい。

 ■ニンジャ・バットマン(上)(下)/久正人

ニンジャバットマン 上巻 (ヒーローズコミックス)

ニンジャバットマン 上巻 (ヒーローズコミックス)

 
ニンジャバットマン 下 【完】(ヒーローズコミックス)

ニンジャバットマン 下 【完】(ヒーローズコミックス)

 

アニメ『ニンジャ・バットマン』のコミカライズ作品。正直アニメのほうはイマイチだったのだが、ほとんど同じ話の流れなのにもかかわらず、久正人が漫画化するとアラ不思議、これが「最初から久正人作品だったんじゃないのか?」と思わせる様な充実ぶりで、非常に楽しめた。なんかなあ、アニメはちょっと冷たい感じがしたんだよ。しかしコミックは久正人ならではの情感が込められていてそこがよかったのかもな。

■最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常(1)(2)/二宮敦人 (原作)、土岐蔦子 (漫画)

最後の秘境 東京藝大 1: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

最後の秘境 東京藝大 1: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

 
最後の秘境 東京藝大 2: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

最後の秘境 東京藝大 2: 天才たちのカオスな日常 (BUNCH COMICS)

 

「東京藝大生はトンデモないひとたちばかり!?」という二宮敦人による実話読み物のコミカライズ。まあまあ楽しかったのではあるが芸術突き詰める人ってこんなもんじゃないの?としか思わなかったし、それを大仰に「この人たち変わってる!」と描いちゃうのは少々シラケたな。あと悪いんだが漫画担当者が絵にしろ物語にしろどうにも表現力不足で食い足りなさすぎる。エピソードそれぞれは面白かったし、特に音楽科の芸術科とは全く別なキツサというのはオレは初めて知ってこれはフムフムと読んでしまった。

 ヴィンランド・サガ(23)/幸村誠

ヴィンランド・サガ(23) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(23) (アフタヌーンKC)

  • 作者:幸村 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: コミック
 

例によって筋も人間関係もよく分からんまま惰性で読んでいるが、そろそろヴィンランドをどうにかするために動き出したのは何となく分かった。

最近読んだSF/『巨星 ピーター・ワッツ傑作選』『星間帝国の皇女-ラスト・エンペロー-』

■巨星 ピーター・ワッツ傑作選/ピーター・ワッツ

巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)

地球を発って十億年以上、もはや故郷の存続も定かでないまま銀河系にワームホール網を構築し続けている恒星船と、宇宙空間に生息する直径2億kmの巨大生命体との数奇な邂逅を描くヒューゴー賞受賞作「島」、かの有名な物語が驚愕の一人称で語られるシャーリイ・ジャクスン賞受賞作「遊星からの物体Xの回想」、戦争犯罪低減のため意識を与えられた軍用ドローンの進化の果てをAIの視点で描く「天使」――『ブラインドサイト』で星雲賞など全世界7冠を受賞した稀代のハードSF作家ピーター・ワッツの傑作11編を厳選。日本オリジナル短編集。

 カナダのハードSF作家ピーター・ワッツの短編集。ピーター・ワッツを読むのはこれが初めて。作品の全体的な傾向としては「自意識とは何か」とか「訳分からんものとの遭遇」を描き、まあSFでは普通によくあるテーマではあるのだが、実際読んでみると結構奥深い洞察が加えられていて実に読み応えがあった。ハードSFとして先端的な描写が多用されるワッツ作品ではあるが、同様のハードSF作家、例えばグレッグ・イーガンのアプローチの在り方とはまた別種、というか違う次元のものを感じる。例えば「自意識」と言った場合何がしか学術的な定義があるのだろうけれども、ワッツが描く物語は単に「自意識」というのではなくその先の「魂」的な部分に肉薄しようとしているように感じるのだ。そして「魂」の定義は神学的な部分にしか依拠できないものなのではないか。だからこそワッツの短編はどこか暗く鬱々としているものが多い。それは「魂」という科学的には不合理なものを取り扱おうとするときの、科学者でもあるワッツの苦心の在り方ではないのか。同様に、「訳分からんものとの遭遇」のテーマ作品は、単に「異生物や異種知性体との遭遇を描くSF的な面白話」の枠を超えてある種の人智を超えた「試練」であったり人智を超えた「超存在」との遭遇を描いたものの様に思えるのだ。例えば「島」における「宇宙空間に生息する直径2億kmの巨大生命体」とは、これは「惑星ソラリス」の変奏曲であるばかりではなく、「一個の世界に遍く存在する一個のみの生命」という意味合いにおいて「神」を指しているとも言う事もできるのだ。すなわち「魂」と「試練」と「神」の存在を模索しようとするワッツの短編からは、望んでか望まずにかは分からないが、どこか宗教的な洞察の在り方を感じるのだ。そこが面白い。

巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)

巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)

 
巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)

巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)

 

 ■星間帝国の皇女-ラスト・エンペロー-/ジョン・スコルジー

星間帝国の皇女 ―ラスト・エンペロー― (ハヤカワ文庫SF)

相互依存する国家および商業ギルドの神聖帝国、すなわち"インターディペンデンシー"は、異時空内の流れ"フロー"を用いた超光速航行で成立する星間帝国だ。だが、47星系を結ぶ礎である、そのフローが崩壊しつつあった……。父皇帝の死後、カーデニアは惑星ハブで若くして皇位を継ぐ。破滅の迫る帝国で、彼女は権謀術数渦巻く権力争いにのみこまれていくが――《老人と宇宙》著者によるスペースオペラ新シリーズ開幕!

ジョン・スコルジーは好きなSF作家で、訳出作は多分全て読んでいるとは思うのだが、なんだか量産しまくってて読後感が段々軽くなってくるなーと近作読みながら思ってたんだけれども。で、今回は【星間帝国!】と来たから「おおっとスコルジーに似つかわしくない重量級にゴシックな世界が展開されるのかッ!?」と思ったが、読んでみるとやっぱりスコルジー的な軽い世界でなんとも拍子抜けした。なんというか誰も彼もが現代風にブロークンな、要するに汚い言葉使い過ぎ。これはスコルジーの味わいでもあるのかもしれないが、これじゃあ【星間帝国!】というには余りに軽過ぎカジュアル過ぎで、それがスケールの大きさを感じさせなくしている。舞台も「銀河にひしめく数多の惑星国家!」というわけでもなく帝国と23の惑星とそこのおエライさんがドタバタするだけで、「これホントに帝国なのか、単なる企業間闘争のお話に過ぎないんじゃないか」としか思えない。「企業間闘争」と書いたのはこの物語が基本的に経済とその契約、それにまつわる陰謀を描いているからで、ここらもスコルジーらしいといえばそうなんだが、やはり【星間帝国!】というからには専制政治と搾取と圧政とそこから生まれる叛乱を描いて欲しかった……というのはオレの一方的なイメージの押しつけにすぎないか。それとこの作品の最も大きな不満は、これ1冊で物語が終わっていないということだ。物語における最大のテーマは超宇宙航行を可能にする「フロー」と呼ばれる時空変異点の危機を描くものなのだが、それが最終的にどう決着するのか描かれないのだ。というのはこの作品、後で知ったのだが3部作の1作目だからだそうで、じゃあ【星間帝国シリーズ1】とかなんとか表題に付けろよハヤカワさんよー。という訳でなんとも煮え切らない読後感であった。

星間帝国の皇女 ―ラスト・エンペロー― (ハヤカワ文庫SF)

星間帝国の皇女 ―ラスト・エンペロー― (ハヤカワ文庫SF)