2018年オレ的映画ベストテン......のようなもの!!

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■オレ的2018年映画ベストテン的なナニカだった

今年もいよいよ押し迫り、あと数日となってきましたね。そして!年の瀬といえば!恒例!今年観たの映画のベストテンを発表する時期でもあるんですな!この1年に心に残ったあんな映画やこんな映画を総ざらいしてみましょう!というわけです!

……とはいえですね。今年、そーんなに劇場で映画観てません。多分一月に2本ぐらいでしょうか。さっきざっくり数えてみたら今年1年で30本前後かなあ。30本前後の中からベストテンだなんて、なにしろ分母が小さすぎて、おこがましいにもほどがありますよねえ。しかも!今年話題沸騰だったアレや大ヒットしたソレなんかも観てません!なんか興味が湧かなくて。まあソフトでは家で結構観てるんですが、とりあえず映画館で観ていない映画は入れていません。

そんなわけなので、とりあえず10本は選びましたが、特に順位とか付けてません。単に今年映画館で観た順番に並べてるだけです。それに、「超弩級娯楽アクションのアレ」と「臓腑を抉る深い人間ドラマのソレ」をどっちが上とか下とか順位付けるのもおかしいし。まあ、ここのブログ主が今年どんな映画を楽しんだのか参考までに読んであげてください。それでは行ってみよう!

 

☆俺が天才科学者だってことに文句ある奴いるか?賞

ジオストーム (監督:ディーン・デブリン 2017年アメリカ映画)

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天は割れ地は砕け海は咆哮上げる大天災が襲ってきたッ!?もはや人類は滅んでしまうのか!?それを救えるのはジェラルド・バトラーただ一人!?どう見たって狂暴なツラ構えでしかないジェラルド・バトラーが何を間違ったのか天才科学者に扮し、あろうことか世界を救っちゃう!というトンデモ大バカ映画です!そのバカさ加減から『スカイスクレイパー』と並びオレの中で今年度最高のバカ映画であり、どちらも甲乙つけがたい、天網恢恢疎にして漏らさぬ天晴なバカさ加減を誇っていると言えますでしょう!もはやジェラルド・バトラーは一家に一体の欠かせない娯楽要員であることに間違いはございません!

 

☆最優秀てめえらみんなふざけんじゃねえ賞
スリー・ビルボード (監督:マーティン・マクドナー 2017年アメリカ映画)

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娘を殺された一人の女が進展しない捜査状況に業を煮やし「たった一人の暴動」を繰り広げる、という非常に重い物を孕んだ人間ドラマです。オレがこの作品が好きなのは、ただ単に人間社会の不条理や無明性を描き出しただけのものではなく、そんな状況の中で「てめえらみんなふざけんじゃねえ!!」と怒りを露わにし例えそれがどんな反社会的なことであろうと戦いを止めようとしない切羽詰まったギリギリの反逆心に凄まじく突き抜けたものを感じたからなんですな。世の中どうしようもないことが多々ありますが、その中で「もう我慢できねえわ!」と反旗を翻した主人公に共感を感じたのですよ。 

 

☆最優秀ヒロインがメチャ可愛いSFだったで賞
ヴァレリアン 千の惑星の救世主 (監督:リュック・ベッソン 2017年フランス・中国・アメリカ・アラブ首長国連邦・ドイツ映画)

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リュック・ベンソンの送る極彩色のスペース・オペラ!というだけでもう最高なんですが、始終眉間に皺を寄せ不機嫌顔のヒロインがこれまたキュートでねえ、いやあ眼福でございました。しかし一見シンプルなSF冒険譚ではありますが、物語の背後には様々な国家がひしめくヨーロッパの現状と、そのヨーロッパが過去第3世界に行った侵略の歴史が透けて見え、それにどう贖罪を成すべきなのか、というテーマがこの映画だったのではないかとも思えたのですよ。その辺の微妙な複雑さがアメリカSFとはまた違う味わいをもたらしていると感じました。 

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☆最優秀ガンガンにゲームしまくりだもんね賞
レディ・プレイヤー1 (監督:スティーヴン・スピルバーグ 2018年アメリカ映画)

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スピルバーグ印のゲームをテーマにしたSF作品が面白くない訳ないだろ!というこれもまた最高のSFアクション作品でしたね。個人的にはゲーム好きではあってもここに登場するゲームやアニメのキャラにはそんなに思い入れはないんですが、それよりもそれらが代表する文化史そのものの在り方に相当心地よいものを覚えました。と同時にそれらの文化を生み出してきたギークであったりOTAKUと呼ばれたりするものに脚光を当て、そんな彼らに華々しい活躍の場を与えた部分にこの作品の重要性を感じました、ともっともらしいことを言ってみちゃったりしたりなんかして。

 

☆最優秀みんなみんな消えてしまったああああで賞
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (監督:アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ 2018年アメリカ映画)

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いやオレ実はマーベルよりもDC派でねえ、一応マーベル映画作品は全部押さえてはいるんですが、どことなく斜に構えて観ている部分が多くて、作品によっては相当低評価のものもあるんですけどね、この『インフィニティ―・ウォー』を観てしまった日にゃあアナタ、それまでグチグチ文句を垂れてたこと全てに反省の意味を込め平身低頭したいほどでありましたよ。いやしかしここまでやってしまうんだ?ここまで巨大化し利益も相当生み出している世界を終わらしちゃうんだ?という思い切りのよさ、さらに言えば一度チャラにすることでマーベル映画運営に風通しの良さをもたらそうという作品世界そのものへの愛情というものを如実に感じてしまったわけなんですよ。

 

☆最優秀あたいはタフなクソビッチよで賞
アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(監督:クレイグ・ガレスピー 2017年アメリカ映画)

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この映画、オレにとって『スリー・ビルボード』とどこか通じるものを感じる作品なんですよ。毒親にバカ男、クソみたいな貧乏とカスみたいな運命に翻弄され、そこから足抜けしたいと願いつつ因業なクズどもが寄ってたかって足を引っ張る、というもはや地獄みたいな物語なんですが、そんな中で主人公が悲劇のヒロインを演じるのではなく「やってらんねーわこのクソ人生!」とミドルフィンガーをおっ立てようとする、その負け戦でしかないものに対するなけなしの反逆心というか怒りに似たものが、なんだか自分自身の人生を鑑みた時に共感出来て堪んなかったんですよ。そりゃ最後は結局負けるのかもしれないけど、せめて歯形ぐらいはヤツラ(誰?)に付けてやろうじゃないか、と思う訳なんですよ。 

 

☆最優秀わんわん大行進で賞
犬ヶ島 (監督:ウェス・アンダーソン 2018年アメリカ映画)

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もうね、ウェス・アンダーソン映画は様式美だしなにより綺麗でポップで楽しくて、こういう世界にいつまでも浸っていたいよなあと思わせるものがあって、しかしまあアートだったり綺麗なものとかポップなものとかはやはり自分の現実世界では果てしなく遠い向こうの彼方にあるものでね、その距離感が自分には時々遣る瀬無いものに思えてしまうんですが、 ウェス・アンダーソン映画は「いいんだよ、ここにいて」と言ってくれる敷居の低さと心優しさがあって、だからそんなウェス映画の中で伸び伸びと遊べる、その想像力を堪能できるという安心感がとても良いのですよ。きっと何言ってんだかさっぱり分からないと思うんですが、まあいい年こいていろいろひねくれちゃった人間なんです、すまんのうすまんのう。 

 

☆最優秀若き日のチンピラで賞
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー (監督:ロン・ハワード 2018年アメリカ映画)

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スター・ウォーズ外伝!いいじゃないかいいじゃないか!銀河を駆けるチンピラ列伝!イカスじゃないかイカスじゃないか!なんかもうそういう背景だけで十分サイコーじゃないか!そもそもチンピラ主役のスペースオペラ作品としてもユニークだし優れているし、物語における敵か味方か!という権謀術数の行方も実に楽しめるし、とかなんとか言いながらクライマックスにはきちんと帝国軍対反乱軍の戦いというSWらしい巨大な物語に収斂していて、オレこの作品物凄く好きなんだよなあ。外伝1作目『ローグ・ワン』は確かに物凄く優れた作品だったが、それとは別のベクトルで少々リラックスしていて娯楽作に徹していたこの作品も、もっと評価されるべきだと思うんだがなあ。 

 

☆最優秀いつも無茶する僕を見てくれ!(キラッ)賞

ミッション:インポッシブル/フォールアウト (監督:クリストファー・マッカリー 2018年アメリカ映画)

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「ハロー皆サン、僕はいつでも無茶するトム君だよ!今回の映画もとことん無茶したのでこの無茶振りをとことん楽しんでくれ、HAHAHA!」と言ったとか言わないとか、とりあえずとことん無茶しまくって脳ミソに快楽汁がドクンドクンとほとばしりまくりイヤ~ンもう昇天!と瞳孔開きまくってるド変態トム君のギンギンのアクションに否が応でも付き合わされるシリーズ最新作、あとで知ったが「脚本はその場その場の思いつきさ!(キリッ)」と胸を張って答えたトム君のどこまでも突き抜けた極楽トンボ振りに派手なフォント付きで「ガクッ!!」とずっこけたのはオレだけではない筈だ!もう誰にも止められないトム君、もう宇宙の果てまで無茶しまくってくれ!

 

☆最優秀高いよー熱いよー怖いよーで賞

スカイスクレイパー (監督:ローソン・マーシャル・サーバー 2018年アメリカ/中国映画)

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はい!おバカ映画デス!巨漢のハゲが燃えさかる摩天楼を上ったり下りたりする!巨漢のハゲが冷や冷やしたりさせたり敵にブチのめされたりブチのめしたりする!いやもうそれだけで十分じゃないですか! 巨漢のハゲは世界の合言葉!巨漢のハゲは幸福への道しるべ!ハゲのつややかな輝きと巨漢の豊かな包容性がそこにあるなら人はいつでも安心してその身とその心を預けられる!要するにロック様サイコ―!と、そういう映画なんですな。

 

☆次点 

バッド・ジーニアス 危険な天才たち (監督:ナタウット・プーンピリヤ 2017年タイ映画)

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タイ製の映画である部分でまず物珍しかったということ、テーマが天才的な知能を持つ若者たちのカンニングという名のミッション・インポッシブル作戦であったということ、さらにその背景には格差社会というテーマが隠されていること、そういった部分で非常に見所の多い優れた作品だったのですが、それ以上に主役を演じるヒロインの実に淡泊な東洋的な顔つき、それと相反するすらりと伸びたモデル体型にオヂサンちょっぴり胸ときめいて評価を上げた、というのが真相です! 

 

とまあそんな訳でした!お粗末さまです!あと非常にどうでもいい話なんですが今回エントリで使用した画像は冒頭のポスターを除き全て640x290のサイズに統一してあるというオレの無意味なこだわりにちょびっと感心してあげてください!ではおしまい! 

 

今年観て面白かったインド映画あれこれ2018年!でもたいして観てない!

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■インド映画はちょっとしか観てなかった

今年の総ざらいということでまずインド映画記事についてまとめてみようと思います。……とはいえ、今年はまるでインド映画観ていません。ですからインド映画記事もたいして書いていません。原因はあの『バーフバリ』です。

今年『バーフバリ』があまりにも話題に上りインド映画自体が幅広く認知され評価を高めたという部分で、それまでムキになってインド映画インド映画と連呼していたオレのよく分からない使命感も、とりあえずお役御免だなあ、と感じたのですよ。そんなわけで今年は長らく続けていたインド映画視聴を一旦休止することにした年でもありました。あんまりムキになり過ぎて息切れしてしまったというのもあるんですけどね。とはいえ他の様々な映画作品と同様、面白そうだな、とアンテナに引っ掛かった映画はインド映画がどうとか言うこととは関係なく観ていこうとは思っています。

というわけで数は少ないのですが劇場やDVDで観て印象に残っているインド映画を幾つか挙げてみたいと思います。

■今年印象深かったインド映画

バーフバリ 王の凱旋 (監督:S.S.ラージャマウリ 2017年インド映画) 

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もうね!今年を代表し象徴する映画と言ったらこれしかないでしょう!最初に上映された後も爆音だ絶叫だマサラだ果てには完全版の上映だ、と延々と上映が拡大し、一時はTwitterのオレのTLがこの映画の話題だらけだったこともありました。それと永らくインド映画を追っかけ続けていたオレとしてはこの映画のブレイクによってインド映画が相当カジュアルになった部分でも感慨深かった。もちろん映画作品としても超弩級のエンターティンメントであることは間違いないのでまだ観られていない方は1作目である『伝説誕生』と併せて是非ご鑑賞ください!

バーフバリ2 王の凱旋 [Blu-ray]

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Padmaavat (監督:サンジャイ・リーラー・バンサーリー 2018年インド映画)

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監督であるサンジャイ・リーラー・バンサーリーはインド映画界でも突出した映像世界を創造する監督であり、その絢爛豪華な映像美はインド映画界のみにとどまらない世界的にも傑出した才能を示すものでありましょう。そもそもオレは、このサンジャイ・リーラー・バンサーリーの作品に震撼させられインド映画を貪るかの如く観るようになったぐらいなのです。この映画『Padmaavat』は今年公開された彼の最新作であり、しかも3D作品という形でインド映画上映会で視聴することができました。作品のテーマに古臭い物を感じましたが、その映像美はより研ぎ澄まされた凄まじいものでした。また、主演のディーピカー・パードゥコーンはインドいちどころか地球いちの美貌を誇る女優さんであり、もうこれ観ないで何観るんだよ!という作品でもありますね!観たくなった人は輸入DVDを買うんだ!

 

Tiger Zinda Hai (監督:アリー・アッバース・ザファル 2017年インド映画)

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ボリウッド映画界でも一二を争う大人気スター、サルマーン・カーンが主役を務める大変ド派手なアクション大作です!銃撃!カーチェイス!肉弾戦!大爆発!とアクション映画の必須要素をこれでもかとばかりにテンコ盛りにした大娯楽作で、そのアクションは今年観たどのハリウッド・アクション作をも遥かに凌駕していましたね!インド映画、特にボリウッド作品はどちらかというとロマンス作が多く、ちょっとその辺に食傷していた部分もあったので、これからはこんな頭空っぽにしても観られる作品をば中心に観ようかな、とも思っております。

 

ダンガル きっと、つよくなる (監督:ニテーシュ・ティワーリー 2016年インド映画)

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インドのスパルタ親父が自らの娘たちをレスリング選手に仕立て上げる、という壮絶スポ根ムービーです。親と子の愛情や葛藤と同時に、インドにおける女性の自立とは何かをも描き出した作品でした。実はこの映画、2017年に輸入DVDで観てその年の「面白かったインド映画」の1作に加えたのですが、今年日本公開を果たしたので改めてここで紹介しておきたいと思います。現在Netflixでも視聴できますのでお正月は是非ご覧になってください!

 

パッドマン 5億人の女性を救った男 (監督:R . バールキ 2018年インド映画)

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貧しい環境と旧弊な因襲に阻まれながらも、愛する妻のために安価で安全な生理用ナプキンを完成させようとした男を描く実話を元にした物語です。まず「自分らって貧しいんですよ!」「自分らって遅れた考えの中で生きてるんですよ!」という事実を正直に告白し、その中で「あ、作るのは生理用ナプキンです!」と堂々と宣言し、「でもさあ!全女性に必要なわけじゃん!恥ずかしいとかおかしいとかいうことなんかないし、そう言っちゃうことの方が間違ってるよね!」という真っ当たる道を説き、「やんなきゃみんな困る!だから自分がやる!」と強固な意思をあからさまにする、もう全てにおいて「真っ直ぐであろう」という清々しいほどに心洗われる作品でしてね、しかし「あ、でもボカァ学がないので時々変な失敗もしちゃうんだよなあ!」とコミカルさも決して忘れない、そんな「なんて素晴らしいんだろう!」と思わざるを得ない非常に優れた作品ですよ! 

 

Sanju (監督:ラージクマール・ヒラニ 2018年インド映画)

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『きっと、うまくいく』『PK』のラージクマール・ヒラニ監督作品なら期待して当然、そして観終った後は期待以上の出来に唸らされました(うーん!うーん!)。偉大なる父の陰で葛藤する息子の物語ではありますが、それ以上に青年期の生き難さを非常にビビッドに描いた作品でもありました。そういった物語のあり方以上に、なにしろ映画の作りが巧い!テンポがよくカットが的確で、交互に描かれる過去と現在のシーンの繋ぎ方は限りなくスムーズ、主人公の行く末が気になって気になって自然と前のめりになって観てしまうんですね。ラージクマール・ヒラニ監督はもはや世界的な映画監督の一人と呼んでもいいぐらいでしょう。

 

Zero (監督:アーナンド・L・ラーイ 2018年インド映画)

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シャールクがVFXにより小人の男になって、車椅子の女性との愛と葛藤を演じちゃう、という物語です。エキセントリックな設定ながら物語の本質は普遍的なものであり、 そして中盤のソングシーンにおけるあまりにも鮮やかな色彩の乱舞は、数あるインド映画の中でも凄まじくロマンチックで美しいものでした。クライマックスの展開にはちょっと置いてけぼりを食った気もしましたが、総体としてはいい映画だったな、いいシャールクだったなと思えました。

 ■その他のインド映画記事

その他にもインド映画関連は幾つか記事を書きました。その中でも「ボリウッド・ベスト100作品全作視聴&全作レヴュー」はオレのこのブログにおいて3年の長きに渡り企画を進行させ完成させた執念のエントリですので是非ご覧になって欲しいです。いやまあしかし疲れたわコレ!

☆英タイムアウト誌の選ぶボリウッド・ベスト100作品を全て観て全ての感想を書いた。

 その他のインド映画関連エントリはこんな感じ。

 ☆個人的ボリウッド・カルト・ムービー11選!

 ☆中学1年生にお勧めするインド映画はコレだッ!?

 ☆インド映画の様々な言語

いやあしかし書くことは書きましたがひたすらどこまでも内容の薄い記事でしたね!どうもお粗末さまでした!相当適当なインド映画好きなので真面目なファンの方、下らなさ過ぎてどうも申し訳ありません!ではではこれにて退散!(いったいどこに行くんだ)

クリスマスはトナカイ……ではなくエゾシカだったッ!?

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unsplash-logo Tj Holowaychuk

そういやクリスマスだったな、と思ったのである。なんだか「あんまり興味は無いが世の中の趨勢らしいのでなんとなく思い出した」みたいな余裕ぶっこきまくってますアピールたっぷりのスカしたモノの書き方だが、オレは別にスカしたかったわけではなく、「クリスマスについてのエントリは書いてなかったな」と思っただけなのである。

最後にこのブログでクリスマスのエントリ書いたのは2012年じゃないか。今年は2018年だから6年も書いてなかったじゃないか。いや別に書きたくなかったら書かなきゃいい話なのだが、ただ「今年のクリスマスは相方さんから珍しい料理作ってもらいましたよ」という話がしたかっただけなんだ。

そもそも前回書いた2012年のクリスマス記事では相方さんが「パテ・ド・カンパーニュ」を作ってくれたので、それがとっても珍しかったから記事にしたんだ。

でさ、今年はさ、なんと「エゾシカのロースト」を作るって言うじゃないか。ジビエに挑戦したいって言ってるじゃないか。これも珍しいから、やっぱり記事にしたいじゃないか。そういや以前相方さんの誕生日の時にジビエ料理喰いに行った事があるなあ、あん時ゃ面白かったなあ、といろいろ記憶が甦ったりした。

で、なにしろエゾシカだ。エゾシカって言うぐらいだからエゾの鹿だ。エゾってなんじゃろっ、て方もいるかもしれないので説明するが、エゾっちゅうのは蝦夷って書いて北海道の古称のことでもある。要するに北海道に野生する鹿なんだ。これは奈良の鹿なんかと違って大いに野生的だぞ。見てくれやこの写真。

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この写真はネットで拾ってきたとかそういうんじゃなくて、オレが撮ったものだ。オレは北海道生まれなんだが、以前実家に帰った時に、公園に行ったらたまたまおったのを撮ったものなんだ。これ、現地では別に珍しい生き物でもなんでもなく、山のほうに行くと普通におる。普通におるだけではなくて、たまに市街地に降りてきてはゴミ集積所を漁ったりしておる。まあオレの実家がどんだけ田舎なのかということを実感してもらいたい。

ゴミ漁りだけでなく農作物も荒らしたりしているので、割と害獣でもある。だから駆除もされていて、今ザックリ調べたら年間10万頭もやっつけられているらしい。それでだ。その10万頭、どうしてるのかってことなんだがな。やっぱさ。食おうよ。殺ったらきっちり食おうよ。以前椎名誠のエッセイを読んだときに椎名さん、「オレが今まで食った肉の中で最高に美味かったのは鹿肉だしこれなんで流通に乗せないの」とかなんとか書いてたけどオレもそう思うよ。

なんか説明が長くなったけどそんな訳でなにしろ今年のクリスマス料理はエゾシカということになったんだよ。ネットで普通に通販されていて、それを見つけた相方さんが「シカ!今年はエゾシカ!」と大きな眼をクリクリさせながらオレに言ったんだよ。「いいねえ」とオレは答えたね。クリスマスに鹿肉食うなんてなんだかヨーロッパぽいじゃないか。七面鳥なんて大雑把なメリケンに食わせときゃいいんだ。

そして注文して届いたのがコレ。

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おお!「北海道産エゾ鹿肉ヒレ」!いいっすねえ!なんかもう血の色が赤々としてますねえ!400グラムあるから二人で分けて丁度いいぐらいじゃないか!?

とはいえさあ、この3連休、相方さんは仕事忙しくて全部出勤だったんだよ。オレは休みだったけど。そんな中できっちり下ごしらえしてくれた相方さんありがとう。相方さんも頑張ってくれたんで、オレはビールを揃えたんだよ。クリスマスはワインでもシャンペンでもないんだよ、ビールだよビール!

まずは創業明治5年の日本酒蔵元、愛媛県にある梅錦山川の作るクラフトビール、「梅錦ビール」のセットだ。オレは今まで日本のいろんな地方のクラフトビールを飲んできたが、この「梅錦ビール」がその中でも最高に美味いクラフトビールだと思っている。

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そしてドイツビールだ。ビールといえばやっぱりドイツだからな。そしてそのドイツのビールの中で個人的に最も美味いビールだと思うのがこの「ヴェルテンブルガー」だ。なんでも「7世紀頃にドナウ河畔ケールハイムの地に創建されたバイエルン地方最古の修道院、ヴェルテンブルク修道院において西暦1050年からビール醸造が成されている世界最古の修道院醸造所のビール」ということなんだ。要するに1000年の歴史を持つドイツビールなんだよ!美味くない訳がなかろうが!f:id:globalhead:20181225211233j:plain

こうして酒が揃いあとはお肉が焼けるのを待つばかりだ。前日からレーズン&ワインで下ごしらえをした鹿肉を低温調理する。 要するにローストビーフの要領だ。鹿肉はステーキにしても薄切りにして焼肉にしても他にも鍋でも美味いらしいが、今回はロースト鹿肉と言う訳なんだ。

そうして出来上がったのがこれ。

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血合いが多いので出来上がりは黒っぽく見えるが、立派なロースト鹿肉の出来上がりだ。これにレーズンソースをかけて食すのだ。

一口食べてみるとこれがまた柔らかい。ヒレということもあって脂肪が全くなく、一晩レーズン&ワイン汁に漬けたので臭みも殆ど無い。殆ど無いのだが、噛めば噛むほどに野趣溢れる味が沁み出してくる。ステーキではないので塩胡椒で食うのよりもやはり甘いソースが合う。なにしろもう、下手な家畜肉を食うのよりも数倍美味い、牛肉なんかより臭みがなくその分牛肉よりも美味くすら感じた。いやこれ、クリスマスといわずにたまに食べたいよね?

そんなわけでドイツビール飲みィの、鹿肉食いィの、合間にベークトポテト頬張りィの、と、得も言われぬ非常に楽しい食事であった!相方さんありがとう!そしてメリークリスマス!

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チビ男と車椅子女性の恋/映画『Zero』

■Zero (監督:アーナンド・L・ラーイ 2018年インド映画)

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■今年最後のインド映画大作はシャー・ルク・カーン主演作

身長137センチしかないチビの男が恋をしたのは脳性麻痺を患う車椅子の女性だった。2018年の掉尾を飾るボリウッドラブロマンス大作『Zero』が遂に公開されました。主演はキング・オブ・ボリウッドことシャー・ルク・カーン、ヒロインにアヌーシュカ・シャルマー、カトリーナ・カイフ。ちなみにこの3人は2012年公開の『命ある限り』でも共演を果たしております。監督は『タヌとマヌは結ばれる』(2011)(Netflixで公開中)とその続編『Tanu Weds Manu: Returns』(2015)、『ラーンジャナー』(2013)のアーナンド・L・ラーイ。作品はSpaceBox主催のインド映画上映会で英語字幕で鑑賞しました。

《物語》ウッタル・プラデーシュ州のメーラトに住む38歳の男、バウア・シン(シャールク・カーン)はお喋り好きのお調子者だったが、137センチの低身長が災いしてか結婚相手がおらず、今日も結婚相談所に駆け込む。バウアはそこで宇宙工学技術者のアーフィア(アヌーシュカ・シャルマー)という名の女性にぞっこんになる。矢も盾もたまらず彼女に会いに行くバウアだったが、なんと彼女は脳性麻痺により車椅子生活を余儀なくされている女性だった。逡巡や諍いなどがありながらも、バウアとアーフィアは目出度く結婚が決まる。しかし、バウアが以前より大ファンだった女優のバビータ(カトリーナ・カイフ)ととあることから知り合ったことにより、その結婚に暗雲が立ち込めることになる。

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この作品でまず最初に目を惹くのはあのシャールクが、特殊効果により背丈の小さな男を演じる、という所でしょう。シャールクは2016年の主演作『Fan』において、やはり特殊効果を使い「自分にそっくりのファンにストーカーされる映画スター」を一人二役で演じますが、「そっくりではあるが微妙に違う顔の不気味さ」を実に巧みに盛り上げることに成功していました。いわゆる二枚目俳優であるシャールクですが、『神が結び合わせた2人』(2008)のようなあえて地味でダサい役を演じたり、今作や『Fan』のようなエキセントリック極まりない役を演じてみたりと、スターの座に甘んじない冒険心を非常に感じることが出来ました。

■マジカルでファンタスティックな展開が魅せる前半

さて物語はどうでしょう。前半においてシャールク演じるバウアは、止め処も無いお喋りと胡散臭い調子の良さを延々と披露し、その一癖も二癖もあるキャラクターを観客に強烈に印象付けます。実はシャールク、癖のある役が巧いんですよね。とはいえ、その楽天的な一途さが彼をどことなく憎めない男にしています。それに対しアヌーシュカ演じるアーフィアは、最初困惑しつつもいつしか彼を愛するようになるのです。そして、この2人の愛がまさに成就するその時の演出が、もうマジカルとしかいいようのない最高に素晴らしいファンタジックな映像で盛り上がりまくってくれるのですよ!まさにインド映画の面目躍如ともいえる見所中の見所です!!

背丈があまりに低いこと、車椅子での生活を送っていること。これらは、一般的なロマンスを困難にする要素ではあるでしょう。物語はそんな困難さを背負った男女がお互いに愛を見出し結ばれる様を描きます。しかしこれは、障碍者にもロマンスは可能だなどと言っている作品ではありません。世に暮らす多くの人は、実は大なり小なりなにがしかの困難を抱えているものです。それは容姿であったり性格であったり、家族や経済的事情であったりと様々でしょう。映画における2人の障害は、これらをアナロジーとして表現したものであり、その本質にある「愛は困難を乗り超える」というメッセージは観るものの心に普遍的に響くことでしょう。

しかし、かねてからバウアがご執心だったボリウッド女優バビータとバウアが、あるきっかけから急接近することになり、物語は大波乱を迎えたまま後半へと続くのです。

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■波乱の展開を迎える後半 

この後半冒頭はバビータとバウアの物語となっていきます。ここからはあまり内容に触れないことにしますが、この後半ではこれまでのアーナンド・L・ラーイ監督作品と同様、「男と女の一筋縄ではいかない愛の確執」が描かれてゆくことになるんです。それは表裏一体となった愛と憎しみであり、愛するが故の怒りであり、愛に名を借りた支配であり、諦めた筈なのにくすぶり続けてしまう愛の記憶でもあるのです。オレはこういった展開を迎えるこれまでのアーナンド監督作品どれもに衝撃を受けたのですが、この作品でもそういった生々しい感情が次々と爆発してゆきます。「ラブロマンス作品」の一言で終わらない深みと複雑さがアーナンド監督作品には常に存在しているのです。

映画『Zero』は「男と女の一筋縄ではいかない愛の確執」を描きながらさらにクライマックスにおいて「悔恨と贖罪」というテーマへとなだれ込んで行きます。愛する者を傷つけてしまった罪をどう贖うのか、ということです。しかしこういった展開を迎えながら疾走してゆくクライマックスは、物語を盛り上げようとすればするほどリアリティから乖離してゆき、これはこれでひとつのファンタジィと見ることもできますが、個人的にはどこか置いてけぼりにされてしまったような気分を味わいました。逆に、これほどまでに大きな「仕掛け」を用意したのは、従来的なラブロマンス展開を超越してみせたいという監督自身の野心であったのかもしれません。そういった部分で評価の難しい作品なのですが、もう一度観れば評価が化けそうな気もします。

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主演のシャールクは安定の演技、踊りのシーンも最高に楽しくいつも通り魅了されました。いやあ、やっぱりスクリーンでシャールクを見るのは幸せなことですね!アヌーシュカ・シャルマーは車椅子に乗っている上に脳性麻痺でぎこちない動きしか出来ない、という難しい役を、決して痛々しく感じさせることなく、さらにチャーミングさすら感じさせる演技を見せていました。一方カトリーナ・カイフは酒びたりで行動が支離滅裂な映画女優という汚れな役柄を堂々と演じ、演技の幅を見せ付けてくれました。ビッチなカトリーナ、最高にセクシーだったな!さらに今作では鼻血が噴出しそうなぐらいに膨大な数のボリウッド俳優のカメオ出演が見られますので、もうこれらのシーンだけでもチケット代の元を取ったようなものです。う~んやっぱりもう一度観たい!

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Zero | Official Trailer | Shah Rukh Khan | Aanand L Rai | Anushka | Katrina | 21 Dec 2018

『きっと、うまくいく』『PK』の監督ラージクマール・ヒラニによる新作伝記映画『Sanju』

■Sanju (監督:ラージクマール・ヒラニ 2018年インド映画)

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■インド映画界の巨匠ラージクマール・ヒラニ監督最新作

今日は傑作映画『きっと、うまくいく』『PK』で日本でも広く知られるインド映画監督ラージクマール・ヒラニの最新作『Sanju』を紹介したいと思います。この『Sanju』、今年1月にインドで公開されたのですが、ボリウッド作品としては今年最大のヒットを飛ばしているんですね。物語は現在も活躍する実在のインド映画スター、サンジャイ・ダットのこれまでの人生を振り返ったものとなっています。オレ自身は輸入盤DVDにより英語字幕で鑑賞しました。

とはいえ、日本の映画ファンの方にとっては「サンジャイ・ダットって誰?」と思われるに違いありません。日本で紹介されているサンジャイ出演映画作品は『PK』『アラジン 不思議なランプと魔人リングマスター』『レッド・マウンテン』『アルターフ -復讐の名のもとに-』などがありますが、これも『PK』以外はコアなインド映画ファンじゃないと知らない作品ばかりでしょう。

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■「Sanju」って誰?

実はこのサンジャイ、インド本国ではいろんな意味で有名な俳優なんです。父母がインドでは知らない者のいない映画俳優のスニール・ダット、女優のナルギスという映画大スター一家の生まれであり、本人も俳優として様々な作品に出演しています。ちょっと怖い顔をしているので、自分が今まで観た作品の中では悪役ぽい役が多い気がします。特に映画『Agneepath』の悪役演技は「インドにはこんな怖い俳優がいるのか!?」と啞然とした記憶があります。日本の俳優で言うなら若山富三郎原節子との間に生まれた石橋蓮司って感じかな?

しかし彼が真に「有名」なのはそこだけではありません。なんと彼はドラッグ、銃の不法所持、テロ・破壊活動の容疑により有罪判決を受け5年の禁固刑に処せられた、という過去を持っているんですね。サンジャイを知らない方なら「いったいどんな悪人なんだ!?」と思ってしまうでしょう。しかし映画は、彼のそんなスキャンダラスな側面のみを描くのではなく、そのような反社会性に走ってしまった彼の孤独な魂に寄り添うかのように作られた作品なんです。だって、なんたってラージクマール・ヒラニ監督ですよ!?

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■破滅へとひた走る放蕩生活

物語はこのスキャンダル真っ盛りの頃、サンジャイの妻マーニヤター(ディヤー・ミルザー)が夫の真の姿を知ってもらうべく作家のウィニーアヌシュカー・シャルマー)に彼の伝記を執筆依頼するところから始まります。そしてサンジャイ(ランビール・カプール)が語り始めたのは、高名な俳優である父スニール・ダット(パレーシュ・ラワル)からの期待に圧殺されかけていた青春時代、さらに、インドで最も有名な女優である母ナルギス(マニーシャー・コイララ)が、死に至る病魔に襲われたことへの深い悲しみでした。

インド映画では「強大なる父権との確執・対立」というモチーフが非常によく描かれます。カラン・ジョーハル監督による『家族の四季 -愛すれど遠く離れて-』などはその最たるものでしょう。また、恋人の父親に認めてもらうために血みどろの戦いにまで発展するアディティヤ・チョープラー監督作『Dilwale Dulhania Le Jayenge』はインドでは超ロングランの記録を持つ大有名作品です。家族主義を重んじるインドでは父権とは絶対のものであり、そこから生まれる確執・対立を通して、それとどう折り合いをつけてゆくのかが大きなテーマとして取り扱われます。

今作『Sanju』において、サンジャイの父であるスニール・ダットの影はあまりにも巨大です。映画人としても家庭人としてもあまりにも完璧な父と息子サンジャイとの間には確執も対立もありません。サンジャイは父の完璧さに己の卑小さばかりを見出し、その期待の大きさに立ち向かうことも出来ず、ただただひたすら萎縮してゆくのです。そしてその重圧から逃れるために彼が手を出したのがアルコールとドラッグでした。

彼の放蕩生活は止まる所を知りません。経済的に恵まれた家庭であったからこそ逆に歯止めを利かせることもできず、ずぶずぶと爛れたような日々を過ごすのです。その中で恋人ルビー(ソーナム・カプール)との出会いや親友のカムレーシュ(ヴィッキー・コウシャル)の手助けがありこそはすれ、破滅的な性向は決して正されず、遂に彼は己の男らしさを肯定する為に銃器に手を出してしまいます。

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■青春期の生き難さを描く普遍的な青春ドラマ

サンジャイは弱い男だったのでしょうか。クズ男だったのでしょうか。自分にはそう思えません。彼は「父あっての自分」というアイデンティティの脆弱さからなんとしても逃れたかった。「自分」が「自分」でありたかった。彼がその放蕩生活の中で否定し抹殺したかったのは「自分では無い自分」の姿だった。彼のその生活はあまりにも極端でしたが、父親のコントロール下にある「庇護された自己(子供)」から「一個の確立した自己(大人)」へと成長するための途方も無い自己否定、そのあまりにも長い道のりを描いたのがこの作品だったのではないでしょうか。

もうひとつ、これらサンジャイの乱れきった生活の有様から見えてくるのは、これが欧米映画なら意外とよく描かれる光景だな、ということです。『ドラッグストア・カウボーイ』や『トレイン・スポッティング』といった作品は、彼らをドラッグに走らせるものがインドのような「強力な父権」ではなく、もっと漠然とした生活や社会への不安であったりもしますが、こういった「青年期の生き難さ」を描いたものとして同等であるともいえるのです。そういった点で映画『Sunju』はこれら欧米映画と比べても全く遜色の無い「青春の彷徨」を描ききった作品だといえるでしょう。

とはいえ、こういった「青春の彷徨」を描きながらも、物語は決して暗かったり遣る瀬無いもので終始したりはしません。実際のサンジャイ・ダットが現在見事映画界に復帰し、再び華々しいキャリアを復活させているという結末が既に明らかな以上、この物語には明るい未来(現在)が待っていることは誰もが知ることです。「青年期の生き難さ」を経た「青春の彷徨」が辿り着く希望に満ちた「今」。未来は明るいほうがいいし、そして多くのインド映画は、いつも希望の香りに満ちているのです。

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Sanju | Official Trailer | In Cinemas June 28