インフル小噺

「インフル流行だね」
「インフルだね」
「やっぱりマスクせなあかんね」
「キミの場合ブサイクだから顔全部マスクで覆って欲しいよね」
「失礼だなあ」
「見苦しい体してるから全身もマスクで覆って欲しいよ」
「ちょっとひどいねあんた」
「キミん所の嫁も子供もブサイクだからついでに家ごとマスクで覆ってしまってくださいよ」
「いったいどんな大きいマスクなんですか!」
「いっそのこと世界全部マスクで覆ったらいいんですよ」
「そんなマスクあるかよ!」
「いやでもマスクは大事ですよ」
「大事だね」
「マスクは万病を避けますからね」
「ほうほう」
「私ン所の隣の爺さんもマスクしたらハゲも口臭もインポも治ったというハナシですからね」
「いい加減にしなさい!」

新型インフルエンザ対策をアメリカ人が爆笑する理由 
ENOUGH with the masks already! インフル予防効果のビミョーなマスク着用は不要 

髑髏 / フィリップ・K・ディック

髑髏 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

髑髏 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

なんとP・K・ディックの"新刊"である。「未発表長編原稿が発見された!?」とかいうのではなく、初期のディックの既訳・未訳短篇を寄せ集めたものなのだが、これが思いのほか面白い。
ディックはパルプ雑誌に掲載されていた時代の初期短篇が最も面白い、という評価もあるが、それも十分に頷ける。確かに描写されているテクノロジーには時代を感じさせはするが、ディック流の「真か偽か」「現実か非現実か」というテーマがストレートに描かれていて小気味いいのだ。その真と偽、現実と非現実はいつの間にか入れ替わり、登場人物を翻弄してゆく様はディック長編にも通じるものがある。そしてどんな物語にも動きがあり、ダイナミックな展開が描かれる。
例えば「ウォー・ベテラン」などは短篇なのに実に起伏に富み、このままディック原作の映画化作品『トータル・リコール』のように映画化しても面白そうなのだ。さらにディック独特の苦さ、それもいやおうなく痛々しい現実を受け入れなければならない苦渋や葛藤もこれらの物語にはある。「髑髏」や「トニーとかぶと虫」、「生活必需品」などはそんな物語だろう。「矮人の王」は珍しくファンタジックな展開をみせるが、ファンタジー展開なのにも係わらずこれもどこか索漠とした現実を感じさせる。「火星人襲来」のやるせなさもこれもディック節と言えるだろう。
この短編集『髑髏』はディックの魅力をコンパクトにまとめたディック本としてディック未経験者からファンまで幅広く読まれるといいだろう。

論創社ダーク・ファンタジー・コレクション

さて、この短編集『髑髏』なんだが、「論創社ダーク・ファンタジー・コレクション」の10巻目にあたるのらしい。こんな短篇全集が出ていることなどちいとも知らなかったが、ラインナップを見てみると、これが結構ツボを突いたユニークなものなのだ。これまで早川異色作家短編集や河出書房奇想コレクションなどで様々な作家の短編集を読んだが、この「論創社ダーク・ファンタジー・コレクション」はまた微妙に傾向が違うように感じる。これは編者でもある翻訳家・仁賀克雄氏の趣味もあるのだろうが、ダーク・ファンタジー・コレクションと銘打ってあるだけに早川の趣味の良さや河出のSFと奇妙な味とは違う風味の作品が楽しめそうだ。それと、論創社のこれはあまり話題になっていなかったような気がして、既に全10巻の完結はしているようだが、仁賀克雄氏にエールを送る意味も込めて全巻読んでみようかと思う。実は既に全10巻大人買い済みである。ちょっと楽しみである。

論創社ダーク・ファンタジー・コレクション】

■『人間狩り』 フィリップ・K・ディック

人間狩り (ダーク・ファンタジー・コレクション)

人間狩り (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『不思議の森のアリス』 リチャード・マシスン

不思議の森のアリス (ダーク・ファンタジー・コレクション)

不思議の森のアリス (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『タイムマシンの殺人』 アントニー・バウチャー

タイムマシンの殺人 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

タイムマシンの殺人 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『グランダンの怪奇事件簿』 シーバリー・クイン

グランダンの怪奇事件簿 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

グランダンの怪奇事件簿 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『漆黒の霊魂』 オーガスト・ダーレス

漆黒の霊魂 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

漆黒の霊魂 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『最期の言葉』 ヘンリー・スレッサー

最期の言葉 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

最期の言葉 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『残酷な童話』 チャールズ・ボウモント

残酷な童話 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

残酷な童話 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『終わらない悪夢』 ハーバート・ヴァン・サール編

終わらない悪夢 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

終わらない悪夢 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『シャンブロウ』 C・L・ムーア

シャンブロウ (ダーク・ファンタジー・コレクション)

シャンブロウ (ダーク・ファンタジー・コレクション)

■『髑髏』 フィリップ・K・ディック

髑髏 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

髑髏 (ダーク・ファンタジー・コレクション)