バカホラー3連発! 第1夜

えっと。最初に言おう。所詮、駄目なもんは駄目。
ホラーでバカ。この多重債務のような複合汚染のような泣きっ面に蜂のような貧すれば鈍すのような“2重苦”に祟られた映画。映画の世界に神がいたとしてもバカホラーだけは救わない、そんなタチの悪い嫌がらせのような映画。世の中にはそんな映画は存在し、そしてあなたの知らない地下世界でそれらは観続けられているのです。『日向の世界で人生を謳歌するものは幸いなり。』(新約聖書/山上の垂訓:マタイの福音書5章〜7章より)(嘘)
今日は、そんな薄暗い趣味に取り付かれたホラーバカ一代ことこのオレ様が、「一生知らなくても人生に一切支障をきたさないバカホラーの甘美な世界」をご紹介しましょう。もちろん全巻DVD購入!さらに!コストパフォーマンスを考え、3夜連続にしました!誰も頼んでねーよ!

フロム・ザ・ダークサイド 3つの闇の物語 デジタル・リマスター版   

フロム・ザ・ダークサイド 3つの闇の物語 [DVD]

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トワイライトゾーンとか世にも不思議なアメージングストーリーとかTales from the Cryspとかリドリー・スコットのザ・ハンガーとか、実はこの手のホラー・SFショートストーリーシリーズって結構作られているんですね。ビデオ屋のホラーコーナーの隅っこでバックのタイトル部分が著しく日焼けしてるようなビデオね。オレの愛したX-FILEもこの系譜だなあ。低予算で他愛ない話が多かったですが、週末部屋でピザ食いながら見るのにはうってつけの内容だった。
短編ホラー映画集としてはこのフロム・ザ・ダークサイドと同じくスティーブン・キングジョージ・A・ロメロの絡んだ「クリープショー」が白眉ですね。何がって、その莫迦さ加減が。開いた口が塞がらない脱力感に満ちたオマヌーなホラーは他に類を見ません。ここでストーリー紹介しているので、参照されてください。ラストの「ゴキブリ・ハウス」だけはある意味正真正銘のホラーですが。
さて、このフロム・ザ・ダークサイドですが、先ほど書いた様にキングやロメロが噛んでいる他に、クリスチャン・スレータースティーブ・ブシェミジュリアン・ムーア、さらにブロンディのデボラ・ハリー、ニューヨーク・ドールズデヴィッド・ヨハンセンまで出演しているというある意味かなりマニアックな配役なんですが、ええと…、お話のほうはヒネリもナニもあったもんじゃないてんでアホアホな短編ばかりです…。でも一応アボリアッツ映画祭でグランプリなんだよなあ。あと“デジタル・リマスター版”とか銘打ってるのに、画質はたいした良くないです。

オレとホラー① ビデオドロームと観念性

本当はジャンルとしてのホラー映画って馬鹿にしてたのね。下らない、と思ってたんですよ。映画には、少なくともちゃんとしたドラマが必要なんだと思ってたんだね。ホラーというのはそのドラマを無視して、単に驚かせたり、グロテスクなものを見せたりするのが優先で、そういった煽情主義を程度の低いものだと感じてたんだ。
しかし、その考えを覆したのはデビッド・クローネンバーグの「ビデオドローム」だった。
ビデオドロームというSM海賊放送に取り付かれたTV製作者が、虚構と現実の境を無くして最後には自滅してしまう、といったストーリーだったが、観念が現実を侵略し、現実がおぞましく変容させられてゆく有様が、内臓感覚のグロテスクなビジュアル・イメージで表現されていた。脈打ちのたうつTVとビデオテープ。官能に息づき、「あたしの所に来て」と囁くブラウン管。腹にビデオ挿入口が出来てしまった男。
観念の肉体化。それを映像として見せる、という恐るべき力技。そして、具現化された観念は、脈打つ内臓の形をしている、という不気味さ。よくもまあ、こんなものを作ったなあ、とその変態ぶりに感嘆したわけなんですよ。
それと、そもそも、映画のドラマツルギーってなんだ?という疑問も生まれた。たった2時間で辻褄合わされた人間のストーリーに何がしかリアリティを与える・感じることって限界があるんじゃないだろうか?ホラーとはこのテーゼを破壊し、うそ臭いリアリティをあざ笑うものなのではないか?
そこからオレはホラーを観る様になっていった。