まさかッ!?鯨見るヤツァ皆殺しッ!?〜『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』

レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー (監督:ユリウス・ケンプ 2009年アイスランド映画


れいきゃびく…ほえーるおっちんぐまさかあああ!!!れいきゃびく…ほえーるおっちんぐまさかあああ!!!…既にタイトルだけで出オチ状態のゲロゲロお笑いスラッシャーホラー『北の国から・鯨監察観光客大量殺戮事件』です。反捕鯨運動により鯨を獲る事ができなくなってしまった不憫で哀れでビンボ臭い漁師の親子3人が「鯨は見るもんでねえ!食うもんじゃあああ!!!」と逆ギレを起こし、「鯨ってステキ!鯨ってカワイイ!アハハウフフ!」と鯨見物にやってきた脳ミソお花畑のクソ観光客どもをブチ殺し、お花畑な脳ミソを捕鯨船の甲板一面ぶちまけた後、魚の餌として海にぶん撒くというエコでリサイクルで地球に優しい環境保護問題提起社会派ドラマというわけなんですね。へーむずかしそー(ンなわけない)!
まあお話の方はタイトルそのまんまのブチ殺しまくり映画でクダクダ書きませんが、アイスランド初のスラッシャーホラーということでとても大らかで長閑で母なる大自然なテンポ(要するにドン臭くカッペ臭い)が映画にえもいわれぬ素敵なズッコケ振りを生んでいます。テンポのみならず台詞も爆笑モノ。キチガイ家族にぶっ殺される男が「やめてくれ!私は自然に優しい人間だ!」と言ってみたり、恋人が死んだのでたった一人の新婚旅行に来た女(それ自体どうかと思うが)が事件に巻き込まれ「大切な新婚旅行がメチャクチャだわ!」とか言ってみたり、キチガイに追われる事で信頼関係の生まれた男女の女の方が男に「あなたが好きなの!」と告白したら「わりい、オレ、ゲイなんだ」と返されてみたり、かと思えば「ホエールウォッチングは馬鹿か高慢な奴の娯楽だ」と劇中人物に言わせてみたり、枚挙に暇がありません。いやーなんてステキなバカホラーなの!
これにあやかって「ペットボトルのキャップなんか集めたって一銭にもならねーって知らねーのかこの情弱どもがよおおお!!」とブチ切れる奴を描く『コンビニエンスストア・ペットボトルキャップ・マサカー』とか「何が森林保護だよお!塗り箸でうどんが食えるかよお!?割り箸使わせろよ割り箸いい!」とブチ切れる奴を描く『立ち食い蕎麦屋・チョップスティック・マサカー』とか「節電とかぬかしてるけど暑くて仕事にならねーんだよ!そのくせ仕事のノルマはいつも通りって殺す気かよおめーらよ!!あとなんで重役室は設定温度低いんだよ!」とブチ切れる奴を描く『東京電力・パワーセービング・マサカー』とか地球に全く優しくない楽しく愉快な反エコクソゲロホラーがいっぱい作られるといいですね!

低予算ゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』は低予算なりの映画であった

■コリン LOVE OF THE DEAD (監督:マーク・プライス 2008年イギリス映画)


インディーズ・ムービーというのはメジャー映画とは違うインディーズならではの切り口が面白かったり低予算を逆手に取った面白さで勝負してみたりするもんなんだろうが、「インディーズにしてはがんばった」とか「インディーズなんだから(未熟でも)しょうがない」といった判官贔屓な見方をしてしまう側面もあって、評価する時にちょっと考えてしまうことがある。結局好意的に観れるか観れないか、という部分で面白がれるか面白がれないかが別れちゃったりするんだよな。表現のしかたは未熟だがやりたいことは伝わってくる、というのとやりたいことは分かるけど表現のしかたが未熟、っていうのは同じことを言っているようで観ているものの印象が良いか悪いかの分水嶺になっているんだと思う。
恐るべき低予算(45ポンド。日本円で6000円弱)で作られ話題になったインディーズ・ゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』は、そういった意味では楽しめない映画だった。まずぶれまくるカメラがダメだった。ゲームといえばFPSばかりやっていて、POV視点の映画に酔うことなんか考えられないオレでさえ、この映画の手振れの酷さにはさすがに気持ち悪くなった。そしてアップ画面ばかりが続くカットも息苦しい上に登場人物の位置関係がまるで把握できずに苛立ちまくった。こういった部分は予算とは何にも関係ない映画を撮るという事においての配慮な訳だから、こういった部分が拙いのがいただけなかった。
物語はゾンビになってしまった者の視点から描くという斬新なもので、基本的に思考力も無くケダモノ以下になってしまったゾンビという存在を主人公に据えドラマを組み立てるのは難しかったのではないかと思う。そこでとりあえずあちこち徘徊させてゾンビ出現に慌てふためく人々を間接的に描いたりとか、かつての家族を登場させたり人間だった過去をオーバーラップさせたりと、工夫しているわけだが、描き方が全て冗漫で、観ていて飽きてくる。というか最初の5分で飽きた。言ってみれば本当に「仲間内で作った自主映画」で、そういった面では楽しそうに作ってあるし、無難にまとめてあるが、しかしそれに97分付き合わされるのはちょっと勘弁してもらいたい、というのが正直なところだった。

コリン LOVE OF THE DEAD スペシャル・エディション [DVD]

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