ジャバウォッキー(5)/ 久 正人

ジャバウォッキー(5) (マガジンZKC)

ジャバウォッキー(5) (マガジンZKC)

相変わらずスタイリッシュ&クールなビジュアルとストーリーで魅せまくる、スチームパンク恐竜SFコミック、「ジャバウォッキー」の5巻目が発売だ!
今回はまず前半が、パリ万博に集う人々を狙った爆弾テロを阻止するべく、恐竜人サバタと英国諜報員リリーが活躍する「マッチポンプ」の完結篇。1889年の丁度この時期に発見されたバーナード彗星を物語のきっかけに持ってきたり、テロに使われるのがジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」を思わせる大砲弾だって所が心憎い。そして禁止された黄リンマッチの伏線があんなところで生きてくる、なんて部分も実に巧かった。
後半は海難保険詐欺事件の裏で蠢く”海の白い悪魔”モビーディックの正体を追う「バック&ディック」篇。ここではリリーたんの水着姿をひたすら堪能できるのがとっても嬉しい!もう一度言おう!とっても・う・れ・し・い!(←バカ)そして「白鯨」の物語に登場する一等航海士スターバックが、実は女性だったという設定でこの物語に絡んでくるのだ。ぱっと見た目には地味なルックスのスターバックたんであるが、水着姿になるとこれがもう!もうもう!(←バカ)このスターバックとリリーがサバタを巡り嫉妬をむき出しにして対立しあうのもまた微笑ましい。
実はメルヴィルの書いた「白鯨」は1851年の作だから、ジャバウォッキーの物語と若干時代はずれるのだが、この辺はフィクションの許容範囲といったところであろう。さらにこの「白鯨」を追う潜水艇がヴェルヌの「海底二万リーグ」に登場するノーチラス号を髣髴とさせるデザインなのだ。こういった物語全篇に配される古典SFのセンスがジャバウォッキーの世界を非常に楽しいものにしているのだ。
さて、今回買ったジャバウォッキーの5巻は、なんと作者久正人氏のサイン本だ!ファンのみんなの為にここに写真をUPしておくので羨ましがってくれ!

聖☆おにいさん(1) / 中村 光

聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)

聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)

お釈迦さまとイエス・キリストが現代の日本にこっそりやってきて、フツーの人の振りをしながら休養を楽しんでいる、というお話である。神さまのくせに俗っぽいことに喜んだり、逆に世事に疎くてとんちんかんなことをしたり、はたまたついつい無意味に奇跡を起こしちゃったり、というギャグマンガである。物語全体にユル〜イ空気が漂っていて、この力の抜けた感じが実に心地良い。
作者は意識しているのかどうか分からないけれど、これは一つの”超俗”の物語なのだと思う。主人公の二人は神さまという設定だけれど、これが宇宙人でも未来人でも、やはり同じようなお話は成立しそうだし、同じような愉快な物語を綴る事は出来るだろう。現実の世界のしがらみや慣習から数センチ浮きながら、たまにドジを踏みつつ飄々として生きるその様は、超俗的な生き方そのものだ。
超俗とはいっても、この現実世界で仙人のように生きることは不可能だろうが、何故かこんな生き方に、ひどく憧れることがある。実際、神様でもなんでもないけれど、こんなふうにのほほんとして生きている若者たちが、日本のどこかの土地で、案外普通に存在しているような気さえするのだ。そしてそういうのが、なんだか素敵だよなあ、などと、すっかりとうのたち青息吐息で生きるこのおぢさんなんかはちょっと思っちゃたりするんである。