マイ・スパイ2 永遠の都へ行く(Amazon Prime Video)(監督:ピーター・シーガル 2024年アメリカ映画)
デイヴ・バウティスタは結構好きな俳優だ。一般的には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラッグス役で知られているのだろうが、オレとしては『ブレードランナー 2049』や『ファイナル・スコア』、『デューン 砂の惑星』シリーズの出演が忘れ難い。やぱりゴツくてクマみたいだが性格は朴訥といったキャラがいいのだ。そういやオレも相方から「クマ」と呼ばれているが、それはクマみたいにのっそりしていつもゴロンゴロンしているからなのだという。
そのバウティスタが主演し2020年に配信された『マイ・スパイ』はバウティスタ演じるコワモテCIA職員JJとこまっしゃくれた少女ソフィーとが織りなすキュートなスパイ・コメディだったが、その続編が製作された。タイトルは『マイ・スパイ2 永遠の都に行く』、今回はJJが合唱団メンバーのソフィーをイタリアとバチカンに引率する羽目になり、そこで事件に巻き込まれるといったものだ。
コワモテ主人公がいたいけな少年少女の世話をする羽目となるコメディ作品は『キンダーガートン・コップ』を始めあれこれありそうだが、今作はそれを踏襲し、さらに「007」や「ミッション・インポッシブル」、「ワイルド・スピード」シリーズなどのスパイ活劇で散々舞台となっているイタリア界隈の史跡で大暴れするという訳である。
こういった構成の作品であるために全般的に既視感が強く、合唱団の子供たちがいつもわいわいやっているさまは牧歌的すぎ、コワモテ男が子供の世話というギャップによるコメディもそれほど盛り上がらない。前作から引き続きケン・チョン、クリステン・シャールといったコメディ勢も健闘しているが、緊張感を削いでいるといった部分でスパイアクション部分を見劣りさせてしまうのだ。この辺りのバランスが難ではあったが、自宅でのんびり観る分には悪い作品という訳ではない。
シュヴァリエ(Disney+映画) (監督:スティーブン・ウィリアムズ 2022年アメリカ映画)
最近ネット界隈では江戸時代に黒人侍がいたとかいないとかいう話で喧々諤々となっているが、こちらは18世紀のパリに実在していた黒人音楽家の物語となる。彼の名はジョゼフ・ブローニュ・シュバリエ・ド・サン=ジョルジュ(1745-1799)、フランス人地主と黒人奴隷女性との間に生まれた混血青年で、フランスで音楽教育を受けて才能を開花させ、作曲家、指揮者、コンサートマスターとして名を馳せ、「黒いモーツァルト」という呼び名さえあったという*1。
物語はそのサン=ジョルジュが、コンサート会場でモーツァルトと音楽対決するという場面から始まり大いに興味をそそられる。彼はその才能から社交界で注目を浴び、マリー・アントワネットにすら目を掛けられるが、根強い黒人差別が常にサン=ジョルジュを苛み、さらに貴族夫人との禁じられた恋が彼を追い詰めることになる。
18世紀フランスのコスチューム・プレイということで中盤までは結構興味深く観ていたのだが、フランスが舞台の史劇がカナダ人監督によるアメリカ製作の映画であるといった部分で違和感が次第に強くなってきて、結局途中で飽きてしまった。これがフランス映画だったらこんなシナリオにならんだろ、と思えてしまったのだ。言語ですら英語だったので言語選択でフランス語音声日本語字幕で観ていたぐらいだ。
どの辺りで違和感かというと特に女優が実にアメリカ的な派手さで、物語テーマも黒人の人権と自由という至極ストレート過ぎるもので、それをフランス革命前夜の民衆の自由と絡めた部分に作為的な臭みを感じてしまったのだ。物語の中心要素も不倫だなんだというゴシップでしかないんだよな。なんかこうテーマの在り方や物語の切り口があからさまというか単純すぎるのだ。もっとサン=ジョルジュ個人の数奇な人生の在り方を観たかったんだがな。