グーグーだって猫である(4) / 大島弓子

グーグーだって猫である(4)

グーグーだって猫である(4)

漫画家・大島弓子と猫たちとの生活を描いた物語、第4巻。2巻と3巻が5年ぐらい離れての発売だったのに、この4巻は前巻から丁度1年の発売で、あんまり間隔が短いもんだから現物を見たときは「ホントか!?」などとちょっと目を疑ってしまった。この発売間隔については本編でも大島さんが書いていたが、やはり動物マンガ人気と映画化のタイアップということなのか、編集さんに急かされていたものらしい。そのせいか、この4巻はなんだかこれまでの「グーグー」と雰囲気が違う。
これまでは猫たちの生活だけではなく、それといっしょに漫画家・大島弓子の日常も描かれていて、ある意味大島さんの私小説的な部分もある作品だったのだけれど、この4巻では大島さんの生活それ自体は後退して、その辺によくある”可愛い猫の出てくる動物マンガ”でしかなくなっているのだ。まあ、大島さんの生活が落ち着いちゃってるから描くことがそんなにないってことなのかもしれないけど。
勿論、大島さん独特の視線や感受性のもとに描かれているから、決して退屈な作品ではないのだけれども、でもやっぱり”猫観察マンガ”以上のものではないような気がする。これは以前出た”グーグー写真集”でも思ったが、周囲の商売上の都合に引っ張りまわされちゃってるんじゃないかなあ。なんか物凄い勝手な言い方なんだけど、大島さんにはもっと孤高でいて欲しかったような気がするんだよなあ。
それと、大島さんの猫にたいする愛情のあり方が、ちょっと尋常じゃなくなってきているようで気になる。飼っている猫なら分かるけれど、目に付く全ての野良猫の生命や健康を気にするのってどうなのかなあ。猫好きは分かるけれど世界全ての猫の命は救えないだろうし。あと今現在大島さん宅には飼い猫が13匹いらっしゃるそうだが、まあ一般人より経済的にも時間的にも余裕がある方だからなのかもしれないけど、ちょっと危ういものを感じてしまうのは、オレがそれほど動物を愛したことが無いからなんだろうか。

つんつるてん / 山上たつひこ

つんつるてん (THE VERY BEST OF Tatsuhiko Yamagami)

つんつるてん (THE VERY BEST OF Tatsuhiko Yamagami)

山上たつひこ撰集》の第5巻、最終巻である。この傑作撰では巻毎に収録作品のテーマをなんとなーく統一していたようだが、この5巻では『あるぷす犬坊』などを中心とした、動物が主人公のマンガを集めたようだ。しかしそこは勿論山上の描く動物マンガ、擬人化された下品で胡乱な動物たちが人間達の生活に紛れ込み、オゲレツの限りを尽くすマンガばかりである。そしてこれがまた実に面白い。
そういえば山上の代表作『がきデカ』では、「八丈島のきょん!」だの「あふりか象が好き!」だの「とても珍しいニホンカモシカのおしりっ!」だの「うし時きょん分きつね秒」だのといった無意味な動物ギャグが多かったよなあ。あと”名犬栃の嵐”などといったキャラも登場していたし、こまわり君もしょっちゅう動物に変身していたよなあ。あああ今こうして思い出しても笑えて来るんだが、なんであんなに可笑しかったのか全然わかんないんだよなあ!
それと気付いたんだが、山上のマンガに登場するキャラってどこか早熟なんだよな。いたいけな小中学生にオヤジ臭い行動をとらせたり、大人顔負けの卑猥な行動をとらせたり、とかいうギャグが多いんだが、これはミスマッチを狙った単なるギャグというよりも、この”早熟さ”というものが山上の深層心理にあるキーワードのひとつなのかもしれないな、とちょっと思ってしまった。掘り下げてないけど。
それにしても《山上たつひこ撰集》、全5巻読了したが、こうして眺め渡すと本当に山上たつひこは才能ある優れたギャグ漫画家だったということが伝わってくる。選者の江口寿史の”山上愛”の深さもあったのだろう。素晴らしい撰集であった。ごっつぁんです!

GANTZ (23) / 奥浩哉

GANTZ 23 (ヤングジャンプコミックス)

GANTZ 23 (ヤングジャンプコミックス)

待望のGANTZ23巻、大阪道頓堀篇の続き。雲霞の如く大阪の街に湧き、人々を殺戮する妖怪型星人の中に、なんと得点100という今まで有り得ない点数のボスキャラ風星人が存在した。得点の高さはその星人の潜在的な威力の高さ。果たしてどんな戦いが待ち構えているのか――というのが今回の見所。まあ相変わらず血飛沫肉片舞い散りまくる死と人体破壊のオンパレードといった愉快な内容だが、今回は自衛隊まで出動し、なんだか怪獣映画のような様相まで呈している。そういえば最近公開された映画『クローバーフィールド』にしろ『ミスト』にしろ、圧倒的で逃れようの無い死を撒き散らすモンスター、というのが主軸になっているけど、やっぱり時代の趨勢というか時代の気分というものが、こういった殺伐としたものへとシフトチェンジしてきているのだろうか、などと根拠も無く思った。あー、『ノーカントリー』あたりもひとつのモンスター映画だったよなあ。やっぱりこれからの未来は殺伐なのかなあ。映画で観るのは嫌いじゃないんだけどさあ。