ROOM TO PLAY / SIMON JOHAN

Room to Play

Room to Play

以前ここで紹介したロレッタ・ラックスが子供達の神性を描き出した写真家だとしたら、このSIMON JOHANは逆に子供のまだ大人になりきらないアンバランスさを一つの特性として目を付け、それを徹底的に加工することでグロテスクな写真世界を生み出している。その作品は子供好きの人が見たら不謹慎だと思うであろうぐらい醜く、暗く、残酷で、不安に満ちている。
ここで描かれる子供達は無垢というよりも未成熟な人間としての非人間性、暴力的な獣性に溢れているように見える。しかしロレッタ・ラックス同様、この子供達は大人の理解できない「子供の領分」の世界の王者でもあるのだ。すなわちここは子供達が主人公のグロテスクでメランコリックな異界なのである。それと同時に、これらの写真は醜く暗い大人達を演じる子供達の陰鬱なままごと遊びでもあるのだ。つまり、醜く見えているのは被写体の子供たちなのではなく、これを見る我々の姿であり、この作品はその映し鏡なのである。
オフィシャルHP http://www.simenjohan.com/


LOS ALAMOS / WILLIAM EGGLESTON

Los Alamos

Los Alamos

アメリカ南部の強い日差し。コントラストの鮮やかな色彩と輪郭。忘れ去られ廃物と化してゆくモニュメントと街角の看板、ショーウィンドウ、アスファルト。からからに乾いた空気とざらついた砂埃の匂いさえしそうな数々の写真。アメリカ地方都市の緩やかに錆付いてゆく倦怠と空虚。しかしそれらの光景は奇妙に懐かしさをかもし出す。
WILLIAM EGGLESTONはメンフィス生まれの写真家。この写真集は地元メンフィスとアメリカ南部で撮影された。
LOS ALAMOS / WILLIAM EGGLESTON のいくつかの写真はこちらで見ることが出来ます。http://www.museenkoeln.de/ausstellungen/mlu_0303_eggleston/index.html
WILLIAM EGGLESTON アーティスト・プロフェール http://artphoto-site.com/story58.html
オフィシャルHP http://www.egglestontrust.com/index.html

LOST ANGELS / PAUL JASMIN

Lost Angeles

Lost Angeles

ロスアンジェルスビバリーヒルズ。虚栄と喧騒の街で暮らす少年と少女達のグラマラスな生活。豪奢なハリウッドのアパートメント、もしくはモーテル、スタイリッシュな洋服、アンニュイな毎日、性的渇望、若者らしい反抗心とイノセントを湛えた眼差し、蠱惑に満ちた肢体、失われた都市ロスアンジェルスで成功を夢見ながら集まった若者達の天使のように美しい日々。
序文のエッセイを写真家・ブルース・ウェーバーと映画監督のソフィア・コッポラが書いている。
PAUL JASMINはモンタナ生まれの画家、写真家。数々のレコードジャケットのアートワークも手がけているという。

長いお別れ

以前のガールフレンドとメッセする。何故と言うわけでもなく疎遠になっていて、そしてその理由はどこかにあったのだろうけど、今は昔の話のような気がして、だからそれは胸にしまっておく。
ただこうして時間が経ってみると、それほど健康ではなかった彼女のことが気になって、一度でいいから声を掛けたかった。元気かい、と訊くとやはりそれほど芳しくはないようだけれど、健康には気を付けるよ、と言ってくれた。そういえば誕生日だったんだね、と言ってメッセの画面に大きなバースデーケーキを出してくれた。嬉しかった。
あの頃のようでもあり、そして確実にあの頃ではなかった。なにか不思議な時間だった。

決してお別れを言った別れではなかった。だから、こうしてまた話せて、そうして多分お別れの言葉のようなものを言えて、それだけでこれは幸福なことだったのだろう。
「オレは君のいい思い出になれただろうか?」
「なったよ!」
ありがとう。ありがとう。
本当に、ありがとう。