オレとカレーパン

朝は腹が減っていたら通勤途中のコンビニでカレーパンと缶コーヒーを買って、会社に着くまでに歩きながら食う。
決して行儀のいいもんじゃないのは知っている。コンビニの名前はサンクスなのだが、実はここのカレーパンは旨くもなんとも無い。油でじっとり濡れた、もさもさとした食感の揚げパンの生地にカレーの味の全くしない黄色い油粘土みたいなぐちゃぐちゃした中身が詰まっているのである。食った後は揚げ油の後味しかしないのである。しかし何故か、他にもパンはあり、他にもコンビニはあるだろうに、なぜか「まずいまずい」と言いながらこのカレーパンばかり食っている。ちょっと行ったところにあるAMPMのカレーパンのほうがまだましな味なのも知っているのにである。
AMPMは広くて品揃えも多いのだが、教育の行き届きすぎた、朝からやる気満々の店員ばかりで、「いらっしゃいませコンニチハ!」とか溌剌とした大きな声で挨拶してくださるのだが、それがウザくて堪らないのである。朝から倦み疲れダルさと眠気全開のオレには南国の直射日光のように体中に刺さってきて痛いのである。やっぱりコンビニは元気の無い茶髪のガキがレジ打ってて、うつむき加減にしょぼしょぼした声で「ありあとござますう〜」とか言ってくれたほうが、風情があって落ち着くのだ。
あとどうもオレは、ひとつの行動パターンが出来たら、それをなかなか崩さないタイプの人間のようなのだ。多少不便でも不具合や不都合があっても変えようとしない。そういう運命だと思って受け入れてしまう。即ちこの不味いカレーパンを食うと言う行為はオレにとって試練であり修行であり、精神の高みを目指すひとつの精神的苦行なのである。(んなわけねーっつーの)
まあそもそもカレーパンはソーセージパンだのコロッケパンだのと同列のもんで十分だと思っている。単なるおやつみたいなもんだからな。味がどうとかウルセエ事言っちゃダメなんだよ。あとあのテの揚げパンならオレはピロシキが好きだな。炒めた挽肉の入ってるヤツ。それにたまにちゃんとしたパン屋でカレーパン買ってもあまりオレ好みのじゃないんだよね。じゃあ、オレはどんなカレーパンが好きかというと、《兎に角辛いヤツ》がいいのである。で、どうしているかというとですね。1、その辺のカレーパンを買ってくる。2、一口齧る。3、顔を覗かせたカレーの部分におもむろにタバスコをドボドボとぶっ掛ける。4、食う。5、ウマーーーー!!!…という事をやってるんですね。
そうです。実はオレ、かなりの辛い物好きだったのでアリマス。

もうほうの最期

会社のもうほうUが何か朝から楽しげなのである。ホリエモンに似た顔をぬへら〜と歪ませ、モーホーにしかわからない隠微で爛れた妄想に浸っているのである。若く逞しい肉体労働者の汗の臭いをかいだのであろうか。それとも加齢臭もかぐわしい素敵な禿親父と肩でも触れたのであろうか。もうほうのもうそう。そんなもの、想像などしたくない。しかしだ。楽しげにしているモーホーがなぜか疎ましい。満ち足りたモーホーがなぜか憎い。モーホーごときに魂の安らぎなどあっていいわけが無いのだ。許せない。そもそもが他人の幸福が妬ましい人間なのである、オレは。
「朝から楽しそうだな、Uよ。」
「なんですかあ。(にへら)」
「モーホーとして生きることがそんなに楽しいのか。」
「何言ってるんですかぁあぁ!」
「オレは想像するよ、そんな楽しげに生きるお前のむごたらしい最期を。カラスにはらわたをついばまれ、野良犬に骨を齧られる様な哀れで悲惨な最期を。そう考えることで、オレは心がやっと休まるよ。」
「なんなんですかそれぇえぇえぇえ〜っ!」
そして朝からもうほうUの絶叫がまたもや響き渡るのだ。
…最近虫の居所の悪いオレである。