- アーティスト: Various Artists
- 出版社/メーカー: EMI Import
- 発売日: 2003/07/08
- メディア: CD
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ラフ・トレードの下に集ったミュージシャン達の表現的ジャンルは一言で言い表せないほどバラエティに富み、ロックンロールからフォーク、ハードコアパンク、インダストリアル・ミュージックまでが同じレーベルの中でひしめいていた。まさに雑食、ごった煮の様相である。しかしこの”なんでもあり”な身軽さと間口の広さがアーティスト達に親近感を持って迎えられたのも確かだろう。メジャーで大ブレイクしたThe Smithsもラフ・トレードのミュージシャンである。日本では徳間コミュニケーションズからコンピレーション・アルバム『クリア・カット』の発売を皮切りにイギリスでの膨大なリリースから幾つかのアルバム、シングルがセレクトされ発売されている。
オレは徳間から出たこの『クリア・カット』に人生がひっくり返るほど感銘を受けた思い出がある、自分の中での”伝説の1枚”だ。ソラリゼーション加工されたテーブルの写真を中央に配した紫色のジャケットは今見ても甘酸っぱい思い出が甦ってくるようだ。そこに収められた音は別段変わったことや特別なことをしているわけではない。テクニックが秀でているわけでもエキセントリックなファッションをしている訳でもない。逆に、それらは、ただひたすら淡々としていたのである。言ってみれば、バロック絵画の分厚く塗り固められた絵画しか見たことのない者がいきなり日本画を見せられてしまった時の衝撃とでも言うのだろうか。このヴィニール盤はその後オレが聴く音楽の方向性を決定付けたといってもいいほどだ。
ラフ・トレード・レーベルからはこれまで様々なテーマでコンピレーションアルバムが出ているが、今回取り上げるのは《Rough Trade Shops Post Punk》と名付けられたコンピレーション。オレ自身他のコンピレーションと比べるとここに納められているアーチストが一番馴染み深く、よく聴いていたものが多い。
Disc: 1の中でお気に入りだったのはM1.Gang of Four、M3.The Pop Group、M9.Pig Bag、M13.New Age Steppers、M14.Public Image Ltd.、M18.Scritti Politti 、M19.The Flying Lizards。Disc: 2ではM8.Magazine、M16.Young Marble Giants、M18.XTC、M22.Maximum Joyあたりか。ざっと紹介してみよう。
・Gang of Fourはポストパンク時代にソリッドなギターで衝撃を与えた歴史的アルバム《Entertainment! 》をリリースしたことで知られている。
・The Pop Groupはダブ・リミキサーDennis Bovellのプロデュースによりダブとパンクの狭間の実験的なアルバム《Y》でデビューしている。
・Pig BagはそのThe Pop Group解散後のメンバーによって作られたファンク・バンド。
・New Age Steppersは白人ダブ・リミキサーのAdrian SherwoodやThe SlitsのAri Upらによって作られたダブ・ユニット。
・Public Image Ltd.は元Sex PistolsのJohn Lydonによって作られた強力なダブ・パンク・ニューウェイブ・グループ。当時発売されたアルバム、ダブ・ベースが破壊的に唸りまくる《Second Edition("Metal Box"で知られていた)》はまさしく”神”アルバムだった。この頃のブリティッシュ・ニューウェーブはレゲエとパンクの共闘体制であり、レゲエ/ダブの手法を取り込んだサウンドが多数生み出されていた。
・Scritti Polittiは才人Green Gartsideがいたキュートでポップなファンク・グループ。
・The Flying Lizardsは楽器を一切使わない実験的なポップ・ミュージックをリリースし注目を浴びた。
・Magazineはクールなギターとシンセサイザーが印象深いロック・バンド。
・Young Marble Giantsはギター、ベース、リズムボックスと女性ボーカル、という構成で非常に静謐な世界を作り出していたポップ・グループ。
・XTCはブリテッシュ・ポップの正統的な承継者とでも言えるような頑固で癖の強いポップ・ミュージックを数多くリリース。
・Maximum JoyはPig Bagと同じくThe Pop Group解散後のメンバーによって作られたファンク・バンド。
Public Image Ltd.やXTCはラフトレード・レ−ベルのアーチストではなかったが、デストリビューションで関わったことがあった為、このアルバムに収められているのかもしれない。
またラフ・トレードは女性バンド、男女混成バンドが多く存在していたことも特筆すべきことかもしれない。このコンピレーションではLiliput、Delta 5、The Slits、The Raincoats、Essential Logicらの演奏を聴くことが出来る。決して甘く無くしかし辛くも無い、あくまで等身大・自然体の姿で演奏されるこれらの女性アーチストの曲は、遠く極東の地に住むオレの心をちょっぴり萌えさせてくれたのは確かだ。
以下に曲目を挙げておきます。興味のある方はドウゾ。
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