ネトフリ映画『アイリッシュマン』を観た。

アイリッシュマン (監督:マーティン・スコセッシ 2019年アメリカ映画)

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■ネットフリックス映画『アイリッシュマン』を観た

あちこちで評判になっていたネットフリックス映画(限定劇場公開もあり)『アイリッシュマン』、3時間半もあるんで毎日チビチビ観ようかと思って観始めたら、それほど期待していなかったのにも係わらずこれが結構面白くて止め時が見つからなくなり、結局二日掛かりで観終わってしまった。そして観終わった感想は「結構面白い」どころかこれは「傑作」だったじゃないか。

「それほど期待していなかった」というのはまずネトフリ映画ってェのがハリウッド有名監督や有名俳優の登用を喧伝しながら実際観て満足した作品が皆無と言っていいほど無かったこと、今更なマーティン・スコセッシによる今更なギャング映画という新鮮味の無さ、その作品というのがなんと3時間半もありやがる、といった点にあった。

マーティン・スコセッシ、有名監督ではあるがそれはオレにとっては『タクシードライバー』という10代のオレの心に最も鮮烈な印象を植え付けた伝説的傑作を監督した人、というだけでしかなかった。スコセッシ監督作でそれ以外に心に残っているのってなんだ?何作かは観てはいるけれど、せいぜい『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ぐらいだ。そもそもスコセッシ、ちょっと過大評価され過ぎじゃないのか?

■スコセッシ監督と裏社会映画

そんなスコセッシがまたぞろギャング映画、と聞いたときは鼻白んだ。「『アイリッシュマン』を観るなら『グッド・フェローズ』で予習しましょう!」とかいうネット上の知ったかぶった声にもうんざりさせられた。そもそも『グッド・フェローズ』、たいして面白くなかった映画だった(でもなぜかブルーレイは持ってるんだよな)。

とはいえ、スコセッシはそんなに沢山ギャング映画を製作している人ではない。「裏社会」を描いた作品が目立つのでそういうイメージが付いたのだろう。だがむしろ近年まで様々なジャンルに果敢に挑戦してる監督だ。そんなスコセッシがまたぞろ古巣ともいえるギャング/裏社会映画を製作した、というから「ネトフリ映画だから気ィ抜いて作ったんだろな」と思ったし、デ・ニーロらスコセッシゆかりの有名俳優集結、ってのも「同窓会かよ」と思えてしまったのだ*1

(なんかここまで書いてて思ったが、オレって結構性格悪いのかもしれない)

ところがだ。ここまでネガティヴなことをグダグダとほざきながら観始めたのにも係わらず、物語が始まって数分で、すっかり作品世界に引き込まれてしまった。お話はよくあるようなギャング・ストーリーで、別段特別に興味をそそるものがあるわけでもない。しかし、なぜか馴染む。安心して観ていられて、引っ掛かりが無い。語り口調にスムーズにノレる。いわゆる映画手法やらなんやらのことはオレは理解が極めて乏しいが、これが重鎮熟練映画監督の巧みの技、というやつなのか。

■日常と化したアンモラル

物語はアメリカ50年代から70年代を舞台にした、"アイリッシュマン"と呼ばれたある男とアメリカ裏社会との闇を描くものだ。"アイリッシュマン"ことフランク(ロバート・デ・ニーロ)は殺人を含む裏社会の汚れ仕事を請け負う男だが、カタイ仕事ぶりが買われてマフィアのボス、ラッセル(ジョー・ペシ)に引き立てられる。やがてフランクは「全米トラック運転手組合委員長」として裏で不正三昧を働いていたジミー・ホッファ(アル・パチーノ)のボディガードを勤め、家族ぐるみの親密な付き合いをするようになる。しかし我の強いホッファは次第に裏社会の鼻に付くようになり、フランクはホッファとの友情と組織の義務との間で引き裂かれてゆくのだ。

まあなにしろギャング・ストーリーなので全編においてキナ臭い雰囲気が充満しまくっている。殺しも破壊もあちこちで行われる。しかしこの作品では主人公フランクの適度にヨレたおっさん振りが物語に奇妙な弛緩と安定感を醸し出す事になる。フランクは要するに殺し屋なのだが、ギチギチにイキッた頭のおかしい殺人者なのではなく、その辺の勤め人と変わらない仕事に律儀で忠実で時にくよくよする男として描かれるのだ。しかしよく考えるなら殺し屋が普通人のように描かれ、観る者も普通に共感させられてしまうという部分で実は異常な事だ。

フランクに限らずマフィア関係者やホッファもそうなのだが、「一切のモラルの欠如」以外は普通の人間である、という、実は普通でもなんでもない部分を普通に描いてしまう部分がこの作品のポイントなのだ。モラルの欠如した連中が大手を振って面白おかしくお天道様の下を歩いている、その異様さ、異質さ、それは『グッド・フェローズ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に通じるスコセッシのテーマのひとつなのだろう。

■無常の世界

こうして暴力と権力への強烈な志向が毒ガスのように充満するアンモラルな世界が3時間半、他愛のない日常風景のようにダラダラと語られることになる。しかしそれは実は「ダラダラ」なのではなく、たとえどんな日常風景の中にあっても、フランクがどんなに情けない顔をして可笑し味を漂わせていたとしても、そこには常に通奏低音のように暴力の緊張が存在しそれは決して途切れることは無い。この「ダラダラ」な日常の最中にある微妙な異物感、不安感、これを体験させるために3時間半は逆に絶妙だった。

この物語は病院に入院する老境のフランクが車椅子から過去を回想する形で描かれる。過去は既に過ぎ去り年老いたフランクに待つのはあとは”死”のみだ。物語内における様々な登場人物も登場した段階で「最期にどういう死に方をしたか」のキャプションが付けられ、そしてその殆どがろくな死に方をしていない。どのように相手を出し抜き権力の栄華を誇ろうと、そんなものとは関係なく”死”だけは確実に訪れる。こうしてフランク、ホッファ、マフィア連中らの生み出すドラマは強烈なカタルシスを生むことなく虚無のドツボの中に消えてゆく。それは死にゆくジジイどもの挽歌であり、つわものどもが夢の跡という事だ。この無常観こそが映画『アイリッシュマン』のテーマだったのかもしれない。 

この映画がホッファ失踪事件が核となる実話ということを途中で知り驚いたが(原作あり)、舞台となるアメリカ50〜70年代の政治背景がそこここで影響する部分や(ケネディニクソンへの言及)、服飾等のレトロな文化が執拗に再現されているのにも見入ってしまった。登場人物たちがシーンが変わるごとに違う洋服を着て出てくるのだ。主役俳優の顔を若くするCGは、モーションキャプチャーではなく撮影時12台の特殊カメラを使うことで可能としたのだという。技術的な部分で冒険する部分にもスコセッシらしさを感じた。3時間半の尺は原作を活かし切る為に必要だったろうが通常の劇場公開にはあまりそぐわないだろうし、ネトフリ出資のTV/劇場同時公開は的を得ていたと思う。

 

アイリッシュマン(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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アイリッシュマン(下) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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グッドフェローズ [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray
 
ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]

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*1:実際はデ・ニーロからスコセッシに企画が持ち込まれ、劇場映画作品として製作を進行させようとしていたが、予算の面で映画会社と折り合わず、断念しかけていたところをネトフリから出資が持ち掛けられて完成に漕ぎ着けたのだという。決して気ィ抜いて作った作品ではないのだ。配役に関しても当初は有名俳優を使うことを考えていなかったらしい。Netflixが支えた『アイリッシュマン』と、マーティン・スコセッシの「理想」とのギャップ:映画レヴュー|WIRED.jp

プリンスのアルバムをコンプリートした《後篇》

Art Official Age

さて前回に引き続き「プリンス・アルバムをコンプリート」《後篇》に行ってみたい。多いからサクサク行くよ!(《前篇》はこちら

◎2001年~2010年

2001年: The Rainbow Children

レインボー・チルドレン

レインボー・チルドレン

 

「プリンスがジャズに挑戦」ということで結構期待したのだが、実はこれがそんなに面白くない。プリンスがジャズに遠慮しているって感じ。しかしこれも後半になると段々とプリンスらしさが発揮されて面白くなってこないこともない。

2002年: One Nite Alone...Live!

One Nite Alone... Live!

One Nite Alone... Live!

 

プリンス初のオフィシャル・ライブ盤。フィジカルでは3枚組で発売されたが、現在配信されているアルバムはフィジカル盤での1,2枚目のみを収録。ヒット曲満載ではあるが、全体的に洗練されたフリーセッションを聴かせられている感じ。あまり昔の下品さ下世話さを感じない。この前作がプリンス・ジャズ『The Rainbow Children』だったのでその雰囲気が持ち込まれたのかもな。

2002年:One Nite Alone... (Solo Piano and Voice by Prince)

One Nite Alone... (Solo Piano and Voice by Prince)

One Nite Alone... (Solo Piano and Voice by Prince)

 

当初ファンクラブ限定で『One Nite Alone...Live!』と同時期に発売されたプリンス・ライブ、これが全編プリンスによるピアノオンリーの演奏によるライブとなっている。うーんでもオレ、殿下のピアノ弾き語りはなぜかどうも好きくない。

2002年:One Nite Alone... The Aftershow: It Ain't Over! (Up Late with Prince & The NPG) (Live)

One Nite Alone... The Aftershow: It Ain't Over! (Up Late with Prince & The NPG) (Live)

One Nite Alone... The Aftershow: It Ain't Over! (Up Late with Prince & The NPG) (Live)

 

当初フィジカル3枚組だった『One Nite Alone...Live!』の、CD3のみの音源を収めた配信音源。ただしこちらは『The Aftershow』と名付けられているようにライヴ後のアフターパーティーを収録したもの。こちらのほうがリラックスした演奏かも。

2003年: Xpectation

Xpectation

Xpectation

 

なんとプリンスのヴォーカル無し・インストオンリーのアルバム。殿下のヴォーカルがないとつまんないんじゃあ?と思ったらこれが大間違い、インストのみなのにプリンス・サウンドであることが如実に伝わってくるからアラ不思議。全体的にセッション的な印象だが、力み過ぎた『The Rainbow Children』なんかよりも面白いと思うぞコレ。

2003年: N.E.W.S

N.E.W.S

N.E.W.S

 

こちらもインストオンリーのアルバム。1曲ぴったり14分で4曲、『Xpectation』と同じくセッション的内容だが、14分という時間の中で変幻してゆく音の流れと緊張感はまた別個の印象を受ける。プリンスの作ったアンビエントサウンド・アルバムと思って聴くと結構悪くない。

2004年: Musicology

Musicology

Musicology

 

レーベル移籍後のゴタゴタと漂泊を経て、趣向を変えたジャズアルバムや好き勝手なインストアルバムを作り、気持ちの整理が付いたのかメジャー5年振りとなる心機一転作は清々しいまでに原点回帰のポップ・ファンク作品。とはいえこの作品辺りから昔の毒気が抜けて”コントロールされた大人なプリンス”を聴くことが出来る。第2期プリンス黄金時代の胎動である。

2004年: The Chocolate Invasion

The Chocolate Invasion (Trax From The NPG Music Club Volume One)

The Chocolate Invasion (Trax From The NPG Music Club Volume One)

 

2004年にプリンスのWebサイトNPG Music Clubにおいて配信オンリーで発売されたアルバム。プリンス自身がアルバム流通の在り方を模索していた時期だったのらしい。そしてこれが結構聴き易く親しみ易いポップ・ファンク集で、例によって寄せ集めとは言え決して無視できない完成度を誇っている。肩の力の抜け方が程よいのだ。

2004年: The Slaughterhouse

The Slaughterhouse (Trax from the NPG Music Club Volume 2)

The Slaughterhouse (Trax from the NPG Music Club Volume 2)

 

『The Chocolate Invasion』と同時期に発売されたこれも配信オンリーの作品。『The Chocolate Invasion』同様知名度が限りなく低いアルバムだが、これがなんと結構出来がいい。やはり聴き易く親しみ易いポップ・ファンク集ではあるが、こちらはよりアグレッシヴで、歯応えといった点ではこの『The Slaughterhouse』のほうが上か。

2004年: C-Note

C-Note - Live

C-Note - Live

 

これもまたNPG Music Clubによる配信オンリーだったアルバム。ライヴではあるが全5曲34分という中途半端なもので、さらにヴォーカルは殆ど入っていない(ラストで1曲未発表曲を歌っている)。どうもリハーサル/サウンドチェック中の音源なのらしい。 日本におけるライヴでの音源も収録されている。

2006年: 3121

3121

3121

 

オフィシャルでは『Musicology』の次にリリースされたアルバムで、事実上のカムバックアルバムとして位置づけられている作品。大々的に宣伝され売り上げも高く、それまで暫くプリンス作品を聴いていなかったオレが「あれ?プリンス復活?」と思いつつ購入したことを覚えている。作品的にも『Musicology』の”コントロールされた大人なプリンス”をさらに押し進め輪郭のはっきりした粒揃いの曲が並んでいる。

2007年: Planet Earth

PLANET EARTH

PLANET EARTH

 

かつての毒気もすっかりと抜け”コントロールされた大人なプリンス”として歩み始めた殿下が遂に地球環境にまで憂慮してみせる、というかつてのレロレロ路線からは考えられないような落ち着きに満ちたアルバム。なにか宗教的転向もあったのらしい。安定した音は第2期黄金時代をひた進む殿下の余裕の表れなのだ。

2008年: Indigo Nights

Indigo Nights / Live Sessions

Indigo Nights / Live Sessions

 

2002年の『One Nite Alone...Live!』以来となるライヴ・アルバム。当初プリンスのライブ写真集の付録として付けられたものらしい。「とりあえず溜め込んだものは全部出したれや!」と言わんばかりにヴォリュームたっぷりだった『One Nite Alone...Live!』と比べれば大分整理され把握しやすい。そして音的にはやはり大人のプリンスなんだよなー。

2009年:LotusFlow3r 

Lotusflow3r

Lotusflow3r

 

 2009年: MPLSound

Mplsound

Mplsound

 

当初通販専用ということで『LotusFlow3r』『MPLSound』さらにプリンス・プロデュースによるBria Valenteという女性アーチストのアルバム『Elixer』の3枚組で発売されたアルバム(配信ではバラ売り、ただし『Elixer』の配信は無し)。当時オレも「3枚組!」ということで興奮気味に購入した覚えがある。音的には『Musicology』から『Planet Earth』までのアダルト路線に飽きてきた殿下が「また違う事やってみよう」と路線を変えてみた作品で、まず『LotusFlow3r』は殿下のギターが大々的にフィーチャーされたアルバム、『MPLSound』は「久しぶりにファンキーしまくるかあ」とゴリゴリしまくったアルバムということになる。いやしかし殿下ってやっぱり落ち着き無いわ……。

2010年: 20Ten

20Ten

20Ten

 

プリンスが新聞・雑誌の付録としてリリース、一般のファンの手にはなかなか入らなかったので中古価格が高騰しまくったというアルバムだが、実際聴いてみると付録レベルで気楽に作った作品で、それほど高く評価するほどのものでもない。現在は配信音源で聴ける。 

◎2014年~

2014年: Art Official Age

Art Official Age

Art Official Age

 

ようやく手にした”落ち着いた大人なプリンス”路線も捨て雑誌付録や通販でまたぞろゴニョゴニョしてようやく気が済んだのか、「また頑張って売れるアルバム作るぞお」 とアーチスト人生何度目かの心機一転で作り上げた快作。本当にこの人は自分に安住せずどんどん自分を更新してゆく人なんだなあ。このアルバムでは以前のレロレロなスケベさが戻ってきていてより老獪かつ黒光りしたプリンス・サウンドを堪能できる。

2014年: Plectrumelectrum

プレクトラムエレクトラム

プレクトラムエレクトラム

 

『Art Official Age』と同時発売されたアルバムで、サードアイガールという女性ロックバンドとプリンスが共演した作品。これが重いドラムとラウドなギターが唸るバリバリの爽快ハードロック路線で(そうじゃない曲もあるが)、 ははあん、さては殿下このアルバムで若い娘たちの精気を吸ってレロレロでスケベな『Art Official Age』を作り上げたんだな、と邪推してしまうことも可能。

2015年: HITnRUN Phase One

Hitnrun Phase One

Hitnrun Phase One

 

プリンスお蔵出し推進計画第1弾。今までのお蔵出しと違うのは「とりあえずアルバムのトータリティーとか考えずに作った曲はガンガン出しちゃうよ」ということなのらしい。しかしアルバム1枚聴いてみると今日的にアップデートした楽曲の数々はトータリティーがどうというよりもプロデュースの統一感が勝っていて逆にバラエティ豊かで楽しい作品じゃないか、と思わせてくれた。特にEDMに限りなく接近した曲の数々はEDM好きのオレとしては大興奮して聴いたよ。考えるな!曲を出し続けろ!というのが「ヒットエンドラン」の意味だったのかな。 

2015年: HITnRUN Phase Two

HITNRUN PHASE TWO

HITNRUN PHASE TWO

 

プリンス生前最後のアルバムはプリンスお蔵出し推進計画第2弾。『Phase One』よりも録音年代がバラけてるらしいがそんなの気にしない、だって1曲目、オレがプリンス晩年における最高の曲だと思っている『Baltimore』がジャーンと流れてきたときアルバムのトーンがそこに統一されるからだ、だから後は一気呵成なんだ、プリンスはどんどん突っ走るんだ、どんどん新しい音を追い求めるんだ、そして星の彼方へと旅立ってしまったけどね。あとこのアルバム、異様に音がいいと思うんだが気のせいかな。殿下の号令で最新録音テクノロジーを駆使したんじゃないか、と知らんくせに勝手に思ってるんだが。 それにしてどの曲も明るくて軽快で素晴らしい。いろいろ評価はあると思うがオレの中ではプリンス作品の中でも相当にお気に入りの1枚だ。

2018年:Piano & a Microphone 1983

Piano & A Microphone 1983 [Deluxe Edition] (CD+LP)

Piano & A Microphone 1983 [Deluxe Edition] (CD+LP)

 

 プリンスの死後リリースされたピアノ弾き語り音源。レコーディングが1983年ということなんだが、殿下にしちゃあ淡白すぎて肩透かしだったかな。 

2019年:Originals 

プリンスが他のアーチストに提供した曲の、プリンス自身が歌ったオリジナル・ヴァージョンを集めたもの。提供されたアーチストに曲調を合わせているためにプリンスが歌うと逆にしっくりこない気がした。こちらもプリンス死後にリリース。

◎その他

1995年:Exodus/The New Power Generation

Exodus by New Power Generation

Exodus by New Power Generation

 

The New Power Generationの単独アルバムだがプリンスがトラ・トラという変名でベース弾いたりヴォーカルやったり叫び声を上げたりしている。クレジットに無いが曲も結構手掛けているんじゃないのかな?プリンス・アルバムとして聴いても遜色なく聴けてしまう。1995年は殿下が変名騒ぎとかで錯綜し出す時期。

1998年:Newpower Soul/The New Power Generation

Newpower Soul

Newpower Soul

  • アーティスト:Prince
  • 出版社/メーカー: Npg Records
  • 発売日: 1998/06/30
  • メディア: CD
 

こちらもThe New Power Generation名義のアルバムだが、なにしろジャケットははっきり殿下だし、クレジットにも殿下の名前がきっちり入っている。これもプリンス・アルバムとして遜色なく聴けるし、結構いい曲も多いんだよね。1998年といえばレーベルとのトラブルが既に終わっていた時期だったが、あれやこれやと疲弊していて自分の名前と関係ない所で伸び伸びとパフォーマンスしたかったのかもしれない。

 

プリンスのアルバムをコンプリートした《前篇》

PURPLE RAIN (EXPANDED) [3CD+DVD] (2015 PAISLEY PARK REMASTER, PREVIOUSLY UNRELEASED TRACKS, REGION-FREE DVD)

ちょっと前まで、オレの中で空前のプリンス・ブームが訪れていた。そう、戦慄の貴公子、紫色大好き、よくわかんないマークに変名したことのある変人、2016年に突然の死を迎えた不世出のカリスマ天才アーチストのあのプリンスである。

プリンスの音楽に最初触れたのは、アルバム『パープル・レイン』の時だから、出会い自体は35年ほど前に遡ることになる。あの頃はMTV流行で、『パープル・レイン』からのシングルカットPVもよく紹介されていたが、まあ最初は「なんだコイツ?」って感じだった。でも音楽をよく聴くと非常にユニークなことをやっていて、特に『ビートに抱かれて』のドラムマシーンの音とか独特過ぎてあっという間にハマってしまった。それからは一気呵成に過去のアルバムを全部振り返って聴き、その後も新作アルバムが出たら必ず購入していた。

プリンスにハマったもうひとつの理由は、オレはそれまでブリティッシュニューウェーヴ/ポストパンクの音楽をずっと聴いていたのだけれども、内容の重い暗い音楽が多くて、精神的に相当参ってしまっていた、というのがあった。そこに紫色の怪しげなスーツを着た小柄な黒人が現れて、「レッツゴークレイジー!」なんて歌いながらケツ振り出したもんだから、オレはそこで「フッ」と吹っ切れてしまったんだ。オレはあの時、プリンスに救われたんだよ。

『パープル・レイン』から始まったプリンス探求の旅であったが、1991年発表の『ダイアモンズ&パールズ』あたりで気分的に合わなくなってきて、そこからプリンス・アルバムを追いかけるのは止めてしまった。その後思い出した頃にポツポツとアルバム購入していたが、以前のように熱狂的に聴く事はなくなっていた。とはいえ、2016年の突然の訃報には絶句した。あんな巨大な才能がこの世から消えてなくなってしまうなんて。まさに諸行無常である。

そんなこんなで時間は今年に戻るが、そういえばプリンスのラスト・アルバム『HITnRUN Phase Two』(2015)をまだ聴いていなかったな、と思い何の気なしに入手したのだ。そしてこれが、あまりに素晴らしすぎた。死の直前のプリンスは、こんな音楽をやっていたのか。これほどまでに抜けがよく、明快な音を出していたのか。これは、彼の新たな黄金期を告げたはずの音じゃないか。それにしても、オレがプリンスを無視していた間に、彼はいったいどんな音を作っていたのだろう?そこからオレの全プリンス作品探索の旅が始まったのだ。 そして数ヶ月掛けて全てのオフィシャル・アルバムを入手して聴いた。

というわけで今回コンプリートしたプリンス・アルバムを並べて簡単なコメントをつけブログ記事として挙げておく。取り上げたアルバムは全49作。ただしここで「コンプリート」と称したアルバムの数々はWikipediaを元に収集したもので、実際はこれ以外にもあれこれあるのかもしれないが、とりあえずキリがないのでここに取り上げた分で「(多分)コンプリート」ということでお茶を濁しておくのでご了承願いたい。アルバムは膨大な数になるので発表年と併記し区切りをつけておいた。

また、なにしろ量が膨大なので今回《前篇》ということで紹介し、残りは後日更新の《後篇》へ持ち越すことにした。では行ってみよう!

◎1978年~1990年

1978年: For You

フォー・ユー

フォー・ユー

 

プリンスのデビュー作。まだまだ初々しく薄味な部分はあるにせよ、隙の無いサウンドとセクシーなファルセットヴォイスといったプリンス・サウンドは既に確立されており、非凡な才能を発揮しまくっている。

1979年: Prince

PRINCE

PRINCE

 

この2ndから輪郭のしっかりしたよりポップでキャッチーなサウンドを展開するようになってくる。『I Wanna Be Your Lover』『I Feel For You』 といった記憶に残るヒット曲もこのアルバムから生み出された。

1980年: Dirty Mind

Dirty Mind

Dirty Mind

 

いよいよ黒光りし始めるプリンス、ジャケットの「ダーティ」な雰囲気からも読み取ってもらいたい。音はよりファンキーに、ヴォーカルはよりセクシーに。

1981年: Controversy

戦慄の貴公子

戦慄の貴公子

 

前作までに模索した様々な要素がここにきて集大成され、「プリンス」というアイデンティティが確立されることにより初期プリンス・アルバムの傑作として送り出された作品。

1982年: 1999

1999

1999

 

そしてプリンスがいよいよブレイクを迎えたのがこの『1999』だ。1曲目からラストまで、まるで一つのシンフォニーのように連なってゆくプリンス・ワールド。自信に満ち溢れた歌声と演奏がなにより心地よい。また、現在5CD+DVDの6枚組スーパースペシャルエディションも発売されている。

プリンス『1999』スーパーデラックスエディション発売! - メモリの藻屑 記憶領域のゴミ

1984年: Purple Rain 

プリンスと言えばなによりもこのサントラアルバム、『Purple Rain』だ。彼の最高傑作は何かと聞かれたら、やはりこのアルバムを推すだろう。発表当時熱狂を持って迎い入れられたことは未だに記憶に新しい。ポップミュージックでありハードロックでありヘヴィーファンクであり、さらにエレクトリックミュージックの要素さえ兼ね備え、全てが融合しつつ極上のキャッチーさで完成されている本作はプリンスの稀有な才能が存分に生かされた傑作中の傑作と言って過言ではない。ここまで完成度の高い音を作っておいてPVは胡散臭くて半裸でレロレロだ。こんなの誰も勝てない。また、このアルバムは現在リマスター版と別バージョン等を収めた3CD+DVDの4枚組バージョンも発売されている。そしてまたこれが、なかなかいいのですよ。

1985年: Around the World in a Day

アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ

アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ

 

スーパーヒットを記録した『Purple Rain』の次作となるこのアルバム、むしろ『Purple Rain』路線を全く継承せずホワホワしたサイケデリック路線に舵を切る所が実にプリンスらしい。プリンス作品の中では五指に入る作品という評価だが、オレ自身はちょっと期待外れだった。

1986年: Parade

Prince And The Revolution/Parade: Music From The Motion Picture Under The Cherry Moon

Prince And The Revolution/Parade: Music From The Motion Picture Under The Cherry Moon

 

これも自身の主演する映画サントラだが、 奇妙に抑制された静謐な音世界はプリンスのこれまでとは全く別の側面と、それを事もなく生み出す才能とを思い知らせてくれた。これも彼の5本の指に入る傑作アルバムだろう。

1987年: Sign "☮︎" The Times

サイン・オブ・ザ・タイムズ

サイン・オブ・ザ・タイムズ

 

『Purple Rain』からその奇才ぶりを世に知らしめたプリンスが、紛う事なき天才であったことを満天下に認知させた超絶的な傑作アルバムである。限りなくポップでありながら同時に高い実験性を感じさせ、プリンス以外誰も作ることは出来ないであろう音世界を完成させているのだ。これも『Purple Rain』と併せ将来に渡ってポップミュージック史に語り継がれるだろう名作だ。

1988年: Lovesexy

Lovesexy by Prince (1988-07-28)

Lovesexy by Prince (1988-07-28)

 

ヘヴィー過ぎてお蔵入りになった『The Black Album』の反動からか相当にポップでキャッチーな曲が並ぶ、ジャケット同様ハッチャケまくっているアルバム。レコード盤では曲間の無い全曲1曲の扱いだったが、CDでは発売国によってセパレートされているものもある。あと配信だと全1曲扱いなのでアルバム1枚が300円ちょっとで購入できる。

1989年: Batman

BATMAN MOTION PICTURE

BATMAN MOTION PICTURE

 

ティム・バートン版映画『バットマン』のサントラであると同時にイメージアルバム。殿下が調子に乗って山のように曲作っちゃったので、サントラのようなオリジナルアルバムのような変な立ち位置の作品だが、当時のバットマン・フィーバーと併せてオレは好きなアルバムだったな。

1990年: Graffiti Bridge

プリンス監督主演映画のサントラ。これまでのサントラと違い他のアーチストの曲も入っているため、アルバム全体で聴くと長くて散漫に思えるかも。プリンスの曲だけをセレクトして聴くと吉。

◎1991年~2000年

1991年: Diamonds and Pearls

ダイアモンズ・アンド・パールズ

ダイアモンズ・アンド・パールズ

 

バックバンドであるザ・ニュー・パワー・ジェネレーションを全面に押し出しこれまでになくゴージャス感溢れるアルバムとなったが、このアルバムからオレの求めていたプリンス像と離れてしまい、聴かなくなってしまっていた。 

1992年: Love Symbol

The Love Symbol : Prince & The New Power Generation

The Love Symbol : Prince & The New Power Generation

 

初っ端からヒップホップを取り入れたヘヴィーファンクで始まりその後もこれでもかというほどバラエティーに富む展開を迎えるテンコ盛りプリンス篇。なんだかもう全身ドクドク脈打ちまくっているようなアドレナリン解放作。これは今聴いても新鮮なアルバムだ。

1994年: Come

Come

Come

 

例の改名前の「俺(プリンス)の死亡宣言だ」 ということらしいアルバムで、全体的にお通夜的な暗さが醸し出されているが、実はこれはこれでまたもやきちんとした完成度を持つアルバムでもある。

1994年: The Black Album

Black Album by Prince (1994-11-22)

Black Album by Prince (1994-11-22)

 

1987年に録音されたが長らくお蔵入りされ1994年に発売されたアルバム。プリンス的には「ヘヴィー過ぎてキャッチーじゃない」という考えだったらしい。サウンドがあまり練り込まれておらず、どこかデモっぽい内容で、これはお蔵入りで正解だったかもしれない。

1995年: The Gold Experience

ゴールド・エクスペリエンス

ゴールド・エクスペリエンス

  • アーティスト: アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1995/10/10
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「ハイ、俺今日から《シンボルマーク》です」という最初のアルバムなのだが、「新生だ!」というだけあって力漲るハイテンションな曲が並び、 ヤル気満々振りを誇示しているアルバムだ。笑っちゃうほどド派手。

1995年:The Versace Experience (Prelude 2 Gold)

Versace Experience..-Digi

Versace Experience..-Digi

 

ベルサーチのショウのみで配られたカセット作品のようやくのアルバム化。『The Gold Experience』別バージョンのDJミックス的なアルバムで、ダンスフロアなプリンスサウンドが楽しめる。

1996年: Girl 6

ガール6

ガール6

  • アーティスト: プリンス,ニュー・パワー・ジェネレーション,プリンス&ザ・レヴォリューション,ザ・ファミリー,ヴァニティ6,レボリューション,バニティー,スター・カンパニー
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1998/08/26
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スパイク・リー映画のサントラで新作は3曲のみなのだが、いわば「プリンス裏ベスト」とでも呼べるような微妙に珍しい選曲が面白いアルバム。確かに「レッツゴークレイジー」と「パープルレイン」ばかり聴かされるベストはあまり聴きたくはない。映画での使われ方もナイスだった。

1996年: Chaos and Disorder

カオス・アンド・ディスオーダー

カオス・アンド・ディスオーダー

  • アーティスト: アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1996/07/25
  • メディア: CD
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「俺もうレコード会社とやっとられんわ」と憤懣遣るかたないプリンスが 「混沌と無秩序!」とそのまんまのタイトルでリリースしたアルバムだが、粗削りであるにもかかわらずきちんとイイ仕事はしており、これはこれでちゃんと評価すべきアルバム。

1996年: Emancipation

イマンシペイション

イマンシペイション

  • アーティスト: アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1996/11/19
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「ヤタ!俺レコード会社から解放された!」という喜びを「開放」というタイトルの3枚組長大アルバムで表現する殿下。全36曲3時間、これだけの作品なのにも関わらず1曲たりとも無駄な曲が無く、「聴いても聴いても延々プリンス」という「金太郎飴的プリンス」をとことん堪能できる。やはりどうしたって天才には敵わない。

1997年: Crystal Ball

Crystal Ball

Crystal Ball

 

またしても3枚組。ただし配信での話で、フィジカルでは次に紹介する『The Truth』と併せて4枚組の発売だった。さらに通販限定ではもう一枚加わって5枚組だったのらしい。この5枚目となるアルバム『Kamastra』は今回コンプリートと言いつつ入手できなかった。っていうか5枚組ってナニよ。音的には83年から96年のお蔵入り曲を集めたものなのらしい。こちらは3枚組では全30曲150分。 もちろん言うまでもなくどの曲も完成度は高くこれも「聴いても聴いても延々金太郎飴プリンス」地獄、いや天国を体験できる。

1997年: The Truth

The Truth

The Truth

 

プリンスのアコギ弾き語りアルバム。とはいえ全編という訳ではなく曲を追うごとに徐々にドラムやシンセが入った曲が増えて来るのだが、それでも全体的にシンプルな音構成のアルバムで、実は結構な名盤なんではないか。

1999年: The Vault: Old Friends 4 Sale

ザ・ヴォルト~オールド・フレンズ・フォー・セール
 

「お蔵出し大セール!」というタイトル通り85~96年に録音され未公開だった音源の大放出作品だが、お蔵出しだろうがセールだろうがそこはプリンス、その辺のアーチストには真似できないクオリティだから凄い。

1999年: Rave Un2 the Joy Fantastic

2000年: Rave In2 the Joy Fantastic

1999年リリースの『Rave Un2 the Joy Fantastic』とそのリミックス集で2000年リリースの『Rave In2 the Joy Fantastic』。現在は『レイヴ完全版』という2枚組で発売されている。多彩なゲストと多彩なジャンルをミクスチャーして製作されているが、例によって完成度は高いもののどこか浮ついた感じがしてあまり聴かないんだよなあ。落ち着きのないプリンス?

 

(後篇に続く)