プリンスのアルバムをコンプリートした《前編》

PURPLE RAIN (EXPANDED) [3CD+DVD] (2015 PAISLEY PARK REMASTER, PREVIOUSLY UNRELEASED TRACKS, REGION-FREE DVD)

ちょっと前まで、オレの中で空前のプリンス・ブームが訪れていた。そう、戦慄の貴公子、紫色大好き、よくわかんないマークに変名したことのある変人、2016年に突然の死を迎えた不世出のカリスマ天才アーチストのあのプリンスである。

プリンスの音楽に最初触れたのは、アルバム『パープル・レイン』の時だから、出会い自体は35年ほど前に遡ることになる。あの頃はMTV流行で、『パープル・レイン』からのシングルカットPVもよく紹介されていたが、まあ最初は「なんだコイツ?」って感じだった。でも音楽をよく聴くと非常にユニークなことをやっていて、特に『ビートに抱かれて』のドラムマシーンの音とか独特過ぎてあっという間にハマってしまった。それからは一気呵成に過去のアルバムを全部振り返って聴き、その後も新作アルバムが出たら必ず購入していた。

プリンスにハマったもうひとつの理由は、オレはそれまでブリティッシュニューウェーヴ/ポストパンクの音楽をずっと聴いていたのだけれども、内容の重い暗い音楽が多くて、精神的に相当参ってしまっていた、というのがあった。そこに紫色の怪しげなスーツを着た小柄な黒人が現れて、「レッツゴークレイジー!」なんて歌いながらケツ振り出したもんだから、オレはそこで「フッ」と吹っ切れてしまったんだ。オレはあの時、プリンスに救われたんだよ。

『パープル・レイン』から始まったプリンス探求の旅であったが、1991年発表の『ダイアモンズ&パールズ』あたりで気分的に合わなくなってきて、そこからプリンス・アルバムを追いかけるのは止めてしまった。その後思い出した頃にポツポツとアルバム購入していたが、以前のように熱狂的に聴く事はなくなっていた。とはいえ、2016年の突然の訃報には絶句した。あんな巨大な才能がこの世から消えてなくなってしまうなんて。まさに諸行無常である。

そんなこんなで時間は今年に戻るが、そういえばプリンスのラスト・アルバム『HITnRUN Phase Two』(2015)をまだ聴いていなかったな、と思い何の気なしに入手したのだ。そしてこれが、あまりに素晴らしすぎた。死の直前のプリンスは、こんな音楽をやっていたのか。これほどまでに抜けがよく、明快な音を出していたのか。これは、彼の新たな黄金期を告げたはずの音じゃないか。それにしても、オレがプリンスを無視していた間に、彼はいったいどんな音を作っていたのだろう?そこからオレの全プリンス作品探索の旅が始まったのだ。 そして数ヶ月掛けて全てのオフィシャル・アルバムを入手して聴いた。

というわけで今回コンプリートしたプリンス・アルバムを並べて簡単なコメントをつけブログ記事として挙げておく。取り上げたアルバムは全49作。ただしここで「コンプリート」と称したアルバムの数々はWikipediaを元に収集したもので、実際はこれ以外にもあれこれあるのかもしれないが、とりあえずキリがないのでここに取り上げた分で「(多分)コンプリート」ということでお茶を濁しておくのでご了承願いたい。アルバムは膨大な数になるので発表年と併記し区切りをつけておいた。

また、なにしろ量が膨大なので今回《前篇》ということで紹介し、残りは後日更新の《後篇》へ持ち越すことにした。では行ってみよう!

◎1978年~1990年

1978年: For You

フォー・ユー

フォー・ユー

 

プリンスのデビュー作。まだまだ初々しく薄味な部分はあるにせよ、隙の無いサウンドとセクシーなファルセットヴォイスといったプリンス・サウンドは既に確立されており、非凡な才能を発揮しまくっている。

1979年: Prince

PRINCE

PRINCE

 

この2ndから輪郭のしっかりしたよりポップでキャッチーなサウンドを展開するようになってくる。『I Wanna Be Your Lover』『I Feel For You』 といった記憶に残るヒット曲もこのアルバムから生み出された。

1980年: Dirty Mind

Dirty Mind

Dirty Mind

 

いよいよ黒光りし始めるプリンス、ジャケットの「ダーティ」な雰囲気からも読み取ってもらいたい。音はよりファンキーに、ヴォーカルはよりセクシーに。

1981年: Controversy

戦慄の貴公子

戦慄の貴公子

 

前作までに模索した様々な要素がここにきて集大成され、「プリンス」というアイデンティティが確立されることにより初期プリンス・アルバムの傑作として送り出された作品。

1982年: 1999

1999

1999

 

そしてプリンスがいよいよブレイクを迎えたのがこの『1999』だ。1曲目からラストまで、まるで一つのシンフォニーのように連なってゆくプリンス・ワールド。自信に満ち溢れた歌声と演奏がなにより心地よい。また、現在5CD+DVDの6枚組スーパースペシャルエディションも発売されている。

プリンス『1999』スーパーデラックスエディション発売! - メモリの藻屑 記憶領域のゴミ

1984年: Purple Rain 

プリンスと言えばなによりもこのサントラアルバム、『Purple Rain』だ。彼の最高傑作は何かと聞かれたら、やはりこのアルバムを推すだろう。発表当時熱狂を持って迎い入れられたことは未だに記憶に新しい。ポップミュージックでありハードロックでありヘヴィーファンクであり、さらにエレクトリックミュージックの要素さえ兼ね備え、全てが融合しつつ極上のキャッチーさで完成されている本作はプリンスの稀有な才能が存分に生かされた傑作中の傑作と言って過言ではない。ここまで完成度の高い音を作っておいてPVは胡散臭くて半裸でレロレロだ。こんなの誰も勝てない。また、このアルバムは現在リマスター版と別バージョン等を収めた3CD+DVDの4枚組バージョンも発売されている。そしてまたこれが、なかなかいいのですよ。

1985年: Around the World in a Day

アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ

アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ

 

スーパーヒットを記録した『Purple Rain』の次作となるこのアルバム、むしろ『Purple Rain』路線を全く継承せずホワホワしたサイケデリック路線に舵を切る所が実にプリンスらしい。プリンス作品の中では五指に入る作品という評価だが、オレ自身はちょっと期待外れだった。

1986年: Parade

Prince And The Revolution/Parade: Music From The Motion Picture Under The Cherry Moon

Prince And The Revolution/Parade: Music From The Motion Picture Under The Cherry Moon

 

これも自身の主演する映画サントラだが、 奇妙に抑制された静謐な音世界はプリンスのこれまでとは全く別の側面と、それを事もなく生み出す才能とを思い知らせてくれた。これも彼の5本の指に入る傑作アルバムだろう。

1987年: Sign "☮︎" The Times

サイン・オブ・ザ・タイムズ

サイン・オブ・ザ・タイムズ

 

『Purple Rain』からその奇才ぶりを世に知らしめたプリンスが、紛う事なき天才であったことを満天下に認知させた超絶的な傑作アルバムである。限りなくポップでありながら同時に高い実験性を感じさせ、プリンス以外誰も作ることは出来ないであろう音世界を完成させているのだ。これも『Purple Rain』と併せ将来に渡ってポップミュージック史に語り継がれるだろう名作だ。

1988年: Lovesexy

Lovesexy by Prince (1988-07-28)

Lovesexy by Prince (1988-07-28)

 

ヘヴィー過ぎてお蔵入りになった『The Black Album』の反動からか相当にポップでキャッチーな曲が並ぶ、ジャケット同様ハッチャケまくっているアルバム。レコード盤では曲間の無い全曲1曲の扱いだったが、CDでは発売国によってセパレートされているものもある。あと配信だと全1曲扱いなのでアルバム1枚が300円ちょっとで購入できる。

1989年: Batman

BATMAN MOTION PICTURE

BATMAN MOTION PICTURE

 

ティム・バートン版映画『バットマン』のサントラであると同時にイメージアルバム。殿下が調子に乗って山のように曲作っちゃったので、サントラのようなオリジナルアルバムのような変な立ち位置の作品だが、当時のバットマン・フィーバーと併せてオレは好きなアルバムだったな。

1990年: Graffiti Bridge

プリンス監督主演映画のサントラ。これまでのサントラと違い他のアーチストの曲も入っているため、アルバム全体で聴くと長くて散漫に思えるかも。プリンスの曲だけをセレクトして聴くと吉。

◎1991年~2000年

1991年: Diamonds and Pearls

ダイアモンズ・アンド・パールズ

ダイアモンズ・アンド・パールズ

 

バックバンドであるザ・ニュー・パワー・ジェネレーションを全面に押し出しこれまでになくゴージャス感溢れるアルバムとなったが、このアルバムからオレの求めていたプリンス像と離れてしまい、聴かなくなってしまっていた。 

1992年: Love Symbol

The Love Symbol : Prince & The New Power Generation

The Love Symbol : Prince & The New Power Generation

 

初っ端からヒップホップを取り入れたヘヴィーファンクで始まりその後もこれでもかというほどバラエティーに富む展開を迎えるテンコ盛りプリンス篇。なんだかもう全身ドクドク脈打ちまくっているようなアドレナリン解放作。これは今聴いても新鮮なアルバムだ。

1994年: Come

Come

Come

 

例の改名前の「俺(プリンス)の死亡宣言だ」 ということらしいアルバムで、全体的にお通夜的な暗さが醸し出されているが、実はこれはこれでまたもやきちんとした完成度を持つアルバムでもある。

1994年: The Black Album

Black Album by Prince (1994-11-22)

Black Album by Prince (1994-11-22)

 

1987年に録音されたが長らくお蔵入りされ1994年に発売されたアルバム。プリンス的には「ヘヴィー過ぎてキャッチーじゃない」という考えだったらしい。サウンドがあまり練り込まれておらず、どこかデモっぽい内容で、これはお蔵入りで正解だったかもしれない。

1995年: The Gold Experience

ゴールド・エクスペリエンス

ゴールド・エクスペリエンス

  • アーティスト: アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1995/10/10
  • メディア: CD
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「ハイ、俺今日から《シンボルマーク》です」という最初のアルバムなのだが、「新生だ!」というだけあって力漲るハイテンションな曲が並び、 ヤル気満々振りを誇示しているアルバムだ。笑っちゃうほどド派手。

1995年:The Versace Experience (Prelude 2 Gold)

Versace Experience..-Digi

Versace Experience..-Digi

 

ベルサーチのショウのみで配られたカセット作品のようやくのアルバム化。『The Gold Experience』別バージョンのDJミックス的なアルバムで、ダンスフロアなプリンスサウンドが楽しめる。

1996年: Girl 6

ガール6

ガール6

  • アーティスト: プリンス,ニュー・パワー・ジェネレーション,プリンス&ザ・レヴォリューション,ザ・ファミリー,ヴァニティ6,レボリューション,バニティー,スター・カンパニー
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1998/08/26
  • メディア: CD
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スパイク・リー映画のサントラで新作は3曲のみなのだが、いわば「プリンス裏ベスト」とでも呼べるような微妙に珍しい選曲が面白いアルバム。確かに「レッツゴークレイジー」と「パープルレイン」ばかり聴かされるベストはあまり聴きたくはない。映画での使われ方もナイスだった。

1996年: Chaos and Disorder

カオス・アンド・ディスオーダー

カオス・アンド・ディスオーダー

  • アーティスト: アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1996/07/25
  • メディア: CD
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「俺もうレコード会社とやっとられんわ」と憤懣遣るかたないプリンスが 「混沌と無秩序!」とそのまんまのタイトルでリリースしたアルバムだが、粗削りであるにもかかわらずきちんとイイ仕事はしており、これはこれでちゃんと評価すべきアルバム。

1996年: Emancipation

イマンシペイション

イマンシペイション

  • アーティスト: アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1996/11/19
  • メディア: CD
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「ヤタ!俺レコード会社から解放された!」という喜びを「開放」というタイトルの3枚組長大アルバムで表現する殿下。全36曲3時間、これだけの作品なのにも関わらず1曲たりとも無駄な曲が無く、「聴いても聴いても延々プリンス」という「金太郎飴的プリンス」をとことん堪能できる。やはりどうしたって天才には敵わない。

1997年: Crystal Ball

Crystal Ball

Crystal Ball

 

またしても3枚組。ただし配信での話で、フィジカルでは次に紹介する『The Truth』と併せて4枚組の発売だった。さらに通販限定ではもう一枚加わって5枚組だったのらしい。この5枚目となるアルバム『Kamastra』は今回コンプリートと言いつつ入手できなかった。っていうか5枚組ってナニよ。音的には83年から96年のお蔵入り曲を集めたものなのらしい。こちらは3枚組では全30曲150分。 もちろん言うまでもなくどの曲も完成度は高くこれも「聴いても聴いても延々金太郎飴プリンス」地獄、いや天国を体験できる。

1997年: The Truth

The Truth

The Truth

 

プリンスのアコギ弾き語りアルバム。とはいえ全編という訳ではなく曲を追うごとに徐々にドラムやシンセが入った曲が増えて来るのだが、それでも全体的にシンプルな音構成のアルバムで、実は結構な名盤なんではないか。

1999年: The Vault: Old Friends 4 Sale

ザ・ヴォルト~オールド・フレンズ・フォー・セール
 

「お蔵出し大セール!」というタイトル通り85~96年に録音され未公開だった音源の大放出作品だが、お蔵出しだろうがセールだろうがそこはプリンス、その辺のアーチストには真似できないクオリティだから凄い。

1999年: Rave Un2 the Joy Fantastic

2000年: Rave In2 the Joy Fantastic

1999年リリースの『Rave Un2 the Joy Fantastic』とそのリミックス集で2000年リリースの『Rave In2 the Joy Fantastic』。現在は『レイヴ完全版』という2枚組で発売されている。多彩なゲストと多彩なジャンルをミクスチャーして製作されているが、例によって完成度は高いもののどこか浮ついた感じがしてあまり聴かないんだよなあ。落ち着きのないプリンス?

 

(後篇に続く)

映画『ファイティング・ファミリー』はプロレス一家の明日はどっちだッ!?な物語だった!!

■ファイティング・ファミリー (監督:スティーブン・マーチャント 2019年アメリカ映画)

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■インディープロレス一家の物語

映画『ファイティング・ファミリー』はイギリスの地方都市に住むあるプロレス・ファミリーを描いたヒューマン・ドラマです。そしてこれは実話を描いた作品だという事なんですね。

舞台はイギリス東部の町ノリッジ。ここに親子みんなでインディープロレス団体を営むナイト一家というのがおったのですね。そしてこの一家の二人の子供、兄のザックと妹のサラヤは世界的なプロレス団体WWEに所属することが夢でした。そんなある日、WWEの入団テストを受ける切っ掛けを掴んだ二人は、決意を胸にテストに臨みますが、その結果はナイト一家に大きな波紋を投げかける事となってしまうんです。

まず、オレはプロレスの事はまるで分かりません。最初はポスターだけ見て「ドウェイン・ジョンソンが主役を務めるプロレス一家の面白おかしいコメディ映画なのか!?」と思いとりあえず観に行くことにしたんですよ。もちろん実話だってことも知らなかったし、主人公となる実在の女子プロレスラー、ペイジのことも知らなかったんですよね。しかし映画が始まってみると、オレは速攻でこのチャーミングな物語に引き込まれてしまいました。

■ここが変だよナイト一家!

とりあえず言っておきますと、この作品ではドウェイン・ジョンソンは主役ではなく、要所要所に登場はしますが、本人役のゲスト出演的な役柄です。しかしこの作品自体は自らもプロレス一家だったドウェイン・ジョンソンがプロデューサーを務めているんですね。

この物語をチャーミングにしているのはナイト一家のキャラクターにあります。まず元強盗でムショ暮らしもしたことのあるパパ、リッキー。そしてリッキーのワイフ、ジュリアはなんと元ヤク中、でもリッキーと出会いプロレスを知る事で人生が変わった!というから泣かせるじゃありませんか!この二人の息の合った夫婦ぶりがこの作品を可笑しくて馴染みやすいものにしてします。

ナイト家には二人の息子がいますが一人は服役中(!)、そしてもう一人は結婚が間近でWWE入団の夢を持ちながら今日もインディープロレスを繰り広げるザック。彼は近所の子供たちをジムに招きプロレスを教えるという社会奉仕的な側面も持っています。そして主役であるサラヤ/ペイジ。ゴスなルックスでプロレス技を繰り出すタフな女子プロレスラーです。でもそのゴスさが世間から浮いて見えて嘲笑の対象になってしまったりしているんですね。

映画の感想を書く前に長々と主演キャラクターのことを書いたのは、このナイト家というのが、パパママは元受刑者と元ヤク中、息子の一人は服役中、もう一人の息子はプロレス以外生きる糧が無く、娘はゴスでフリーク呼ばわりされ、一家全体はイギリスのワーキングクラスであるという、ある意味イギリス社会の底辺で生きるはぐれ者たちだということを言いたかったからなんです。しかしそんな彼らが希望を捨てず今日も明るく生きられるのは、プロレスという【夢】でひとつにまとまっているからなんですよ。

■一家みんなの【夢】

プロレスのことが何一つも分からなくてもこの物語に共感できるのは、これが、どんなに貧しくつらい生活環境であろうとも、共通の【夢】を持つことでお互いに信頼を育み幸福を実現しようと奮闘する人々、家族の物語だからなんですよ。そして、パパとママのワーキングクラスらしい開けっ広げで物怖じしない性格や言動の在り方が、物語に実にチャーミングなユーモアをもたらしているんです。もう初っ端から笑いの渦だらけで、この作品に大きな期待を持たせられるんですね。

しかしそれだけなら「愉快なプロレス一家」を描くプロレタリアート礼賛物語でしかありません。物語の波乱は早くから描かれます。それは家族最大の【夢】、ザックとサラヤのWWE入団の、その試験が行われる部分からです。実話なのでネタバレもなにもないかもしれませんが、オレを含め誰もがプロレスを知ってるわけではないでしょうからこの辺はぼかしておきましょう。この試験における皮肉な運命の結果が家族に暗雲をもたらすんです。そこには挫折があり、苦悩があり、葛藤があります。乗り越えねばならない試練と、挫けそうになる煩悶があります。あれほど和気あいあいとしていた家族に離散の危機さえ訪れます。

こうした、【夢】を手に入れるための辛く長く厳しい道、【夢】を巡る家族間の愛憎半ばする気持ちの揺れ動き、それでもやはり、自分たちは家族じゃないか、という強烈な思い、それらが次々と錯綜し、最初お気楽であった筈の物語がどんどんとシリアスにドラマチックに揺れ動いてゆくんですよ!もう観ていたオレは途中から胸を鷲掴みにされるような思いでスクリーンを見守っていましたよ。そして全てが昇華されたラストで、その望むべき落としどころの鮮やかさにオレの頭の中は真っ白になってしまうほどでした。

いや、確かにこれはよくあるスポ根物語の、そしてはぐれ者たちの、よくあるサクセスストーリーなのかもしれないし、ちょっと変わった家族の、よくある家族愛の物語なのかもしれません。しかし試練とその成就との、笑いと涙の物語は、やはり王道のものとして観る者を楽しませ、心に豊かなものを残してくれるではありませんか。映画『ファイティング・ファミリー』は、それが実話であるとかないとかは関係無く、胸に深く刻まれる良質な作品として見事な完成度を見せていました。

■魅力的な演者たち

俳優たちも魅力たっぷりでした。恰幅のいいパパ、リッキーを演じるのは『ショーン・オブ・ザ・デッド』のニック・フロスト。この彼のすっとぼけた演技を確認するためだけでもこの作品は観る価値があるでしょう!パワフルなママ・ジュリアはTVシリーズゲーム・オブ・スローンズ』のサーセイ・ラニスター役、レナ・ヘディが演じていたというから後で知ってびっくりしました!なんたってスッゴイパンクな母ちゃん役だからなんですよ。

その息子ザックを演じるのは『ダンケルク』で操縦士役を演じたジャック・ロウデン。この映画での雰囲気がサイモン・ペッグを若くした感じだったもんですから、ニック・フロストと並ばせるとなんだか感慨深かったですね。サラヤ/ペイジ役のフローレンス・ピューは『トレイン・ミッション』に出演があるようです。タフなプロレスラー役はホンマモンみたいでした。忘れてはならないのはトレイナー役のヴィンス・ヴォーン。コミカルさとシビアさを同時に演じる味のある俳優でした。

ロック様ことドウェイン・ジョンソンについては今更言うまでもないでしょう。彼の出演でこの作品にシュッと締まった印象を与えてくれました。監督/製作/脚本は『蜘蛛の巣を払う女』『LOGAN ローガン』などに俳優として出演のあるスティーブン・マーチャント。映画『妖精ファイター』出演時にロック様と共演し、それが縁での今回の監督という事ですが、なかなかに非凡な監督ぶりを感じさせました。

www.youtube.com

プリンス『1999』スーパーデラックスエディション発売!

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紫の伝説!プリンス初期の伝説的名盤『1999』が《スーパーデラックスエディション》として再発されたのでプリンス大好き今日もレロレロなオレとしてはこれはもう買わざるを得なかったのである。

この『1999 スーパーデラックスエディション』、なんとCD+DVDの6枚組ボックスセットだ。オマケに美麗ブックレットも付いている。ボックスなんかギンギラギンの銀色だぞ。殿下もギンギラギンだったし当然だよな!これはもうレロレロな殿下をレロレロに味わいつくせる仕様ではないか!

6枚組の中身はこんな感じ:

【収録内容】

●DISC1: CD/オリジナル・アルバム: 2019リマスター(初リマスター)

●DISC2: CD/プロモ―ション・シングル&B面楽曲集(2019リマスター)

●DISC3: CD/秘蔵音源1(1981年11月から1982年4月に録音)

●DISC4: CD/秘蔵音源2(1982年4月から1983年1月に録音)

●DISC5: CD/未発表ライヴ(ライヴ・イン・デトロイト、1982年11月30日)

●DISC6: DVD/未発表ライヴ映像(ライヴ・イン・ヒューストン、1982年12月29日)

 まずDISC1『1999:2019リマスター』は初リマスターということでグレードアップした『1999』を聴くことができる!音質が向上し音の分離のよくなったリマスター盤は今まで聴いた『1999』とは別の感動を新たにできた!全曲が切れ目なしに聴こえる『1999』ってプリンスにとって新たに挑んだシンフォニーだったんだなあと気付かされる。

DISC2『プロモ―ション・シングル&B面楽曲集』は『1999』楽曲のエディット/ロングなど別バージョン的な楽曲が聴ける。これはマニア向けなんで凄く新鮮ってわけでもないがシングルB面曲が聴けるのが嬉しい。

DISC3/DISC4の『秘蔵音源1,2』が今回の聴き所だろう。CD2枚に渡ってプリンスの未発表曲が23曲も収められているのだ。これらは1981年から1983年に掛けて録音されたもので、これはアルバム『1999』発表前後の期間ということになる。そして未発表曲とはいえそこはプリンス、決して未完成なボツ曲なのではなく、どれもハイクオリティな楽曲ばかりなのだ。この『秘蔵音源1,2』を聴くためだけにも『1999 スーパーデラックスエディション』を入手してもいいほどだ(いや、『1999』のリマスターも実に素晴らしいが)。

そしてDISC5は1982年11月30日デトロイト公演の『未発表ライヴ』となる。プリンスの公式ライヴアルバムとしては最も古い時代の録音のものになるんじゃないかな。当然『1999』発表までの楽曲中心となるが、ソリッドで性急な展開はほとんどロックコンサート乗り、若く溌剌としたプリンスのパワフルなパフォーマンスが楽しむことができる。

DISC6はDVDによる『未発表ライヴ映像』だ。これはヒューストンにおける1982年12月29日のコンサートの模様を映像化したものだ。正直な所、画質はそれほど良くないのだが、プリンスの古い時代のライブという事で貴重な映像となるだろう。曲構成はDISC5:CDの『未発表ライヴ』とあまり変わらないのだが、当時の自信あるライブセットということになるのだろう。そして!この映像で見ることのできるプリンスが、やはり若い!汗みどろで上半身裸の殿下!衣装は野暮ったいしステージはまだ洗練されていない部分もあるが、それでもピストン運動を見せたり股割りしてみせたりといった基本的なパフォーマンスはこの頃から確定していて、実はプリンスのライブというのは当時から出来上がっていたんだなあということが確認できる。1時間ほどの映像なのでR&Bのライヴに多いダラダラした展開も無い。とっても新鮮だよ。f:id:globalhead:20191130161044j:plain

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1999:スーパー・デラックス・エディション

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1999 (Super Deluxe) (5CD/1DVD)

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