ダグラス・アダムス のカルトSF長編『銀河ヒッチハイクガイド』を(今頃やっと)読んだ

銀河ヒッチハイクガイド / ダグラス・アダムス (著), 安原和見 (翻訳)

銀河ヒッチハイク・ガイド 銀河ヒッチハイクガイドシリーズ (河出文庫)

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。どこをとっても平凡な英国人アーサー・デントは、最後の生き残りとなる。アーサーは、たまたま地球に居た宇宙人フォードと、宇宙でヒッチハイクをするハメに。必要なのは、タオルと“ガイド”―。シュールでブラック、途方もなくばかばかしいSFコメディ大傑作。

『銀河ヒッチハイク・ガイド』は、イギリスのダグラス・アダムス(1952-2001)が放った、宇宙規模のスラップスティック・ナンセンスSFだ。

あらすじはシンプルかつハチャメチャ。うだつの上がらないイギリス人アーサー・デントは、ある朝突然、「銀河ハイウェイのバイパス工事の邪魔」というわけのわからない理由で、地球が消滅させられることを知る。だがその直前、ベテルギウス星人の調査員フォード・プリフェクトに「パニクるな」と引きずられ、宇宙へヒッチハイクの旅に出ることに。アーサーは銀河の旅行ガイドブック片手に、無限不可能性ドライブ搭載の宇宙船で、意味不明な冒険、もしくは徘徊を繰り広げる……。

アダムスは元々BBCラジオドラマの脚本家で、『ドクター・フー』も手がけた才人。特にモンティ・パイソンとのつながりが深く、グレアム・チャップマンとスケッチを共同執筆したり、本人が端役で出演したりするなど、「何でも馬鹿馬鹿しく笑い飛ばす」イギリス人DNAが本作にこってりたっぷり注入されている。原点は1978年のBBCラジオ4番組。以降、小説化→テレビ版→ゲーム→コミック→2005年にマーティン・フリーマン主演で映画化と広がり、全5巻のシリーズは世界中でカルト的人気を博した(累計販売部数は1500万部超えと言われている)。

最大の魅力は、イギリス人らしいシニカルで毒っ気たっぷりのユーモアだ。官僚主義、宗教、技術信仰、人間中心主義……現代社会のありとあらゆる不条理を、容赦なく笑い飛ばす。冒頭からしてシニカルの極み。「こんだけ広い宇宙で、地球がハイウェイ工事の邪魔って……お前ら銀河の行政、どんだけ適当なんだよ」とツッコミたくなる。途中で出会ううつ病ロボット・マーヴィンの破壊的なまでの暗さも最高に笑える。「ああ、また俺の人生は最悪だ……」とブツブツ言いながら、実は天才的な頭脳を持っているという、絶妙なギャップ。 あのネガティブさはちょっと尊敬レベルだ。

有名フレーズも宇宙級に豊富。

  •  「パニクるな(Don't Panic)」
  • 「タオルは、銀河ヒッチハイクにおいて最も役に立つものだ」
  •  「生命、宇宙、そして万物についての究極の答えは【42】」
  •  「時間は幻想だ。昼食時は二重に幻想だ」
  •  「では、魚をありがとう」(イルカの別れの言葉)

どれも「意味ありげなのに全く意味がない」。この徹底したナンセンスさが、本書の最大の武器であり、読んでいて「自分でもこんなの書けそうじゃん……?」と一瞬錯覚させる魔力がある。

実際、全篇が「今思いついたネタを全部詰め込んでみた」みたいな思いつき連発で、脈絡のなさが半端ない。でも、それを長編1冊にまとめ、絶大な人気を獲得し、シリーズ化までやり遂げたアダムズの才能は本物だと思う。……とはいえ、正直に言うと、1冊読んだだけで「このノリはもう十分わかった」と満足してしまった。シリーズ全部追う気にはならなかったのが、率直な感想ではある。

軽快でシニカル、宇宙のばかばかしさを笑い飛ばしたい人、モンティ・パイソンやブラックユーモアが好きな人には全力でおすすめ。読後感は最高に不思議。「何か読んだ気がするけど、何もなかったような……」という、銀河の真空に放り出されたような感覚。それが心地いい。それとあと、タオルだけは忘れずに持っていくように!パニクるな!

銀河ヒッチハイク・ガイド

銀河ヒッチハイク・ガイド

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