拉致された少女はミイラの呪いをかけられていた / 映画『THE MUMMY /ザ・マミー 棺の中の少女』

THE MUMMY /ザ・マミー 棺の中の少女 (監督:リー・クローニン 2026年アイルランド・アメリカ映画)

8年前エジプトで失踪した少女が、3000年前の棺の中で変わり果てた姿で発見される。家族の元へ戻った彼女をきっかけに、次々と不穏な怪現象が襲う。エジプトのミイラの呪いと因習が織りなす、身の毛もよだつミステリーホラー、それがこの『THE MUMMY /ザ・マミー 棺の中の少女』だ。

【STORY】エジプトのカイロに駐在するジャーナリスト一家の8歳の娘ケイティが忽然と姿を消す。家族は必死に捜索するが、文化の壁と非協力的な警察に阻まれ、失意のうちにアメリカ・ニューメキシコ州アルバカーキへ帰国する。8年後、変わり果てた姿で発見されたケイティが家族のもとに帰還するが、彼女の周囲で異変が連鎖。カイロで捜査を続ける刑事と連携しながら、空白の8年間の真相に迫るにつれ、世界最古の呪いが明らかになり、家族は恐怖の渦に飲み込まれていく。

キャストは父チャーリー役にジャック・レイナー、母ラリッサ役にライア・コスタ、ダリア・ザキ刑事役にメイ・キャラマウィ。少女ケイティ役ナタリー・グレースの不気味で圧巻の存在感が忘れられない。監督のリー・クローニンはアイルランド出身のホラー映画監督。長編デビュー作『The Hole in the Ground』(2019)でサンダンス映画祭に注目を集め、2023年の『死霊のはらわた ライジング』で世界的にブレイク。ジェームズ・ワンやジェイソン・ブラムらホラー界の巨匠から信頼を集める新鋭だ。

相当に不気味でグロテスク、適度に胸糞悪い良質のホラー映画だった。腐敗した肌、剥がれ落ちる爪や歯、歪んだ顔立ちといった特殊メイクとスプラッター描写が五感を刺激するほどリアルだ。古典的なミイラものとは一線を画す痛々しい恐怖が最大の見せ場で、不気味な「ミイラ少女」ケイティの狂気と禍々しさが同居した演技は秀逸のひとことに尽きる。葬儀シーンでの衝撃的な行動や悪趣味極まりない怪奇現象は、黒い笑いと恐怖が同時に襲いかかるハイライトとなっている。

アメリカ白人が中東の異国で暮らすことの不安と困難から物語は始まり、その異国から持ち込まれた怪異が主人公家族を徹底的にいたぶってゆく。物語は、ニューメキシコ州の家で恐怖に満ちた体験をする家族と、カイロで事件の真相を追うダリア・ザキ刑事のパートが交互に描かれ、緊張感を巧みに高めてゆく。その本質にあるのは、遥か数千年前から続く、あまりにも異質で相容れることのできない異文化の呪いだ。この、欧米人の理解を超えた恐怖こそが、本作の戦慄すべき核心である。

また、ただの呪いの物語であるだけにとどまらず、『エクソシスト』や『ポルターガイスト』のように家族の愛情と絶望が丁寧に描かれている点も秀逸だ。夫婦の情感豊かな演技がホラーの中に温かみと切なさを融合させ、恐怖が「自分事」として染み込んでくる。空白の8年間の真相とエジプトの呪いが徐々に明らかになるミステリー要素と、黒いピラミッドなどの美しく不気味なビジュアルが持続する緊張感を生み、最後まで目が離せない。

特に、自分の小さな娘がボロボロの姿で発見され、意識もなく、時折ピクピクと不気味な痙攣を見せるだけという描写は強烈だ。子供のいる親なら耐え切れずに席を立ってしまうかもしれないレベルで、胸が締め付けられる。グロとスプラッターの向こう側に、愛する者を失う恐怖と「取り戻したい」という切実な願いが重くのしかかってくる。吐き気と同時に涙がこみ上げてくる、稀有な体験だった。

リー・クローニンは本作でも、容赦ないビジュアルと観客の感情を的確に抉る演出を武器に、2026年ホラー映画の中でも突出した1本を作り上げた。グロへの耐性がある人、家族の絆を描いた重厚なホラーを求める人はぜひ。ただし、鑑賞後しばらく、あの少女の顔がまぶたの裏に貼り付いて離れないことは覚悟しておいたほうがいい。


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