全知的な読者の視点から (監督:キム・ビョンウ 2025年韓国映画)

電車に乗る人々の、いつもと変わらない光景を、奇妙なホログラムの指令が一変させる。「生き物を1体以上殺せ。失敗すれば死」。パニックに陥った乗客たちは互いに殺し合い始める――それは未知の存在による、デスゲームの幕開けだった。
映画『全知的な読者の視点から』は、全世界で25億回超の購読を誇る人気ウェブ小説を原作とする、韓国発のサバイバルアクションだ。
【STORY】平凡な会社員キム・ドクシャは、10年以上読み続けたウェブ小説『滅亡した世界で生き残る三つの方法』の最終回に失望する。その直後、現実が小説の世界へと変貌し、デスゲームさながらの「シナリオ」が幕を開ける。唯一の完読者であるドクシャは、その知識を武器に仲間たちと共に崩壊した世界を生き抜き、物語の結末を変えようと奮闘する。
主演はアン・ヒョソプ、イ・ミンホ、チェ・スビン。監督は『テロ,ライブ』『PMC ザ・バンカー』で知られるアクション演出家、キム・ビョンウ。
本作はデスゲーム的な展開をビデオゲームさながらの演出で描きつつ、「なろう系」に顕著な「主人公が予め世界の構造と物語の進行を知っているというチート状態」を物語の核に据えている。とはいえ正直なところ、人気ウェブ小説ファンの若い層に向けて作られた作品という印象が拭えず、あまり乗れなかった。
まず、「なろう系的チート展開」を楽しめなかった。「俺はもうその展開を知っている。だから俺は強い」という主人公像は、観ていて爽快感よりも白けさせられる。本作では「予め知っているはずの展開が少しずつ異なるものになっていく」ことで予測不能な緊張感を生もうとしているのだが、本質的にはチートであることに変わりはなく、やはり醒めてしまう。
デスゲーム的な展開にしても、「極限状態に置かれた人間はみな殺し合う」と言わんばかりで、人間というものをずいぶん単純に描いているなと感じた。殺伐とした競争社会を、殺し合いという極端なかたちで視覚化したものなのだろうとは思う。ただ、競争社会だけが社会のすべてではないのだが。
派手なVFXが躍るビデオゲーム的演出については、ゲーム好きとしてそれなりに楽しめた。ただ、物語のキーパーソンとなる「ヒーロー」がいかにもビデオゲーム的な薄っぺらさで、理由もよくわからないままカッコをつけており、これがなかなかにウザい。
最近読んだSF小説『冒険者カールの地球ダンジョン』シリーズは、主人公がビデオゲーム的な世界に放り込まれ戦いを余儀なくされるという点で本作と似通っている。しかし『冒険者カール』は、投げ出された世界の情報をほとんど知らないまま手探りで戦い抜くからこそ、毎回の展開に緊張感と新鮮味があって引き込まれた。それに比べてこの作品は、チート主人公が澄ました顔で「この展開だ」「この展開と違う」とやっているだけで、余裕ぶっていることへのイラつきが募るばかりだった。つまるところ、自分向きの作品ではなかったようだ。
