ベテラン 凶悪犯罪捜査班 (監督:リュ・スンワン 2024年韓国映画)

”法が裁かない悪人”を私刑にする連続殺人事件が発生、煽情的な動画配信者がこれを「正義のヒーロー」と持ち上げ、多くの者が賛同して世論が騒然となってしまう。我らが熱血ベテラン刑事ソ・ドチョルと凶悪犯罪捜査班はこの困難な捜査を遂行できるのか?というクライムアクション映画。2015年に公開された映画『ベテラン』のシリーズ第2作だ。主人公ソ・ドチョルに韓国の国民的スター、ファン・ジョンミン。監督は『密輸 1970』『モガディシュ 脱出までの14日間』のリュ・スンワンが前作に引き続きメガホンをとる。
【STORY】法では裁かれない悪人を標的にした連続殺人事件が発生。不条理な司法制度に不満を抱えていた世論は、犯人のことを善と悪を裁く伝説の生き物「ヘチ」と呼び、正義のヒーローとしてもてはやすようになる。熱血ベテラン刑事ソ・ドチョルと凶悪犯罪捜査班、さらにドチョルに心酔する新人刑事パク・ソヌも捜査に加わり、事件は解決に近づくかに見えた。しかし犯人は刑事たちをあざ笑うかのように、次の標的を名指しする予告をインターネット上に公開する。
粗筋だけだとシリアスな物語という印象を受けるだろうが、実はこの『ベテラン』、ドタバタしたコメディシーンも相当加味されたシリーズで、第2作となる本作においても、冒頭からとんでもないギャグシーンが連打され大いに笑わせてくれるのだ。このシリーズの最大の魅力となるのは主人公ソ・ドチョルの、暴走し過ぎていつも周囲に迷惑をかけまくる熱血ぶりと、そのソ・ドチョルをサポートする捜査班の、気の置けない人間関係、そしていざという時に大いに発揮する無鉄砲なまでの機動力にある。それは今作でも健在で、前作に引き続き大いに物語を盛り上げるのだ。
今作のテーマとなるのは「犯罪者を私刑に処すのは是か非か」という問題、そしてそれがSNSで拡散されることで、世論が間違った正義感へと傾いてしまうという問題だ。これは非常に現実的で現代的な問題であり、優れたシナリオだと感じた。「法が裁かない悪人を私刑にする者」という存在もフィクションでは昔から散々描かれてきたが、この『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』ではその”制裁者”が”悪人”を残虐な方法で殺し、最初から異常殺人者の扱いだ。この部分で”正義”の在り方にブレがなく、エンタメ作品としてすっきりしている。
さらに後半、犯人が被害者を選別させる行為に出るシーンや被害者に残虐なトラップを仕掛けるシーンでは、バットマン映画『ダークナイト』や『ザ・バットマン』を大いに彷彿させた。これらリアル路線を追求したバットマン映画は、ヒーローの私刑についても意識的であり問題意識を抱えていたが、それがこの『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』にリンクするとは思ってもみず少々驚いた。そして今作が同工の作品と一味違うのは、”犯人”となる者が早くから正体がはっきりしていて、しかも思わぬ存在であるという部分だろう。で、こいつがまた凄まじい体技を繰り出し、アクション面においても大いに見せる作品となっていた。
