サイレントナイト (監督:ジョン・ウー 2022年アメリカ映画)

『サイレントナイト』は愛する息子を殺され、自らも声を失った男が、復讐を誓って立ち上がる!というリベンジアクション映画だ。なんといっても『男たちの挽歌』シリーズ、『フェイス/オフ』のジョン・ウー監督が久々にハリウッド作品を撮ったという部分が注目だろう。主演は『スーサイド・スクワッド』シリーズのジョエル・キナマン。ジョエル・キナマンは結構お気に入りの俳優で、リメイク版『ロボコップ』も悪くないが、NetflixのTVドラマ『オルタード・カーボン』が特にいい。
【STORY】家族とともに幸せな日々を過ごしていた男は、クリスマスイブの日にギャング同士の銃撃戦に巻き込まれ、愛する息子の命を目の前で奪われてしまう。自らも重傷を負った彼は、どうにか一命を取り留めたものの声帯を損傷。絶望を叫ぶ声さえも失った男の悲しみは、いつしか激しい憎しみへと変わっていく。悪党たちへの復讐を決意した男は、次の12月24日をギャング壊滅の日に定め、過酷な戦いへと身を投じていく。
愛する者を殺された平凡な男が、血を吐くような鍛錬の末に復讐に打って出る、というストーリーだけなら、あまりにありふれていて興味が湧かないだろう。しかしこの作品が決して陳腐な作品に堕していないのは、その独特な設定にある。それは主人公の男が、悪漢の襲撃により声帯に傷を受け、喋ることができなくなっている、という点だ。それにより、映画は全編に渡ってほとんど台詞無しのまま展開してゆくのだ。物語はクリスマスイブを中心にして動いてゆくが、クリスマスの「サイレントナイト」と声を失った男の「サイレント」がかけてあるタイトルという訳なのだ。
ほとんど台詞のない物語であることにより、主人公が心情吐露してみせたり何かを説明してみせたりといったことが全くない。あったとしても主人公の仕草や表情がそれを現していることになるのだが、それは視覚情報として提示されることであり、言葉によって何かを言い表したり規定することがない。それにより、アクションだけで全てを見せてゆき、アクションだけで全てを進行させてゆくという、おそろしくストイックかつ没入感の高い作品になっているのである。余計な説明の無さは乾いた情緒を生み、それはハードボイルド的と言っていいだろう。
余計な説明のない物語で描かれるのは、徹底的な銃撃と殺戮の宴だ。クリスマスイブの夜、遂に男の復讐が始まると、映画はただひたすら延々と暴力に次ぐ暴力を画面に叩きつけてゆく。声のない男の復讐は孤独と狂気に満ち、言葉にならない悲しみと怒りが全編を覆いつくす。映画はどこまでも冷たくダークであり、耳を聾するインダストリアルサウンドが響き渡り、夜の闇はあまりにも邪悪で、世界には何一つ救いなどないと思わせる。そしてそこに突如、ジョン・ウー監督ならではの、なけなしの詩情が沸き上がるのだ。これにはとことん痺れさせられた。映画『サイレントナイト』は、どこかフリークスな匂いのするカルト的な作品として記憶に残るだろう。



