トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー (監督:イッサ・ロペス 2024年アメリカ製作)

ジョディ・フォスター主演のクライムスリラードラマ
オレは映画『タクシードライバー』を初めて観て以来ずっとジョディ・フォスターファンで、あの映画を観たのが13、4の頃だったから、あれから50年近くずっとファンを続けていることになる。実はオレとジョディ・フォスターは同じ1962年生まれの同い年で、なんだか一緒に年齢を重ねてきたのだなあ、などと勝手な感慨に耽っていたりする。
そんなジョディ・フォスターがドラマ出演というから、時代だなあという気がする。タイトルは『トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー』、クライムドラマシリーズ「トゥルー・ディテクティブ」の第4弾ということなのらしいが、このシリーズ自体は今まで観たことがない。今作においてジョディは警察署長役を務め難事件に挑むのらしい。共演の女警官役を務めるカーリー・レイスは女子プロボクサーだというから、こちらの活躍もちょっと楽しみにしていた。
【STORY】アラスカ州エニスに冬の長い夜が訪れた時、ツァラル北極研究所に駐在していた8人の男たちが忽然と姿を消す。事件解決のため、リズ・ダンヴァース(アカデミー賞®受賞俳優ジョディ・フォスター)とエヴァンジェリン・ナヴァロ(カーリー・レイス)の両刑事は、自らが抱える闇と対峙しながら、永久に解けることのない氷の下に眠る呪われた真実を掘り起こさねばならないのだった。
極夜、厳寒のアラスカが舞台
まず舞台となるのが日中でも太陽が沈んだままの極夜のアラスカ、というところから身を乗り出してしまう。クライムスリラーの雰囲気が既にして高まってるじゃないですか。さらに白人と共にアラスカ先住民やその混血の者たちの暮らす街の様子が描かれ、またもや興味を引くことになる。アラスカ先住民が描かれる映画やドラマ自体が珍しいからだ。そして物語冒頭、妙に近代的な研究所が登場し、そこで事件が起こる。研究所の職員8人が突如失踪してしまうのだ。職員の一人が「彼女が来る!」と絶叫した後に。
この「研究所」というのが何を研究しているのか最初伏せられているのも謎めいているが、研究所の居住区に南極観測基地を舞台にしたSFホラー映画『遊星からの物体X』のビデオが置かれている部分で思いっきりニヤリとさせられる。おおっと、製作者、分かってんじゃん。
捜索の中、遂に失踪者たちが発見される。恐怖に顔を歪ませ、氷上で全裸のまま凍結した凍死体の姿となって。彼らに何が起こったのが?なぜこのような不可解な死に方をしなければならなかったのか?こうして警察官リズとエヴァンジェリンによる捜査が開始されるが、そこにはアラスカという土地、アラスカの先住民たちにまつわる呪われた闇が隠されていたのだ。
リンチ作品を思わせる超現実的な演出
最初はよくあるクライムスリラーかと思って観始めたのだが、冒頭からホラータッチのグロテスクな光景、スピリチュアルなものをうかがわせるミステリアスな演出、悪夢的なフラッシュバック、極夜で厳寒のアラスカという陰鬱なロケーションと、あまりに異様な構成に驚かされてしまった。そして徐々に語られ始めるアラスカ先住民の伝説、そして「ナイト・カントリー」という言葉。これらから、デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』をアラスカで撮ったらこうなっていたのではないかとすら思わせるほど超現実的な匂いがするのだ。
さらに白人とアラスカ先住民との共存の在り方、あるいは人種的対立や文化の違いがそこここで浮き上がってきて物語は否応なく複雑化してゆく。そして主人公となる警察官リズとエヴァンジェリン自身がこれまた職務にも私生活にも問題を抱え、心に闇を持った者たちなのだ。こうして物語はずぶずぶとダークかつ非情な展開へと沈み続けてゆくのである。
特に今作においてはジョディ・フォスターの熱演ぶりが凄まじい。作品の製作総指揮も兼ねているという気負いもあるのだろうが、彼女が演じる警察署長リズの一筋縄ではいかない意固地さとわがまま、それによる暴走ぶりが、錯綜したドラマをさらにややこしくしているのだ。異様な物語に負けないぐらいリズの性格が破綻しているのである。性格俳優の面目躍如といったところだろうが、時としてオーバーアクトに感じた部分があることは否めない。とはいえ、存分に演技を楽しんでいたのだろうな、というは伝わってた。共演のカーリー・レイスのタフネスぶりも物語に十分なリアリティを加味していた。
物語は全6話、不気味かつ不可思議な描写で盛り上げてゆき、クライマックスでも壮絶な展開が巻き起こるのだが、肝心の最終話で息切れしたのか、説明に説得力を感じなかった部分、伏線回収されていない部分、説明しそこなっている部分があり、この締めくくり方の拙さで少々惜しい作品となっている。とはいえ全体の雰囲気は悪くなく、ジョディ・フォスターの熱演も相まって、なかなかに楽しめたドラマだった。
