『DUNE/デューン 砂の惑星』の前日譚となるドラマ『デューン 預言』を観た

デューン 預言 (監督:アンナ・フォースター 2024年アメリカ製作)

フランク・ハーバートによって書かれSF史に燦然とその名を残す長編SF小説デューン』シリーズは先ごろドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『DUNE/デューン 砂の惑星 PART1,2』として映画化され話題を呼んだが、その前日譚がドラマシリーズとして映像化された。タイトルは『デューン 預言』、『デューン』の主人公ポール・アトレイデスが誕生する1万年前(!)が舞台となり、秘密結社ベネ・ゲセリットが銀河帝国で暗躍する様が描かれてゆく。物語はブライアン・ハーバートとケヴィン・J・アンダーソンが執筆した小説『SISTERHOOD OF DUNE』を基に構成されている。

物語の理解を深めるために覚えておきたい事柄が二つある。それはそもそもベネ・ゲセリットとは何か?ということと人類とAIとの戦争「ブレトリアン・ジハード」である。

ベネ・ゲセリットとは長い歴史を通じて銀河帝国を陰で操ってきた女性だけの秘密結社だ。その目的は人類の遺伝子を操作し優れた指導者を生み出すことであり、特殊能力を持つシスターたちを育成し、宇宙に遍在する各領家に送り込むことで、政治的な影響力を行使しているのだ。

そして『デューン 預言』冒頭でも描かれる人類とAIとの戦争「ブレトリアン・ジハード」。『デューン』世界における人類は過去においてAIとの壮絶な大戦争を繰り広げこれに生き残り、以来AIが恒久的に禁止されているのだ。そのAIの代わりとしてメンタート=人間コンピューターの育成が計画されたが、その派生として生み出されたのが「宇宙ギルド」であり「ベネ・ゲセリット」なのである。

星間飛行が容易になった超未来にAIが禁止されているという特異な設定が『デューン』の独特さであり、この『デューン 預言』でも人類とAIとの確執が隠されたテーマになっている。原作の書かれた60年代において人工知能への懸念を示した作者の態度は、現代におけるネオ・ラッダイト運動の先駆けともいえるのだ。

デューン 預言』で描かれるのは二つの時間軸だ。一つはハルコンネン家の2人の姉妹が血の粛清によりベネ・ゲセリット教団を形成してゆく過去。もう一つは銀河皇帝、ハルコンネン家姉妹に支配されたベネ・ゲセリット、アラキスの死地から帰ってきた謎の男、そして叛乱勢力との、帝国の未来を賭けた覇権闘争が進行する未来だ。ここではハルコンネン家とアトレイデス家との因縁が語られ、こいつら1万年前からずっと仲違いしていたんだ?と呆れ返ることになる。また、銀河皇帝は映画版と同様に影が薄い。

全6話で描かれるのは徹底したパワーゲームと不信と謀略である。誰も彼もが腹に一物持ち表と裏の顔を使い分け、常に相手を支配しようと腐心する。こういった物語なので全編暗く冷たくどんよりとした雰囲気で、感情移入できる登場人物など一人も存在しない寒々しさだ。そういった部分で観ていてうんざりさせられる部分も多々ありはする。

しかしSFドラマとしてのビジュアルは抜きんでて素晴らしく、衣装にしても建造物にしても美しく優れたデザインを見せつけ、『デューン』ならではの雰囲気がたっぷりと出ているのだから目が離せない。さらに俳優陣の存在感が格別で、総じてこれらが迫真的な『デューン』世界を形作っている。映画版と同じレジェンダリー・プロダクション製作ということで、映画版とのヴィジュアル的な地続きもきちんとなされている。映画版ほどのアクションやカタルシスは望むべくもないが、ベネ・ゲセリットが中心となったいやったらしい超未来世界を存分に楽しめるといった部分では悪くない出来だった。