THE PENGUIN ザ・ペンギン (監督:クレイグ・ゾベル 2024年アメリカ製作)

『THE PENGUIN ザ・ペンギン』はDCコミック・バットマンのヴィランであり、映画『THE BATMAN-ザ・バットマン- 』に登場したペンギンを主人公としたドラマだ。物語は『THE BATMAN-ザ・バットマン- 』ラストの直後、リドラーの巻き起こした大洪水により破滅的な打撃を受けたゴッサム・シティが舞台となり、暗黒街で次第に頭角を現してゆくペンギンの姿を描いてゆく。
『THE BATMAN-ザ・バットマン- 』は非常に好きな映画で、今でもたまに観返したくなるが、その中で登場したヴィラン、ペンギンが主人公のスピンオフ・ドラマが製作されたと聞かされてもあまり食指が動かなかった。ところが配信後の評価が非常に高く、こりゃ何かあるんじゃないか?と思って観始めると、高評価も頷ける完成度の高さだった。
物語は映画『THE BATMAN-ザ・バットマン- 』では単なる小物のチンピラでしかなかった“ペンギン”ことオズワルド・コブルポットが、犯罪組織ファルコーネ・ファミリーのドン、カーマイン・ファルコーネの死を切っ掛けに組織の上層へと食い込んでゆく、というものだ。犯罪ドラマだけあってそこには暴力と謀略、裏切りと結託、腹の読み合いと足の引っ張り合いが事欠かない。その中でペンギンは抜群の悪運と嗅覚で機を制し、嘘八百を並べて敵も仲間も丸めて騙し、その時々で蝙蝠のように同盟者を変え、煮ても焼いても食えない下種極まりない男として暗黒街を渡り歩く。
しかしこんな薄汚い犯罪者であり、同時に醜い姿をしたフリークスであるにもかかわらず、ドラマを観ているうちに次第にこの男に魅せられてゆくことに気づかされるのだ。彼は最下層から遮二無二のし上がろうとする男であり、母親や愛人へ強烈な愛情を見せる反面も持ち、ひょんなことから手下になった少年ヴィクターにチンピラの矜持を教え諭す部分も見せるからだ。こういった、人間のクズが時折見せる人間臭さに思わず惹かれてしまうのである(ただし最後にこれ全てがペンギンの歪んだ自己愛の反映でしかないと判明するが)。
8話のドラマも波瀾万丈だ。ペンギンは事あるごとに様々な計略を巡らすが、そのどれもが必ず裏目に出て危機一髪の状況に至ってしまい、そこからからくも逃れるという展開の繰り返しで、こいつ、運がいいのか悪いのか全く分からない(笑)。たいがいの殺しや事件はペンギンの起こしたことなのだが、どう見ても一番怪しいペンギンを誰も疑わないというのがまた可笑しい。そういった部分では綿密なシナリオとは言い難いのだが、ペンギンの持つ名状しがたい魅力がそれをチャラにする。
なにしろこのドラマ、ペンギン役のコリン・ファレルの演技があまりに素晴らしく、引き込まれてしまうのだ。実は映画版でもコリン・ファレルが演じていたことを知らず、後で知って驚いたほどだ。ここでファレルは相当の特殊メイクと肥満体のラバースーツを着て登場し、パッと見ただけではファレルと気づかないのである。そしてここまで姿も性質も醜い男を、黒光りする魅力を持つ者に化けさせた演技力に恐れ入ってしまった。
対して、脇を固める演者にはあまり魅力を感じなかったのは否めない。カーマイン・ファルコーネの娘でペンギンの宿敵となるソフィアを演じたクリスティン・ミリオティは狂気さの度合いにおいて劣り悪役の凄味に乏しく、シナリオでも家庭内で犠牲になっていた部分ばかりクローズアップされて、ペンギンと互角にやり合う戦力を感じないのだ。一方無理やりペンギンの子分にさせられた少年ヴィクターのナイーブさは許容範囲としても、最後まで幼い雰囲気だったのは少々惜しい気がさせられた。
とまあだいたい面白く観ることのできた『THE PENGUIN ザ・ペンギン』ではあるが、シーズン2が製作決定されたようだけれども引き続き観るかどうかはちょっと微妙だなあ。コリン・ファレルは凄かったがペンギンのこれからの生き様に興味があるかというとそれはまた別だから。
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