怒らせたヤツはステイサムだったッ!?/映画『ビーキーパー』

ビーキーパー (監督:監督:デビッド・エアー 2024年アメリカ・イギリス映画)

フィッシング詐欺に遭い全財産を奪われた老婦人が自殺した。彼女の隣人であり、何かと世話になっていた養蜂家の男がそれを知り、辛気臭い顔を歪ませながら怒りの雄叫びを上げたッ!?「俺を怒らせたヤツは皆殺しだッ!!」そう、その男こそハリウッド映画界最凶の殺人マシーン、ジェイソン・ステイサム……もとい、引退した最凶の秘密工作員だったのだッ!?『スーサイド・スクワッド』のデビッド・エアー監督、ジェイソン・ステイサムジェレミー・アイアンズジョシュ・ハッチャーソン主演によるハードコアアクション映画『ビーキーパー』の始まり始まり~~!

《STORY》アメリカの片田舎で養蜂家(ビーキーパー)として隠遁生活を送る謎めいた男アダム・クレイ。ある日、彼の恩人である善良な老婦人がフィッシング詐欺に遭って全財産をだまし取られ、絶望のあまり自ら命を絶ってしまう。怒りに燃えるクレイは、社会の害悪を排除するべく立ちあがる。世界最強の秘密組織「ビーキーパー」に所属していた過去を持つ彼は、独自の情報網を駆使して詐欺グループのアジトを突き止め、単身乗り込んだ末にビルごと爆破。その後も怒とうの勢いで事件の黒幕に迫り、事態はFBIやCIA、傭兵部隊や元同業者まで入り乱れる激しい闘争へと発展していく。

ビーキーパー : 作品情報 - 映画.com

はい、「怒らせたヤツは最凶殺戮マシーン」映画、『ビーキーパー』でございます。『96時間』、『イコライザー』、『ジョン・ウィック』など、数々の人気シリーズを生んできたこのジャンルですが、これだけ散々映画になっているにも関わらず、どれだけ観ても全然飽きません。むしろ「もっとこのジャンルを!もっと殺戮マシーンを怒らせてくれ!」とすら思ってしまいます。平凡な市井の人間だと思われていた者が、法律の手の及ばない凶悪犯罪者に怒りの声を上げ、無敵の力でもってこれを成敗する、という物語構造それ自体が、この世の不条理にため息をつくしかない力なき一般人の心にグッとくるのでしょう。つまりこのジャンルは、善良な者が虐げられてしまうこの世の中をどうにかしたい、というファンタジィで成り立っているという訳なんですよ。

とはいえ、どれもこれも同じだと飽きられてしまいますから、それぞれのキャラクターに差別化が必要です。映画『ビーキーパー』の場合は「主人公が養蜂家」ということなんですが、なんで養蜂家なのか?リンゴ農家やホタテの養殖業じゃダメなのか?と思っちゃいますよね。この『ビーキーパー』では、「蜂という社会生活を営む昆虫の平和を守る」という”ビーキーパー”の役割を、社会生活を営む一般人を悪から守る、という意味合いに見立てているという訳なんですね。なかなか上手いメタファーですよね。まあこじつけがましいと言っちゃえばそれまでなんですけどね。

で、怒らせたヤツは「最凶殺戮マシーン」なわけですから、ほとんど無敵な存在なんです。でもそれだとどんな相手でも絶対勝ってしまいますから面白くなくなってしまうんです。そこを敵の強さにインフレーションを起こしたりとか世界観の設定に独特なものを持ち込むなどして新鮮さを保とうとするわけです。この『ビーキーパー』の場合でも相手の強さが徐々にインフレーションを起こしてゆく手法を取っていますが、この作品の凄いところは「いやいやw最終ボスこれってwありえないからw」と思わず草生やしてしまいそうになるような設定を持ち込んじゃった部分なんですね!おいおいやっちゃったよデビッド・エアー監督!?

こういった「キャラ設定の差別化」「敵キャラのインフレーションの在り方」において新しい視点を持ち込んだ部分で、映画『ビーキーパー』は「怒らせたヤツは最凶殺戮マシーン」ジャンルに新たな風を巻き起こしたといえるでしょう。というかジェイソン・ステイサムが辛気臭い顔を歪ませて大量殺戮しまくっている映画だったらオレはなんだって満足なんですけどね!?

イコライザー

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