映画『はたらく細胞』を観た

はたらく細胞 (監督:武内英樹 2024年日本映画)

お正月第1弾として観た映画は人気コミック/アニメの実写映画化作品『はたらく細胞』。邦画にはほとんど興味がないのだが、アニメ版はなんとなく観たことがあり、それほど悪い作品じゃなかったのと、お正月に相方さんと一緒に観るには丁度いい具合に馬鹿馬鹿しく他愛ない映画のように思えたのだ。

《STORY》人間の体内には37兆個もの細胞が存在し、酸素を運ぶ赤血球や細菌と戦う白血球など無数の細胞たちが、人間の健康を守るため日夜はたらいている。高校生の漆崎日胡は、父の茂と2人暮らし。健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しくはたらいているが、不規則・不摂生な茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている。そんな中、彼らの体内への侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが幕を開ける。

はたらく細胞 : 作品情報 - 映画.com

予想どおり邦画らしい他愛のない映画であり、邦画にごまんと存在するコスプレ映画であり、さらにいかにも邦画らしい泣かせと絶叫シーンが顕著な映画だったが、それでも印象はそれほど悪くなく、結構楽しんで観ることができた。後で調べると監督が『テルマエ・ロマエ』シリーズ、『翔んで埼玉』シリーズの武内英樹で、『テルマエ・ロマエ』シリーズはいい作品だったし、『翔んで埼玉』シリーズは観ていないが悪い印象は持っていなかった。

物語は人間の体内細胞を擬人化し、その働きや外から侵入するウィルス、身体的ストレスや劣悪な生活習慣とどのように日々戦っているのかを描いたものだ。名作特撮映画『ミクロの決死圏』をとことんコミカルにしたものとも言えるが、医学的・顕微鏡的光景が描かれるわけではなく、細胞たちは擬人化され人間的な性格を持ち、彼らが働くのは人間たちが住んでいるような街で、その街(体内)で様々なドタバタや危機に巻き込まれる様子を描いているのだ。その中で細胞たちそれぞれの役割が説明され、「家庭の医学」レベルの知識を学ぶことができるのがこの作品のミソとなる。

こういった細胞たちの活躍とは別に、その細胞を有する現実世界の人間たちのドラマも並行して描かれる。この中でヒロイン少女が白血病になり、父親やボーイフレンドとの愁嘆場が描かれることになるのだが、この映画が面白いのは「難病モノ」というありがちで陳腐な設定が、「病魔に侵された際の細胞たちの働きの説明」という形で対象化されてしまっているという部分だ。それにより「難病モノ」の陳腐さが「細胞たちの決死の戦い」に置き換えられ、擬人化ドラマならではの面白さを醸し出しているのだ。

人間ドラマパートでは阿部サダヲが下品で人間臭い父親役を好演し、擬人化細胞パートでは白血球役の佐藤健が頭が単細胞の単細胞という二重の意味で単細胞な役を演じていて好印象だった。それと「骨髄移植」って輸血みたいな形で行われることを初めて知った。そういった、原作の持つ啓蒙的な要素もきちんと持ち込まれている部分でも悪くない作品だった。これは続編ができてもおかしくないね。