ブラッド・ピット主演のハチャメチャ・バイオレンスアクション『ブレット・トレイン』がとっても楽しかった!

ブレット・トレイン (監督:デビッド・リーチ 2022年アメリカ・スペイン・日本映画)

最初は楽なミッションだった筈なのに!?日本が誇る高速旅客列車・新幹線を舞台に、ブラッド・ピット扮するくたびれ気味の殺し屋が、次から次へと現れる殺し屋と戦う羽目になる!?という映画『ブレット・トレイン』です。出演は『キック・アス』シリーズのアーロン・テイラー=ジョンソン、『ラストサムライ』の真田広之らの他に豪華なカメオ出演があるのでお楽しみに!原作は伊坂幸太郎『マリアビートル』、監督を『デッドプール2』のデビッド・リーチがつとめます。

いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスが待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していく。

ブレット・トレイン : 作品情報 - 映画.com

お話の方はザックリ言うなら、ヤクザ同士の抗争に家族までをも巻き込みながら、流血と死体が果てしなく乱れ飛ぶ!といったもの。その抗争が東京→京都間の新幹線を舞台の中心としながら、あんな殺し屋やこんな殺し屋が次々と登場し、手を変え品を変えながら血塗れバイオレンスが花開き、腹の読み合い騙し合いが渦を巻く!という、「ジェットコースタームービー」ならぬ「超特急列車新幹線ムービー」となっているんですね!血腥いお話ではありますが展開はコミカルでありコミックタッチであり、その荒唐無稽さが楽しい作品となっています。そのテイストは言うならば「ポップで陽気なタランティーノ」「クセの無いマイルドなガイ・リッチーといったところでしょうか!

この作品、まず主演のブラッド・ピットが実に素晴らしい!今年公開された『ザ・ロストシティ』でも助演という形ながら相当オイシイ役をつとめていましたが、今作では最初から最後までみっちりと楽しく愉快なブラッド・ピットを味わい尽くすことができるんですよ。今作のピットさん、殺し屋という役柄ではありますが、特にキレッキレのキャラという訳でもなく、むしろ予想もしなかったアクシデントの連続に、半分うんざり、半分涙目になりながら対処してゆくという、なんだか気の毒な殺し屋を演じてくれています。

また、単なるバイオレンス・ムービーなだけではなく、ピットさん演じるレディバグが「悪運を呼ぶ男」という設定になっている部分で実に秀逸なシナリオを見せてくれるんです。レディバグは腕の立つ殺し屋というよりは、彼が呼んだ「悪運」により、襲い掛かってくる敵の殺し屋が結果的に撃退されることになるんですよ。このどこかピタゴラスィッチ的な展開がユニークであり技ありの作品なんですね。一方「幸運を呼ぶ女」なんて方も出てきて、その対比もまた面白いですね。さらに付け加えるなら真田広之の素晴らしさは一見の価値があるでしょう!

もうひとつこの作品を面白くしているのは何と言ってもハリウッド作品名物「変なニッポン」の風景でしょう。なんたってまず、東京から京都に行くのになぜ品川・新横浜経由なんですか。いえ、間違いを指摘したい訳じゃない(指摘してるけど)、このインチキさが可笑しくていいんです。あと謎のぬいぐるみキャラ、モモもん!まあ日本ってこういうの大好きではありますが、「でもなんか変……」という気がガンガンする!それとかいつも流れている雅楽の音。いったいどこから流れてくんだよ!新幹線自体があり得ない仕様になっていて、これは間違いというより「知っててやってんだろ!」という確信犯の匂いがしますよね。こういったあれやこれやの「変なニッポン」がなんだかくすぐったくて、そこがまた楽しい作品でした。