ピアース・ブロスナン主演、レニー・ハーリン監督によるケイパー映画『ザ・ミスフィッツ』はそんなに悪くない作品だった

ザ・ミスフィッツ (監督:レニー・ハーリン 2021年アメリカ映画)

悪人から金品を強奪し弱者に分け与える義賊集団の活躍を描くケイパー映画『ミスフィッツ』です。ケイパー映画とは泥棒映画の事です。じゃあ泥棒映画って書けばいいじゃん、と思いますが、覚えたての言葉だったんでちょっと使ってみたかったんですケイパー映画。主演は007シリーズでボンドを演じたピアース・ブロスナン、助演にティム・ロスハーマイオニー・コーフィールド。監督は『ダイ・ハード2』「クリフハンガー」のレニー・ハーリン

【物語】犯罪プロフェッショナル集団の「ミスフィッツ」は、極悪人から盗んだ大金を弱者たちに与えることをモットーとする、謎に包まれた現代の義賊的存在。そんな彼らが、凶悪テロリストの資金源となっている大量の金塊を次のターゲットに定める。金塊は、中東の砂漠にある、強固なセキュリティで守られた私営刑務所の中に隠されている。この仕事が一筋縄でいかないものであることを悟った彼らは、一匹狼で伝説的な盗みのスペシャリスト、リチャード・ペイスに声をかける。

ザ・ミスフィッツ : 作品情報 - 映画.com

とりたたて傑作といえるほどではありませんが、それでも、十分楽しむことのできた作品でした。確かに「義賊集団」という設定はどうにもリアリティを感じないし、「プロ強盗集団の金塊強奪」という物語内容から想像するクールなスタイリッシュさ、あるいはシリアスなアクションといった要素は本作にはそれほど存在しません。ですから『オーシャンズ・なんたら』や『ワイルド・スピかんたら』なんていうゴージャスな人気作のような映画を期待すると肩透かしを食うかもしれません。

じゃあどの辺りが楽しめたのかというと、この作品、全体的に「軽い」のがいいんですね。軽快・軽妙・軽やか。こってりたっぷりの豪華ディナーみたいにお腹一杯にはしてくれませんが、綿菓子でも食べたような軽い満足は得られるんです。ただしその分軽佻浮薄でもあります。全体的にいろいろ甘いし緩いし古臭く感じる部分もあります。しかし安心して観ていられる心地よさがあるんですよ。オレのような年寄りにはこのぐらいが丁度よく思えました。

義賊集団「ミスフィッツ」の連中はそれぞれに秀でたスキルを持ち、映画ではそれがパズルを組み合わせたかのように適材適所に生かされてゆきます。その「ミスフィッツ」メンバーも国際色豊かな俳優によって演じられ、なかなかに賑やかです。中心的な舞台となるドバイのロケーションも風光明媚で魅力的です。金塊強盗の手口はどこかで見たことのあるような平凡なもので、作戦自体も少々ババッチィ要素があって潔癖症の方は要注意ですが、ある意味馬鹿馬鹿しくて笑えます。敵のお馬鹿振りもイイ味出していましたね。

なによりピアース・ブロスナンのヘラヘラした好々爺ぶりがイイ味だしているんですね。薄っぺらい世界観は逆にこの手の物語のキツさが無く非現実的で楽しいんです。狙ってはいないんでしょうがコミックタッチなんですね。少なくとも数多存在するあのどうでもいいネトフリ映画よりもよっぽど出来がいいので、それだけでも及第点じゃないですか。レニー・ハーリンの映画手腕はすっかり枯渇し切っているとは思いますが、製作総指揮も兼ねたピアース・ブロスナンの人の良さが作品の雰囲気をよくしていたのではないかと思えました。