デヴィッド・ボウイの『Vh1 Storytellers』は1CD+1DVDのライヴ・アルバムだ。2009年リリースというから知っている方はとっくに知っていると思うのだが、オレはつい最近知って慌てて購入してみた。そして聴いて&観てみると、これが結構ユニークなライヴ・アルバムだったのだ。
「Vh1 Storytellers」というのはアメリカのケーブルTVチャンネル「Vh1」の音楽番組で、著名アーティストが登場し「観客の前でその曲にまつわる話や思い出を語りながらパフォーマンスを行なっていく」という内容が人気を博しているのらしい。今回紹介するCD+DVDアルバムはその中のデヴィッド・ボウイの回を収録したもので、収録曲はCDに8曲、DVDは同内容の8曲に加えてボーナス・トラックが4曲、計12曲が収録されている。
◎「Vh1 Storytellers」収録曲(1~8はCD・DVDとも同内容)
1. Life On Mars?
2. Rebel Rebel
3. Thursday's Child
4. Can't Help Thinking About Me
5. China Girl
6. Seven
7. Drive In Saturday
8. Word On A Wing
(以下DVDのみ収録)
9. Survive
10. I Can't Read
11. Always Crashing In The Same Car
12. If I'm Dreaming My Life
収録日は1999年8月23日、今から20年も前となるから、選曲自体もその頃の最新アルバムまでという事になる。1999年と言えばアルバム『アワーズ…』がリリースされた年で、そこからの選曲も幾つかあった。収録場所はニューヨークにあるマンハッタン・センターのグランド・ボールルーム。
このライヴがどのようにユニークなのかというと、まずTV番組収録ということで簡素なセットのみであり、中央にボウイとミュージシャンのステージがあり、それを囲む形で100席かそのぐらいの客席が設えられている。コンサートの様な派手な演出も無く、衣装変えがある訳でもないが(そもそもボウイが着ているのはパーカーだ)、小規模で観客も近いせいかボウイも終始落ち着いた雰囲気で笑顔を浮かべながらパフォーマンスを続けてゆく。
曲と曲の合間にはボウイの語りが入り、これもいつも和やかだ。観客は皆抽選で入場出来た方たちらしいが、これもごく普通な方たちばかりで、ライヴの間は殆ど席に座り大人しく聴き入っている。要するにアットホーム的と言ってもいいぐらいリラックスしたボウイのライヴを観ることが出来るというわけなのだ。こんなボウイのライヴを観られるのはやはり珍しいかもしれない。
ユニークなのはライヴの様子だけではなくその選曲にも表れている。「Life on Mars?」「Rebel Rebel」「China Girl」といったライヴではおなじみな曲も聴けるのだが、それ以外にボウイがデビューしたての時にリリースしたアルバム未収録曲「Can't Help Thining About Me」や、これまでライヴのセットリストに入ることの無かった「Drive In Saturday」「Word On A Wing」が演じられていることが注目だろう。特にこの2曲はオレの好きな曲でもあるので嬉しかった。ある意味「渋め」の選曲という事になるが、逆にその分、他のライヴ・アルバムには無い新鮮さを感じた。