■サルカール3 (原題:SARKAR 3)(監督:ラーム・ゴーパル・ヴァルマー 2017年インド映画)
政治の裏側でドロドロと蠢く魑魅魍魎たちが互いに貪り合う様を描いた政治犯罪スリラー映画『Sarkar 3』でございます。
この映画、なんといってもみんな怖い顔をしている!主演となるアミターブ・バッチャン爺をはじめ、出演者であるジャッキー・シュロフ、マノージュ・バージパーイー、アミト・サード、ヤミー・ガウタムと、揃いも揃って悪人顔だッ!?ついでに書くと監督のラーム・ゴーパル・ヴァルマーまで怖い顔してるぞッ!?
というわけでここで唐突にラーム・ゴーパル・ヴァルマー監督の【オヤジ評価】をしてみたいと思います!
ラーム・ゴーパル・ヴァルマー(Ram Gopal Varma)1962年4月7日ハイデラバード生まれ(55歳)。主な監督作:『Shiva』(1990)『Rangeela』(1995)『Daud』(1997)『Darling』(2007)
【オヤジ評価】ウホッいいオヤジ。黒いです。太いです。固いです。油多めでこってりです。政治スリラーをよく撮っているということですから、その辺も一家言持っててうるさそうです。飲み屋でOL相手に延々政治談議を仕掛けてきて煙たがられそうなオヤジです。おまけにサウスの生まれとくればその濃さになおさら拍車が掛かるというもの。こんなラーム・ゴーパル・ヴァルマー監督には【二郎インスパイア系インド映画監督】の称号を与えたいと思います!
オヤジ度 ★★★★★
油ギッシュ度 ★★★★★
侘び寂び度 ★★★
さて冗談はさておき、この『Sarkar 3』、『3』っていうぐらいですからシリーズの3作目です。オレは1,2作目は見ていませんが、どれもこの『3』と一緒で政治スリラー映画らしいんですね。
1作目『Sarkar』は2005年に公開され、アビシェーク・バッチャン、ケイ・ケイ・メノン、カトリーナ・カイフ、アヌパム・ケールなんかが出演していたらしいですな。2作目『Sarkar Raj』は2008年公開で、なんとアイシュワリヤー・ラーイの新規参入がありました。そう、アミターブ爺、アビシェーク、アイシュワリヤーという親父と息子とその嫁の共演という訳だったのですよ!
そして今回の『Sarkar』の3作目ですが、アビシェークとアイシュワリヤーは出演していません。出演してませんが、映画観ているとアビシェークのモノクロ写真が組事務所に飾ってあるんですね(↓アミターブ爺の後ろに心霊写真みたいに写っている、なんかイラッとする表情を浮かべてる顔がアビシェーク)。
どうやらアビシェーク、前作で死んじゃったみたいです(ネタバレ)。
ええっと冗談ばかりで全然レヴューが始まらないんですが、そろそろ本気出しましょう(いやそもそもオレのインド映画レヴューに今まで本気なんかあったのか?)。そういえば今作、今年も開催される「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン IFFJ2017」で『サルカール3』のタイトルで公開されるので、HPから粗筋をコピペしておきましょう(明らかな手抜き)。
ムンバイの影の権力者サルカール。年老い孤独になった彼が見るものは?
二人の息子を亡くし年老いたサルカール。だが影の権力者としての実力は揺るがなかった。そんなとき彼の孫が「仕事」に加わろうとするが。アミターブ・バッチャン主演でムンバイのリアルを描く人気シリーズ第3弾。
ジャンル: クライムサスペンス
ココに注目!① : ムンバイマフィア
ココに注目!② : 下剋上の人間模様
ココに注目!③ : 濃厚な世界観
大雑把に言うなら、というか大雑把にしか理解してないのが正直な所なんですが、いわゆる政治を陰で操る連中が覇権を巡って虚々実々の抗争を繰り広げるというお話なんですな。陰謀・欺瞞・裏切り・共謀・密偵・暗殺・破壊活動と、ひたすら暗くおどろおどろしい闇社会の駆け引きが描かれてゆくのですよ。
物語ではムンバイの政治の実権を握るサルカール(アミターブ爺)の一派と、ゴーヴィンド(マノージュ・バージパーイー)率いる野党一派が激しく対立しています。このゴーヴィンド一派はドバイに拠点を置く謎のフィクサー、ヴァルヤー(ジャッキー・シュロフ)が陰で糸を操っています。そんなある日、サルカールの孫シヴァージ(アミト・サード)がサルカールに「仕事」を手伝わせてくれと申し出ますが、このシヴァージ、何か腹に一物持っているような男でした。
さて「暗くおどろおどろしい闇社会の駆け引き」とは書きましたが、作品自体は実の所かなり地味な仕上がりです。物語の殆どにおいてサルカールの組事務所でサルカールとその手下たちが椅子に座ったり突っ立ったままでなにやらボソボソと陰謀を呟いているシーンばかりだからです。それ以外はヴァルヤーがドバイの高級マンションプールでスケベそうなチャンネーとイチャイチャしているシーンです。時たま襲撃や銃撃戦も描かれますが、映画全体に動きがまるで無くて、会話だけで物語が進行してゆくんですよ。
それを補おうとしたのか、なんだか作ったようなアングルが多用されちょっと可笑しかったりします。もっと可笑しかったのは、重々しさを出そうとしたのか全編に渡って「どろろんどろろんどろろん」と暗くて深刻ぶった音楽が被さり、「ウオォウオォ」と低い男性コーラスが挿入され、ここぞというシーンでは「ごーびんだ!ごーびんだ!ごーびんだ!」というインドに暗いオレには意味の分からない歌が繰り返されるんですね。いやなにもそんなに煽んなくとも……。
しかし深刻ぶっているからといってこちらも深刻に観なきゃならない義理も無いですから、オレなんかは「あーこれ要するにインドの『アウトレイジ』な訳ね、ヤクザシリーズだし」と相当気を抜いて観てしまいました。まあアミターブ爺がビートたけしみたいに「テメー馬鹿野郎この野郎!」と怒鳴ったりはしませんけどね(正確には『ゴッドファーザー』を元にした映画なのだそうですが、『アウトレイジ』新作公開間近なので波に乗ってみました)。
映画全体としてはどうもパッツンパッツンに肩に力が入り過ぎているように思えたし、アミターブ爺のカリスマ性で成り立っている部分の多い作品なんですよね。とはいえ実は後半、意外などんでん返しがあってびっくりさせられた。このクライマックスで物語がシャキッと締まるんですよ。そういった点で言えば、割と悪く無い作品かもよ。……ところで「ごーびんだ」の歌ってあれなんなの?
Sarkar 3 | Official Trailer | Amitabh Bachchan, Yami Gautam, Manoj Bajpayee & Jackie Sharoff