あのスパイダーマンが帰ってきた~映画『スパイダーマン ホームカミング』

スパイダーマン ホームカミング (監督:ジョン・ワッツ 2017年アメリカ映画)

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「ああ、また『スパイダーマン』がリブートか……」とオレは遠い目をしていた。思えばサム・ライミ版の『スパイダーマン』が公開されたのが2002年。それから15年、ライミ版が3部作で消えてなくなり、その後『アメイジングスパイダーマン』と名を変え2作作られ、それがまた消えての新たなリブートである。「いろいろ大人の事情なのだな……」とオレはさらに遠い目をして思ったのである。

そして「で、まだ観なきゃならないの?」と誰にでもなく問うてみたのだ。それと同時にこの『ホームカミング』、例のMCUマーベル・シネマティック・ユニバース)の中の1作品という位置づけなのらしい。MCU……正直に告白しよう。オレはMCU作品がそれほど好きではない(とはいえ全部観ちゃってるんだが)。どっちかっつーとDCエクステンデッド・ユニバース(DECU)作品のほうが好きである。なんか度を越して歪な連中が多くてな。オレも人間が歪な分親近感が湧くんだ。……ってかほっといてくれ!

しかしまあ、この『ホームカミング』、出来上がってみると周囲の評判が結構良い。ううむ、ここはソフトが出てからとかケチ臭いことを言わずにビッグウェーブに乗ってやろうじゃないか(なんじゃそりゃ)。というわけでいそいそと劇場に足を運んでみると、あにはからんや、これが実に胸躍る楽しい作品だったではないか。個人的には『キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー』あたりから嫌気がさしていたMCU作品の中でも一番面白かった(異論はあると思うが個人的意見なので勘弁してくれ)。

今回の『ホームカミング』の何が面白かったのか、そして今までの『スパイダーマン』作品とどう違うのかをちょっと列挙してみたい。

スパイダーマン誕生の経緯を省いている。蜘蛛に噛まれたり叔父さんが亡くなったトラウマガーのくだり。その説明が無い分話の展開が早い。

 ・PC絡みなんだろうが主人公ピーター・パーカーの友人やガールフレンドなど周囲の人間が様々な人種で入り乱れている。今はこちらのほうが自然に目に映る。

 ・スターク社長が噛んでいることもあってスパイダースーツがハイテクで楽しい。しかしハイテクだから無敵って訳でもない展開がとてもいい。

 ・主人公のキャラクターがライミ版のナードさ、マーク・ウェブ版のヤングアダルトな軽さとはまた違う、もっと中庸で親近感の湧きやすい性格をしている。

 ・人類の危機!とか正義とは何か!とか大風呂敷なんか広げず辛気臭さに堕ちることなく心も能力も未熟な15歳の高校生ヒーローにいったい何ができるのか?を描いている。

 ・敵役となるバルチャー/エイドリアン・トゥームスがスパイダーマン/ピーター・パーカーと同じく等身大の人間として登場しているということ。彼が悪と化した理由が実に現実的で同情すらできるものである。ある種の絶対悪や狂気の賜物としての悪では決して無いのだ。

 ・それと併せ、舞台となるブルックリンの街並みの描き方がとてもいい。ピーター・パーカーの学校生活も実にリアルだ。

 ・そして深刻ぶらない物語展開がなによりナイス。これまでのヒーローモノって、背中にいっぱいいろんなもの背負っちゃたヒーローばかり出てきて、なんだか鬱陶しく思える部分が多かったんだよ。

 これら全てが相乗効果を生んで、実に清々しく、新鮮な物語として『ホームカミング』は完成していたと思う。また、スターク社長とピーターとの絡み方も絶妙で、これが終始ニンマリさせられるものばかり、「なんだおい、オレってやっぱMCU嫌いじゃないじゃん……」と思わせてくれたのだった。

それと、今回のヒロインとなるのがローラ・ハリアー演じるリズなのだが、「いや確かに可愛い子だけどピーターとあんまり釣り合ってないっていうか、なんだか変な子として登場するミシェルのほうがオレは全然好きだし似合ってるんじゃないかなあ」と思って観ていたら、……この辺ネタバレかもしれないのであとはお楽しみという事で。ここ、「あ、そういうことだったのか!」とちょっとびっくりしてしまった。

ところでオレ、最後まで"ホームカミング"ってなんのことかさっぱり分からないまま観てて、「スパイダーマンが帰ってきた!ってことなんだろ?」と思ってたんだけど、後で調べたら卒業生歓迎会とそれを含む様々な催し物のことも指していたのね……すいませんモノ知らなくて……。

 ※参考:これまでに書いた『スパイダーマン』レビュー