パンドラの箱がもたらす災禍〜バンドデシネ『オリュンポス』

■オリュンポス / ジェフ・ジョンズ&クリス・グリミンガー (著), ブッチ・ガイス (イラスト)

オリュンポス

大学のプログラムを終え、エーゲ海でダイビングを満喫する考古学部教授ゲイル・ウォーカーと彼女の学生たち―ブレント、レベッカ、サラ―は、海底から年代物の壷を引き上げる。ところが、その壷を手にした瞬間から、さまざまな災厄が彼女たちに降りかかる。突然、嵐が訪れ、武装集団が彼女たちの船を襲い、一同は見たこともない島に座礁してしまう。そしてそこには、あろうことか、ギリシャ神話の怪物たちがあふれかえっていた!これらの災いは壷の呪いに他ならなかった。それは、なんと、かの有名な“パンドラの箱”だったのだ―。はたして彼女たちは無事現実世界に戻ることができるのか!?

「海の底から壺を引きあげたらエライことになっちまったぜ!?」という物語、『オリュンポス』であります。エーゲ海で考古学の授業を兼ねてダイビングしていた教授と学生たちが、なんだかとっても古そうな壺を引きあげちゃうんですね。で、それが実はパンドラの箱だった!?というのがこの物語なんですね。教授と学生の乗った船は嵐に襲われるわ武装ギャングに襲撃されるわ挙句の果てに高波に飲まれて気が付くと見知らぬ島…そしてそこはギリシャ神話の怪物たちが跋扈する島だったのですよ!ここはどこなのか?そしてどうすれば現実世界に戻れるのか?といった感じで物語は進んでゆきます。
ここで「パンドラの"箱"の筈なのに出て来るのはどうして"壺"なの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。自分もそう思いました。調べてみたところ、どうやら本来は"壺"らしいんですね。

箱に関しては本来は甕である。ヘーシオドスの著書『仕事と日』の文中では、古代ギリシア語: πίθος(ピトス(壷、甕))という表記がされている。これがパンドーラーの箱について触れられている最古の書物だと言われる。
最初に「箱」と記述されたのは、ルネサンス時代、ロッテルダムエラスムスがパンドーラーの物語をラテン語で叙述した際、ピトスの訳語としてラテン語: pyxis(ピュクシス)を用いた際であり、これ以後、「箱」の語が用いられるようになった。
Wikipedia:パンドーラー

ほうほう、なるほど勉強になるものですね。
襲い掛かるギリシャ神話のモンスターと人間たちとの戦いが次々に描かれます。登場するモンスターはお馴染みのキュクロプスミノタウロスメデューサ、シーサーペントなど盛り沢山。この辺、オレなんかはレイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した『アルゴ探検隊の大冒険』なんかを思い出しちゃいましたね。若い方なら『タイタンの戦い』や『タイタンの逆襲』あたりを思い浮かべるでしょうか。そうそう、『アルゴ探検隊』でも出てきたあの骸骨戦士も登場するのでお楽しみに!
確かに、こういった先達があるので、「今更ギリシャ神話のモンスターかあ」と思われるかもしれませんが、相手となるのは現代の人間であり、さらにマフィアの一味もいるものですからマシンガンでモンスターと戦っちゃう、なんて場面も登場して案外新鮮ではありませんか。同時に、ダイビング中だった女学生もいるものですから、ビキニ姿や袖なしヘソ出しTシャツの若い女性がいつも画面を闊歩しているのでこれはこれで目の保養なのですよ。
モンスターとの戦いばかりではなく、考古学専攻の教授や学生がギリシャ神話の知識を駆使して危機を乗り越え脱出の方法を導き出してゆくといった部分にも面白さがあります。100ページ程度といった長さの物語にこれだけたくさんのモンスターを登場させそれと戦い、さらにドラマも展開してゆくのでこれは上手にまとめたものだなあと感心させられましたね。それと、こういった物語ですので従来的なバンドデシネと比べるとアクション主体で話がストレートな分サクサク読めて楽しめるといった部分もありました。パンドラの箱(壺)は人類の災いが詰まったものとされますが、それを開封したらなぜ異次元の島に行っちゃうのか?というのも最後で説明されていますのでお楽しみに。

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