ワンちゃんたちが活躍するディズニー提携のインド産CGアニメ〜映画『Roadside Romeo』

■Roadside Romeo (監督:ジュガル・ハンスラージ 2008年インド・アメリカ映画)


ロミオという名のワンちゃんが恋と冒険を繰り広げちゃう、という2008年に製作されたインドのCGアニメです。そしてこのアニメ、ディズニーとの提携で制作されているんですね。また、主人公ロミオの声をサイフ・アリー・カーンが、ヒロイン犬ライラーの声をカリーナ―・カプールが担当しています。

主人公ロミオは悠々自適の飼い犬生活を送っていましたが、飼い主に捨てられ野良犬となってしまいました。そんな彼はムンバイの町で出会った4匹のチンピラ犬と意気投合、犬用のヘアサロンを開くことで大成功を収めます。そこへやってきたのがマフィアのチャイヌー、地元を仕切るマフィア・ボス、チャーリー・アンナの手下である彼は、ショバ代を強請りにきたのです。そんなことも知らないロミオはチャイヌーを追い帰しますが、チャーリーの恐ろしさを知る仲間たちは戦々恐々。そんなある日ロミオは歌姫である犬のライラーと知り合い、彼女にぞっこんとなります。しかし、マフィアのボス・チャーリーもまた、ライラーのことがお気に入りだったのです。

登場するのが基本的にワンちゃんばかり、というワンちゃんムービーです。その他は猫とネズミが一匹づつ出てくるぐらい、あと人間もちょっとだけ出てくるかな。動物たちが中心となって活躍するCGアニメというと『ハッピー・フィート』や『マダガスカル』など沢山ありますが、ワンちゃんが主人公というと『ボルト』という秀作を思いだしますね。この『Roadside Romeo』でもCGのワンちゃんたちが様々なドラマを展開してゆきますが、面白かったのは、ワンちゃんが主人公の、特にインドである必然性のない物語なのにもかかわらず、観ていると随所にインド映画らしさが滲み出ている部分でしょうか。

まず楽しい歌と踊りの入る部分はそのまんまインド映画ですし、舞台となる町並みもインドらしいごちゃごちゃした汚い佇まいで、その町には『Dhoom2』のポスターが貼ってあったり、おまけに『DDLJ』ネタまで飛び出す始末。しかしそういった見た目だけではなく、物語の展開にインド映画っぽさがあるんです。主人公が前向きな性格で、起業して成功したり、仲間とわいわいがやがやしながら友情を育んだり、グラマラスな美女に一目惚れして、その美女と意外と簡単に付き合えたり、悪いヤツと渡り合うときも腕力ではなく口八丁手八丁で煙に巻いたり、嘘ついたせいで追いつめられたりと、インド映画らしいテイストが見え隠れしているんですよ。見る人が見ると、ワンちゃんの仕草ひとつにもインド人ぽいところがあるのだとか。そういう部分で楽しめましたね。

ところでこの間インドの3DCGアニメ『コーチャダイヤーン』のレビューの時に「インド初のCGムービー!」なんて書きましたが、調べたところによるとインド初3DCGアニメとなるのは『Alibaba』(2002年)という映画が最初っぽいんですよねえ(どんなのかというとここで観ることができます)。まだ他にあるかもしれませんがとりあえず訂正しておきます。この『Roadside Romeo』は2008年製作のCGアニメとなりますが、ディズニー提携のせいか、2014年製作の『コーチャーダイヤーン』よりもグレードの高いグラフィックに見えますね。観ていて自然なんですよ。もちろん実写的な『コーチャーダイヤーン』とカートゥーン的な『Roadside Romeo』ではCGに求められる精度が違いますが、アニメの動きもこちらのほうがいいんじゃないかなあ。ピクサーやドリーム・ワークスの最新作と比べたら確かに見劣りもしますが、CGアニメとしては十分の出来具合だと感じました。