最近読んだアメコミ2作〜『ロケット・ラクーン&グルート』『デッドプール:スーサイド・キングス』

■ロケット・ラクーン&グルート / ビル・マントロ、ダン・アブネット、アンディ・ラニング、スタン・リー、ラリー・リーバー、キース・グリフィン、サル・ビュッセマ、マイク・ミニョーラ、ティモシー・グリーンII、ジャック・カービー

ロケット・ラクーン&グルート (MARVEL)

モフモフにしてやんよ! 映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で話題の宇宙アライグマ、ロケット・ラクーンが大活躍! ロケット・ラクーンの全てを詰め込んだ豪華オムニバス登場!
まさかの映画化で一躍、トップスターの仲間入りを果たした宇宙アライグマのロケット・ラクーンと、20世紀中にはわずか3回しか誌面に登場していない樹木人間グルート!トラスコミックス時代のグルート初登場作から、幻のロケットデビュー作、実質的な初登場エピソードであるハルクとの競演作、若き日のマイク・ミニョーラ出世作でもあるロケット主演のミニシリーズ、さらには、実に25年ぶりとなるその後日談と、今、話題の二大ヒーローの登場からわりと最近までをまるっと収めた注目の一冊が登場!

実は映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(GotG)』は未見。観に行く暇がなくてソフト化されてからでもいいかなあ、と思っているところである。映画を観ていないのにこのコミックを買う人間は珍しいのかもしれないし、もともと買うつもりもなかったのだが、なにしろ表紙がマイク・ミニョーラ、さらに若き日の彼がペンシラー(アメコミでは「絵の下書き担当」ということらしい)として参加と聞くにつれ、いちマイク・ミニョーラ・ファンとして興味が出てしまったのである。まあ実際読んでみると、本当に若かったころに参加したものらしく、『ヘル・ボーイ』でのマイク・ミニョーラみたいな描線の片鱗も認識できなかったが。
しかしそういった部分での期待は叶えられなかったにせよ、この『ロケット・ラクーン&グルート』、『GotG』を観ていなくても十分楽しむことのできる作品だった。基本的には『GotG』の登場キャラである"遺伝子改造されたアライグマ"ロケットを主人公とし、彼の生い立ちの秘密と宇宙に飛び出すまでを描く前半と、『GotG』解散後の(なにやら相当な悲劇があったのだそうな)ロケットの活躍が描かれる後半とに分かれて物語が収録されているが、この後半において『GotG』キャラである樹木型ヒューマノイド・グルートが絡んでくる、という作りになっている。前半にはあのハルクが登場し、ロケットと共闘する回があったりもする(1982年作)。また、グルートが「宇宙の怪生物」役で登場する彼のデビュー作(1960年作)も収録されている。
ロケットの中心的なエピソード「Rocket Raccoon」は1985年作で、つまり30年近く前の作品なものだから、グラフィックや物語展開は相当古めかしいものを感じるのし、ロケット以外のキャラもだいたいが「知能を持った喋る動物」で、なんだか子供向けの物語を思わせてしまうのだが、これが読み進めていくと、単に動物キャラのヒーローが活躍するという安易な作品ではなく、それなりに世界観が設定された物語であることが分かり始める。ロケットをはじめとする動物キャラが「知能を持った遺伝子改造動物」にされた理由がきちんと説明されているのだ。
そして後半収録の「Annihilators」「Annihilators: Earthfall」は2011〜12年に描かれた作品で、さすがに今風のアメコミ・グラフィックと物語展開を見せており、こちらは読みやすい。物語は「GotG」解散後にしがない郵便係に身を落としたロケットが宇宙を揺るがす陰謀に巻き込まれ、元相棒グルートの居場所を探し出し、彼と再び協力しあって陰謀を打破する、といった物語になる。しかも後半、「Rocket Raccoon」の舞台でありロケットの出身惑星であるハーフワールドが登場し、かつての仲間が総出演する、といった展開を見せるのだ。すなわちこの『ロケット・ラクーン&グルート』、30年余りをかけてロケットの物語にきちんとした連続性を持たせているというわけなのだ。こまっしゃくれて口数の多いヒーロー・ロケットは十分魅力的で、そしてグルートというキャラも実に楽しい。う〜ん、やっぱり映画『GotG』、きちんと見ておくべきなのかもしれない(いや…暇がなくて…)。
◎参考:「ツルゴアXXX / ビル・マントロ&マイク・ミニョーラ他/ロケット・ラクーン&グルート」

ロケット・ラクーン&グルート (MARVEL)

ロケット・ラクーン&グルート (MARVEL)

デッドプール:スーサイド・キングス / マイク・ベンソン、アダム・グラス、カルロ・バルベリー、ショーン・クリスタル

デッドプール:スーサイド・キングス (MARVEL)

デップー第二弾! スパイダーマンデアデビルパニッシャーらもゲスト出演! 濡れ衣を着せられたデッドプール。汚名返上できるのか!? ヒット作『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』より前のエピソードを描いたミニシリーズ。スパイダーマンデアデビルパニッシャーらもゲスト出演!
我らの“冗舌な庸兵”のもとに、100万ドルの暗殺依頼が舞い込んだ。だが、高額な暗殺の裏には、大いなる陰謀が仕組まれていた。罪のない一般市民を殺害したという濡れ衣を着せられたデッドプールは、あろうことかパニッシャーに命を狙われることになる。しかし、彼の無実を信じる者もいた。その名はデアデビル…。暗黒街の仕置人パニッシャーを前にして、恐れを知らぬ男に勝ち目はあるのか!?

ちょっと前からアメコミの翻訳が盛んになり出し、様々な名作が日本でも読めるようになってきて、たいしてアメコミの知識はないのだけれども自分なりにDCやマーベルの翻訳コミックを買い楽しんできたが、今度は逆にリリース作が豊富になり過ぎてついてこれなくなってしまったのだ。おまけにバンドデシネにも手を出してたものだから、結構高額なこれらのコミックを買い続けるのは懐が厳しくなり(あと置き場所もね…)、アメコミに関しては手を出すのを中止することにしていた。
ただ、デッドプールというキャラはなぜだか気になり、自らの禁を犯してこれだけは読んでみることにした。いや、実は『ヒットマン』にも手を出してるんだけどさ…やっぱり買ってんじゃんオレ…。デッドプールにしろヒットマンにしろ興味を覚えたその理由というのは、バットマンやスーパーマンらなんとなくお馴染みになってしまっている大御所と違い、「こいつらなんなの?」という好奇心を抱かせる奇妙なキャラクターだったから、予備知識の全くない新鮮さがあったから、ということになるだろう。
デッドプールの『デッドプール マーク・ウィズ・ア・マウス』はその期待を裏切らないコミックで、その「不死身のハチャメチャお調子者ヒーロー」といった風情が実に楽しかった。この『デッドプール:スーサイド・キングス』も前作同様フットワークの軽いオチャラけキャラ振りを徹底しており、実に楽しい作品に仕上がっている。
物語はとある陰謀に巻き込まれ絶体絶命のデッドプール!といったもので、さらにデアデビルスパイダーマンパニッシャーの客演もあり、物語を賑やかせてくれる。あとデッドプールというキャラにはあまりしがらみがないのがいい。実際の所、その誕生については結構陰惨なドラマがあるのらしいのだが、そういった部分にこだわらず、あくまでアホを貫き通す、という吹っ切れ方もいい。そしてこのコミック、なにより薄くて安いのがいい。いやー最近の海外コミックって分厚い上に高くてさあ…。それにしてもデッドプール、頭を吹き飛ばされても復活するって、インチキを通り越した不死身振りがなんとも凄まじいな。

デッドプール:スーサイド・キングス (MARVEL)

デッドプール:スーサイド・キングス (MARVEL)

デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス (ShoPro Books)

デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス (ShoPro Books)

デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース (MARVEL)

デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース (MARVEL)