英米大バカ映画対決!『ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中』『モンティ・パイソン ある嘘つきの物語〜グレアム・チャップマン自伝〜』

ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中 (監督:ジェフ・トレメイン 2013年アメリカ映画)


命知らずのエクストリームなお騒がせ集団「jackass」による劇場版シリーズ第4弾です。今回はjackassメンバーであるジョニー・ノックスビルが老人に扮装し、またまた街中をパニックに陥れるというもの。

しかも今回はストーリー仕立てとなっており、ジョニー扮する86歳のアーヴィン爺さんが、生意気な孫息子ビリーを車で父親の元に届ける、というロードムービー仕立てになっています。つまり車でのアーヴィン爺さんとビリーの会話で物語を進行させ、途中に寄る町々でとんでもないドッキリのイタズラを披露する、といった形で進行してゆくんですね。まあ例によって自販機にチ〇コ挟んでみたりとかスーパーで万引きしたりとか遊具を暴走させてショーウィンドーをブチ破ってみせたりとか、ろくでもないことばかりしでかしてます。

ただし子供を主演させているからなのか、下ネタ下品ネタは若干抑え目になっていますね。まあカフェでビチグソぶっ放したりとか黒人男性ストリップ小屋に乱入して自分もチ〇コ御開陳したりとかはしてますけどね!ただこの辺のjackassにしてはちょっとソフトになったイタズラというのは、どんどんイタズラを派手にさせて止めなくインフレーション起こしてしまうことに対する方策なんじゃないのかな。ストーリー仕立てになっているのもそういう理由だからな気もします。そういった部分で隠微で耽美なデヴィッド・リンチが妙に暖かいロードムービーストレイト・ストーリー』を撮ったのと似ているかもしれませんね。

面白かったのはアメリカ貧困層の人々のレクリエーションが幾つか映し出されていたことですね。ビンゴ会場でイタズラを仕掛けるシーンがありましたが、会場はなんともいえない殺伐とした雰囲気を醸し出していましたし、先ほど書いた男性ストリップは、小さなパブみたいな所で行われていたんですが、観客の黒人女性たちが物凄く生き生きとしていて楽しげだったのが非常に印象に残りました。そして最後の子供美人コンテストの大暴れっぷりが本当に可笑しかった!


モンティ・パイソン ある嘘つきの物語〜グレアム・チャップマン自伝〜 (監督:ビル・ジョーンズ、ジェフ・シンプソン、ベン・ティムレット 2012年イギリス映画)


モンティ・パイソンにはそれほど強い思い入れはないのだが、社会人なら当然知っておくべき一般常識であり一般教養だろうと思い「空飛ぶモンティ・パイソンDVD BOX」は購入済みなのである。DVD7枚もあって全部観れてないけど。社会人失格である。おまけにモンティ・パイソン・メンバーであるグレアム・チャップマンが88年に逝去されていることも知らなかったのである。常識の無い人間なのである。というわけで罪滅ぼしを兼ね、グレアム・チャップマンの自伝映画『モンティ・パイソン ある嘘つきの物語〜グレアム・チャップマン自伝〜』を観賞するることにしたわけなのである。

しかし自伝とはいえ相手はモンティ・パイソン、一筋縄ではいかない作りとなっているのである。まず全編アニメだ。しかも全編ふざけきっている上に非常にろくでもない内容なのである。まあ本人がろくでもなかったから、と言えないことも無いのだが、例え相手が故人だろうと徹底的におちゃらかして描く、という部分にモンティ魂を見るのである。死んでも弄られるグレアム・チャップマンは、きっと草葉の陰でキャッキャと喜んでいる事であろう。

全編アニメ、と書いたが、この作品のユニークな所はそのアニメのタッチがコロコロと変わってゆく、という部分だろう。複数のアニメ・アーティストを使い、イメージをあえて統一させずにエピソードをつぎはぎしている、ということだ。これが非常に面白い効果を上げており、観ていて常に新鮮で飽きさせないのだ。グラフィックは技巧を凝らしたものではなく、どことなくCGでチャッチャと作ったようなお手軽なものだが、ある意味「モンティ・パイソン」というアーチストから離れても、アニメ作品として秀逸なのではないか。少なくともオレは宮崎の『風立ちぬ』の10倍は愉快に観ることが出来た。

さて肝心の内容だが、こんな作りなのでどこまでが本当か嘘なのか分からない。なにしろモンティ・パイソンなので本当でも嘘でも構いはしないのだが、グレアム・チャップマンケンブリッジ大学で医学を学んでいたそこそこにインテリな男だったのだという。その彼がコメディを志しモンティの面々と出会い成功の階段を上ってゆくのだが、それと同時にゲイだった彼のめくるめくような性遍歴と性妄想も同時に描かれてゆく。さらに深刻なアルコール中毒だったのらしく、禁断症状の悪夢がサイケデリックに画面を覆い尽くす。そして実際に執り行われた葬式も、やはりモンティらしいふざけたものだったという。けれども、そんな葬式こそがモンティ・メンバーや知人たちのチャップマンへの最大限の愛情表現だったのだろう。