ポップ・スターと歌姫との悲しい恋の物語〜映画『Aashiqui 2』

■Aashiqui 2 (監督:モーヒト・スーリー 2013年インド映画)


映画でも苦手なテーマというのがありましてね、その一つが薬物/アルコール依存症モノってやつなんですよ。こういうのって「薬物/アルコール依存でダメになりそう→ダメになりました」っていうそのまーんまやないかい!ってな直線的な展開を迎えちゃうのがなーんか退屈でね。で、依存症である本人が辛いのは重々分かるんですが、「依存から抜けそう→やっぱり抜けない」の繰り返しで、映画として観ていると段々じれったくなってくるんですよ。もう一捻りしてほしいんですよ。まあこういうテーマの作品がそんな多くあるわけではないんですけど、今回久方ぶりにブチ当たっちゃったのがこの映画、『Aashiqui 2』なんですよ。
物語の主人公の名はラーフル(アディティヤー・ローイ・カプール)、彼は満員のスタジアムを沸かせるような大スター歌手なんですが、結構ムラッ気がある男で、その日も客と喧嘩して「もうやってらんねェ!」とか言ってコンサート止めちゃうんですね。そしてフラッと立ち寄った場末の酒場で、驚くほど美声の女性歌手アーローヒー(シュラッダー・カプール)を発見するんですよ。ラフールは「君は絶対スターになれるわ!スターの俺が言うんだから間違いナシ!」とアーローヒーをスカウト、デビューしたアーローヒーはメキメキと実力を発揮し、大スターに上り詰めちゃうんですね。ラフールとアーローヒーには愛が芽生えますが、ムラッ気過ぎて世の中と折り合いのつかない大スター・ラフールはどんどん酒に溺れるようになり、遂には歌手として再起不能にまで落ちてしまうんですよ。
まあね、我儘なスター、センシティヴなスターっていうのも分かるんですが、主人公のラフール、なーんかもうセンシティヴ通り越してオコチャマ過ぎ。ダダッ子過ぎ。酒に溺れて「俺はもう駄目なんだあああ」と暴れるわモノ壊すわ喧嘩するわ、もう始末に負えな過ぎ。で、なんとか酒抜こうとするんだけど、今度はちょっと批判だの陰口聞いただけで「俺は面白くねえええ」とやっぱり酒飲んで暴れちゃうわけですよ。そんなラフールをけなげに支えるのがアーローヒーなんですが、なんかもうインドの「難波恋しぐれ」かと思うわけですよ。やっぱねえ、愛も大事だとは思いますが、アルコール依存症はきちんと専門の医療施設で診てもらったほうがええんちゃうの?とは思うわけですよ。その辺がどうもじれったく感じちゃうんですよね。
さらにこの物語、大スター歌手が主人公ってことでスターの歌っているとされる曲が多数挿入されるんですが、これがどれもこれも胃腸の具合の悪い人が電話で救急車呼んでいるようなマイナー調の曲ばかりで…。これは日本の音楽ジャンルでいうとニューミュージックといいますかポップ演歌といいますか…まあ要するに歌謡曲なんでしょうが、個人的な音楽趣味の問題でしょうけど、どうもオレには苦手でしたねえ。主人公の大スターがギター抱えてステージに立って観客総立ちしてるからギュワァ〜〜ン!とかワイルドなロックでもやってくれるかと思ってたのにどうにもシオシオのパーだったからずっこけちゃいましたよ。インド映画の音楽ってあんなに楽しくて素晴らしいものが多いのでちょっと残念でありました!
http://www.youtube.com/watch?v=FyXXgpPqe6w:movie:W620