ピンクのサリーは人権の印!わたしらインドのアマゾネス軍団!〜『Gulaab Gang』

■Gulaab Gang (監督:ソウミク・セーン 2014年インド映画)


えー、その昔ピンクのヘルメットをかぶってウーマンリブを訴える「中ピ連」という団体がありましてな、当時は結構派手にメディアに取り上げられていたものですから、ジジイのオレなんかはよく覚えております。さて今回ご紹介するインド映画『Gulaab Gang』、これは「ピンクのギャング」ってェ意味なんだそうですが、こちらはピンクのサリーを着て虐げられている女性や貧しい人たちの為に実力行使する、という女性たちの集団を描いた作品なんですな。
お話はインドのとある農村が舞台となります。田舎ということもあるのでしょうか、アコギな地主による農民の搾取や女性への虐待が後を絶ちません。そこで立ち上がったのがピンクのサリーを着て共同生活を営む女性たちの集団、「Gulaab Gang」なのであります。彼女らは不正や暴力に対して頑として立ち向かいます。そのためには暴力すら厭いません。理屈だの抗議運動だのではありません。彼女らは実際に戦います。実力行使なんです。目には目を、歯には歯をの精神で、日々鍛錬した肉体と、鎌や棒などの武器を頼りに、悪い奴らを徹底的に懲らしめるのですよ!だから冒頭から激しいアクション・シーンが盛り込まれます。勧善懲悪であるこの物語、一見か弱そうな女たちが武器を片手に驕り昂ぶった男どもをバッタバッタとなぎ倒してゆく、というシーンを見せられるのは胸がすくものがあります。
しかしこんな彼女らの活動を面白く思わないものもいます。女政治家スミトラー・デーヴィー(ジュヒー・チャーウラー)がそれです。スミトラーは最初、「Gulaab Gang」のリーダーであるラッジョー(マードゥリー・ディークシト)の影響力を利用しようと、選挙活動へ協力させようとするのですが、利己的で人を人と思わない本性を見抜かれ、協力を拒まれたばかりか、ラッジョー対立候補として立候補されてしまうのです。面白くないのはスミトラーです。彼女はその傲慢で冷徹な性格を露わにし、ゴロツキたちにラッジョーと彼女の仲間たちへの抹殺指令を出すのです!暗殺!襲撃!物語は次第に血なまぐさい様相を呈し、「Gulaab Gang」たちは次々と倒れてゆく!しかしやられてばかりいる彼女らではない!そしていよいよ、ラッジョーとスミトラーとの頂上対決の火蓋が切って落とされるのです!
いやあこれは面白かったですね。「Gulaab Gang」の戦いの基本は「報復」です。女性や貧しい者たちが酷い目に遭った時、彼女らが報復するその様は「必殺仕置き人」のようですらあります。しかしそれだけではなく、教育の行き届いていない近所の子供たちに勉強を教えてあげたりもするのです。共同生活を営む彼女らは、それぞれに辛い過去を抱えてここに集まったのでしょう(この辺ちゃんと字幕を追えていない)。中に一人武闘派の女性がいるのですが、これがミシェル・ロドリゲスぽくてカッコよかったですね。一方敵の親玉スミトラーもキャラが立ってます。女優さん自体は結構な美人さんなんでが、これが冷たい眼差しを光らせて口の端を上げながら憎々しく喋る様は悪モンの貫録十分でしたね。
インドにおける根深い女性差別は聞き及んだことがあるにせよ、自分はその全貌を知るわけではありません。伝統的に家父長制が強い社会であること、ヒンドゥー教の教義が影響を与えていること、などが挙げられているようですが、どちらにしろ、欧米諸国並みの平等が女性に与えられているわけではないという印象を受けます。都市部と地方とではさらに女性の立場に格差があるでしょう。そういった中で、エンターティメントに徹しているとはいえ、このような物語が作られるのはある種快挙なのかな、とちょっと思ったりもしました。
http://www.youtube.com/watch?v=xAcN8RR3Ry4:movie:W620