京都1300年の呪い〜映画『燃える仏像人間』

■燃える仏像人間 (監督:宇治茶 2013年日本映画)


仏像人間!それはムカデ人間でも武器人間でもない!仏像人間!それは仏像と人間の融合したおぞましい生命体!仏像人間!彼らは合体を繰り返しより凶悪な存在になってゆく!仏像人間!仏像と合体したらどうして凶暴になるのかはよくわからない!仏像人間!なんでわざわざ仏像とだけ融合すんのとか聞いちゃいけない!仏像人間!それはみうらじゅんのことじゃない!大仏魂!それは「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」!
『仏像人間』である。物質転送装置により仏像と合体し、より高次の存在となって世界に君臨しようという恐るべき陰謀を描いた物語である。舞台は仏像盗難事件が多発する京都。寺の娘の女子高生・紅子は住職である父と母を惨殺され、さらに寺の仏像までも奪われてしまう。身寄りを無くした紅子は父母の知り合いだった円汁の寺に身を寄せるが、そこで円汁に仏像窃盗集団シーダルダが父母殺害の犯人であることをほのめかされる。そんなある日、紅子は偶然入り込んだ寺の地下で、仏像と両親が融合した醜い生命体を発見するのだ…ッ!?
さてこの『仏像人間』、映画本編は"劇メ−ション"というアニメ手法を使っている。これはキャラクターなどを切り絵で作成し、これを背景の上で動かして撮影しているのだ。そしてなんといってもこの『仏像人間』のキモとなるのは、その切り絵に描かれた実におどろおどろしい仏像人間のグラフィックだろう。シャブやって画用紙こねくり回したらこんなの出来ちゃいました!グゥエヘヘヘ!といった雰囲気の、一回見たら忘れられないようなキモチ悪さに満ち満ちているが、単にグロテスクなだけではなくどこかユーモラスでもあるのだ。劇中登場する仏像人間だけでなく、主人公・紅子や普通の人間まで普通じゃない姿をしているというのもなんだか凄い。"劇メ−ション"という呼び名にしろその手法にしろ、ちょっとビンボクセえなあ、とは思うのだが、そのビンボ臭さとこのおどろおどろしさが奇妙にマッチし、独特のレトロ感を醸し出してもいる。なにしろテーマは仏像だし。
ただし、商業作品としてみるとあれこれ粗がありすぎる。シナリオにしろ演出にしろどうにも稚拙で素人の作った自主映画以上のものではない。台詞などは時々日本語になっていないことすらある。声優の声も映像のおどろおどろしさとまるで合わないごく普通の喋り声。ゲージュツ家が作ったんだからグラフィック以外の事はしょうがないのか?それと本編の前後に寺田農と声優だという女性が演じる実写が入るのだけれども、これがまるで意味がない。結局、個性的なグラフィックのみで牽引する作品になっており、ある種のアート作品というかオレのような珍しモノ好きな人間の為のカルト作品ということができるかもしれない。その辺納得ずくで、物語の出来よりも次から次に現れる怪しいグラフィックをひたすら堪能したい、という方にならお勧めできる作品だろう。

燃える仏像人間

燃える仏像人間