ゆるふわだけど殺し屋だもん(はあと)!〜映画『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』

■天使の処刑人 バイオレット&デイジー (監督:ジェフリー・フレッチャー 2011年アメリカ映画)


主人公は二人組の殺し屋美少女。冒頭から二人は、あどけない顔をしながら二丁拳銃を構え、ターゲットを次から次へ血の海に沈めてゆくんですね!おお!これからこの美少女二人の、血と硝煙にまみれた超絶ハードボイルド・サスペンス・バイオレンスが展開してゆくんだね!と期待に大きく胸が膨らみます!しかーし!その後大きく展開が変わっちゃう!主演少女二人が、「お洋服欲しーい!」とか「お誕生日おめでとー!」とかなんだかキャッキャウフフしてるんです。ゆるいんです。ゆるふわなんです。そして新たに一人のオッサンを殺す仕事を請け負った二人、このオッサンのもとに行ったはいいけど、なぜだか同情心が湧いちゃって「いや〜ん!このオジサマのこと殺せな〜い!」と悩んじゃうんですね!そう、この映画、「血と硝煙にまみれた超絶ハードボイルド・サスペンス・バイオレンス」というよりは、実は「二人組のキュートなゆるふわ少女が織りなす、ちょっぴり危険でちょっぴりおセンチな殺し屋家業(はあと)」を描いたものだったんですよ!
そんなですからアクション・サスペンスを期待される方、肩透かしに遭っちゃいますから気を付けたほうがいいです。ゆるふわとかふざけんじゃねええ!って方も観ないほうが無難です。しかしそんなオレはどうだったかというと、確かに最初は「なんじゃこりゃ?」とお口ポカーン状態でしたが、段々ゆるふわ二人組のペースに負かされて、「まあこれもありかも」とお話に段々乗ってきてしまいました。まず、少女二人のターゲットになったオッサンは、実は自らを殺すように暗殺者を依頼していたんです。オッサンの死を望む理由が次第に明かされ、そしてオッサンの孤独な人生が浮き彫りになってゆきます。そんなオッサンの心の内を知ってしまった少女たちは、殺すのか殺さないのか?と悩みます。殺さなくとも、誰かが殺す。オッサンには別の刺客が迫っていて、少女たちはこれとも対決しなければならない。確かに撃ち合いなんかもありますが、全体的には夢見がちな少女のファンタジーをそのままお話にしちゃったような作品です。ある意味少女漫画っぽい展開とも言えるかもしれない。だからシチュエーションにリアルさは欠片も無いけれども、むしろ心の揺れ動く少女たちのキュートさを堪能する映画だと言えるかもしれない。
そしてこの映画の主演の一人が、『ラブリー・ボーン』『ハンナ』のシアーシャ・ローナンさんなんですね。当時16歳だったシアーシャ・ローナンさんが、もう透き通るような美しさなんですよ。このシアーシャさんのお姿眺めていられるだけでもこの映画観てよかったなあ、としみじみ思っちゃうんですね!一方もう一人の主演はアレクシス・ブレデルさん(『シン・シティ』のベッキー役)、ただしこのアレクシスさん、少女と呼ぶにはちょーっとお年を召した方で、Blu-rayの高画質で見るのには正直少々辛かったです…。また、悩めるオッサン役が先ごろ亡くなったジェームズ・ギャンドルフィーニさんが演じていて、これがとっても哀愁があっていいんです。さらになんと、オレの心の師匠ダニー・トレホ兄ィが出演なさってる、というのもポイント高いですね!というわけでこの『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』、物凄く面白いとか超お勧めとかいうものでもないんですが、なんだか少女二人のゆるふわ振りにこちらもゆるっとふわっとなった映画でしたね。