質問です。低所得層をなぜ助けなければならないんですか?〜映画『エリジウム』

エリジウム (監督:ニール・ブロムカンプ 2013年アメリカ映画)

《トピ》 低所得層をなぜ助けなければならないんですか?
政府関係の責任者を務める50代女です。
最近貧民地区の低所得者層の人間たちが私の管理する地区に不法侵入して特別医療を受けさせろ、と言ってききません。
しかし特別医療は私の管理する地区に住まわれている資産家の皆さんの貴重な投資によって成り立っており、低所得者が使うためのものでは断じてありません。
そもそも不衛生極まりない貧民地区に住みつき、毎日たいした努力もせずに低所得に甘んじ、それで健康を害したからって、そんなもの自己責任ですよね?
自分の生き方がだらしないから、いざとなったときに自分を助けられない、それって自業自得じゃありませんか?
自己責任でしかない、自業自得の病気に罹った低所得者を、資産を維持するため日々努力を惜しまない私たちが、なぜわざわざ助ける必要があるというのでしょう?
ちなみに私はスペースコロニーに住んでいます。


ユーザーID:Elysium

《レス》ヒャッハーーッ!!
待ってな、ババア。


ユーザーID:District9

ニール・《第9地区》・ブロムカンプの新作映画『エリジウム』です。貧乏人しか住まないゴミ溜めみたいな地球と、優雅なお金持ちが住む清潔で豊かなスペースコロニーエリジウム」という、あまりにはっきりした格差社会と化した未来の地球が舞台です。主人公は工場で放射線浴びて余命5日と宣告されたマックスさん(マット・デイモン)。彼はエリジウムにある、ドラえもんに出てきそうな【なんでも病気を治しちゃう機械】を頼りに、エリジウムへの危険な旅に出ようとするんですね。
最初この『エリジウム』、背景として貧富の差が極端に激しい格差社会が描かれるので、アパルトヘイトをSFストーリーとして描いた前作『第9地区』と同じアナロジーを持つ映画だと思っていたんですよ。しかし背景こそ格差社会ではあっても、物語の流れそれ自体は【なんでも病気を治しちゃう機械】を巡る紆余曲折がメインとなっているんですね。これって、「イスカンダルまでコスモクリーナーD取りに来い」っていう『宇宙戦艦ヤマト』みたいじゃん?
そんなことをツイートしたら、大神源太80キロさんという方からこんなレスが。

た、確かに…エリジウム』、松本零士ネタだったのか。
まあこの辺は冗談なんですが、要するにこの『エリジウム』、金持ちが憎い!とか貧乏人は死ね!という話じゃなくて、「ちょっとそっちのお医者さん使わせてください」という話だった、という部分で、ちょっと食い足りなく感じたんですよ。地球の貧民の皆さんは、金持ち許すまじ!というよりは「空には夢の国があって、そこにいけたらいいのにねえ…」なんて呑気なこと言ってるだけだし、一方金持ちの皆さんの貧乏人死ね!という描写はあることはあっても、ジョディ・フォスター演じる強硬的な防衛庁長官と、あと工場の社長ぐらいなもんで、意外とエリジウムの皆さんは貧乏人には興味が無さそうな描かれ方なんですね。この辺もうちょっと高慢で鼻持ちならないヤツばかりって描かれ方だったら、マット・デイモンやったれ!エリジウムの連中皆殺しにしたれ!」なんて熱くなれたんですが。で、ラストはエリジウムが火の海と化し、阿鼻叫喚となって逃げ惑う金持ちたちが次々とくたばり、脱出したマット・デイモンが青い地球を眺めながら「いや、勝ったのはあの貧民たちだ…儂たちではない…」 とか言うともっとよかったんですけどね。
そういったテーマに関わる部分よりも、この映画の見所はやっぱりニール・ブロムカンプお得意の奇っ怪かつババっちいメカと、破壊力抜群でババッちい武器、熾烈かつババッちい戦闘と、そして情け容赦なくてババッちい肉体破損、これに尽きるんですよ。やっぱりニール・ブロムカンプ、テクノロジーをビンボ臭くて衛生観念劣悪なものに描く手腕はさすがですね。それと同時に、映画の中でスタンフォード・トーラス型のスペースコロニーをきちんと描いた珍しい作品としても評価できるんじゃないでしょうか。個人的にはこのスペースコロニーでの生活をもっと見たかったし、ここでのアクションをもっと増やしてほしかったな、と思いました。
作品的には評価の高かった前作『第9地区』に続く作品として期待値が高かった分、否定的な意見も多いようですが、アナロジーとして後退していても、ブロムカンプらしいババっちいセンスは相変わらずだし、たっぷりの予算と豪華配役を得て出来上がった映画、という部分では遜色の無い作品として仕上がっていると思いますが。
それにしても主人公の体に埋め込まれる大リーグボール養成ギブス】みたいなアレ

例によってメチャクチャ非衛生的なんだけど、放射能障害よりも、先に黴菌でやられちゃうんじゃねえか?と心配になりました。

エリジウム

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