『X-MEN ファースト・ジェネレーション』は青二才と黒光りオヤジの戦いだった!

X-MEN ファースト・ジェネレーション (監督:マシュー・ヴォーン 2011年アメリカ映画)

X-MENの発端だった!

X-MEN』シリーズはスピンオフの『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』も含めて一応全部観ているんですが、『バットマン』や『アイアンマン』あたりのアメコミ・ヒーローモノと比べると、若干落ちるというか予算が掛かって無いと言うか2軍な雰囲気が拭い切れないんですよ。やっぱりどうも、ヒーローキャラの人数が多すぎるってことと、顔形までミュータントになっているキャラの人たちの造形が、イマイチ垢抜けない。カッコよくないのよ。映画化に即して衣装だけは原作コミックとはちょっと違うクールで未来的なものに変更されているようだけど、キャラ造形だけは変えるわけにいかななったんだろうね。オレ特に主要キャラであるマグニートーのメット姿がどうも苦手でさあ。あれ絶対造形野暮ったいよ。そして大真面目にヒーローの苦悩を描けば描くほどあのメットに違和感が膨らんでしょうがなかった。だからメットの出てこない『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』は意外と好きだったりするんですよ。

さてこの『X-MEN ファースト・ジェネレーション』、1・2作目は監督ブライアン・シンガーの暗く艶かしい映像とよく言われる"マイノリティの苦悩"とかいうヤツでそれなりの空気感があったけど(3作目はまた別の監督だったのね)、今作は『キック・アス』を撮ったあのマシュー・ヴォーンで、マシューさんならどうやって料理してくれるかな?という興味はあったのね。逆にマシュー・ヴォーン監督じゃなかったらソフト化してから家で観てもいいか、ぐらいにしか興味が無かったんだけども。物語はファースト・ジェネレーションって言うぐらいだから、先行作品の前日譚で、プロフェッサーXとマグニートーの出会いと決別を描いているんですよ。時代は1960年代、米ソ冷戦のさなかのキューバ危機を舞台に選んでいるのね。そのキューバ危機の陰にX-MENの影があった!というお話なのね。

■ヘルファイヤークラブのお兄さんお姉さんはカッコよかった!

この映画ではワルモンミュータント集団であるヘルファイヤークラブという秘密結社がいて、それがアメリカとソ連を対立させて戦争を起こさせようとしているの。それを阻止する為に別のミュータントが集められるのね。これが後のX-MENのなるというわけですよ。このX-MENメンバーになる子たちはいかにもヒヨッコといった若者ばかりで、俳優の皆さんは若々しくてよかったんだけど、ミュータント造形としては今回もやっぱり野暮ったいの。ミスティークの青い顔も、口から超音波出してムササビみたいに飛ぶバンシーも、科学者ハンクの猿足も、鰓のある黒人も、青い大猿のビーストも、やっぱりカッコよくないの。「それが本来の姿だから美しいんだ」とか言ってるけど、なんか「ホントかよ?」と思っちゃうのね。

それに対しセバスチャンはじめアザゼルとかリップタイドとかワルモノ軍団ヘルファイヤークラブの人たちはみんなギラギラと黒光りしたオヤジの魅力がムンムンしてるんだよね。紅一点のエマ・フロストもエロっぽくてまた魅力振りまいてるんですよ。で、青二才の有象無象なんかよりも大人なワルモノのほうがやっぱりカッコイイのよ。ヘルファイヤーのお兄さんたちが特殊能力使ってザックザック邪魔者ぶっ殺してゆく様子はこの映画でも見せ場の一つではないでしょうか。こんなカッコイイワルモン軍団がカッコ悪い青二才のヒヨッコ集団に倒されるわけがないだろと普通思っちゃいますよ。それにヘルファイヤー軍団のメンバーの背景がちまちま説明されなかったのもよかったな。

この映画、アクション部分を削ってでも、「なぜ戦うのか」「自分たちは何者なのか」、それと合わせて「マイノリティと社会」ということをキチッと描こうとしているのね。それを巡ってエグゼビアと後のマグニートーであるエリックは共闘したり対立したりするんだけど、実の所、観ていてそういう対話はどうでもよかったなあ。まあ「この二人は何故対立することになったのか」という映画だから仕方ないんだけれども、結局説明的になるのね。そういうのよりも、やっぱりエリックが超能力で潜水艦を空に浮かべるビジュアルのほうが「おおっ」ってなるのよ。だから映画の基本的なテーマとなるものは印象的なシーンを繋げる事で簡単に説明して、後はアクション・シーンで持たせるべきだったんじゃないかな。

■あのメットだけはどうにかしてもらいたい!

あと女子で言うとミスティーク役のジェニファー・ローレンスさんはキルスティン・ダンストさんを思いっきり庶民的な顔にしたような感じで意外と嫌いではなかった。ちょっぴりぽっちゃりしてたのもグッド。でも変身、というか真の姿である青い顔の時はやっぱり怖かったですう。あの全身青い格好のときは撮影はヌードだったらしい。そしてエマ・フロスト役のジャニュアリー・ジョーンズさんが実に露出度の多いコスチュームだったのがよかった。インタビューでは「この衣装に最初はナーバスになった」とか言ってたけど。でも一番心休まる女子は女CIAエージェント・モイラ役のローズ・バーンさんです。やっぱり普通の女子がいいです。

それと途中からチャールズ・エグゼビア役のジェームズ・マカヴォイ鳩山由紀夫に見えてきて、おまけに「平和だ」とか「友愛だ」とか言い始めるからもはや鳩山センセ以外の何者でも思えなくなってしまい、「だからポッポはヌルイって言われるんだ」とか画面に向かって突っ込んでしまいました。それに比べマグニートー役のマイケル・ファスベンダーさんはダニエル・デイ・ルイスの色気にジェイソン・ステイサムの野蛮さを足したような俳優で悪くなかったな。でも最後のほう、オレの嫌いなあの「マグニートー・ヘルメット」被ってからは普通に変な趣味のおじさんになっちゃったけどね。今後『X-MEN』シリーズを続けるならあのメットだけはどうにかしてもらいたいと本気で言いたい。それにしても、X-MENたちの起源を描いたこの映画、何故エグゼビアはツルッパゲになったのかはまだ描かれておらず、今後の展開に期待したい。