お正月に観た映画あれこれあれこれ

ローラーガールズ・ダイアリー (監督:ドリュー・バリモア 2009年アメリカ映画)

ローラーガールズ・ダイアリー [DVD]

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非常にそつなく誰からも共感を得やすい作りにまとまっているしローラーゲームの選手たちの個性も際立っていてとっても秀作だとは思うんだけれど、自分の道を親の言いなりじゃなくて自分自身で見つけたい少女がローラーゲームやってみたら成功しちゃうって要するに最初から才能あった娘のサクセスストーリーってことになっちゃうんじゃないかなあ。作品内に実は悪人が一人も登場しないっていうのも、監督の基本が性善説なんだろうけども、ちょーっと甘過ぎる感じがしたなあ。

ゴーストワールド (監督:テリー・ツワイゴフ 2001年アメリカ映画)

ゴーストワールド [DVD]

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世間知らずで自分勝手で自意識過剰で見れば見るほどムカツクサブカル自惚れ娘(しかも不細工)が自分の蒔いた種でどんどん追い詰められてゆく、という当たり前なぐらい因果応報な話ではあるが、かつて世間知らずで自分勝手で自意識過剰なサブカル自惚れ男(しかも不細工)だった自分には、ミョーに他人事と思えず、最初はムカついたこのサブカル娘に次第に感情移入してしまった・・・(でもこんな娘がいつも主人公だった岡崎京子の漫画は嫌いだった)。それにしてもスティーブ・ブシェミがいい味出し過ぎ。最初は少女の物語だと思って観ていたけど、世間を嫌いオタクのままオッサンになってしまった男の悲哀の物語としても観れて、これもまた感情移入しすぎてオレはいてもたってもいられなかったよ。「世の中から拒否されているわけでもないのに自分から世の中を拒否しちゃう」のって、セーシュンの陥りやすい罠だけど、ブシェミもある意味サブカル娘と同じセーションを歩んできた男だったんだろうな・・・。そんな二人が出会ったのは本当は幸福なことだったのだろうに、すれ違っちゃう二人がとても哀れだった。サブカル娘もブシェミも最後に幸福になれたのか描かれることは無いのだけれども、ある意味『ローラーガールズ・ダイアリー』とは間逆な展開を見せるこの物語のほうにオレは共感するんだ。

■サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼 (監督:光武蔵人 2008年アメリカ映画)

サムライ・アベンジャー/復讐剣 盲狼 [DVD]

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妻と子の復讐を誓った男が舞台は現代だろうに西部劇な扮装で刀振り回して、なんていうビジュアルはコミック・タッチを狙ったんだろうし、はらわた飛び散るゴア描写やオネーチャンたちのあんまり意味の無さそうな露出の馬鹿馬鹿しさも嫌いではないんだけれども、とにかく予算が無かったんだろうなあと思わせるしょぼいセットが見ていて悲しくなるんだよなあ。あの掘っ立て小屋を刑務所って言われたって・・・。構図のとり方もイマイチだし、凄腕の盲目の剣士なら一杯飲んでる最中に刀奪われたりすんなよ、と言いたい。

■冷たい雨に撃て、約束の銃弾を (監督:ジョニー・トー 2009年香港・フランス映画)

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD]

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見栄え優先の銃撃シーンは監督の趣味を感じさせるけれども、暗い森の中で集団で拳銃連射しても多分当たる事は無いだろうし、殺すつもりなら殺す装備して欲しいし、昼間の敵に目視されやすい広場では遮蔽物や優位なポジションぐらい探して銃撃して欲しいし、あれは玉砕覚悟だったのならなんでそんなに死に急ぐのかオレにはよく分からなかったし、そもそも記憶喪失の男をみんなでよってたかって復讐させるというのもそれどうなの?と思ってしまった。

黒猫・白猫 (監督:エミール・クストリッツァ 1998年フランス・ドイツ・旧ユーゴスラビア映画)

黒猫・白猫 スペシャル・エディション [DVD]

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ユーゴ監督エミール・クストリッツァの作品の作品は幾つか見たけれども、これもまた監督らしいブガチャカブガチャカとしたタガの外れたような陽気で躁的な狂騒と混乱がひたすら描かれ、最後は「なにがなんでもハッピーエンドにするんだ!」という恐るべき力技で観るものをねじ伏せ、「いったい今まで観ていたものはなんだったんだ!?」と呆然とさせるという物凄い作りの映画になっている。ただ、個人的には今回の登場人物たちが根本敬的な意味での"イイ顔のオヤジ"な人ばっかりで、要するにちょっとババッち過ぎて多少引いた部分もあった・・・。

■コーラス (監督:クリストフ・バラティエ 2004年フランス・ドイツ・スイス映画)

コーラス メモリアル・エディション [DVD]

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『幸せはシャンソニア劇場から』が面白かったので、同じ監督の作品という事で観てみることに。戦後間もない孤児・問題児を集めた宿舎にやってきた音楽教師がコーラスを教えることでみんなの輪を作る、というお話なんだけれど、例えば同工のハリウッド映画『天使にラブソングを』が綺麗なサクセスストーリーとしてまとまっていたのに対し、こちらはヨーロッパ映画らしいちょっと苦い結末と未来への希望を残して終わるんだよな。ただそのせいで「え?これで終わっちゃうの?」と思ってしまったのも確か。ただどちらにしろ音楽を中心とした物語というのは観ていて心躍るし楽しいよね。

ザ・ロード (監督:ジョン・ヒルコート 2009年アメリカ映画)

ザ・ロード [Blu-ray]

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もう観ていてムカツイてしょうがなかった。「ノーカントリー」にしろこの「ザ・ロード」にしろ原作者コーマック・マッカーシーの耶蘇教持ち出さないと何も言えない白人知識層の抹香臭さと辛気臭さとその限界を如実に感じたという意味では原作者はピューリッツアー賞返上の上「マッドマックス2」100回見てからもっと身のあるヒャッハー小説書けと思いましたです。それじゃあ文学じゃないというのなら文学なんか止めて欲しい。破滅した世界で子供に教えるべきことは終わった世界の善悪ではなく今生きている世界でどうサバイバルするかだろ。それができないというのは今この世界でさえ子供に何も教えられないということだろ。「ノーカントリー」もあれだけの殺し屋作り出しといて結局最後は訳の分かんない終わり方してるしホントに白人知識層って脆弱だって思わせるよな。